【MTG】スタンダードメタゲーム解説(2022/10~2021/10)

スタンダード

スタンダードのメタゲームについて時系列に沿って解説しています。

本記事は2022/10~2021/10の分を掲載しています。最新記事はこちら

スポンサーリンク
  1. 10月3週目:《食肉鉤虐殺事件》禁止後の環境推移
  2. 10月2週目:《食肉鉤虐殺事件》禁止
  3. 9月4週目:デッキ構築の工夫が光る上位デッキの数々
  4. 9月3週目:黒い環境継続ながらも細かなトレンドの変化
  5. 9月2週目:真っ黒なスタンダード環境
  6. 9月1週目:新スタンダード開幕
  7. 7月1週目:環境末期のアグロデッキ
  8. 6月2週目:ジェスカイの隆盛
  9. 5月4週目:個性的なチューンも光った日本選手権
  10. 5月3週目:SNCチャンピオンシップ開催
  11. 5月2週目:注目を集める2つのアーキタイプ
  12. 5月1週目:ニューカペナの街角がもたらしたスタンダードの変化
  13. 4月3週目:環境終盤でも目新しいデッキが登場
  14. 4月1週目:勝つデッキが目まぐるしく変わる環境
  15. 3月3週目:続オリジナルデッキでも勝てる可能性のある良環境
  16. 3月1週目:オリジナルデッキでも勝てる可能性のある良環境
  17. 2月4週目:息を吹き返すアグロデッキ
  18. 2月3週目:オルゾフを中心に回り始めた新環境
  19. 1月5週目:禁止改定により激変を迎えたスタンダード
  20. 12月4週目:メタゲームはイゼット天啓一択状態
  21. 12月1週目:圧倒的なまでのイゼット天啓環境
  22. 11月4週目:環境に睨みを利かせる天啓
  23. 11月2週目:イニストラード:真紅の契りがもたらす変化
  24. 10月5週目:環境終盤に活躍するジャンド宝物
  25. 10月3週目:3強の支配は継続中
  26. 10月2週目:世界選手権でのスタンダードの行方
  27. 10月1週目:エシカの戦車 vs アールンドの天啓
  28. 9月4週目:環境初期特有の混沌としたメタゲーム
  29. 9月3週目:ローテーション後の新スタンダード環境開幕
  30. 9月1週目:MPL/ライバルズガントレット – 現環境のフィナーレ
  31. 8月1週目:ナヤウィノータを攻略するためのアプローチ
  32. 7月5週目:ナヤウィノータ無双
  33. 7月4週目:勢いを増すアグロデッキ
  34. 7月3週目:フォーゴトン・レルム探訪により強化された緑
  35. 7月1週目:ストリクスヘイヴンリーグウィークエンド(環境の締め括り)
  36. 6月4週目:ジェスカイ変容の実力は本物
  37. 6月2週目:イゼットの隆盛と赤単の凋落
  38. 6月1週目:ストリクスヘイヴンチャンピオンシップ
  39. 5月4週目:日本選手権予選のメタゲーム
  40. 5月3週目:ストリクスヘイヴンリーグウィークエンド
  41. 5月2週目:スゥルタイ根本原理の再台頭
  42. 4月4週目:ストリクスヘイヴンがもたらすスタンダードの変化は小さめ?
  43. 4月1週目:固まり始めたメタゲーム
  44. 3月4週目:環境末期なのに混沌としたメタゲーム
  45. 3月2週目:振り出しに戻りつつあるメタゲーム
  46. 3月1週目:サイクリングの復権
  47. 2月4週目:KHMリーグウィークエンド
  48. 2月3週目:《憤激解放》コンボの大頭
  49. 2月1週目~2月2週目:大スゥルタイ根本原理時代~単色アグロの復権
  50. 1月末(カルドハイムリリース直後)~2月1週目:グルグルするメタゲーム

10月3週目:《食肉鉤虐殺事件》禁止後の環境推移

先週の《食肉鉤虐殺事件》禁止から一週間経過しましたが、今週はMTGアリーナチャンピオンシップ予選ウィークエンドやMOのスタンダードチャレンジといったイベントからどのようにメタゲームや各デッキのカード選択が変化していっているのかを見ていきたいと思います。

予選ウィークエンドはデッキの集計が正確にはできないこともあり、MOのイベント2回分のTOP8(16デッキ)を中心に見ていきます。

圧倒的なまでのジャンドミッドレンジの勝ちっぷり。ちなみにアリーナの予選ウィークエンドのほうでもジャンドミッドレンジが勝ち残っている報告が多く、明らかに今週の勝ち組はジャンドミッドレンジで間違いないないといった状況になっています。

上記がMOのスタンダードチャレンジを制したジャンドミッドレンジのリストです。ちなみに2日分のスタンダードチャレンジを両日ともにジャンドミッドレンジが制しており、デッキリストも後者が模倣したためか数枚の差はあれど限りなく似たリストになっていました。


数ある黒系ミッドレンジの中でもジャンドミッドレンジを選択する理由はほぼ《豪火を放て》にあるといっても過言ではありません。

《食肉鉤虐殺事件》がなくなったことでスタンダード環境を定義しているとも言えるカードである《鏡割りの寓話》《婚礼の発表》といったカードがさらに対処し辛くなったこともあり、ますますそれらのカードが強力に機能しやすくなりました。

《強迫》で手札から落とす。もしくは《かき消し》のように打ち消すという方法以外で上記のようなカードを効率的(あまり損せず)に対処するには《豪火を放て》以外には殆どありません。加えて《勢団の銀行破り》も破壊できるため現在の環境にこれほどマッチしたカードは他にないといっても良いくらいで、上記リストではメインに3枚積まれていますが4枚積んでも良いくらいの状況にありこのカードの存在が現在のジャンドを牽引しているのは間違いありません。


上記のリストでは《食肉鉤虐殺事件》無き後の全体除去として《家の焼き払い》が採用されています。自身の《黙示録、シェオルドレッド》といったカードも巻き込まれてしまったりはしますが《放浪皇》のようなプレインズウォーカーも含めてリセットできますし、自身は《作業場の戦長》を使用しているため相手よりは有効に使いやすくなっています。何よりこういった全体除去が入っているという事実だけで相手のプレイングに影響を与えますし、そういった意味でも良い選択となっているように感じます。

5色神の乱デッキ。スタンダードチャレンジ両日共に良く似たリストでTOP4入賞しており、この事実からも決して侮れない強さを持っているのは間違いため取り上げました。

《神の乱》と版図をハイブリッドさせたようなリストになっており、5色ということでやはり他のデッキよりも抜けたカードパワーを持つデッキで中速デッキ(=ミッドレンジデッキ)相手を得意とするデッキになっています。やはり前述で述べた理由から《豪火を放て》もしっかりメインから3枚採用されており、このカードが使えるのも多色デッキならではの嬉しいところです。

《食肉鉤虐殺事件》がなくなったことで《群れの渡り》の信頼性がグッと増したのはこのデッキにとって嬉しい変化で、せっかく7マナと重たいコストで唱えても3/3の群れがあっさり《食肉鉤虐殺事件》で流されてしまうのは痛いところでしたがもうそんなことは起こらないので、フィニッシュ手段としての強さが環境変化により一段階上がったといっても良いでしょう。

《神の乱》の強さは言わずもがなですが、環境に増えている《作業場の戦長》のようなカードに対しても強いカードなのでジャンドの多いメタゲームになると更なる活躍が見込めそうなアーキタイプとなっています。

スタンダードチャレンジ準優勝のリストであるエスパーミッドレンジです。《策謀の予見者、ラフィーン》で攻めるタイプのエスパーミッドレンジというのは前から変わりないですが、このリストは特に《食肉鉤虐殺事件》が無くなった変化を強く受けたリストになっています。

具体的にはクリーチャー選択にそれが色濃く反映されており、例えば《新ベナリアの守護者》は強いがタフネス的にあっさり《食肉鉤虐殺事件》で流れてしまうこともあり、除去された後でも活用できる《しつこい負け犬》《敬虔な新米、デニック》にずっと2マナクリーチャーの席を譲っていましたが環境変化によりやっと出番が回ってきたと言っても良いでしょう。

同じく《鴉の男》も《食肉鉤虐殺事件》禁止によって追い風を受けており、出てすぐに仕事をしない上にせっかく生成したトークンまで一緒に流れされてしまうので非常に使い辛かったのですがピン除去(単体除去)がメインになった今では飛行トークンの価値も上がっている上《鏡割りの寓話》の2章で友情コンボも狙いやすいので現在は使用に値するクリーチャーにまで昇格した印象があります。エスパーだと《策謀の予見者、ラフィーン》の相性の良さも素晴らしいカードです。

上記のリストはそれらのクリーチャーも使いながら《かき消し》も使わずに展開を優先しており、前のめりに攻めていくようになっている上に《常夜会一家の介入者》が2枚挿されている点からも序盤から展開して攻める動きを優先し打ち消しはあくまで攻めのリードを継続させるために使うといった構成になっています。そういった戦い方は特に中速~低速相手には有利に戦えるのが魅力です。

このマナベースで《絶望招来》が3枚入っているのはやや無理している感がある点で個人的には気になる部分はありますが、今後のエスパーの形を一つ示している素晴らしい構築となっています。




このようにやはり黒系ミッドレンジの勢いそのものは以前として衰え知らずといったところですが、《食肉鉤虐殺事件》がなくなったことで明らかにカード選択に差が出てきており、今後ますますそういった変化が出てくるであろうと思います。これまで見なかったカードが見られるようになってきており、今後さらにどのようなカードが新しく使われるようになるのか変化が楽しみです。

スポンサーリンク

10月2週目:《食肉鉤虐殺事件》禁止

いつも通りイベントを見ながらメタゲームを追っていこうと思っていたのですが、今回発表された禁止改定があまりにも重要なのでそちらを避けては通れません。

それは《食肉鉤虐殺事件》の使用禁止です。

スタンダードにおける圧倒的なまでの高額神話レアカードが禁止されたということに対してはあまり歓迎されることではありませんが、黒があまりにも高い使用率を占めているので何らか禁止を出すこと自体は理解できなくもないといったところでしょうか。(余談ですがモダンの禁止理由に関してはかなり斬新ですね。。)

《食肉鉤虐殺事件》は長きに渡り小型クリーチャーに依存するデッキに対して大きな抑止力として働いていたので、そういったデッキに対しては大きな朗報と言えます。特に白や赤といったアグロカラーにとってはチャンスが回ってくるかもしれません。


・・・と言いたいところですが、この禁止改定によって大きくメタゲームが変わるかと言われると個人的にはやや懐疑的に思っています。

最近の黒の流行は凄まじかったこともあり、黒系同士に対しては無駄カードとまでは言わないもののそこまで有効ではない《食肉鉤虐殺事件》はメインに積まない黒いデッキも結構な数見受けられていました。特に黒単以外にとってはメインデッキに他に積みたいカードも多い中でこのカードが抜けたことが致命的かと言われるとそこまでではない印象です。

《食肉鉤虐殺事件》がなかったとしてもアグロデッキが活躍するために乗り越えないといけないカードは上記のように他にも多岐に渡っており、正直アグロが今回の禁止改定で活躍できるようになるかと言われると疑問符が付くと言わざるを得ません。特に《黙示録、シェオルドレッド》は大きな壁として立ちふさがっています。(恐らく《黙示録、シェオルドレッド》を禁止にしなかったのは最新弾のカードだからという理由なのだろうと個人的には思っています)


とは言え全く影響がないということもなく、特にメインボード戦においてはクリーチャーの横並べ戦略が否定されるようなことにならなくなったというのはデッキ構築を考える上で大きな違いとなります。例えばバントトークンのようにひたすら横に並べるようなデッキは《食肉鉤虐殺事件》により存在を否定されていたといっても過言ではなかったですが、そういったデッキにも以前よりチャンスが回ってきたことは間違いありません。サイドボードだと《危難の道》というカードがあったりはしますが、メインからすんなり入る《食肉鉤虐殺事件》が消えたのは大きな違いです。



結果として黒がTier1を席捲し続けるという構図は大きくは変わらないと思われますが、黒以外のデッキに対してのチャンスは少し広がったという形になるのではないかと思います。ただカードの選択肢が狭い黒単に関しては少し立ち位置を落とすかもしれないように感じます。



そもそも「団結のドミナリア」には初見でわかるレベルで黒を強化するカードが多く、それをわかってリリースしたはずと考えると少なくても兄弟戦争が入るまでは現状のままで様子見かと思っていました。そのためこのタイミングの変更は個人的には予想外でしたが、いつか《食肉鉤虐殺事件》が禁止される可能性がありそうと考えていた方は少なくなかったことでしょう。

この禁止によってどのようにメタゲームが変化するのか、また来週以降も追いかけていきたいと思います。

スポンサーリンク

9月4週目:デッキ構築の工夫が光る上位デッキの数々

今週もMOのイベントを中心にメタゲームを確認していきます。

今週は2回分(スタンダードチャレンジとショーケースチャレンジ)の16デッキ分です。

どうしても集計数が少ないと多少偏ることもあると思います。ラクドスサクリファイスがやや目立つものの、基本的にメタゲームそのものにはあまり変化はないと言っても良いでしょう。しいて言うならば純粋な黒単のミッドレンジはやや数を減らしてきているような印象は受けます。

研究が進むにつれて幅がせまくなりがちな単色はやや分が悪くなってきていると言っても良いかもしれません。

数がやや多いラクドスサクリファイスですが両TOP4(=8デッキ)に絞って話すと1つしか入賞しておらず3位どまりで、結果としては勝ちきれないという形になりました。

それでは、上位のデッキについて細かく見ていきます。

ショーケースチャレンジ優勝のエスパーミッドレンジ。普通のエスパーミッドレンジかと思いきや、大方のエスパーミッドレンジとは大きな相違点があります。

それは《策謀の予見者、ラフィーン》を不採用とし《絶望招来》を4枚採用するというところに大きく現れています。《策謀の予見者、ラフィーン》を抜くことで《切り崩し》をあまり有効に使わせないといった意図もあるものと思いますが、他にも全体的に《黙示録、シェオルドレッド》を入れずにクリーチャーの大半が除去に(疑似的なものも含め)耐性を持っているものを揃えて採用するように徹底した構成になっていることが特徴的です。

他にもメインから《勢団の銀行破り》が4枚入っていたり《絶望招来》も含め全体的に消耗戦に強くゲームレンジを中~長期的に見た構成になっているのは明らかでしょう。そうすることで黒系ミッドレンジ相手にデッキ構造上有利を取れるようになっており、非常に工夫されたデッキリストになっています。

その分序盤の立ち上がりが遅めでアグロには弱い構成にはなっていますが、現在のメタゲーム的に理に叶っているのは間違いなくそれが今回の結果をもたらしています。

ショーケースチャレンジ準優勝のジャンドミッドレンジ。と言っても基本的にはラクドスミッドレンジをベースとしており《太古の番人、ネマタ》《豪火を放て》の2枚のために緑がタッチされている形になっています。

《太古の番人、ネマタ》はトークンが相手の《ヴェールのリリアナ》の餌になったりと消耗戦に強い側面がありますが、何より厄介な《しつこい負け犬》《魅せられた花婿、エドガー》《夜明けの空、猗旺》といった除去に耐性を持っているクリーチャー相手に特に有効に働くのが優れているところです。これらの《魂転移》くらいしか根本的に対処できないクリーチャーも《太古の番人、ネマタ》がいると後腐れなく対処できるので《夜明けの空、猗旺》が増えている現環境において活躍が期待できる一枚です。

《豪火を放て》は《鏡割りの寓話》《婚礼の発表》はもちろんですが《勢団の銀行破り》に触れる点も大きく、現環境ではかなりの確率で1:2枚交換が期待できるカードです。特に《勢団の銀行破り》はあまり《削剥》のような用途の限られるピンポイントのアーティファクト破壊でカードで対処したいカードではありませんし、サイドに追加で2枚取っていることからもこのために緑をタッチしているという意思の表れが見てとれます。それほどこのカードを重要視しているということでしょう。

こちらはスタンダードチャレンジ優勝のボロス報復招来

ボロス招来は《報復招来》から《産業のタイタン》を釣るのがトレンドでしたが、このデッキリストでは《産業のタイタン》を廃止して安定性を上げ《報復招来》に依存しすぎない構成になっているのが大きな特徴です。

特に《産業のタイタン》型は引いたら捨ててしまえば良いと言えど《報復招来》以外で場に出すことがほぼ不可能なのが難点でしたが、そういった無理をせずに《夜明けの空、猗旺》で時には普通に場に出せるようになっていることで墓地を封じられたとしても勝ち筋をしっかり確保できるようになっており《報復招来》無しでも勝てる構成になっています。

そして2マナ域に《ラフィーンの密通者》を採用しており《夜明けの空、猗旺》の効果も使いやすくなっています。これも含めて普通に2ターン目から毎ターンクリーチャー等のパーマネントを展開していくだけでも普通に戦っていけるようになっていますので、従来の構成より安定感は大きく上がっています。

墓地対策は割といずれのデッキでも意識してサイドボードに置かれていたりするので、あまり《報復招来》に依存しすぎないほうが現環境においては正解と言っても良いかもしれません。

こちらはスタンダードチャレンジ準優勝のジェスカイコントロール。コントロールは現環境で少数派ですが個性的なリストになっています。

コントロールはいくら盤面を捌いても《勢団の銀行破り》やプレインズウォーカーを許してしまうとズルズル負けてしまうというのが現環境における典型的な負け方の一つですが、自身も《勢団の銀行破り》をフル採用しつつ《削剥》をメインから3枚も取っていることでそういった展開を防ぐよう意識されています。

《時の火炎嵐》は5点で倒せないクリーチャーが殆ど存在しない上に、厄介なプレインズウォーカーも巻き込んで落とせるので現在のリセットスペルとしては非常に頼りになる存在です。これがリセットスペルとして現環境で最優先になるのはやはり間違いありません。

他にもサイドの《不朽の天使》がナイスサイドボードとして目を惹きます。これは自身が被覆を持つことでこういったクリーチャーが単騎になりやすいデッキにおいて苦手な《絶望招来》や《ヴェールのリリアナ》の生け贄効果をシャットダウンさせることができます。ジェスカイコントロールには単体のクリーチャー除去は概ねサイドアウトするでしょうし、サイド後も残るであろう《絶望招来》《ヴェールのリリアナ》は効かないということから生存確率はかなり高くなります。バレると弱いとは言え、あえてサイドインせず相手のサイドを惑わせる点でも役割は充分はたしていると言えます。



このように今週も上位デッキは揃いも揃って個性的なチューンが光っています。メタゲームそのものは大きく変わっていなくても工夫を重ねることで勝利という結果に繋がっているように感じられるのは非常に面白いですね。


続けて、他に筆者が面白いと感じたデッキについて取り上げて今週は終わりとしたいと思います。

エスパーミッドレンジであるのですが、まさかの《アーボーグのラタドラビック》が採用されている構築。スタンダードチャレンジでTOP8入賞しているリストです。

《アーボーグのラタドラビック》そのものは確かに決して悪くないスペックですが、これまで見ることはほぼありませんでした。このデッキはこのクリーチャーが輝くようにという意味でも《スレイベンの守護者、サリア》《輝かしい聖戦士、エーデリン》と攻撃に向いた伝説クリーチャーを増やした構築になっています。

《スレイベンの守護者、サリア》の効果は自身にもそれなりに効果が波及しようなのは気になりますが《スレイベンの守護者、サリア》のため(と思われます)に打ち消しを《かき消し》ではなく《呪文貫き》にしたりという工夫は見て取れます。

伝説クリーチャーは基本的に能力持ちしかいないので《アーボーグのラタドラビック》のコピーである2/2状態でも充分に強く、非常に面白い構成になっているデッキです。

スポンサーリンク

9月3週目:黒い環境継続ながらも細かなトレンドの変化

今週はMOチャレンジを執筆時点から遡って4回分を集計した結果を持ってメタゲームを確認していきます。

この4回分のTOP8デッキ(=32デッキ)を集計した結果が以下の通りです。

入賞回数の多いデッキはやはり黒いミッドレンジがほぼ独占状態といったところ。エスパーとグリクシスが若干多く、これは打ち消し以外では対処し辛いカードが多い環境故に青にメリットがある環境といったことを示唆していると考えても良いかもしれません。

このように黒いデッキが相変わらず多い状況ですが入賞したデッキを見るとこれらの黒系ミッドレンジにもデッキ構築のトレンドの変化が見受けられます。

グリクシスミッドレンジは《穢れたもの、ソルカナー》《絶望招来》のような重い5マナ域を廃し、インスタントタイミングで動けるカードを少し多めに取って動きやすい構築にしているタイプをよく見かけるようになっています。

軽いインスタントが多めに入っているので相手の動きを捌きやすく現スタンダードの必殺技クラスのカードが多数存在する5マナ域には《復活したアーテイ》を合わせ、盤面の優位を握っている間に倒し切るというゲームプランが取りやすいといった構成になっています。

《絶望招来》を採用したグリクシスも入賞してはいますが、このような玄人好みなリストも良く見かけるようになってきているのはやはり印象深いところです。

ジャンドミッドレンジは《ギックスの残虐》《産業のタイタン》のようなタイプよりも最近は《作業場の戦長》を軸にしたデッキが明らかに増えています。

最近は《かき消し》や《復活したアーテイ》といった打ち消しが結構増えており、重いところを中心に戦うのはやや分が悪くなってきています。そういった背景もありジャンドはラクドスミッドレンジをベースとしながら、序盤にロスしたライフも取り戻しつつ除去に強い《作業場の戦長》と現環境では概ね2対1交換が期待できる《豪火を放て》を中心にカードパワーもありつつ相手の展開に遅れを取らないようバランスを取った形が主流になりつつあります。

《作業場の戦長》が増えているから《魂転移》や《ローナの渦》が増えてきているという印象もあるくらい対処に困る優秀なクリーチャーで、ジャンドはこの形が暫くは主流になっていくのかもしれません。

エスパーミッドレンジは《策謀の予見者、ラフィーン》の都合上2マナ域のクリーチャーが重要なデッキですが、その2マナ域を埋める存在として最近主流になっているのが《敬虔な新米、デニック》です。《しつこい負け犬》は確定としても他に何を採用するのか悩ましいところでしたが、このカードはその指定席を確保したような感があります。

2/3絆魂という優秀なスタッツを持ちながら《墓地の侵入者》の墓地取り除きによりチクチクとドレインしてくるムーブを無効化してくれる環境にマッチした能力を持っています。対抗馬となる《ファイレクシアの宣教師》は《墓地の侵入者》によりキッカーが使えないことも多々あるので、現環境には《敬虔な新米、デニック》のほうがマッチしているのは間違いないでしょう。伝説のため4枚は採用し辛いので、2枚程度の採用にし他のクリーチャーを2枚入れることで2マナクリーチャーを8枚は確保するようになっています。《ネファリアのグール呼び、ジャダー》は3ターン目《策謀の予見者、ラフィーン》から謀議を2回誘発させられる点で中々に面白い選択です。こちらも伝説ですから《敬虔な新米、デニック》とデッキ構築の制限的な意味で相性が良いです。



このように黒い環境は変わらずな中で黒いデッキのトレンドの変化が感じられることが今週の結果となりましたが、黒いデッキ以外もポツポツ入賞はしています。中でも個人的に注目すべきなデッキとしてピックアップするならバントフェスティバルです。

《収穫祭の襲撃》とトークン戦略を軸にしたバントフェスティバル(バントストームのほうが適切?)。前から存在していたデッキタイプですが完成度がかなり上がってきた印象で、今回は入賞デッキの1つに食い込んできています。

《ドーンハルトの主導者、カティルダ》が絡んだときには最速4ターン目から《収穫祭の襲撃》を打てるようなブン回りを備えたデッキで、盤面の展開力という点では他のデッキより頭一つ抜けた強さを持っています。《歓迎する吸血鬼》もあるのでリソースが枯渇し辛く繰り返し展開していくパーマネントの数で押しつぶしていくように戦います。

画期的なカードとしては《移植された自我》でしょう。バントカラーは特に《黙示録、シェオルドレッド》がきつく、除去する手段が限られるのが難点でした。頼みの《放浪皇》もつっ立ってるだけで強い《黙示録、シェオルドレッド》は警戒されて攻撃してこないこともしばしば。この弱点を埋めてくれるのが現環境においては特にありがたいところです。



トークンクリーチャーを横並べする都合上《食肉鉤虐殺事件》という弱点があるのでこのデッキが本当に黒いミッドレンジに有利かと言われるとまだわからないのが本音ですが、少なくても戦えるデッキなのは間違いなく黒いデッキ以外だと注目して良いアーキタイプだと思います。

スポンサーリンク

9月2週目:真っ黒なスタンダード環境

国内イベントとして今週はジャパンオープン2022が開催されました(個人的には所要で出れませんでしたが参加したかったですね)

今週はこのイベントを中心にメタゲームを追っていきます。

本イベントのメタゲーム割合とアーキタイプ毎の勝率はこちらにまとめていますが、基本的にメタゲームそのものは先週からあまり変化はなく黒単、ジャンド、グリクシス、ラクドス、オルゾフ、エスパーととにかく黒を含むデッキが圧倒的なまでに環境を占めている真っ黒環境であることを如実に示しています。

この状況は参加者も全員わかっていたであろうことですが、その上でどのようなデッキ選択や構築に工夫をしてきたのかといったところが本イベントの見どころと言っても良いでしょう。

まずは上位入賞のリストを見ていきます。

見事優勝に輝いたエスパーミッドレンジ。リスト自体は比較的素直な構成といった印象ですが《邪悪を打ち砕く》がメインに4枚採用されているところが注目ポイントであり、かつメタゲームを適切に把握されているところを感じられる素晴らしいポイントとなっています。

比較対象となるカードは2マナ万能クリーチャー破壊である《冥府の掌握》ですが、現環境でピンポイントクリーチャー除去を当てたいカードは基本的に《黙示録、シェオルドレッド》がメインターゲット。他に《策謀の予見者、ラフィーン》《穢れたもの、ソルカナー》《ウィンドグレイスの魂》《セラの模範》《キキジキの鏡像》そしてリソースはロスしますが《墓地の侵入者》あたりに対して使うことになるのが大半です。《しつこい負け犬》に対しては効かないですが2点ロスというデメリットも付いている《冥府の掌握》をできれば《しつこい負け犬》に使うのは避けたいということから考えても《冥府の掌握》で除去したいカードはほぼ《邪悪を打ち砕く》でカバーできているということになります。(《墓地の侵入者》は裏面なら対処可)

加えてエンチャント破壊は《鏡割りの寓話》の2章を待たずに対処できたり《婚礼の発表》《ギックスの残虐》を早めに対処したりと本環境では欲しいケースもあるので、デメリット付きの《冥府の掌握》よりも《邪悪を打ち砕く》を優先して入れるというのは環境的に理に叶った選択と言って良いでしょう。

現環境が大きく変わらないのであれば白を含むデッキの除去カードとして《邪悪を打ち砕く》は定番になってもおかしくないカードです。


またエスパーの利点として打ち消しを取れることが挙げられます。これはグリクシスにも同じことが言えますがこの環境でゲームのキーとなるマナ域の1つが5マナで《絶望招来》《夜明けの空、猗旺》《穢れたもの、ソルカナー》といったように打ち消し以外では対処できない(もしくは損をする)ようなカードばかりになっています。このあたりのゲームに大きく影響する5マナ域を打ち消しという最も安全な方法で対処できるのは現環境の青の強さの1つです。

準優勝となったのは黒単ミッドレンジ。わかりやすい動きからも非常に人気のあるアーキタイプです。

こちらのリストでやや特徴的なのは《セレスタス》と《隠し幕》が採用されていることでしょう。黒単はマナベースが安定しているもののミュラランドもなくサイクリング付きの土地を使わない点や《鏡割りの寓話》のようなルーティングもないことから中盤以降のマナフラッド耐性が低いという点は他の黒系ミッドレンジと比較すると劣っている部分です。

《セレスタス》はそのマナ加速といった点以上にルーティング能力を強くみて採用されているのではないかと思います。《セレスタス》のルーティング能力は前述のように黒単の弱い部分を緩和してくれる点として優秀です。あまり多く入れられるカードではないですがアーティファクトは黒いカードでは対処し辛いですし、4枚フルの《絶望招来》や《しつこい負け犬》の奇襲等で意外とマナ食い虫なところがある点でも役に立つカードです。

《隠し幕》は相手の強いカードを手札から取り除く仕事をしながらも序盤は環境に溢れている《しつこい負け犬》に対しての良い壁になってくれるカードで序盤から攻めるというよりは中後半を制するほうに向いたカードです。他に生き残れば勝ちである《黙示録、シェオルドレッド》を除去されてもおかわりができるよう4枚採用されているあたり、ゲームの中後半に若干ウェイトを置いた構成になっているように思います。

概ね短期決戦にはなり辛いミッドレンジ対決だからこそ、そういった細かい点で少しでも差をつけた部分が勝敗を分けたこともあったのではないかと思います。

TOP4のジャンドミッドレンジ

前週に紹介したデッキタイプでもあるので細かい動きの説明は割愛しますが、本リストは《ギックスの残虐》を4枚フルで使用。そして《ギックスの残虐》から持ってくる想定で多くのカードが1枚挿しされており、より《ギックスの残虐》に傾倒した構成となっています。

その分動きが大振りになりやすいですが、特に打ち消しを持たないタイプの黒系ミッドレンジには有効打となりやすくこのカードが黒系ミッドレンジの海において大きく活躍したことがTOP4という結果を導いたものと思います。

こちらはTOP8のグリクシスミッドレンジ。いわゆる吸血鬼タイプではなく《穢れたもの、ソルカナー》がフルで入っていることが特徴的なリストになっています。

《穢れたもの、ソルカナー》はしばらくすると相手に寝返ってしまう弱点はあるものの都合3回アタック+各種能力誘発により相手としては除去カードを切って対処してくる可能性も高い上、伝説な点を活かして賞味期限の切れた《穢れたもの、ソルカナー》を伝説ルールにより2体目を出して生け贄に捧げることも可能なため、デメリットが致命的になるといったケースは起こり辛いカードになっています。そのためこのカードをフルで採用しこれでゲームを決めるという構成を取っています。

そして《復活したアーテイ》や各種打ち消しを多めに採用し相手のクリティカルなカードを盤面に出る前に対処できる構成になっており、エスパーミッドレンジの項でも述べたように打ち消し以外で対処し辛いスぺルをしっかりカバーできるというのもグリクシスの特権であり、こういった受けの広さからも人気を集めるのは自然な流れなのかもしれません。




このようにTOP8は全て黒絡みで占められていますし、メタゲームブレイクダウンを見てもほぼほぼ黒いデッキばかりといった状況になっています。デッキストに細かな工夫は感じられるものの革新的なデッキは登場しなかったといった結果になっています。

黒系ミッドレンジの特徴を端的に言い表すと・・・


「《絶望招来》という決め技を武器に序盤から軽快にクリーチャーで攻めて行く動きも強力な安定した動きが魅力の黒単

「《魅せられた花婿、エドガー》《放浪皇》《夜明けの空、猗旺》といった盤面を制圧していくことに優れるオルゾフ

「オルゾフをベースに、盤面の強さをやや犠牲にして打ち消しと《策謀の予見者、ラフィーン》により盤面外の対応力と手札ルーティングや攻めといった要素を伸ばしたエスパー

「《鏡割りの寓話》《死体鑑定士》《穢れたもの、ソルカナー》に加えて打ち消しを持ちアドバンテージ獲得手段と対応力に優れるグリクシス

「《鏡割りの寓話》《ギックスの残虐》《産業のタイタン》と長期戦におけるデッキトップの捲り合いやカードパワーに優れるジャンド


といったような感じで、3マナ域と5マナ域の違いがそれぞれの特徴を分けているといっても過言ではないくらいそのマナ域は現在のスタンダードを表す重要なラインとなっています。どのカラーが優れているとは一概に言えませんが、メタゲームの変化に合わせた今後の占有率の変化には注目したいところです。

現在は完全に黒が席捲しているスタンダードですが、新環境のスタンダードはメタが早めに回っていくのが通例です。真っ黒環境はすぐに変わるとは現状は思い辛いですが、革新的なデッキの登場に期待したいですね。

スポンサーリンク

9月1週目:新スタンダード開幕

団結のドミナリアがMTGアリーナに先行リリースされ、MTGアリーナ上では新しいスタンダードがついに開幕しました。正直前環境が長すぎてスタンダードがやや飽きられていた感もあったので、久々にスタンダードらしい熱を取り戻したというところでしょう。

注目のデッキとそれに関する新カードの紹介はこちらの記事で扱っていますので、この記事では新スタンダードを使って早々に開催された参加者153人のイベントである「Crokeys Dominaria United」の入賞デッキからメタゲームを追っていきます。

リリース早々の全参加者のメタゲーム分布はあまり参考にならない感があるので、今回は上位デッキを中心に取り上げていきたいと思います。

まず上位8人のデッキ分布を見ると「ジャンドミッドレンジ*2、ジェスカイコントロール、ラクドスサクリファイス、ラクドスミッドレンジ、グリクシスミッドレンジ、エスパーミッドレンジ、白単アグロ」といった分布になっています。とにかく真っ黒な環境といったのは別記事でも触れていた通りで上位陣も圧倒的に黒くTOP8以外でも圧倒的に黒が多い環境になっています。ここまで新環境早々に色が偏るというのも中々珍しいですね。


そんな黒いミッドレンジが多数存在する中で優勝、準優勝を成し遂げたのはどちらもジャンドミッドレンジでした。

優勝:ジャンドミッドレンジ
準優勝:ジャンドミッドレンジ

ややリストは異なりますが《鏡割りの寓話》のマナ加速や《ギックスの残虐》の3章効果等を駆使して《産業のタイタン》を着地させることを狙って行くという点では共通しているデッキです。


優勝者のリストは1枚挿しが多いのが目につきます。基本的に伝説カードが一枚挿しされており重ね引きをケアしたというのが主な理由だと思われますが《怪しげな統治者、スクイー》《ヴォルダーレンの末裔、フロリアン》といったクリーチャーはデッキ的にやや噛み合わない印象なので採用理由は気になるところです。

そのような1枚挿しが多いデッキの中にあって《墓地の侵入者》が4枚入っているのはもう一つの特徴と言って良いでしょう。同型対決においても活躍するこのクリーチャーが4枚入っていたことが決勝で役に立ったのではないかというのは想像に難くありません。また《ヴェールのリリアナ》に弱いという弱点はあるものの《しつこい負け犬》が環境に増えて黒いデッキなら大抵役に立ってくれる存在です。

準優勝のリストは比較的素直な構成で《麒麟の教え》《ラトスタイン翁》といった切削手段と《ウィンドグレイスの魂》で土地を拾ってのマナ加速や《ギックスの残虐》といったようにやりたいことが明確になっている構成となっています。


ジャンドミッドレンジは《産業のタイタン》がミッドレンジデッキ全般に強く《消失の詩句》が環境から消えたことで盾カウンター付きの対処が困難になったこともより活躍しやすいフィールドになった要因と考えられます。両者ともに黒系ミッドレンジの海を泳ぎ切っての決勝対決ということですからやはり黒いミッドレンジに強いデッキと考えて良いでしょう。

TOP4入賞となったのは正直意外と思える白単アグロです。この黒い環境においてここまで上がってこれたのは素直に驚きました。

一つの要因として黒系ミッドレンジの中でも先に取り上げたジャンドミッドレンジに対しては比較的有利に戦えるという点はあるでしょう。ジャンドミッドレンジは中後半に重きを置いた構成になっており序盤には難を抱えるデッキなので、その隙を突けるのはアグロのメリットです。

採用カードもいくつか独特に思える点があり《神憑く相棒》《永岩城の修繕》あたりは特に目につくところでしょう。《毅然たる援軍》が入っている点からも基本的にはクリーチャーを横に並べるという点を意識しているようで《婚礼の発表》の裏面や《剛胆な敵対者》から一気に畳みかけれるようになっています。また横並べ戦略は《ヴェールのリリアナ》を少し意識してのことなのかもしれません。

《永岩城の修繕》は《神憑く相棒》が捨て得というのもあると思いますが《剛胆な敵対者》を捨てることで追加コストを2回以上払いやすく一気に自軍を強化できることもメリットとしてありますので横並べ戦略にはマッチした一枚です。

ジャンド以外の黒系ミッドレンジは全体的に厳しいマッチアップになりそうですが、ジャンドが増えてくるとチャンスがありそうなアーキタイプです。

もう一つのTOP4として異才を放つのがこのジェスカイコントロールです。デッキリストが異才を放ちすぎていて、このような構築をこの短期間で考えるなんて個人的には感嘆の声しか出てきません。

勝ち手段が相当に少ない気の長いデッキになっていることが特徴で《放浪皇》と《夜を照らす》くらいしか直接勝ちに行く手段はありません。《夜を照らす》は《放浪皇》で少し相手のライフを減らした後に《日没を遅らせる者、テフェリー》で《永久の水連》を起こしてX=10以上で唱えるというのがフィッシュ手段です。

もう一つは《未来の目撃》も勝ち手段と言える存在で、これが2枚入っていることでお互いをライブラリーに戻すことでこちらはライブラリーアウトしないといった工夫がなされています。

そういった気の長い勝ち手段にたどり着くまでは基本的に相手のリソースを枯らしつくしてひたすら負けないように立ち回るデッキで《時の火炎嵐》で自分のプレインズウォーカーを守りつつ全体除去したり《告別》で一掃してひたすらリセットしていきます。《未来の目撃》があることで繰り返し《告別》を打てたりするので、相手を戦意喪失させ投了してもらうというのもある意味勝ち手段です。

マナを多く生みやすいこともありリソース回復手段として《銀の精査》が採用されています。一度リセットで時間を稼げればこれで一気にリソースを突き放してしまうことができます。ミッドレンジ相手の《告別》はやはり強力ですし遅めの環境においてコントロールというのは一つの強みがあります。

素晴らしいデッキだと思いますが個人的には正直あまり対戦相手にしたくない感もありますので流行らないことを願います(^^;)



これ以降の上位デッキはほぼ黒系ミッドレンジで別記事でもある程度触れているのでここでは触れませんが、このように黒系ミッドレンジ環境を意識したデッキが最上位に来ているといった結果になっています。しばらく黒いミッドレンジは猛威を振るいそうですが、こういったデッキで黒系ミッドレンジに対抗するというアプローチも有効ですし、今度も何らかミッドレンジに対するアンチデッキは検討されていきそうです。

スポンサーリンク

7月1週目:環境末期のアグロデッキ

そろそろ9月リリースとなる「団結のドミナリア」の足音が聞こえ始める時期となってきており、間もなくスタンダードは大きなローテーションを迎えることになるこの環境末期の中、最近はあまり活躍していなかったアグロデッキが環境の中心とまでは言わずとも活躍を見せています。

具体的には2種類ありますが、まずはボロスアグロです。

白の優秀なクリーチャーと赤の速攻クリーチャーや火力を組み合わせ、白単アグロ以上に前のめりのアグロデッキになっているのがボロス型です。ずっとスタンダード環境にひっそり存在していた印象のあるアーキタイプですが、最近見かけることが増えてきています。

白単と比べると《スレイベンの守護者、サリア》《精鋭呪文縛り》といったクリーチャーはサイドに回されており《轟く雷獣》《血に飢えた敵対者》といった速攻クリーチャーや《乱動の噴出》《火遊び》といった火力にスロットを割いていることからも分かる通り、相手の妨害よりも相手を早く一刻も早く倒す方面にシフトしたカード選択になっています。

このような構築は速攻デッキに対するカードが下がっている相手に強力なだけでなく《食肉鉤虐殺事件》といったカードでクリーチャーを一掃されても速攻クリーチャーで攻撃を継続したり、ある程度ライフを削れば火力で止めを刺せるようにもなっているので最近の《食肉鉤虐殺事件》を中心としたミッドレンジやコントロール相手には白単以上に理に叶った戦い方と言えるかもしれません。

ゲームの決着が早いデッキなので、MTGアリーナのラダーのランク上げにも向いているデッキになっています。

もう一つがMOチャレンジを制したラクドスアグロ。正直このデッキタイプがそこまで結果を残すとは想像すらしていませんでした。

基本的には前述のボロスアグロの白が黒になったようなデッキで、アグロに関わらず採用されている《鏡割りの寓話》と《税血の収穫者》のコンビもあって相手のクリーチャーを捌くことに長けているためクリーチャーデッキ相手に強く《しつこい負け犬》の奇襲といった要素によりボロスよりは粘り強く受けを広く戦えるようになっています。その分《光輝王の野心家》《有望な信徒》といったクリーチャーより序盤から攻める力は控えめになっているのでどちらも一長一短といったところですが、個人的には環境的に強い《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》が使える黒のほうが好みです。



現在のスタンダードも残り2か月程度となりましたが、多様性のある環境ということもあり残り期間はローテーション落ちして使えなくなる好きなカードを使って最後まで楽しむのも良いですね。

スポンサーリンク

6月2週目:ジェスカイの隆盛

ここにきてまたスタンダードのメタゲームは動きを見せています。

まずは、1週間飛んだこともあり2週間分のイベント6回分(MOチャレンジ*4、オンラインイベント1、晴れる屋スタンダード神決定戦1)のTOP8計48デッキを集計した結果ですが以下になります。

特にMOのイベントは参加者の顔ぶれがそこまで大きく変わらないという面もあって同じデッキを使った使用者が複数回入賞していることが多いというのはありますが、それを鑑みてもジェスカイ日向は明らかに最近大きな活躍を見せているアーキタイプになっています。

SNCチャンピオンシップ優勝という結果を残したことでメタゲームに帰ってきたジェスカイ日向ですが、ここにきてまたメタゲームのTier1と言える位置まで浮上してきました。

流行していたグリクシス吸血鬼やエスパーミッドレンジなど盤面を掌握することを意識したデッキタイプに強く、環境が全体的にスローダウンしてきたことによりこのデッキが活躍しやすい状態になっているのは間違いないでしょう。

相変わらずグリクシス吸血鬼エスパーミッドレンジも一定の活躍は見せていますが、今週はこのジェスカイ日向に完全に抑えられてしまっているような結果になっています。いま意識しないといけないのはエスパーよりもジェスカイと言っても良いかもしれません。


そして、注目なのはそういった環境の変化を見据えて選択されているのであろうアーキタイプが少し今回の結果にも顔を覗かせていることです。それは白単アグロです。

グリクシス吸血鬼やエスパーミッドレンジだったりとあまり得意な相手ではないデッキがずっと環境を席捲してきたので殆ど見なくなっていた白単アグロですが、ジェスカイカラーのデッキには強く今回の集計でも上位に食い込んでくるくらいにまた活躍を見せ始めています。

実は上記の集計では白単アグロと集計している中に打ち消しをタッチしたタッチ青だったり、除去等をタッチしたタッチ黒だったりといったデッキも含まれていますが、殆ど白単アグロと同じ構成をしていたので便宜上そのあたりのデッキは白単アグロと集計しています。

こういったように環境の変化をいち早く察知して使うデッキを変えるのもいまの環境で勝つためには重要な要素と言えそうです。少し前はエスパーミッドレンジや完全に頭一つ抜けていた形になっていましたが、環境理解が進むにつれてこうして色々なデッキが活躍しはじめているあたり現在のスタンダードはやはりバランスの取れた環境になっているというのを示している感じがしますね。

スポンサーリンク

5月4週目:個性的なチューンも光った日本選手権

今週は国内大型イベントである日本選手権が開催されました。本当に久しぶりとなるテーブルトップイベントで、テーブルトップ特有の対面に相手がいることの緊張感や雰囲気だったり、時には能力の勘違いや効果の誘発忘れだったりとMTGアリーナでは発生しえないようなことも起こっていて、MTGアリーナばかりで忘れがちだったテーブルトップの良さも垣間見える良い大会になったように感じました。

日本選手権のメタゲームはこちらの公式で掲載されているように相変わらずエスパーミッドレンジが約3割とトップではあったものの、やはりSNCチャンピオンシップの影響を大きく受けて変化も見られる内容になりました。TOP8のデッキどころかTOP16まで見ても結果を残したアーキタイプのバリエーションが豊かであることがわかります。

優勝は上記のオルゾフミッドレンジ。エスパーに押されて純正2色はあまり見かけなくなったアーキタイプですが、リストにも個性的なポイントがいくつかあり特にクリーチャーの選択には目を惹くところです。

まずは2マナの《シルバークイルの口封じ》が4枚入っているところで、最近のトレンドである《しつこい負け犬》を押しのけてまでフルで入っています。リスト非公開制であったにも関わらず4枚というところに強い意志を感じますね。最近異常とも言える採用率である《鏡割りの寓話》を指定するだけでも結構なヒット率が期待できますが、他にもとにかく3ターン目のアクション(《婚礼の発表》や《策謀の予見者、ラフィーン》)が強い環境なので確かに環境的にも強いカードです。《傑士の神、レーデイン》も特にジャンドに対して《エシカの戦車》や《豪火を放て》といったカードに対して効果的に働いたことでしょう。

《ヘンリカ・ダムナティ》は特に生け贄効果がトークン祭りのこの環境でそこまで強く働くような感じはしないので、《軍団の天使》よりもこのカードを採用した理由は気になるところですね。


やはりオルゾフ2色になるとマナベースが強いというのが最も強力なところでしょうし、特に長期戦のトーナメントになるとそういった安定性による恩恵も少なくなかったことでしょう。何れにしてもオルゾフがまだまだ戦えるデッキであるということは証明された形になりました。


ですがトップメタのエスパーミッドレンジも今回結果を残したデッキは個性的なカードが採用されており、今後のトレンドになる可能性も秘めた内容となっています。

《風変わりなペット》。まさかこのカードががっつり採用されるデッキが結果を残すとは予想もしていませんでした。他にTOP8入賞されたエスパーミッドレンジにも採用されているので、今回勝ったエスパーミッドレンジの鍵はこのカードだったということでしょう。

ブロック不可の魚クリーチャーに+カウンターを載せて攻撃していくというのも純粋に強力ですが、何と言ってもインスタントなので受けのプレイを肯定してくれることが特徴になっています。実際このリストは打ち消しや《幽体の敵対者》と言ったカードまで揃えていることで《光輝王の野心家》《策謀の予見者、ラフィーン》の黄金ムーヴから受け流して勝つというのはまさに先手必勝パターンと言えますが、そういった攻めは特に中速デッキに効果的な戦法です。

実際いまのスタンダード環境は中速~低速寄りにシフトしつつあり、このリストに限らずそういった戦いを意識したデッキ選択やカード選択が見受けられるようになってきています。そしてそういった環境を読み取って長期戦に強いコントロールデッキを手に取るプレイヤーが増えてきているのも現在の特徴の1つと言えそうです。

こちらは準優勝となったイゼットコントロール。遅いデッキに強いデッキといえばやはりイゼットカラー。こちらも最近あまり見なかったアーキタイプです。そしてこのリストでは更に長期戦最強クリーチャーと言える《船砕きの怪物》が堂々の3枚採用と長期戦で負けないといった意思を強く感じるリストになっています。

《鏡割りの寓話》はこういったコントロールでも4枚入るカードになっており、現在は赤を使うデッキなら誇張抜きでとりあえず4枚入れておけ状態のカードになっていますね。生み出してくれる宝物は《船砕きの怪物》をキャストする助けになりますし、どの章もどのデッキでも本当に強いです。

そしてこのリストをそのままコピーしたと思われるデッキも別のオンライントーナメントで優勝していたりしますので、やはり環境的にも強い立ち位置なのは間違いないということでしょう。このデッキもまたメタゲームに帰ってきたと考えて良さそうです。




こういったように全体的にスローな環境になってきたことを読み取り、そこに対してしっかり対策を持ってきたリストが勝ち上がっているというのが今週の結果と言えます。これでまた一つメタゲームが動いたという感じがしますし、現在のスタンダードの多様性を物語っているという感じもします。


何気に現在のスタンダード環境はあと3か月弱このまま(9月9日の団結のドミナリアまで)なのでかなり長期環境になります。今回の結果はまだまだ環境が変わりそうな気配を感じさせてくれますね。

スポンサーリンク

5月3週目:SNCチャンピオンシップ開催

現環境の行方を大きく左右するビッグイベントであるニューカペナ・チャンピオンシップが開催されました。開催前の時点ではひとまずエスパーミッドレンジが最有力であるのは間違いなく、これに対してどういったアプローチで立ち向かっていくのかどうかといったところが見どころであるといった状況でした。

ただやはりチャンピオンシップクラスの大会になるとこういった戦前でトップメタになっているデッキがそのまま勝ち上がるといったことは少ない傾向(むしろ負け組みになる傾向)にあります。メタゲーム分布としては以下になりました。

やはりエスパーミッドレンジが34%と圧倒的な第一勢力。次点でナヤルーンジェスカイストームジャンドミッドレンジとなりそこから以下は主にチームデッキで占められています。ジェスカイが数を伸ばしたのはやはりエスパーに限らずとにかくミッドレンジ環境であるという読みから選択されたものでしょう。対ミッドレンジと言えば少し前もジェスカイストーム(ジェスカイコンボ)が台頭していましたし、ここでもその構図が展開されたようです。

各アーキタイプの勝率を見てみると、やはりというべきかエスパーミッドレンジは明らかに苦戦しており、そのエスパーミッドレンジをメタったデッキが好成績を収めているという結果になっています。

結果優勝を収めたのもミッドレンジに強く最近鳴りを潜めていた感もあるジェスカイ日向デッキでした。

最近あまり見なかったアーキタイプですが《消失の詩句》が効かない《暁冠の日向》から繰り出される《マグマ・オパス》は打ち消し以外では対処できずミッドレンジ相手には特に強力な戦法です。エスパーミッドレンジは序盤からクリーチャーを出して打ち消しで蓋をするというブン回りもありはしますが、そういった展開にならない限りはエスパーミッドレンジにも有利に戦うことができます。

エスパー以外のミッドレンジには更に有利に戦えるのでこのデッキがまた活躍できる状態になったというのが今回の結果から示されたことになります。しばらく活躍していなかったデッキであっても環境分析した上であれば持ち込んでプレイするのは有効なアプローチであることを改めて教えてくれる結果になっています。

いくつか本体前にはほぼ見たことのないアーキタイプもいくつか登場しており、エスパーミッドレンジに偏ったりすることもなく結果的にTOP8全員が違うアーキタイプになったことで多様性のある環境となったことも本大会の特徴の一つとなりました。特にグリクシス吸血鬼あたりはまさかと言わざるを得ません。

吸血鬼といえば以前は攻撃的なラクドス型が存在していましたが、今回はどちらかというと若干ミッドレンジ寄りな構成をしており長期戦も戦えるような構成になっています。

特にニューカペナの街角で登場した吸血鬼である《死体鑑定士》と《欲深き者、エヴリン》にフィーチャーしたデッキとなっており、クリーチャー除去で盤面を対処しつつ両者でアドバンテージを取っていくことでジワジワと有利な状況を作り出していく戦い方になっています。特に《死体鑑定士》は《鏡割りのキキジキ》でコピーしたときに強いという点でも強力な一枚です。

そして全体的に《消失の詩句》が効かない構成を取ることで無理にデッキを歪めずにエスパーに対抗できており、まさにエスパーミッドレンジの特徴から理論的に有利なアプローチから考えてそれを実現したデッキとなっています。このあたりにチーム調整のメリットを感じることができますし、そのデッキ構築センスにも素直に脱帽です。

セレズニアミッドレンジに赤をタッチしたような構成であるナヤミッドレンジ。やはり《エシカの戦車》を始めとしたお馴染みのパワーカードが使えるのはセレズニアの強みですが、さらに赤にはお馴染みの《鏡割りの寓話》だけでなく、セレズニアでは小回りの利いたクリーチャー除去がないという欠点を補う《電圧のうねり》が入っています。《祝祭の出迎え》や《鏡割りの寓話》のトークンから宝物を出して生け贄にすることで4点ダメージが出るのが魅力的で、これにより《策謀の予見者、ラフィーン》を対処しやすいといった点でも効果的なカードになっています。

またサイドに取られている《エメリアのアルコン》はジェスカイストームに非常に効果的かつこのデッキ自身にはそこまで厳しいデメリットではないため対ミッドレンジデッキに対しても一定の耐性を持っているのはこのデッキの強みの一つと言えそうです。

ジャンドミッドレンジはデータ上ではエスパーミッドレンジに苦戦しているデッキですが、上記はTOP8に進出したリストです。結果的には予選ラウンドでエスパーミッドレンジには1回しかマッチアップしていない(そして勝利している)ようです。

《茨橋の追跡者》が4枚入っているのが特徴的なリストになっています。この環境ではあっさりクリーチャー除去で対処されてしまいがちなクリーチャー達ですが、調査持ちなので最低限の仕事はする点を重視して採用されているのでしょう。パワーが4あるので(未謀議の)《策謀の予見者、ラフィーン》を乗り越えられるという点も見逃せないポイントです。

ジャンドカラーはカードパワーは全体的に高いもののアドバンテージを稼ぐ手段が少ないですが《茨橋の追跡者》はそれを補ってくれますし《土建組一家の魔除け》も多めの3枚採用されているため後半になっても粘り強く戦えるようになっています。

最近は白を含まないデッキは相手の《婚礼の発表》によってクリーチャーサイズが大きくなり地上から攻めづらくなる展開も多いですが《豪火を放て》によって地上の攻防もサイズ負けしないように戦えるような工夫がなされています。コストが重いカードながらもサイドも含めて3枚採用。このあたりからもエスパーを意識したデッキ構築になっていることが強く伺えます。

こちらもジャンドミッドレンジながらも《闇市場の巨頭》がしっかり入っているところが珍しいリストになっています。マナ加速としてだけでなく生み出す宝物をしっかり活用するための《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》。そして何よりミッドレンジキラーとなるカードは《焼却するもの、ジアトラ》でしょう。《消失の詩句》が効かない巨大なフライヤーでありながら特には生け贄から直接本体ダメージを狙って行くことで膠着した盤面であっても相手を倒すことが可能なクリーチャーです。

ジャンドミッドレンジは他のミッドレンジと比較しても構築の幅が広いデッキで、このようなアプローチの仕方もこの環境では有効であるようです。



このようにエスパーミッドレンジに対してミッドレンジに強い構成にしたミッドレンジデッキ、ジェスカイを中心としたコンボデッキといったアプローチで結果的に多様性のある結果となったニューカペナチャンピオンシップでした。

苦戦したとは言えまだまだエスパーミッドレンジが最有力なデッキであることは恐らく変わりませんが、といってもエスパーミッドレンジを倒せるデッキは本大会の結果からもいくつか示されたことでまたメタゲームに変化は生まれそうです。

来週の日本選手権のようにこの環境のスタンダードは続いていきますので、ここからどういったメタゲームが展開されていくのか楽しみです。

スポンサーリンク

5月2週目:注目を集める2つのアーキタイプ

リリースから2週間とニューカペナの街角が環境に馴染み始めた時期になってきましたが、まずはいつも通りイベント上位デッキ(4イベント*上位8デッキ=32デッキ)を集計した結果から。以下になります。

このデータが示す結果は明らかにエスパーミッドレンジナヤルーンの2アーキタイプが突出しているということです。先週の集計でもこの2つがツートップでしたが、今週の結果は更にこの傾向が顕著になったことを示しています。

エスパーミッドレンジは従来のオルゾフと同様に《光輝王の野心家》と《軍団の天使》を入れた攻撃的なリストだったり、護法も怖くない《虚空裂き》を採用したリストだったりと微妙な違いはありますが、基本的には何れのリストも目立った違いはなく概ねリストが完成されてきた印象です。もうお馴染みになってきたデッキなので詳しくは解説しませんが、やはり現在のトップメタはこのデッキでこのアーキタイプと見て間違いないでしょう。

続くのはナヤルーン。《鏡割りの寓話》が定番になってから復権したこのアーキタイプもそれからずっと活躍を続けておりメタゲームとしては2番手の位置で定着した印象です。こちらもリストは殆ど変化がないのでデッキの詳細は割愛しますが、苦手な白単アグロが下火になっていることも追い風になっているアーキタイプです。

このようにメタゲームとしてはわかりやすい状況になっているのが現在のスタンダード環境です。ただ上記の集計表にあるようにいくつか面白いデッキが入賞していますのでそこから3つほど取り上げたいと思います。

魔技を駆使したクリーチャー強化から早急に相手を倒すアグロデッキです。

ニューカペナの街角からの新戦力は《照光の巨匠》。このカードはリミテッドでも予想外の角度から強烈なダメージを叩き出された方も多いのではないでしょうか。《照光の巨匠》はサイズアップからの二段攻撃だけでなく自分を対象に取ったときの謀議があるためこのデッキとの相性は抜群。このデッキにとってはまさに待望のクリーチャーとなっています。このクリーチャーを絡めると最速3ターンキルというスタンダードにはあるまじき速度でゲームを終わらせることも不可能ではありません。

結構安めに組めるデッキでもあるのも魅力です。

《報復招来》で主に《ヴェロマカス・ロアホールド》を吊り上げる豪快なデッキ。以前から存在していたデッキではあるのですが新しく《聖域の番人》も加わったことでフィニッシャー枠の枚数が増え安定感が少し増しました。

《聖域の番人》は《ヴェロマカス・ロアホールド》と違って伝説ではないため重ねて場に出すことができる上《鏡割りのキキジキ》でコピーすることができるメリットがあります。《ヴェロマカス・ロアホールド》のみでは《鏡割りのキキジキ》が使い辛かったのでそういった意味でも大きな利点を持っています。場に出せれば《消失の詩句》のような追放除去以外ではほぼ対処できない単純に強いクリーチャーなのも周知の通りです。

この戦法に対してナヤルーンのように殆ど干渉手段を持たない環境デッキもあるのが良いところで、特に打ち消しのない中速デッキに強いデッキです。

《神の乱》。このカードは個人的にも好きなカードなのでイベントの上位デッキで見かけること自体が嬉しく思います。

5色カードでもありカードパワーは疑いようがないカードでしたが、やはりネックだったのはそのコスト。そのためニューカペナの街角から3色ランドを得たのは大きな収穫です。また《急使の手提げ鞄》はこのデッキにとって色マナ加速+チャンプブロックで時間を稼げるといっただけでなくドローソースになりえる重要なカード。やはりマナ加速だけのカードは後半無駄になりますが、両方の使い道があるのはこういったマナ加速だけしてガス欠してしまう可能性のあるデッキにとって貴重です。

そして《神の乱》だけでなく《産業のタイタン》がもう一つのフィニッシャーとしてこのデッキの双璧を成しています。この双璧によって環境に蔓延る中速デッキを食い物にするデッキになっています。肝心のエスパーミッドレンジは打ち消しもある上にそこまで遅いデッキでもないのでどこまで戦えるのかは悩ましいところはありますが、青くないミッドレンジには概ね有利でしょう。

個人的にもリストを弄りながら遊んでみたいアーキタイプです。



このように基本的には上位アーキタイプが固まりつつはあるもののまだまだ面白いデッキが登場しそうな環境ではあります。

来週にはニューカペナ・チャンピオンシップが開催されるので、この結果が本環境のメタゲームを大きく動かすことになります。この大会の結果に注目です。

スポンサーリンク

5月1週目:ニューカペナの街角がもたらしたスタンダードの変化

ニューカペナの街角がリリースされて1週間と少しが経過した時期になり、ニューカペナの街角がスタンダードにもたらした変化が少しずつ見えてくる時期になりました。

まずは当週のMOのイベントも含めて3つのオンラインイベントから上位8デッキ=計24デッキを集計したものが以下になります。

環境初期ということもあり、ある程度散らばった結果になってはいますが明らかに頭一つ抜けているのはエスパーミッドレンジです。

常夜会としてニューカペナの街角の一家の1つであるエスパーは3色ランドも含め新セットの恩恵を大きく受けたアーキタイプです。上記リストは集計したイベントのうちの1つを制したリストで、細部に違いはあるものの似たリストが複数入賞しており現在の流行タイプのリストといったところです。

エスパーはクリーチャー除去、ビートダウン、打ち消し、長期戦に強いプレインズウォーカー、といった現在のスタンダードの中でも屈指の万能感を持ったデッキになっています。上記のリストではこれまで2マナクリーチャーの定番となっていた《光輝王の野心家》を廃しているのが注目とも言えるところで新加入の《しつこい負け犬》や《フェアリーの荒らし屋》といったカードに差し変わっています。ただ強クリーチャーよりもシナジーを重視した採用となっています。

ですがそれ以上に新戦力として最も活躍していると言っても良いのは《策謀の予見者、ラフィーン》です。伝説クリーチャーであるにも関わらず殆どのリストに4枚採用されているという事実はこのカードが如何に強力であるかを示していると言えます。謀議のおかげで伝説であっても捨ててしまえば良いので、重ねひいたときのリスクよりも1枚も引けないリスクのほうが大きいということでしょう。このクリーチャーを3ターン目にキャストすることで先の2マナクリーチャーが早々に大きなパワーを持って攻撃できるようになっており早々に相手に圧力をかけていくこともできます。リリース直後より値段が高騰し始めていることからも想像していたより強かったカードとして認知されはじめています。

そしてデッキ全体を通して謀議があることで高コストのパワーカードを使いやすくなっており《聖域の番人》や《全知の調停者》といった6マナクリーチャーも長期戦を見越して採用されています。《聖域の番人》は盾カウンターのため《消失の詩句》のような追放除去以外では対処困難で相手によっては致命的になるクリーチャー。《全知の調停者》は場に定着すれば大抵はゲームセットです。序盤に出せないタイミングで引いてしまっても謀議で捨ててしまえば良いですし後半になると墓地から《忘却の虚僧》でリアニメイトできるという考え抜かれた素晴らしいリストになっています。

これらに加えてお馴染みのプレインズウォーカーや《食肉鉤虐殺事件》だったりと、まさに序盤から終盤まで隙の無いデッキに仕上がっています。このようにエスパーミッドレンジは現時点でトップメタに位置しているデッキと考えて良いアーキタイプとなっています。実際に今週の勝率を見ても相当高いポテンシャルを持っているのは間違いありません。


他のデッキとしては「ニューカペナの街角」で圧倒的に注目されていたカードである《敵対するもの、オブ・ニクシリス》を使用したデッキはやはりいくつか顔を見せています。リリース直後に比べれば少し落ち着いたような印象ですが、それでもやはり強力なカードであることは間違いありません。

緑といえば《エシカの戦車》を中心に据えたミッドレンジデッキが多数ありますが、ジャンドミッドレンジはニューカペナの街角の影響が色濃く反映されて登場したものと言えます。

ここでも2マナ域には《しつこい負け犬》が採用されており、このカードは黒の強力な2マナ域クリーチャーとして既に定着しつつあります。そして《しつこい負け犬》とも相性の良い《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の4枚採用。このデッキでは《エシカの戦車》や《蜘蛛の女王、ロルス》といったようにトークンクリーチャーがある程度存在しているため犠牲が使いやすいというシナジーがあるのがジャンドの特徴になっています。また《エシカの戦車》のコピー能力で《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の犠牲で出したコピーを更にコピーできるのも忘れてはいけないところで、こうしてみるとやはり《エシカの戦車》の強さには改めて驚かされます。

他にも新戦力として《産業のタイタン》は株をあげているカードとして注目されています。現在の環境は単体で強いカードを詰め込んだミッドレンジデッキが環境の主流となっており、そういったミッドレンジデッキの中速対決では強力なカードを唱えたほうが試合を有利に運ぶことが少なくありません。《産業のタイタン》のコストは7マナと重いものの、まさにそういった対決では1枚でゲームを決定付けるほどの強さを持っておりコストの重さに見合った強さを持っているカードです。《鏡割りのキキジキ》とも相性抜群で環境が遅くなればなるほどに活躍するカードになりそうです。

ラクドスサクリファイスは《敵対するもの、オブ・ニクシリス》がすんなりデッキに収まるデッキとして、ニューカペナの街角で恩恵を受けたアーキタイプの一つです。

《敵対するもの、オブ・ニクシリス》が入った以外にはそこまで大きな変化は見受けられませんが、上記のリストでは《土建組一家の魔除け》が採用されている点が面白いアプローチです。小道シリーズを駆使すればほぼノーリスクで色をタッチすることができるアプローチを採用しつつ、このデッキでは宝物トークンがあるため更に少量であれば緑マナを捻出することは比較的容易です。《土建組一家の魔除け》の上段の効果も当然強いですが、中段の効果が軽コストでまとまったこのデッキでは相性が良いためラクドスサクリファイスに噛み合う一枚となっています。

ラクドスサクリファイスは比較的構成が決まりきったイメージのデッキですが、それでもこうした切り口から新しいアプローチを行っていく発想は素晴らしいの一言です。



さて、デッキは色々と他にもあるのですが興味深いデッキがありましたので最後に1つ取り上げて終わりたいと思います。

アーキタイプとしてはイゼットコントロール・・・なのですが、なかなかに興味深いカードが紛れ込んでいます。

《秘儀の砲撃》はイゼットの新しいフィニッシャーとして活躍するカードになるのかもしれません。上記のリストではクリーチャー除去が多めに採用されており、《秘儀の砲撃》の設置までたどり着けば以降盤面を捌いてしまうことはかなり容易になります。加えて《家の焼き払い》が4枚とフルで入っていますが、これは《秘儀の砲撃》から唱えることで1/1トークンによるフィニッシャー枠としての役割も兼ねた採用としているのでしょう。《溺神の信奉者、リーア》と同じく墓地のカードを使うことから《溺神の信奉者、リーア》は2枚と少し抑えられています。《秘儀の砲撃》はエンチャントなので対処され辛く《消えゆく希望》で介護してあげる必要がないのが利点となっています。

そして何より驚いたのは《浄化の野火》です。私なんかは正直カードの存在すら頭になかったくらいなのですが同じような方は多いのではないでしょうか。現環境は基本地形の採用がかなり少ないリストが多く、キャントリップ付きの土地破壊カードとして機能する可能性も決して低くありません。《秘儀の砲撃》から重ねて唱えることも勿論ですが、このリストでは《廃墟の地》まで4枚入っているので完全に土地破壊を一つの戦略として据えたリストになっています。これは前回分で触れた白単コントロールと同じアプローチですが《浄化の野火》まで入れて更に加速させた形になっています。

イゼットのアプローチの仕方の一つとして覚えておくと良いかもしれません。

スポンサーリンク

4月3週目:環境終盤でも目新しいデッキが登場

ニューカペナの街角を目前に控えそろそろ現環境のスタンダードも終盤に差し掛かってきた時期になりました。このような時期にあっても後に述べますがスタンダード環境は相変わらず微妙に変化をし続けているようです。

今週もMOのイベントも含めてそれなりの人数が参加している4イベントのそれぞれ上位8デッキ=計32デッキを集計してみました。つまり今週勝ったアーキタイプのまとめという内容になります。

環境初期から終盤までずっと成果を出し続けたオルゾフミッドレンジは間違いなく本環境において代表的なデッキであったと言えます。今週も相変わらず好成績を残しています。MOだと特にこのアーキタイプが上位に多く残っていましたが、今週開催されたSNCチャンピオンシップ予選を兼ねたオンライントーナメント2つにおいてはオルゾフミッドレンジも残ってはいるものの偏ってはおらず、かなりアーキタイプが散らばった結果となっています。

その中でも少し前まではやや鳴りを潜めていた感のあるナヤルーンは最近《鏡割りの寓話》というマスターピースを見つけたことで人気が再燃しているのがやや目立っています。

強くて便利なカードとして定着した《鏡割りの寓話》はナヤルーンにおいても居場所を見つけました。自身がエンチャントなので《樹海の自然主義者》《気前のいい訪問者》といったカードともシナジーがありながら、このデッキでは必ずと言えるくらい引き込みたい《スカルドの決戦》を引いてくることにも役立ちます。裏面になれば《ルーン鍛えの勇者》をコピーできるのが強力ですし、少し前までデッキに入っていなかったのが不思議なくらいにこのデッキに噛み合ったカードです。

これによってデッキパワーが一段上がったと言っても過言ではなく、ナヤルーンの人気の再燃に繋がっています。


他に今週結果を残したデッキの中で、最も異才を放っているのは白単コントロールでしょう。

前述の集計では白単コントロールは入賞数2となっていますが、同一人物による入賞であり確かな強さを持っているアーキタイプと言えそうです。

基本的には《ドゥームスカール》《告別》といったお馴染みの全体除去に加え《冥途灯りの行進》や《ポータブル・ホール》などの除去を備えた除去コントロールとも言えるデッキになっていますが、単色であるが故に採用することが可能となっている《這い回るやせ地》《廃墟の地》の各4枚採用が特徴的です。

特に《廃墟の地》は環境的に強くなっている土地で、最近はデッキ内に基本地形をあまり採用していないデッキも多いので一方的な土地破壊として機能するケースも少なくありません。またこのデッキでは《永岩城の修繕》もフルで採用しているため、2章で墓地から《廃墟の地》を戻すことで複数回使いまわすといったギミックも備えています。これによる土地破壊から相手を機能不全にすることで勝ちを狙いに行くといった動きも可能になっているのはこのデッキならではでしょう。


環境終盤でありながら、まだまだこのようなデッキが登場するのですから現環境は近年でも相当な良環境と言える環境になったのではないでしょうか。やはりデッキ構築のし甲斐があるというのはMTGの楽しみの一つですし、それを楽しめるというのは良いことなのは間違いありませんね。

さて、冒頭でも触れたようにそろそろニューカペナの街角のリリースが迫ってきています。個性的なカードも多く、現在はそこまで多くはない3色が推奨されるセットなのでまた大きく環境も変わるでしょう。本記事でもまた次の環境を追いかけていきたいと思います。

スポンサーリンク

4月1週目:勝つデッキが目まぐるしく変わる環境

前項でも記載しているようにオリジナルデッキが出てきてイベントで優勝をさらっていくというのも度々起こっている現スタンダード環境ですが、やはり現環境のスタンダードは各カードパワーが拮抗している状況にあり恐らく現環境は最後まで何らかのアーキタイプが支配的な数値になることはなさそうです。

イベント毎に勝っているデッキも違ったりとにかく落ち着かない環境という印象ですが、それでもある程度は上位によく登場するアーキタイプの顔ぶれは決まってきているという気配もあります。

今週はMOのイベントも含めてそれなりの人数が参加している3イベントのそれぞれ上位8デッキ=計24デッキを集計してみました。つまり今週勝ったアーキタイプのまとめという内容になります。

先週までセレズニアミッドレンジが活躍している傾向にありましたが、それに対抗するという意図もあってかエスパープレインズウォーカー(エスパーフレンズ)が数を伸ばしているというのが最近の主な動向と言えそうです。

オルゾフミッドレンジ白単アグロあたりは混沌とした現スタンダードにおいても常に見かけるアーキタイプと言ってもよく、メタゲーム上ではTier1に位置しているというのは間違いないアーキタイプになっています。これらのアーキタイプは常に対策しておくほうが良いでしょう。

ティムール宝物に関しては何故かMOでよく見かけるアーキタイプという印象はありますが、マナ加速から相手より一歩先に《エシカの戦車》や《黄金架のドラゴン》といった脅威を展開した後に打ち消しで蓋をするという動きがミッドレンジ相手に強力に働くため最近数を伸ばしているアーキタイプです。

《鏡割りの寓話》を採用していることが以前のバージョンと大きく異なる点で、宝物トークンを生むトークンクリーチャーや裏面の強さは言うまでもなく、2ドローによる手札循環が現在のターン次第で手札に欲しいカードがはっきりしがちなこのデッキにとって非常に噛み合っており、現在のスタンダードのデッキの中では《鏡割りの寓話》を強く使えているデッキの1つになっています。



ラクドスサクリファイス等その他のアーキタイプも上位に顔を出してはいますが、今週はここまでのアーキタイプが目立って結果を残している週となっています。今週はセレズニアミッドレンジがあまり勝てなかったという結果になっていますが、セレズニアミッドレンジも引き続き要注意のアーキタイプであることは変わりないでしょう。混沌とした環境とは言えこのあたりのアーキタイプには警戒しておきたいところです。

スポンサーリンク

3月3週目:続オリジナルデッキでも勝てる可能性のある良環境

セカコロの決勝大会が行われました。国内の大型イベントということもあって注目度も高いイベントであることもあり既に結果をご存じの方も多いと思いますが、ここでもオリジナルデッキが活躍し、しかも優勝するという結果となった現在のスタンダードはやはり近年でも稀にみる良環境であるということを改めて証明したとも言えるでしょう。

ゴルガリミッドレンジと呼ばれてはいますが、デッキの内容としてはひたすらに相手のクリーチャーやパーマネントを破壊してゲームを長引かせる除去コントロールといった趣のデッキになっており、ゲームを長引かせること=有利となるカードである《無限性の支配》と《樹海の幻想家、しげ樹》によるリソース差でゲームをもぎ取るという息の長いデッキになっています。

白単アグロといったデッキもそうですが、特に攻め方がやや遅いラクドスサクリファイスのようなデッキを得意としており基本的にアグロやミッドレンジに対して有利に戦えるデッキになっています。いくら《鬼流の金床》で展開しようとも《食肉鉤虐殺事件》に加えて《選別の儀式》によって全て流されてしまいますし、ライフをある程度削って残り数点という状況でも《不憫な悲哀の行進》といったカードでライフゲインされてしまうため相手をしている側からすると堪ったものではないでしょう。


確かに現在のスタンダードは様々なアーキタイプが存在はするものの基本的にはアグロやミッドレンジが中心となっている環境です。そこに目をつけて構築された着眼点が素晴らしく、オリジナルデッキとはいえしっかりメタゲームを読み切った上で持ち込まれている点でこの結果にも頷けるところがあります。


その他に入賞していたデッキとしては白単アグロやオルゾフミッドレンジといった見慣れたアーキタイプになりましたが、デッキリストに限らず実際に上位入賞しているプレイヤーの対戦を見ているとプレイスキルの高さが感じられるシーンもあり、やはりデッキだけでなくプレイングスキルも双方必要であるという当たり前の事実を改めて感じるトーナメントでした。まだ視聴されていない方はぜひ一度ご覧ください。自分のプレイしているデッキと違うデッキでも参考になる点はきっとあります。

第5回 セカコロMTGアリーナ 決勝大会生放送

このようなメタゲーム状況で勝ち抜くには、ランク戦で勝ちたいのかまたはトーナメントで勝ちたいのか、といった時点で少し性質は異なってくる部分はあるもののメタゲームにあまりにも合っていないデッキではない限りは基本的に自分の使い込んだデッキでプレイするというほうが良い部分は大きいように感じます。どうしても使いこんだデッキのほうが細かい部分の精度が高くなりますし、その細かい差によってゲームの勝敗を分けることも決して少なくはありません。

まさに今のスタンダードは自作デッキでも勝てるチャンスがあるというのが証明されている環境です。デッキを作って楽しみながらゲームに勝つことを目指すにはこれ以上ないと言えるくらいの環境になっているように感じますので、そういった楽しみ方が好きなプレイヤーの方には是非ともトライしてみてほしいと思います。

スポンサーリンク

3月1週目:オリジナルデッキでも勝てる可能性のある良環境

毎週毎週勝ったデッキが変わるほど目まぐるしい環境になっている現在のスタンダード。今週も先週とはまた違った顔ぶれが見られる結果となりました。今週は国内ではセカコロ2次予選、オンラインでは「$500 Cash GGtoor M:TG Arena Duel #8」が多数の参加者を集めていましたのでその2つを中心に振り返ります。

やはりと言うべきかセカコロは国内イベントということもあり先週の日本選手権2021FINALの影響も色濃い印象で、白単アグロ、そして先週活躍した話題のオルゾフデッキの2アーキタイプが使用率上位のアーキタイプであった模様です。ただ予選通過上位16名では使用率の割には入賞数は共に2つずつとやや少なめ。目立ったのは先週の日本選手権FINALではTOP8には惜しくも残れなかったラクドス(マルドゥ)サクリファイスの躍進です。

16名中5名通過と勝ち組となったサクリファイスデッキ。サイドのカードで白をタッチしていますが、ほぼラクドスでまとめられているデッキです。《血なまぐさい小像》や《ウォーロック・クラス》を使ったタイプもありましたが基本構造は何れも上記のリストと変わりません。

血トークン等のアーティファクトを《霜剣山の製錬者》で3/1に変換して攻勢をかけつつ《鬼流の金床》がトークンを供給しながら最後のライフの詰めをアシストするといったデッキになっており《実験統合機》の存在もあり、息切れし辛く盤面を作りながら粘り強く攻めるデッキになっています。《鬼流の金床》が残ればコントロールに盤面を裁かれようとも継続的にライフを削っていけますし、トークンクリーチャーの群れでアグロ相手の地上の攻撃も受け流しながら戦うことができるようになっているため器用な立ち回りができるようになっています。

一方クリーチャーでもサイズの大きいトランプル持ちは苦手でナヤルーンや緑単アグロのようなデッキには苦戦を強いられがちな面はありますが、今回のメタゲームにも噛み合った結果だったということでしょう。流石は日本トッププロ八十岡選手謹製のデッキです。尚、ご本人も予選通過されています。

更に驚きだったのは、その他の通過者の中で独創的なデッキが存在していたことです。

マルドゥ《天使火の覚醒》デッキ。このようなデッキは筆者には全く頭にもよぎりませんでした。《墨の決闘者、キリアン》といった存在すら忘れられかけていたような(?)カードもあり作成者のデッキ構築センスに驚くばかりです。

基本的にはマルドゥカラーのビートダウンデッキといった形になっており、マルドゥの優秀なクリーチャーが詰め込まれつつ《天使火の覚醒》で打点を稼ぎつつもライフゲインによりビートダウン同士のライフレースでも優位に立てるような構築になっていますが何と言っても《碑出告が全てを貪る》が非常に目を惹きます。

1章の効果は白単アグロにもそれなりに効きますが、特にラクドスサクリファイスに効果的で、また《婚礼の発表》も環境に溢れているため以外と無駄になりにくい効果を持っています。また裏面のクリーチャーが《天使火の覚醒》と効果抜群という点も素晴らしいところで、3/3とやや頼りないボディが《天使火の覚醒》から一発攻撃を通すだけで6/6になることで脅威的な存在となりますし、一枚採用されている《ケイヤの猛攻》と組み合わせると10点ダメージを叩き出すことで即死コンボとしても機能するようになっています。こんな使い方良く思いつくなぁ・・・というのが素直な感想です。

そのコンボは度外視したとしても《天使火の覚醒》は愚直に攻めるようなデッキ全般に効果的で、今後も活躍する可能性を感じるデッキになっています。オリジナルデッキで結果を残せるということを証明したという点でも素晴らしく、また環境の多様性を体現しているといっても過言ではないでしょう。

イゼットコントロールというアーキタイプは珍しくありませんが、6位通過の上記のリストは従来のイゼットコントロールとは明確に異なった構成をしている独創的な構築となっています。

土地と《家の焼き払い》とサイドの講義カード以外は4枚で統一されているという非常に綺麗なレシピになっており、環境に合わせた構築を求められるコントロールにおいてこういった構築は非常に珍しく構築の拘りが感じられます。強さと楽しさの両方に拘って追求した形なのかもしれません。

《ガラゼス・プリズマリ》は久々に見たカードでこのリストの中でも特に異才を放っているところでしょう。現在のスタンダードに多い《消失の詩句》が当たらないという強みはそれなりに大きいものがあり意外と除去され辛いです。またこれによりサイドの《勢団の銀行破り》をより活用できるようにしているというのも恐らく採用理由の1つであろうと思います。搭乗もできる上《勢団の銀行破り》がマナを捻出できることでインスタントを構えやすくもなります。

とは言え基本的には《溺神の信奉者、リーア》で盤面制圧することを狙った構築になっており《消えゆく希望》4枚という点からみてもそれは明らかでしょう。最終的には《溺神の信奉者、リーア》からアドバンテージ勝ちを狙った構成になっています。コンボ型でもないのに《溺神の信奉者、リーア》が4枚というのは男気が溢れすぎていて好感が持てますね。随所に構築の拘りが感じられる構成に仕上がっています。


これらのようにセカコロの2次予選通過の中からは独創的なリストが目を惹く結果になっており、結果を見ているだけで現在のスタンダードがどのデッキにも可能性があるバランスの取れた環境になっているということが一目瞭然であることがわかります。


もう一方の「$500 Cash GGtoor M:TG Arena Duel #8」においてもトップ8のアーキタイプはバラけており、こちらを見ても先週から更に多様性を増しているということが読み取れます。白単アグロの優勝、セカコロの予選通過にも存在するセレズニアトークン、緑単アグロ、アゾリウスコントロール、ナヤルーン、オルゾフミッドレンジといったお馴染みのデッキから少数派のデッキまで存在しています。セカコロほど目を惹くリストはありませんでしたが、こちらを見てもまさに群雄割拠な環境となっています。


来週行われるセットチャンピオンシップにスタンダードが採用されていないのが残念なくらいの良環境になっている現在のスタンダード。ある程度メタゲームに合わせた構築は必要ながらも自身の構築を追求して勝つこともできる環境です。色々な構築を試しながら楽しむことができる現在のスタンダードは遊び得かもしれませんね。

スポンサーリンク

2月4週目:息を吹き返すアグロデッキ

グルグル回るメタゲームによりオルゾフに追いやられていたアグロデッキの活躍が目覚ましい週となりました。現在のスタンダードは非常に多様性のある環境となっており、直前で活躍したデッキに対して強いデッキが次に活躍するといったメタゲームの推移が週末の2日間だけでも起きているというくらい目覚ましいものになっています。

まず土曜日早々に開幕した「日本選手権2021FINAL」。限られた選手しか出場できないハイレベルな大会ということもあって注目を集めたイベントとなりました。

先週までオルゾフに駆逐されていた白単やボロスといった白系統のアグロデッキがTOP8に半数と、とにかくアグロデッキの活躍が目立った大会となったのです。

日本選手権2021FINAL優勝:白単アグロ

日本選手権FINALでは純正オルゾフの使用者はゼロ。そして青いコントロールデッキが多いという白単アグロにとっては追い風となったメタゲームとなりました。エスパーミッドレンジはTOP8に2つ入賞していましたが、先週述べたようにエスパー型はアグロに対してオルゾフよりもガードが下がっているためアグロが付け入る隙はあります。ボロスアグロも基本的には白単アグロの派生デッキであり同じ理由で活躍を見せています。

特にアグロはガードが下がった時に活躍するというのが通例です。また白単アグロは《スレイベンの守護者、サリア》に加えてクリーチャーサイズを苦にしないクリーチャー追放除去を備えていることでアグロデッキが基本的に苦手とするナヤルーンに対しても戦えるデッキというのは大きいメリットの一つと言えます。


このようにアグロデッキが日本選手権FINAL 2021で目覚ましい活躍を見せたことで同週末に行われたセットチャンピオンシップ予選を兼ねた2つのオンラインイベント「$1,000 Cash GGtoor M:TG Arena Cup#2」「NEO CHAMPIONSHIP QUALIFIERS by 5CH LATAM SERIES」。日本選手権の影響もあって早くも白単やボロスアグロが増加の兆しを見せましたが、2つのトーナメントは共にオルゾフ、しかも共に同デッキリストが優勝するというメタゲームが一周してオルゾフの活躍が光るという結果になりました。

同デッキリストと述べましたが恐らく後者のトーナメント優勝者は前者のトーナメント優勝者のリストをそのままコピーしたものと思われます。

《光輝王の野心家》《シルバークイルの口封じ》の2マナ域のクリーチャーから早々に攻撃に回れるようにもなっているタイプで少し前に流行った形のオルゾフに近い形となっていますが、2マナ域があることで《永岩城の修繕》の2章の効果がより強く使えるようになっているというのも見逃せないところでしょう。それに加えて手札破壊がメインから多めに入っているという特徴があり、早々に攻められるという点だけでなく手札破壊が効果的に作用することで本来苦手とするジェスカイコンボ型にも一定の耐性を持ったデッキリストになっており、多方面のアーキタイプ対して高い次元でバランスが取られているリストになっています。

両方のトーマネントをどちらも1敗もすることなく優勝という結果を残したこのデッキリストは今後注目を集めることでしょう。結果のインパクトが大きいということもあり、このリストを使うプレイヤーはそこそこ増えるのではないかと思われます。

しかし最近のメタゲームの回りは早く勝ったデッキがその後も勝ち続けるということは滅多にありません。特に現在は多様性が高い環境ということもあり、また来週以降違ったデッキも活躍するスタンダードとなりそうです。

スポンサーリンク

2月3週目:オルゾフを中心に回り始めた新環境

神河:輝ける世界のMTGアリーナでのリリースから凡そ1週間を経過した頃。いよいよ新環境のスタンダードが大きく動き出した週末となりました。

MTGアリーナを用いたオンライントーナメントとしてセットチャンピオンシップ予選を兼ねた2つの大きなトーナメント「Crokeyz Kamigawa: Neon Dynasty Tournament」(※以降前者と呼称)と「The Pizza Box Open: Standard」(※以降後者と呼称)に注目してメタゲームを見ていきます。

トーナメント開催時点では禁止改定後からのトップメタであるオルゾフをどのように攻略するか、というのが一つの大きなポイントとなっていました。盤面干渉力の高いオルゾフに対して青いコントロールデッキにより対抗しようと考えたプレイヤーも多く前者のトーナメントではオルゾフとジェスカイかイゼットのコントロール2つが大きな勢力となりました。ですが《暁冠の日向》から《マグマ・オパス》するようなタイプではオルゾフに勝ち切れるとは言い難く、結果的にトップ8にオルゾフが4つを占めており総じてオルゾフが勝ち組になっているという傾向が見られました。

ですが前者のトーナメントを制したデッキは紛れもないオルゾフキラーのデッキでした。

カラーはジェスカイですがコンボに特化したタイプのデッキであり、アーキタイプとしてもジェスカイコンボとなっているのが前者を優勝したデッキとなっています。

《黄金架のドラゴン》を《自身の誇示》で強化&宝物トークンを出しつつ《カズールの憤怒》で投げ飛ばしたり、前環境のイゼット天啓のように《錬金術師の計略》を《感電の反復》でコピーするコンボを内蔵したデッキとなっています。《溺神の信奉者、リーア》を《消えゆく希望》で守って活用する仕組みも入っているこのデッキは前環境の黒いデッキを締め出していたイゼット天啓の現在版とも言えるデッキとなっていますから、オルゾフに大きく有利なのは間違いありません。実際に多くのオルゾフを打ち倒したことで優勝を収めています。

ただしオルゾフに強い一方でアグロや青いヘビーコントロール相手には厳しいデッキにはなっていますので万能的に強いという訳ではないでしょう。オルゾフを倒すには最も向いているアーキタイプの1つと言えるでしょう。

そんなオルゾフもまた同型対決を見据えたチューンを見せたデッキがエスパーミッドレンジとして準優勝を収めています。

オルゾフをベースとしてタッチ青することにより打ち消しや《漆月魁渡》《アルカイックの教え》といったカードアドバンテージにより同型を見据えた構築がされているのが上記のエスパーミッドレンジです。個人的には忍者デッキ以外のデッキが《漆月魁渡》を使ったデッキで始めに活躍するとは予想外でした。

青をタッチしたことによるアドバンテージ差でオルゾフに対して優位が付くように構築されています。その分《心悪しき隠遁者》のようにアグロにはあまり有効でないクリーチャーがメインからフル投入されていることもあり、本来オルゾフが得意とするようなクリーチャーデッキに対しては若干ガードが下がっているというデメリットはあります。ですがオルゾフに締め出されたデッキよりもオルゾフを意識したほうがオルゾフ中心のメタゲームなら高い勝率が見込めるのは当然。メタゲームに合わせた素晴らしい構築と言えるでしょう。


また上記とは別のアプローチで打倒オルゾフを成し遂げたデッキも3位入賞しています。

プレインズウォーカーを主軸としたコントロールデッキであるエスパープレインズウォーカーと呼ばれる独創的なデッキが3位に入賞しています。

クリーチャー除去を殆ど無力化するノンクリーチャーデッキ、かつどんな盤面であってもリセットしてしまう《告別》が4枚フルで入っていることが特徴的なデッキとなっています。オルゾフはクリーチャー等を除去しながら《婚礼の発表》等で徐々に盤面を作っていくデッキですが、それを全て無に帰してしまう《告別》は打ち消しもなく遅いデッキであるオルゾフにとって中々に頭の痛い存在です。自身はプレインズウォーカー中心ですから《ドゥームスカール》も含めてリセットの影響を受けずに盤面を構築できるようになっています。

こちらもオルゾフのような中速デッキに強い構成になっており、上位入賞したことが頷ける構築と言えるでしょう。

そして前者のトーナメント終了から数時間後に開催された「The Pizza Box Open: Standard」は前者のトーナメントの結果を色濃く受けた内容になりました。コントロールに強いコントロールであるイゼットコントロールや前述のジェスカイコンボ等の青いデッキがTOP8中4つという過半数を占め、他にもオルゾフに強いエスパーミッドレンジデッキ等がTOP8入賞となっており純正のオルゾフはTOP8に一つも残れずに総じて苦戦する結果。早くもメタゲームの進展が見られました。

そんな中で優勝したのは前者のトーナメントでもTOP8ではなかったもののいくつか上位には入賞していたナヤオーラでした。

神河:輝ける世界ではエンチャントに関するカードが大幅に強化されたことで、以前から存在はしていたルーンデッキもその恩恵を大きく受けたアーキタイプです。

《樹海の自然主義者》は展開を大幅に加速しますし《無常の神》は他のクリーチャーにルーンを付けていても勝手にモリモリ育っていく強力なクリーチャーです。特に《樹海の自然主義者》は《ルーン鍛えの勇者》とセットで場にいるとルーンカードはコストゼロで唱えることができるという詐欺くさい芸当が可能になります。オーラデッキはオーラで強化するためにマナ(手間)がかかるのが結構ネックだったりしますが、そんなオーラの弱点すら無くしてしまえるのは相当に強力です。

このように軽快にオーラを展開できることにより《スカルドの決戦》で引いたカードも無駄なく使えますし《神聖なる憑依》の誘発も容易くなっているためデッキによく噛み合ったカードとなっています。

クリーチャー除去を火力(ダメージ)で頼る赤いデッキ相手には特に強力で、実際にジェスカイやイゼットを破って優勝を成し遂げています。


そして、他のトップ8入賞の中でやや異質とも言えるのがアグロデッキである緑単アグロアゾリウステンポです。

実はこのTOP8入賞の緑単アグロのプレイヤーは筆者です。

緑単アグロはオルゾフがキツイですが、青いデッキ相手には概ね有利が付きます。前者のトーナメント結果的にも青が増えそうという読みと、オルゾフであってもエスパータイプなら少なくてもメインは有利で総じて緑単に対するカードも下がっているという理由もあってこのデッキを選択しました。結果的にはシングルエリミでそれまで殆ど負けたことがないジェスカイに敗れてしまいましたがそれもMTGということで。

神河からの新戦力《古霊招来》は実質5マナ8/10スタッツなので普通に強いですが《エシカの戦車》とのコンボがあまりにも強力。また到達で《黄金架のドラゴン》を止められることも大きいです。少し前の《エシカの戦車》《レンと七番》コンボと似ていますが、それよりも早期に複数体でるため緑単にとっては《レンと七番》より強くなっていると言えます。今後の緑単アグロには多く採用されるであろうと思います。

オルゾフ系は不利ですが少なくても白単よりは戦えます。また対峙するにあたって《ウルヴェンワルドの奇異》がいるかどうかの差は大きいです。特に《蜘蛛の女王、ロルス》を出された返しで仕留められるかどうかというのはゲームに大きく影響してきますので採用枚数は多めにしています。

オルゾフ相手に特に《婚礼の発表》を重ね引きされるとかなり辛いデッキですが、今後もメタゲーム次第では忘れられた頃に出てくるデッキかもしれません。

白単アグロをベースにタッチ青しているアゾリウステンポ。前環境でも存在したアーキタイプです。特に白単は緑単以上に《不詳の安息地》禁止の影響は大きいので白単にする理由は以前ほどメリットは大きくないとも言えます。

ですが緑単以上にサイズも小さいデッキで横並べ押しするデッキでもあるので《食肉鉤虐殺事件》があまりにも厳しいです。現状は《食肉鉤虐殺事件》があまりにも溢れているので立ち位置は厳しいと言えるでしょう。

実際に青いデッキ相手に勝ち星を重ねてTOP8入賞されているようですが、黒いデッキには軒並み敗れてしまっているのでオルゾフ派生のデッキが多数存在する間は活躍が難しいかもしれません。


このようにオルゾフ→青いデッキやコンボデッキの台頭→青赤系のデッキに相性の良いデッキといったように、オルゾフを中心としながらも新環境のメタゲームは進み始めています。今後もしばらくは流動的なメタゲームが展開されそうです。

スポンサーリンク

1月5週目:禁止改定により激変を迎えたスタンダード

1月25日付で行われた禁止改定によってメタゲームが凝り固まったスタンダードに対してやっとと言っても良いメスが入りました。特に《アールンドの天啓》は誰もが早く禁止を望んでいたでしょうが《ゼロ除算》と《不詳の安息地》まで禁止されたのは少々意外だったかもしれません。神河:輝ける世界のリリースがあと2週間程に迫っている中なので、もう少し早く改定してほしかったのが正直なところではないでしょうか。

そんな今更ながら激変を迎えたスタンダードですが、そんなスタンダードでセットチャンピオンシップ権利を兼ねたオンライントーナメントが開催されました。そこでは《アールンドの天啓》の禁止で羽を伸ばすであろうと誰しもが予想したデッキがまさにその通り活躍するという結果を残しています。

上記が優勝を収めたオルゾフミッドレンジ。オルゾフは《歓迎する吸血鬼》を入れたリストだったりとリストには多少バラつきが見られますが、オルゾフはこのトーナメントでは使用率トップとなりました。その一点だけでも禁止改定の影響の凄まじさを物語っています。

上記は《輝かしい聖戦士、エーデリン》や《穢れた敵対者》が採用されているのが特徴的なややアグロ寄りなリストになっており、これらの横並べ戦略により《婚礼の発表》と同型戦では使い辛い《食肉鉤虐殺事件》とのシナジーが色濃くなっています。あまり受けすぎない構成にすることで若干読みづらいメタゲームの中でどの相手に対しても一律戦えるようにする狙いもあったのかもしれません。

《アールンドの天啓》が無くなったことで盤面から攻める以外のデッキは殆ど存続しなくなったことでボードコントロール力の高いオルゾフが強くなるのは当然のことで、TOP8にもいるようにイゼット等の青いデッキが無くなった訳ではありませんが《ゼロ除算》がなくなったことも合わさってオルゾフでも戦えるレベルには青いデッキもパワーダウンしてきたのは間違いないでしょう。


そしてオルゾフが台頭してきていることで以前のTier1である白単アグロ緑単のアグロも大きく地位を落としてきています。特に白単は《不詳の安息地》禁止の影響も大きいですが、何れにしても全体除去を多数有するオルゾフは厳しい相手です。同じく増加したジャンドやティムール宝物デッキもマナ加速して繰り出したパワーカードを《忘却の儀式》等で除去されてしまうので、やはりオルゾフは厳しい相手になります。



このように禁止改定直後は間違いなくオルゾフ中心のメタゲームとなっています。オルゾフに弱点がない訳ではないですが、この流れはしばらく続きそうに思われます。神河:輝ける世界のリリースまであと少し。神河:輝ける世界によるメタゲームの変化に期待したいところです。

スポンサーリンク

12月4週目:メタゲームはイゼット天啓一択状態

現時点では《アールンドの天啓》や《感電の反復》といったカードに禁止改定等の処置は行われていないこともあり、前回更新のイニストラードチャンピオンシップ以降はイゼット天啓1択と言っても良い程にイゼット天啓が支配する環境になっています。

他のTier1と言えばこちらも相変わらずの緑単アグロ白単アグロ。イゼット天啓の火力除去はどちらかと言えば白単アグロのほうが対処しやすいため、対イゼット天啓に関して言えば緑単アグロにやや軍配が上がりますが、かと言ってイゼット天啓側も緑の高タフネスクリーチャーも除去できるように4点火力を多めに採用したりバウンスを取ったりして対処できるので、緑単アグロもイゼット天啓を攻略するまでには至っていません。

そのためイゼット天啓は実質的に緑単アグロも白単アグロも攻略できるに対し、緑単アグロは白単アグロに不利。白単アグロは緑単アグロ以上にイゼット天啓に不利というのが現在のスタンダード環境の構図になっています。


このようなメタゲームで固まってしまった感もあるのが現在のスタンダードですが、このような環境でもオリジナルデッキを用いて大会で好成績を収めているプレイヤーもいます。今回はそんな珍しいデッキに焦点をあててご紹介します。

アーキタイプとしてはエスパーコントロールに該当する本デッキ。《危難の道》や《食肉鉤虐殺事件》といった優秀な全体除去に加えて相手を選ばす何でも除去できる《冥府の掌握》《魂の粉砕》といった単体クリーチャー除去も備えているためクリーチャー相手の耐性が高いのが特徴です。

黒を含んでいるためクリーチャー除去性能に関してはイゼットよりも一日の長があるのが黒を含んだコントロールデッキのメリットとなっています。

そしてクリーチャーに関しては自身が使用している全体除去と噛み合うように繊細にチョイスされているのが見て取れます。《墓地の侵入者》は火力で倒されてしまいやすいものの護法によってただでは死なないようになっていますし、墓地からカードも取り除けるため特にイゼット相手に強いクリーチャーです。攻撃時にライフゲインもできるため、見た目以上にコントロールに噛み合うクリーチャーです。《ヘンリカ・ダムナティ》も1ドロー効果があるため場に出ただけである程度仕事をしてくれます。何よりタッチ白をしてまで採用されている《魅せられた花婿、エドガー》が全体除去とあまりにも相性が良いのはオルゾフコントロールのそれと同じです。

また打ち消し呪文や手札破壊も備えているので理論上はどのデッキにも戦えますが、特にクリーチャーデッキ相手に強いデッキになっています。どのデッキに戦えると言っても対イゼットには《表現の反復》の有無の差が見た目以上に大きくイゼット天啓にはやや分が悪いですが、アグロ相手が多い場合は有力な選択肢となるアーキタイプになっています(MTGアリーナのランク帯によってはアグロが多かったりもします)

こちらはスタンダードでは比較的珍しいカラーリングであるアブザンのミッドレンジデッキです。《光輝王の野心家》や《レンジャー・クラス》といった優秀な2マナ域からスタートし《シャドリクス・シルバークイル》や《忘れられた大天使、リーサ》といった火力では対処困難なクリーチャーがマナカーブの頂点に採用されています。どちらもタフネス5であり、現環境の火力は《轟く叱責》や《悪魔の稲妻》のように基本的に4点までですから意識してタフネス5を採用しているのであろうと思われます。構築の工夫が感じられるところですね。

またスタンダードでは比較的珍しいクリーチャーである《領界喰らい、サルーフ》や《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》といったクリーチャーが目を引きます。《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》のスタンダードでの標的の的は基本的に宝物トークンで《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》が場にいると宝物トークンは何もできなくなりますので、ジャンド宝物やイゼット天啓に見た目より有効に働きます。宝物トークンが使えないと《アールンドの天啓》《感電の反復》のコンボのマナ到達を阻害してくれるため、コンボまでのビートダウン完遂の時間を得られることもあります。

そして《傑士の神、レーデイン》も言わずもがなイゼット天啓に効果的。ここまでしてもイゼット天啓に有利が付くとは言い難いものの一定の耐性は持っていると言えるでしょう。サイドに《エメリアのアルコン》を取るのも良いかもしれません。

クリーチャーデッキ相手にも《領界喰らい、サルーフ》《ヘンリカ・ダムナティ》《忘れられた大天使、リーサ》といったクリーチャーがしっかり仕事するように構築されています。このあたりのクリーチャー選択や枚数のバランス等が難しそうなデッキですがその分構築の工夫のし甲斐があるデッキで、このような形でスタンダードを楽しむというのも本当に素晴らしいと感じます。


次期エキスパンションである「神河:輝ける世界」のリリースまではまだ1ヵ月以上ありますし、上記のようにメタ外のデッキでスタンダードを楽しむのも面白いですね。

スポンサーリンク

12月1週目:圧倒的なまでのイゼット天啓環境

イニストラードリリース後の環境総決算とも言えるイニストラードチャンピオンシップが開催されました。そこで展開されたメタゲームは以下の通りです。

Innistrad-Championship-Standard-Metagame.jpg

イゼット天啓が約4割という圧倒的なまでの支配率。環境の成熟が進むにつれて青いデッキは真価を発揮しやすいのが特徴の1つですが、そういった要素もありつつ《感電の反復》《アールンドの天啓》という対処が限りなく難しい必殺技も備えたこのデッキはプレイングが難しいものの、プレイングスキルが高いプレイヤーが使うと非常に強力なデッキです。ハイレベルなプレイヤーが集う本大会において他の大会以上にこのデッキの支持が集まるのは当然とも言えるでしょう。

今週のメタゲーム詳細に他イベントも含めた勝率を掲載していますが、イニストラードチャンピオンシップに絞ったデッキ毎の勝利率は以下になっています。

 Total
WinRate
Izzet EpiphanyMono-White AggroMono-Green AggroIzzet ControlOrzhov ControlDimir ControlIzzet DragonsMono-Black ControlOther
Izzet Epiphany57%59%43%64%90%22%60%75%60%
Mono-White Aggro40%41%59%43%8%100%36%100%33%
Mono-Green Aggro54%57%41%33%55%100%100%50%52%
Izzet Control49%36%57%67%75%0%100%
Orzhov Control43%10%92%45%0%0%57%
Dimir Control53%78%0%0%100%40%
Izzet Dragons49%40%64%0%25%100%50%
Mono-Black Control42%25%0%50%100%50%
Other47%40%67%48%0%43%60%50%50%

見ての通りイゼット天啓が勝率においてもトップに立っています。元々禁止候補としても名前が挙がっていた《アールンドの天啓》ですが、この使用率と勝率をセットチャンピオンシップにおいて叩き出したことで、禁止改定の対象になる可能性もありそうです。

同時期に行われていた「Red Bull Untapped InternationalStop Ⅴ」を制したのもイゼット天啓。現在のスタンダードはイゼット天啓が完全に頭一つ抜け出したというのは間違いないでしょう。

そんなイゼット天啓祭りではあったのですが、イニストラードチャンピオンシップ上位陣の中にいくつか目を引くデッキがありました。

Mono-Black Zonbies

準優勝となったSimon Görtzen選手が使用した黒単ゾンビ

スタンダードラウンドを7-1、イゼット天啓にも3-1と勝ち越しています。《食肉鉤虐殺事件》といったカードや接死持ちや消耗戦に強いクリーチャー陣、とどちらかといえばアグロデッキに強いアグロデッキになっていますが、有利とまでは言えないような感じはしますがイゼット天啓にもある程度戦えるデッキであるということでしょう。

特にサイドには手札破壊がてんこ盛りに入っています。どちらかというとイゼット天啓以外に勝ってイゼット天啓はぼちぼちという意図のデッキ選択だったと思われますが、イゼット天啓に結構勝てたことが今回の好成績に繋がったものと思います。

Dimir Control

オポネントによる9位で惜しくもトップ8入賞とならなかったSam Rolph選手が使用していたのが上記のディミーアコントロール。

基本的に盤面をコントロールしてゲームを長引かせながら《溺神の信奉者、リーア》による多大なアドバンテージから勝利するデッキになっていますが、コントロール故にインスタントソーサリーが多いため《セッジムーアの魔女》が多くトークンを生み出してくれます。タフネス2で生き残り辛いスタッツですが、生き残ればアグロ相手には時間を稼いでくれコントロールには相手に圧力をかけてくれるといったようにどんな相手にも仕事をしてくれるクリーチャーになっています。

コントロールと言えばメタゲームに合わせたデッキ構築が見せ所の一つですが、メインから《強迫》や《才能の試験》といったカードも積まれており特にイゼット天啓を見据えた構築になっています。その分アグロには弱くなっていますが、殆どイゼットな環境であった本大会では有効なアプローチとなり好成績を残す結果となっています。

Dimir Delver

まさかのディミーアデルバーデッキです。デッキ名見た時には間違いかな?と一瞬勘繰ってしまうくらいのインパクトがあります。

ディミーア型となったことで選択されたクリーチャーは《隠し幕》と《墓地の侵入者》。前者は1ターン目から壁になりつつも変身すれば手札干渉する上に攻めていけるため、どんな相手にも強力なクリーチャー。後者は墓地を取り除けるのがイゼット天啓に有効に働くのがポイントです。またクリーチャー以外では当然黒の優秀なクリーチャー除去という選択以外で《戦慄の遁走》を採用しているところが興味深いです。白単アグロのようなデッキには1マナから唱えていけますし、1枚唱えて手札を覗けたら以降は3マナで使うか1マナで使うかといった選択も容易になるので採用するなら4枚入れるほうが強いであろうカードです。

スタンダードラウンドは5-3とギリギリ勝ち越しという結果で大きく勝ったという訳ではないのですが、独創的なデッキでこれだけの結果を残したというのは手放しに素晴らしいことだと思います。


さて、今後としてはひとまず禁止改定でイゼット天啓にメスが入るのかどうかというのが最も注目されるところでしょう。禁止改定で《アールンドの天啓》もしくは《感電の反復》といったカードが禁止になる可能性は高そうですが、どうなるでしょうか。公式の発表に注目です。

スポンサーリンク

11月4週目:環境に睨みを利かせる天啓

「イニストラード:真紅の契り」のリリースから時間も経ち環境に対する変化も凡そ見えてきました。

簡潔に述べるなら「ラクドス吸血鬼やゾンビといった新しいアーキタイプはいくつか登場したものの、既存の強アーキタイプである白単、緑単、イゼットには一歩及ばないということ。イゼットも《船砕きの怪物》を得てはいるが、基本的に強化されたのはアグロデッキであるため更にアグロが主流の環境となった。」ということでしょう。

実際に現在のメタゲームはイゼット以外のデッキは概ねアグロデッキ(クリーチャーデッキ)です。となると、イゼット以外に勝てるならイゼットはある程度諦めて他のデッキで星を取れるほうが成績の上振れも見込めるだろうと考えるプレイヤーが増えるのは自然なことでしょう。実際に今週はそのように考えたであろうプレイヤーが多いようで、それはオルゾフの使用率が大きく上がったことが示しています。今週は「Red Bull Untapped InternationalStop Ⅵ」と「日本選手権 SEASON3」を中心に振り返ります。

前述のオルゾフはコントロールタイプやミッドレンジ型といったようにプレイヤーによって違いが見受けられはしますが、基本的にアグロデッキに強いというのは共通しています。イゼットを諦めると先ほど述べはしましたが、せめて運が良ければ勝てるという程度の勝率を確保しておくためにもアグレッシブな要素を入れて工夫を凝らしているのが最近のオルゾフのトレンドになっています。

上記は「日本選手権 SEASON3」TOP8入賞のオルゾフです。2マナ域に攻撃的なクリーチャーを多めに採用することで攻撃的な動きもできるようになっていながら《ヘンリカ・ダムナティ》《食肉鉤虐殺事件》といった明確にアグロに強いカード、加えて消耗戦にも強い《魅せられた花婿、エドガー》《不笑のソリン》《蜘蛛の女王、ロルス》といったカードで中盤の戦線を支えるようになっています。

コントロール型と比較するとアグロ相手の耐性は若干下がりはしますが、自分からプレッシャーを与えられるカードを多めに入れておくことでアグロにもコントロールにも(ある程度は)戦えることを目指した構築となっています。「Red Bull Untapped InternationalStop Ⅵ」の上位にも良く似た以下のオルゾフが入賞していますから、現在要注目のデッキとも言えるでしょう。

こちらも思想は同じですが《魅せられた花婿、エドガー》も抜いて、より攻撃的なタイプに仕上がっています。《軍団の天使》まで入っておりアグロデッキをメタったアグロデッキと言っても差し支えない動きになってきます。

こちらはコントロール寄りのオルゾフ。お馴染みの《雪上の血痕》《食肉鉤虐殺事件》といった全体除去が豊富に採用されているタイプです。手札破壊も多めに入っており序盤のブロッカーとしても機能する《隠し幕》が目を引きます。そんな手札破壊も相まってイゼット天啓(イゼットターン型)以外のイゼットなら戦えそうな構築となっています。

このようにアグロデッキを中心に目を向けられている中で大会を制したのは日本選手権もRedBullも「イゼット天啓」でした。

上記が日本選手権を制したリストになっています。メインはオーソドックスな構築になっていますが、サイドにクリーチャーを多めに採用しておりサイド後はイゼットドラゴンにもなれるようにカードが採用されています。リスト公開制のイベントではこういったサイドを見せるだけで相手のサイドボードを惑わせることができるためサイド後の駆け引きで差を付けることができるようになっています。

こちらはRedBullイベントを制したリストです。このリストはイゼット天啓とイゼットドラゴンをハイブリッド型にしたような構築となっており、メインに《アールンドの天啓》を2枚にしつつクリーチャーが多めに入っているため天啓コンボに頼り切らないタイプになっています。

こういったようにイゼット天啓は各アーキタイプの要素をハイブリッドに混ぜ合わせるタイプサイドボードの心理戦も含めてプレイヤーの好みで微妙な違いが見られます。とは言え基本的に《アールンドの天啓》《感電の反復》のコンボを内蔵しており、オルゾフのような盤面干渉型のデッキの台頭に睨みを利かせる存在になり続けています。

ある意味バランスを取っているとも言えるかもしれませんが、このアーキタイプは現環境において本当に大きい存在になっていますね。



来週はいよいよイニストラードセットのチャンピオンシップが開催されます。どちらかと言うとスタンダードよりヒストリックのほうが要注目な感もありますが、スタンダードで白単、緑単、イゼット以外のあっと驚くような構築が見られるのかどうか期待しています。

スポンサーリンク

11月2週目:イニストラード:真紅の契りがもたらす変化

11月11日にMTGアリーナに「イニストラード:真紅の契り」が実装され、その直後の週末である11/13~14にスタンダードの大規模オンライントーナメントが開かれたことで早速スタンダードに「イニストラード:真紅の契り」がもたらした変化が表れ始めています。

「Reb Bull Untapped InternationalStop Ⅳ」には参加者約980名「Crokeyz Crimson Vow Tournament」には約360名と盛況であった2つのトーナメントを中心に「イニストラード:真紅の契り」による変化を考察します。

とは言えリリースからまだ2~3日であった週末です。流石にまだデッキを練るための時間はそこまでなかったであろうということもあったためか、最も活躍したアーキタイプは《スレイベンの守護者、サリア》を得たことで誰がみてもわかりやすい強化を受けた白単アグロでした。

上記は「Reb Bull Untapped InternationalStop Ⅳ」を制した白単アグロのリストです。新戦力《スレイベンの守護者、サリア》は白単アグロ同型以外に効かない相手は殆どいないといっても過言ではないクリーチャーであり当然採用されていますが、悩ましいのは既存のリストから《スレイベンの守護者、サリア》のために何を抜くのかというところでしょう。

上記のリストでは4枚定番であった《精鋭呪文縛り》を少し減らしているのが特徴的です。《精鋭呪文縛り》はどの相手にも作用しますが特に刺さる相手が《スレイベンの守護者、サリア》が有効なデッキと近い傾向にあるために少し枚数を減らしているのかもしれません。また《スレイベンの守護者、サリア》によってコストが増えてしまう《運命的不在》を排除し《粗暴な聖戦士》《スカイクレイブの亡霊》へ多めにスロットを当てているという理にかなった構築がなされています。

これにはイニストラード:真紅の契りによって強化されるデッキかつ環境初期に多いのはアグロデッキと想定されることもあっての変更という理由もあるでしょう。何れにしても無敗での優勝を成し遂げたこのリストは今後の白単アグロのお手本の一つとなりそうです。

「Reb Bull Untapped InternationalStop Ⅳ」のTOP8を見渡すと白単アグロが4人と最多(使用者も最多)。他はイゼット天啓3名、緑単アグロ1名と相変わらず見慣れたアーキタイプが並んでいます。イゼット天啓に関してはあまりリストに変化はないながらも相変わらずの強さを発揮していますが緑単アグロにはいくつかの変化が見られました。

上記のリストがそうであるように《隆盛な群れ率い》は多くの緑単アグロで採用されています。これまで1マナ域はどちらかと言えばあまり採用したくない《ヤスペラの歩哨》くらいしかありませんでしたが《隆盛な群れ率い》によってより早くから動き出すことが可能になっています。

また上記のリストで特徴的なのは同じく「イニストラード:真紅の契り」のカードである《ウルヴェンワルドの奇異》です。これは単純にスペックの良いクリーチャーという側面だけでなく《隆盛な群れ率い》とのシナジーを意識したものでもあるでしょう。実際のところこのカードを除くと《隆盛な群れ率い》の能力誘発トリガーは《エシカの戦車》くらいしかありません。

そしてサイドには墓地対策もかねる《墓所のうろつくもの》と特に同型対決で圧倒的な強さを誇る《アヴァブルックの世話人》も採用されています。《アヴァブルックの世話人》はリミテッドでもあまりの強さに舌を巻いた方も多いのではないでしょうか(筆者もその一人です)

《隆盛な群れ率い》は今後定番になりそうですが《ウルヴェンワルドの奇異》も今後の採用率に注目していきたいところです。


そして、TOP8入賞とはならなかったですが注目すべきデッキとして以下のデッキを挙げない訳にはいきません。

パットと見はイゼット天啓のように見えるかもしれませんが《アールンドの天啓》は入っておらず変わりに入っているのは《船砕きの怪物》。そのためアーキタイプとしてはイゼットコントロールとなりますが、これはもはや《船砕きの怪物》デッキと言っても差し支えないでしょう。

《船砕きの怪物》は一度盤面に出てしまえば、その巨大なサイズに加えてスぺルからパーマネントまでバウンスしまくる能力により盤面制圧する力が半端ではありません。バウンスして凌いでいる間に数回攻撃すればゲームに勝つことができます。また打ち消しされない瞬速持ちのため青同型には特に強く、打ち消される可能性もある《アールンドの天啓》とは違いリスクの低い立ち回りが可能になっています。

またこういったリストでサイドに2枚という絶妙な枚数の《黄金架のドラゴン》を採用しているところがニクいなと思わされます。《黄金架のドラゴン》は生かしておきたくないので飛行クリーチャーを破壊するといったカードをサイドインしてでも対処したいクリーチャーですが2枚となるとサイドインするかどうか躊躇いますし、そもそも《黄金架のドラゴン》を必ず入れてくるかもわかりませんので非常にサイドボードを惑わされます。結果的に《黄金架のドラゴン》が生き残る確率は大きくあがることでしょう。

何と言ってもこのリストの使用者はMTG界世界最高峰プレイヤーでもあるSeth Manfield選手ということあって非常に注目されていることでしょう。シングルエリミネーション初戦で敗退となりましたが、それまでは土つかずの9勝をあげています。新しいイゼットの形の1つとなることは間違いありません。

もう一方のトーナメントである「Crokeyz Crimson Vow Tournament」を優勝したのはオルゾフコントロールでした。

以前から存在するアーキタイプでアグロ全般に強いデッキです。「イニストラード:真紅の契り」からのカードである《魅せられた花婿、エドガー》によってデッキの粘り強さが向上しており、デッキ内に多く存在する全体除去に巻き込まれても変身することでずっと生き残り続けるため攻防共に強化されています。また《不吉なとげ刺し》は《ひきつり目》や《よろめく怪異》といったクリーチャーを濫用先として用いつつ、ドローを進めながらも接死によって本体そのものも強力なブロッカーとして機能します。

総じてアグロ耐性は「イニストラード:真紅の契り」によって更に向上したと言えそうです。優勝という結果もアグロデッキに多くマッチアップしたのも要因なのは間違いないありません。一方イゼット天啓といったデッキは相変わらず厳しく、実際のところ今回はマッチングしていなかったのでそれはメタ読みが正しかったということに加えて幸運だったというのもあるでしょう。使用するときはメタ読みが非常に重要となるアーキタイプです。


最後に今回はそこまで大きな結果は残せなかったものの「イニストラード:真紅の契り」によって強化された筆頭の部族である「吸血鬼」と「ゾンビ」デッキに触れたいと思います。

まずは黒単ゾンビです。もともと似たようなリストは存在していましたが優秀なゾンビが多く収録されたことでデッキパワーが向上しています。オルゾフで触れたようにここでも《不吉なとげ刺し》が使われていますが、《首無し騎手》と《スレイベンの大グール》の2種3マナクリーチャーによりクリーチャーが死亡したときのボーナスが大幅に増えたことが以前と比べると大きな違いです。

これにより消耗戦に更に強くなりました。以前としてクリーチャーの質そのものは高くないものの《食肉鉤虐殺事件》も相まって得意な消耗戦に持ち込めば非常に強力なデッキとなっています。まだまだリストは今後洗練されていきそうですし伸びしろも充分なデッキです。

イニストラード:真紅の契りのレビュー時点でも注目を集めていたのは赤黒の吸血鬼デッキです。デッキリストを一目見ればわかるように「イニストラード:真紅の契り」のカードが多数使用されています。

基本的には赤黒のアグロデッキとして相手を追い詰めていきますが「イニストラード:真紅の契り」の新しいメカニズムである血トークンがこのデッキの持ち味。血トークンによって手札を循環させるだけでも特にゲーム中盤以降の手札の質の向上に役立ちますが《面汚しの乙女、エインジー》により血トークンで2点ドレインできるため仮に盤面を取られて攻撃に行けなくても間接的にダメージを与えていけるようになっています。

またサイドには《吸血鬼の復讐》により一方的に2点ダメージを相手にばらまくことができる強みもあり、それによって白単アグロには有利がつくアーキタイプとなっています。白単アグロが多いという現在のメタゲームも相まって今後も活躍が期待されます。



これらのように「イニストラード:真紅の契り」によってスタンダード環境に間違いなく変化は起きています。白単アグロ緑単アグロイゼット天啓といったトップメタの勢力図がどう変わっていくのか。また他アーキタイプがどの程度今後のメタゲームに食い込んでくるのか楽しみです。

スポンサーリンク

10月5週目:環境終盤に活躍するジャンド宝物

次の新セット「イニストラード:真紅の契り」のMTGアリーナのリリースである11/11が近づいてきたこともあって現環境は終盤を迎えています。

終盤となっても「緑単アグロ」「イゼット天啓(イゼットドラゴン)」「白単アグロ」という3種のカラーが大半を占め、ティムール宝物や青のコントロール等がそれらに続いているといった状況であることは相変わらずなのですが、終盤になってにわかに注目を集めているのはジャンド宝物でしょう。

ジャンド宝物は今週の勝率だけで見ればトップの数値を叩き出しているという点も注目すべきところでしょう。何を隠そう筆者も数週間前からジャンド宝物は強いと感じておりずっとプレイし続けてきていたりします。今週はそんなジャンド宝物について触れていきます。

Red Bull UntappedⅢで上位入賞されていた方のリストが上記です。

ジャンド宝物のリストは比較的プレイヤーによってバラつきがありますが、基本構成としてはお馴染みの《ヤスペラの歩哨》《厚顔の無法者、マグダ》《裕福な亭主》といった宝物を絡めたマナ加速から《エシカの戦車》《黄金架のドラゴン》といったカードを高速に展開するという構成となっており、そういった意味ではティムール宝物と大筋は同じです。ティムールと大きく異なるのは《イマースタームの捕食者》クリーチャー除去カードの差になってきます。

クリーチャー除去はこのデッキでは裏目を引かない《冥府の掌握》が採用されています。このカードは2点ライフが痛いので4枚採用はし辛いですが他のクリーチャー除去カード候補である《ドラゴンの火》といった火力除去の弱点であるサイズをもろともせず《パワー・ワード・キル》のようにドラゴンを除去できない弱点もありません。特に《くすぶる卵》が変身すると負け目になるので《くすぶる卵》を除去できるカードというのは一つの除去カードの採用ラインとして考えておくべき事項になります。

当然サイドボードになるとそういった裏目を引かないように優秀な除去が多く採用できます。特に《パワー・ワード・キル》は《バーニング・ハンズ》と違って緑単、白単双方にほぼ完璧な除去(《不詳の安息地》以外)として機能する点で優れています。こうした除去カードの存在もあって、アグロデッキ相手に戦いやすくなっているのはティムール型とより優れているポイントと言えます。

もう一つ、むしろこれが最大のタッチ黒の理由だと筆者は思っていますが《イマースタームの捕食者》が強いというのがジャンド型の大きなポイントでしょう。緑単には全く手出しができない能力に加えて戦闘では無敵とも言える強さ。墓地からカードを取り除くこともフラッシュバックや《溺神の信奉者、リーア》を有するイゼット系には無駄になりません。《家の焼き払い》といった全体除去も臆することなく展開できますし《黄金架のドラゴン》にも一方的に打ち勝つことができます。イゼットも根本的に対処できないためバウンスでお茶を濁すしかありません。白単には《スカイクレイブの亡霊》で除去されてはしまいますが、それでも飛行クリーチャーを完璧に止めてくれるため大いに活躍してくれます。・・・と本当に主要デッキ全てに無双の活躍をしてくれるクリーチャーです。また《ヤスペラの歩哨》《裕福な亭主》といった後半に無駄になりがちなクリーチャーも《イマースタームの捕食者》を守るための生け贄要員となるという点でもデッキに噛み合っているのは素晴らしいです。

特に対緑単アグロは《イマースタームの捕食者》の対処手段が殆どないこともあり、ジャンド宝物は緑単アグロに相性が良いデッキになっています。白単アグロに対しても優秀な除去の数々で比較的有利に立ち回れます。

イゼットはドラゴン型であれば《イマースタームの捕食者》と除去カードが《黄金架のドラゴン》への回答となるためティムール型より戦いやすいですが、イゼット天啓に関しては《アールンドの天啓》に根本的には対処できないためカウンター呪文有するティムール型のほうが戦いやすいです。イゼット天啓相手には《アールンドの天啓》《感電の反復》コンボを決めるためのマナにたどり着かせないするため手札破壊で《表現の反復》のようなリソースカードを抜いたり《真っ白》でスムーズな展開をさせないように立ち回ることになります。土地を伸ばす必要があるためカードを無駄にできないイゼット天啓に2枚捨てさせるというのは見た目よりずっと効果的です。

他には《ヴォルダーレンの末裔、フロリアン》や《墓地の侵入者》を採用するタイプも存在しますが、私としてはこれらの3マナ域を取るのではなく2ターン目のマナ加速から3ターン目に4マナ域の《エシカの戦車》《イマースタームの捕食者》に繋げることに注力したタイプのほうが強いように感じます。

こういったように決して主要メタデッキに見劣りしないのがジャンド宝物の魅力になっています。現在のスタンダードの中で私がおすすめするデッキの一つです。まだ手に取ったことがない方は是非プレイしてみてください。


さて、冒頭で述べたように「イニストラード:真紅の契り」のリリースが近づいてきています。現環境はここまでとし次回は「イニストラード:真紅の契り」を交えた形でスタンダードを見ていこうと思います。

スポンサーリンク

10月3週目:3強の支配は継続中

今週から大規模のトーナメントとなっているRed Bull Untappedの6回に分かれているInternational Stopの第一回目が開催されました。

参加者は1000名を優に超えており、イベント開始時にはMeleeが重すぎてトーナメントが中々進捗しない程の盛況っぷりでした。このトーナメントの結果を振り返っていきます。

トーナメント全体のメタゲームとしては緑単イゼット(天啓+ドラゴン)白単の3強が突出しており、引き続きこの3強が支配していることは揺るぎありません。このあたりは世界選手権からあまり変わりがありませんが、一時期は鳴りを潜めていたイゼットドラゴンがイゼット天啓型に迫るほどの数が存在するようになったのはやはり世界選手権優勝という結果を残したからに他なりません。

なお、イゼットを合計100%とするとその内の約45%がイゼットドラゴンとなっていましたから殆ど半々に近い数値です。またイゼット2色でも《溺神の信奉者、リーア》を採用する型も出てきており、イゼット天啓には不要であったタフネス4以上を除去できるクリーチャー除去カードの必要性は増してきているとも言えるでしょう。

アーキタイプ毎の詳細は以下の通りです。(2日目の使用者数2名以下は省いています)

アーキタイプ全体数2日目進出2日目進出率
Mono-Green Aggro21523約11%
Izzet Dragons15412約8%
Temur Treasures607約12%
Mono-White Aggro1626約4%
Izzet Epiphany1926約3%
Red Bull Untapped International Stop 1 メタゲーム

全体的に見ると、イゼットが数に対してやや苦戦しているのが見て取れる点、また緑単アグロティムール宝物の2日目進出率が優れていた点が特徴的です。特に緑単アグロのアーキタイプ数もトップでありながらの勝ちっぷりは注目に値します。トーナメントを優勝したデッキも緑単アグロ、上位4人中3名が緑単アグロと、まさにこのトーマネントの勝ち組デッキであったのは間違いありません。

世界選手権ではパッとしませんでしたが、それ以外のトーナメントでは相変わらずの活躍ぶりです。

上記が優勝となった緑単アグロのリストです。メインはオーソドックスですがサイドボードに取られている《タジュールの荒廃刃》が4枚も取られていることと、《戦闘マンモス》が採用されていることの2つは比較的珍しいように思います。

特に緑単同型対決は先行が相当に有利で若干先手ゲーな感も拭えませんが、《タジュールの荒廃刃》はどちらかと言うと相手の攻撃を受けるタイプのカードであり特に後攻で真価を発揮するカードです。後手の不利を少しでも覆すために4枚採用されているものと思います。逆に先手であれば4枚フルで入れないようにしているかもしれません。こういった細かな工夫が結果に結びついたのかもしれませんね。

《戦闘マンモス》は主にイゼットに対するものだと思いますが定番の《フロギーモス》よりこちらを優先したようです。どちらにもメリットデメリットがあるので一概にどちらが良いのか言い切れませんが《戦闘マンモス》もアプローチの一つとして覚えておいたほうが良さそうです。


その他のデッキは主に世界選手権で活躍したリストと大差ない物が多いですが、6位に入賞していたティムール宝物のリストが個性的だったのでそちらをご紹介します。

基本的には世界選手権で活躍したリストとなっていますが《否認》の枠に《断固たる否定》を採用しているところが面白いところになっています。

《断固たる否定》は申し分ない程使い勝手が良く《アールンドの天啓》も打ち消しできますし、格闘によるクリーチャー除去としても使える万能カードです。格闘は特にサイズで勝る白単アグロに対して使いやすいでしょう。ティムール宝物にこのカードを入れるというのは理にかなっているように思えます。

またクリーチャー除去には《ドラゴンの火》より《轟く叱責》を優先しています。それほど確実に4点ダメージが欲しかったという現れで、特に生存を許すと負け筋となる《くすぶる卵》や《溺神の信奉者、リーア》《黄金架のドラゴン》を確実に対処できるように意識したものと思います。それはサイドの《悪魔の稲妻》にまで現れているあたりにも使用者の意識が感じられます。



メタゲームとしては殆ど固まった感のある現スタンダードですが、メインボードの数枚やサイドの数枚の細かな差で他のプレイヤーと差をつけようとしているリストもよく見かけますし、そういった違いが勝敗に少なからず影響を及ぼしていることは想像に難くありません。

恐らく《アールンドの天啓》も《エシカの戦車》も少なくても次セットリリースまでは禁止カードになるということはなさそうな感じですので、上記のリストのように細かな工夫をしながら現スタンダード環境を楽しむことが良さそうです。

スポンサーリンク

10月2週目:世界選手権でのスタンダードの行方

MTGプレイヤー注目の第27回世界戦選手権が開催されました。スタンダードのメタゲームブレイクダウンとしては以下になりました。

やはり緑単と《アールンドの天啓》の2トップ。そこに最近人気上昇中の白単アグロが追従する形で大きく3つ巴のメタゲームになっています。

メタゲームの内訳自体はもともと予想されていたものからはあまり逸脱することはなかったですが、グリクシス型の《アールンドの天啓》デッキが多いことと使用者1名のデッキについてはやや予想外のものであったと思います。そしてこの使用者1名のイゼットドラゴンティムールトレジャーが1、2フィニッシュとなったことにも驚かされました。

この世界選手権のスタンダードラウンドに絞った各デッキの予選ラウンドの勝率については以下の通りです。7マッチしかなく偏りも当然起こりはしますが、SCGチャンピオンシップ予選を含めた結果と見比べると緑単の勝率の違いが印象的です。特にグリクシスとイゼットの《アールンドの天啓》デッキへの勝率が芳しくなかったですが、相性的にも緑単が微有利という程度ですからこれくらいの偏りがあっても不思議なことではありません。

 Total
WinRate
Mono-Green AggroIzzet EpiphanyMono-White AggroGrixis EpiphanyIzzet DragonsAzorius TempoTemur Treasures
Mono-Green Aggro28%17%50%40%0%100%0%
Izzet Epiphany47%83%0%50%0%100%0%
Mono-White Aggro43%50%100%0%0%50%0%
Grixis Epiphany60%60%50%100%0%50%100%
Izzet Dragons100%100%100%100%100%100%
Azorius Tempo29%0%0%50%50%0%
Temur Treasures71%100%100%100%0%

それでは具体的なデッキリストについて見ていきます。

世界選手権優勝に輝いた日本人プレイヤー高橋選手のイゼットドラゴン。何と構築ラウンド負けなしでの優勝という驚異的なスコアを残されました。

デッキの構成としてはオールド型とも言える《黄金架のドラゴン》を採用したタイプです。取り立てて目立った点はなく比較的オーソドックスなリストになっていますが、クリーチャー除去を《轟く叱責》も含めて4点を意識したというところについては見てとれるところです。最も4点が欲しいのは《くすぶる卵》になってきますが、今回グリクシスに採用されていた《溺神の信奉者、リーア》というターゲットが存在したことも、このチョイスがうまく作用したことは想像に難くありません。グリクシス型が結構多かったこと、加えて《レンと七番》をそこまで見なかったことはイゼットドラゴンにとって追い風であったことでしょう。

反面、特に完全ノンクリーチャーのイゼット型《アールンドの天啓》デッキは苦手になります。今回優勝したことでイゼットドラゴンはまた人気を少し取り戻すかもしれませんが、イゼットターンであればこのデッキには有利に戦うことができるでしょう。

グリクシス型の《アールンドの天啓》デッキ。《溺神の信奉者、リーア》が採用されているところが最も目を引くポイントです。タッチ黒にしたことで特に青相手に《強迫》から仕掛けやすくなっているところが最も黒の恩恵を受けている部分で《溺神の信奉者、リーア》も《強迫》といったカードとは相性抜群です。その分《ゼロ除算》が採用されていないのもイゼット型とは異なる点でしょう。

タッチ黒にしたことで手札破壊による青いデッキである《アールンドの天啓》への対抗、黒の除去による緑デッキの耐性獲得、とタッチ黒することで2トップのデッキに対して理論上は有利になるように思えますし、本トーナメントにおいても高い勝率を残しています。今回は《溺神の信奉者、リーア》寄せの構築とはなっていますが《溺神の信奉者、リーア》を入れない形もあるでしょうし、今後はよりグリクシス型が増えてもおかしくはありません。

また3色をサポートする《セレスタス》は最近評価を上げているカードで、マナサポートだけでなく手札を循環してくれるというのは相手のデッキ次第で有効不要の差が大きいカードを入れ替えることができるという決して小さくない利点になっています。

マグダグルールのタッチ青というのが基本構図ですが《裕福な亭主》まで採用することで2マナ→4マナへのジャンプに重きを置いた構築になっています。3マナ圏の《無謀な嵐探し》がメインでは2枚に抑えられていますし、4マナ圏に《エシカの戦車》だけでなく《月の帳の執政》が3枚採用されていることからも一貫した構築が伺えます。特に緑単では先に4マナ圏の《エシカの戦車》を展開(して攻撃)できた方が優位に立ちやすく、後手であっても先手後手をひっくり返す可能性を少しでも上げようとする意図が感じられます。

否認は現環境では比較的万能なカウンターですが当然《アールンドの天啓》を最も意識したものです。このデッキはこれらのアプローチにより24トップのデッキに対抗するように構築されています。

サイドの2マナ3マナクリーチャーに違和感を覚える方もおられるかもしれませんが、これは《裕福な亭主》のようにマナ加速に特化した故に単体では弱いカードを採用しているため、1枚1枚のカードの強さが重要になるコントロールデッキ相手を想定したサイドボードになっています。特にサイド後はますますクリーチャー除去が増えてきますので、単体では弱い(=放置しても害が少ない)カードは相手の時間稼ぎにとって都合の良いものになってしまいますから注意が必要です。



そして、世界選手権の裏で行われていたSCGチャンピオンシップ予選は緑単アグロが優勝、上位には緑単アグロ、イゼット、白単しかおらず、やはりこの3アーキタイプが圧倒的なまでの割合を占めるのが現在のスタンダードということでしょう。少なくても《アールンドの天啓》が環境を歪めてしまっている感は拭えません。

11月の新セットまでこの状況が続くのか、それとも何らかのテコ入れがあるのか、はたまた新しいデッキが登場するのか、来週以降もスタンダードの行方を追っていきます。

スポンサーリンク

10月1週目:エシカの戦車 vs アールンドの天啓

今週はスタンダードのイベントが多数開催され、急速にメタゲームが進んだ週になりました。

結果として現在のメタゲームは圧倒的なまでのイゼットと緑単の2強状態。他のアーキタイプを鑑みても現在の環境を一言で言えば《エシカの戦車》vs《アールンドの天啓》環境といっても過言ではありません。それくらいこの2枚の採用率は突出しています。

どうしてもカードプールが狭いと一部のカードが支配的な強さを見せやすくなるのですが、現環境の《エシカの戦車》と《アールンドの天啓》はまさにその道を行っているカードです。別ページでまとめているメタゲーム内訳のTOP8の中のアーキタイプの中でも、どちらかのカードを採用しているデッキばかりが占めておりどちらも採用していないのは白単アグロただ一つです。これだけでもちょっとした異常な状態であることがおわかりいただけるかと思います。

特に緑単アグロに関しては目立った結果を残しているのも特筆すべきところでしょう。

SCGチャンピオンシップ予選を優勝したのが上記の緑単アグロです。SCGチャンピオンシップ予選のTOP12のデッキの内、緑単アグロは7デッキを占めるという驚異的な結果を残しています。

緑単アグロのリストは結構人によって細かい違いがあり、多くは《レンと七番》を採用しています。緑単以外でも《レンと七番》は《エシカの戦車》と組み合わせて使うのが前提とも言えるくらいこの2枚をセットで使うデッキは現環境に溢れています。

上記の優勝者リストは緑単同型では切り札となる《不自然な成長》をメインに採用しており、より緑単を意識したリストになっています。緑単同士はクリーチャーの物量勝負になりますので《不自然な成長》を出すと途端にサイズ差で圧倒的に優位に立つことができる上にメインでエンチャントを割る手段を入れているデッキは殆どないのも追い風です。まさに緑単ミラーのメインデッキの勝率の高さが今回の結果をアシストしたことは想像に難くありません。

イゼットに対しても火力で対処し辛いクリーチャーが多いことから比較的優位に立ち回ることができ、実際に今週の結果を見てもイゼットにはやや有利と言える結果を残しているのもトップメタであることの理由の一つでしょう。


そしてもう一つのメタゲームの双璧を成すデッキであるイゼットターン。現在のイゼットデッキは圧倒的にイゼットターン型が主流になっています。

《くすぶる卵》に関しては採用有無は人により異なりますが、少なくても前環境の定番であった《黄金架のドラゴン》に関しては入っていないタイプのイゼットデッキがイゼットターンです。《黄金架のドラゴン》が強いカードなのは揺るぎありませんが《レンと七番》のトークンが到達を持っていることで、これを乗り越えられずに立ち止まってしまうケースが飛躍的に増えました。

《レンと七番》が溢れる現環境では《黄金架のドラゴン》は相対的に弱くなってしまったことで、現在は不採用とするほうが賢明であると言えそうです。

このイゼットターンデッキは《アールンドの天啓》を《感電の反復》でコピーする=ゲームに勝利するといっても過言ではないデッキで、そのイメージとしては前環境の出現の根本原理》に近いです。とにかくこれを唱える=勝ちというわかりやすいゴールを持っており、これに対処できないデッキには軒並み有利に立ちます。

特に青ではない中速デッキ、例えばオルゾフや黒コントロールのような緑単には強いデッキ達はこのイゼットターンからするとお客さんのような扱いになってします。《強迫》のような手札破壊も予顕で触れなくなってしまう《アールンドの天啓》には手出しができません。こういったように緑単に勝ちにいこうとするとイゼットターンに勝てないという何とも歯痒い状態が現在のメタゲームが抱えているジレンマの一つになっています。

そんな緑単とイゼットに割って入ろうと浮上してきているデッキが白単アグロです。

白単アグロは現環境のアグロデッキでは最も高速なデッキで、1マナ圏から怒涛のようにクリーチャーを展開するデッキです。

そして3マナ圏には《スカイクレイブの亡霊》や《粗暴な聖戦士》のようにクリーチャー除去を兼ねるクリーチャーの存在により、緑単のクリーチャーをどかしながら攻めを継続することが可能なためクリーチャーサイズでは劣る緑単相手にも先に差し切ってしまうことも多く引けは取りません。今週の結果だけ見ればやや勝ち越しているくらいです。

そして環境を牛耳っている《エシカの戦車》《レンと七番》《アールンドの天啓》の全てに刺さるのが《傑士の神、レーデイン》です。どの相手にも無駄になる可能性が低く、現在の環境にとてもマッチしているクリーチャーだと言えるでしょう。

イゼット相手には相手のデッキ構成によって有利不利は大きく変わります。特に大半のクリーチャーを簡単に一層してしまう《燃えがら地獄》の有無は対戦結果に大きくかかわります。ただイゼット側としては《燃えがら地獄》は緑単に聞き辛いため現在は避けている傾向にあります。これが追い風になっているのが現在の白単アグロなのです。

単体除去では怒涛のように展開する白単アグロにはとても追いつきません。《巨人落とし》亡き今、白単アグロが対処できなくなってしまった《黄金架のドラゴン》がイゼットに抜けてきているのも白単アグロにとっては嬉しいポイントです。そのため今週はイゼットに対しても勝ち越しており、SCGチャンピオンシップ予選ではTOP12に3つを送り込んでいます。

白単の存在はイゼットのデッキ構成にも今後影響を与えそうです。


さて、来週は世界選手権が開催されます。緑単アグロとイゼットが支配するのか。それとも両デッキに勝ちを見込めるデッキを持ち込むプレイヤーが現れるのか、結果がとても楽しみです。

スポンサーリンク

9月4週目:環境初期特有の混沌としたメタゲーム

執筆時点ではまだ新スタンダードで大きなイベントがまだ開かれていないこともあり、現時点では環境初期特有の混沌としたメタゲームが続いています。

アーキタイプはいくつか目立つものも出てきているもののデッキを構成するカードも個人個人で結構なバラつきが見られる状況でまだまだ一概にはメタゲームがこうであると言い切ることもできない状況が続いていますが、そんな中でも現状は緑赤アグロイゼットの2種が混沌としたメタゲームの中でもTier1と言える状況となっているのは間違いなさそうです。特にイゼットに関しては時間を経る毎にますます頭角を現してきている感がありトップメタ筆頭でしょう。

今週はMTG Onlineで結果を残しているいくつかのデッキをご紹介します。まずは赤緑アグロです。

先週に赤緑アグロは狼男型とマグダ型に分岐している傾向にあると記載していましたが、上記のリストは両者をハイブリッドしたようなデッキリストになっています。《ヤスペラの歩哨》《厚顔の無法者、マグダ》無しではどうしても初速で劣るのが気になりますが、このリストでは《群れ率いの人狼》も合わせて採用しつつ序盤を意識した構成になっているのが印象的です。

狼男型は《深夜の災い魔、トヴォラー》や《群れ率いの人狼》によりアドバンテージを稼ぐことができる点で粘り強く戦えるのが特徴です。その分、狼(男)を一定数デッキ内に確保することが必要で、特にサイドボード後も《深夜の災い魔、トヴォラー》を残しておくのであればデッキ内の狼(男)の数を意識して残しておく必要があります。つまりデッキの構成にある程度の縛りがかかってしまうという点が短所としてあります。

そしてもう一方の赤緑アグロの形であるマグダ型で構築されているのが以下の形です。

上記は狼男のシナジーを意識しないタイプの赤緑アグロです。

前スタンダード環境のグルールマグダを新環境にそのままアップデートしたようなリストになっています。狼型と異なるのは先に述べたようなデッキ構成を縛る要素(狼縛り)がなく柔軟なデッキが構築できること、プレインズウォーカーに《レンと七番》が採用されていることでしょう。

このリストでは《火遊び》に加えて《ドラゴンの火》まで除去カードとして採用しています。《ドラゴンの火》は現環境に溢れている《無謀な嵐探し》や《群れ率いの人狼》のように《火遊び》では対処できないタフネス3を意識した選択でしょう。マグダ型だとこういった除去カードの採用も柔軟に選択できますし、このデッキのようにタッチ青してカウンターを積むことも可能で、メタゲームに合わせてデッキを変化させてやすいのも特徴の1つです。

カウンターの的としては主に黒の全体除去か《アールンドの天啓》になってくると思いますが、それらに対して青をタッチしてまで採用したほうが良いのかは懐疑的なところがあります。サイドボードに余裕があるなら採用するのも良さそうに思います。

そして《レンと七番》は何と言っても《エシカの戦車》との相性が抜群であることが採用に値する最も大きな理由です。《レンと七番》で生み出したトークンは概ね4/4以上で、そのトークンを《エシカの戦車》でコピーすることで大型のクリーチャーを簡単に複製できてしまいます。アグロ対決では大きいクリーチャーを複数コントロールしている型が有利なのは当然ですが、トークンは到達持ちなので《黄金架のドラゴン》のような飛行クリーチャーの抑止力となるのも見逃せません。

《レンと七番》が強いというよりは《エシカの戦車》が強いというほうが正しい気もしないでもありませんが、何れにしても脅威的な組み合わせであることは間違いありません。


総じて個人的には赤緑アグロはマグダ型のほうが好みですが、何れにしても仮想敵として赤緑アグロを想定しておくことを怠らないようにしておいたほうが良いでしょう。


つづいてイゼットデッキをご紹介します。イゼットもデッキタイプは様々ありますがまずはイゼットドラゴンです。

イゼットドラゴンとは言っても上記のリストは既存の形とは少し異なるタイプです。《黄金架のドラゴン》と《アールンドの天啓》という組み合わせはそのままですが《くすぶる卵》をよりフィーチャーした形で全体的に構成されているのが特徴です。

《くすぶる卵》はソーサリーインスタントを要求するため、それを阻害する《ガラゼス・プリズマリ》といった定番クリーチャーは排除し、変身に相性の良い《記憶の氾濫》と《考慮》が4枚フルで採用されていることが目を引くポイントです。特に《記憶の氾濫》は《多元宇宙の警告》と枠を争うところですが《記憶の氾濫》はフラッシュバックできる点があまりにも強力で、それだけで長期戦の勝ち筋になりえるため個人的には《記憶の氾濫》のほうが好みです。

《黄金架のドラゴン》+《アールンドの天啓》もそうですが、《くすぶる卵》と《アールンドの天啓》も相当に強力な組み合わせで変身条件を簡単に満たし、裏面のドラゴンになると2点ダメージの連鎖で相手を一瞬で倒してしまうことも可能です。タフネス4という点も火力で除去され辛く、今後は《くすぶる卵》型が増えてもおかしくはありません。

なお、このリストは土地が23枚+スペル土地が2枚と《考慮》を取っている結果だとは思いますが結構少な目に見えるので、もう少し土地は増やしたほうが良い可能性はあります。

もう一つのイゼットデッキは、今後の活躍が期待されているデルバータイプです。

現状はデルバーデッキは目立った活躍を見せていませんが《秘密を掘り下げる者》の強さは疑う要素がないので、今後洗練されたデッキリストが出てくれば一気に頭角を現す可能性を秘めています。このデッキはMTGOのリーグで5-0を達成したリストです。

《秘密を掘り下げる者》や《熱錬金術師》のように飛行や間接的にダメージを飛ばすクリーチャーで構成されており、相手からするとダメージを防ぐのが難しい状況を作り出しつつ、コツコツダメージを重ねながら除去やカウンターで相手をいなしている間に押し切ってしまうことをゲームプランとしているデッキです。特に《秘密を掘り下げる者》が2ターン目から早速変身したときの強さには目を見張るものがあります。

このデッキが厳しいのは盤面に干渉する力の弱さです。一度盤面を作られてしまうとそれを跳ね返すような力をもったカードは殆どなく、とにかく自身でゲームのイニシアティブを取っていくことが必要ですのでプレイするときには注意しましょう。

バウンスが強く使えるデッキで、サイドに《消えゆく希望》が取られてはいるもののメタゲーム次第ではメインに投入したほうが良いかもしれません。バウンスがないと大きいクリーチャーが一度盤面に出てしまうと途端に苦しくなってしまいます。そういった部分も含めてまだまだ伸びしろ充分なデッキです。

イゼットは本当に種類が多く、最後はイゼットターンというノンクリーチャーデッキを取り上げます。

このデッキは相手を倒す手段が《アールンドの天啓》の1/1飛行トークン、もしくはミシュラランドのみと大胆な構成になっているのが特徴です。

カウンターや除去で時間を稼ぎながら最終的には《アールンドの天啓》を《感電の反復》でコピーすることで勝利をするという点で他のイゼットと差別化しています。《アールンドの天啓》をコピーされたら堪ったものではありませんね。

一応サイドの講義である《マスコット展示会》があるとは言え、ノンクリーチャーなので大半のデッキに入っている相手のクリーチャー除去を腐らせてしまうのは潜在的なアドバンテージとして大きいものがあります。こういった構成のイゼットがあることも考慮しておきましょう。

今週は赤緑とイゼットを中心にご紹介しましたが、他にも緑単アグロ、白単やボロスアグロ、赤黒吸血鬼、赤黒サクリファイス、セレズニアランプ、ティムールランプ・・・と様々なアーキタイプが溢れています。

今週末はSCGチャンピオンシップ予選(恐らくスタンダード)や、国内で日本選手権SEASON3予選セカコロの1次予選が始まるのでますますスタンダードは加熱していきます。今週からが本番とも言えますし、どのようなメタゲームになっていくのか楽しみです。

スポンサーリンク

9月3週目:ローテーション後の新スタンダード環境開幕

「イニストラード:真夜中の狩り」のリリースに伴い、ついに新スタンダード環境が開幕しました。

前環境はエルドレインの王権といったローテーション落ちするセットのカードが中心となっていた部分もあるため、使用可能セットのローテーションによりスタンダードはまさに激変の時を迎えています。

しかも「イニストラード:真夜中の狩り」はカルドハイム等のローテーション後も残る既存セットと比較してもカードパワーが高めになっているように見受けられるセットですから、新環境はスタンダード2022の環境からも大きく変わることは間違いありません。

そうは言ってもまだリリースされて数日と間もなく、この時期はアグロデッキが多いのは通例。例外なく現時点ではいくつか活躍を見せ始めるのは赤緑や白単といったアグロといったデッキになっています。特に赤緑に関しては狼男を中心としたタイプか既存のマグダグルールの最新型かの二つに分岐しているのが印象的です。いつかどちらかの型に落ち着くであろうと思いますが、共通して採用されている《無謀な嵐探し》は特に赤緑と相性抜群で新セットのカードの中でも目立った活躍を見せています。

加えて、特に緑は《エシカの戦車》が相当に強いカードであるということもありしばらくスタンダードの中心に君臨することになりそうに思います。

環境初期は特にアグロのような自分のしたいことを押し付けていくタイプのデッキが頭角を現しやすく受けるタイプのコントロールデッキはもう少し環境が固まってからでないと除去カードのようなスロットを検討し辛いというのが背景としてありますので、青赤や青黒のようなコントロールは追々頭角を現してくるでしょう。

青赤に関しては《秘密を掘り下げる者》デッキについても要注目ですね。

今週は新セットリリース数日でまだメタゲームとしては流動的なため手短ですが以上になります。今週は別記事で新環境のデッキ紹介記事を執筆していますので、デッキ紹介についてはそちらを参照ください。

また来週以降改めてスタンダードのメタゲームについて追いかけていきますのでお楽しみに。

スポンサーリンク

9月1週目:MPL/ライバルズガントレット – 現環境のフィナーレ

9/3~5にかけてMPL/ライバルズガントレットがスタンダードで行われました。これが現スタンダード環境において最後の大型イベントとなっていますので、現スタンダード環境の総決算ともいえるイベントとなりました。

※『エルドレインの王権』や『テーロス還魂記』『イコリア:巨獣の棲処』、『基本セット2021』は「イニストラード:真夜中の狩り」リリースに伴ってスタンダードから去ります。

ここで展開されたメタゲームはハイレベルプレイヤー達による高度な読み合いにより、事前では想像しえなかった内容となりました。私は以下のメタゲームブレイクダウンを見ただけで素直に面白いと感じました。

スタンダードの本命といえば「ナヤウィノータ」「グルールアドベンチャー」の2種アグロデッキであることは当然予想されていたことです。つまり「本命のアグロを使う」or「アグロに勝てるデッキを使う」という2択の選択肢が生まれます。このどちらを選択するかがまずはデッキ選択のスタートと言えます。


本イベントの参加者は各自の想像以上に後者のアグロを対策する側に回ったことにより、アグロ以外のデッキが大半を占めるというメタゲームブレイクダウンになったのです。

そしてアグロ対策側に回った「ジェスカイ変容」「スゥルタイ根本原理」「イゼットコントロール」には《燃えがら地獄》や《激しい恐怖》といった全体除去を多めに採用しており、中には《レッドキャップの乱闘》までメインに投入しているプレイヤーもいるほどです。特に《燃えがら地獄》は4枚採用しているプレイヤーがかなりの割合で存在しており、まさに対アグロデッキのマッチアップは絶対に取るという意思をデッキリストから強く感じ取ることができます。

使用者の割合としては特に「ジェスカイ変容」の多さには誰しもが驚いたことでしょう。恐らく「ジェスカイ変容」はアグロ向けの対策をすることでアグロに対する勝率を担保しつつ、参加者のプレイヤー的にも使用率が高そうな「スゥルタイ根本原理」に対しても相性が良いことを踏まえての選択かと思います。元々相性としては「ジェスカイ変容」のほうが有利な上、「スゥルタイ根本原理」もアグロ向けのデッキ構成にしてくるのであれば相性が覆る可能性も低いことを考えると納得の選択です。


なお、スゥルタイ根本原理はスタンダード最高峰のデッキなのは間違いありませんがメタを読み違えるとキツイというのがここでも足を引っ張ったような印象ですね。


そして本大会はMPLガントレットにおいて日本勢2名の同リストの「ジェスカイ変容」が世界選手権権利獲得するという大成功を収めたのですが、これはデッキリストを対アグロに寄せ過ぎていなかったことが勝因として挙げられるのではないかと思います。

これは結果論と言えるかもしれませんが、このメタゲームではアグロ以外のデッキ以外にマッチングすることが多くなるため《燃えがら地獄》のようなアグロにしか効果のないカードは腐りやすくなっていました。

その点、日本勢のリストは《燃えがら地獄》はメインに2枚だけ採用したりするなどアグロは意識しつつも各カードの採用枚数のバランスが秀逸でアグロに傾倒しすぎていませんでした。他のデッキがアグロ寄せにシフトしていたことで、この差が大きなアドバンテージになったものと思います。デッキ数枚の差であっても見た目以上に大きな差を生むというのはMTGの面白さの一つですね。


ここまでは「アグロ」vs「対アグロ」の構図について触れましたが、このメタゲームブレイクダウンを見て最も面白いと感じたのは「ディミーアローグ」と、1名ではありますが「緑単アグロ」の存在です。

ディミーアローグについては「対アグロデッキ」に対して非常に強いデッキですが、反面アグロデッキがきつく特にグルールアドベンチャー相手にはお手上げレベルで勝てません。本イベントの勝率を見てもそれは一目瞭然です。つまりグルールアドベンチャーも多いだろうと予想されていた中でこのデッキを手に取るには相当な思い切りが必要になります。おそらく本イベントの参加者的にアグロはそこまで多くないだろうという「人読み」もあったのであろうと思いますが、懸かっているものがあまりにも大きい本イベントでこういった決断をするというのは感嘆に値します。

結果としてこのメタゲームだとディミーアローグには有利なフィールドで、実際に1名の世界選手権権利獲得者を生み出したため本当に素晴らしいことだと思います。


そして緑単アグロは私が最も驚いたことで、まさかこのイベントで緑単アグロを選択するプレイヤーがいるとは思いませんでした。本命アグロの「ナヤウィノータ」「グルールアドベンチャー」に有利ではないアグロという時点で選択肢から外れるのが自然な思考だと思いますが、結果的に緑単アグロはライバルズガントレットのTOP4入賞でMPL招待を獲得したのです。

緑単アグロが他のアグロと一線を画すのはクリーチャーのサイズです。クリーチャーサイズが大きいことで赤の火力系除去に自然と耐性を持っているというのが他のアグロにないところで、それ故に除去を火力に頼っている青赤系のデッキには有利を取ることができます。これはナヤウィノータやグルールアドベンチャーにはない長所です。

特に今回多かったジェスカイ変容に相当強く、本イベントでは対ジェスカイ変容に負けなしです。これが今回の結果をもたらした要因の一つであり、もしこれが緑単アグロではなくナヤウィノータやグルールアドベンチャーだったらそうはなっていなかったことでしょう。この選択に賞賛を送りたいと思います。



環境末期の最後のスタンダードプレミアイベントでこんな変化が見られるとは正直驚きましたし楽しくもありました。現スタンダード環境は最後まで読み合いが重要な環境となりましたね。


さて、次は「イニストラード:真夜中の狩り」のリリースに伴ってスタンダード環境は大きく変わります。現在のスタンダード2022が参考にはなります(本ブログでも他記事で触れています)が、新セットが更なる変化をもたらすことでしょう。

また新環境についても追いかけていきたいと思います。

スポンサーリンク

8月1週目:ナヤウィノータを攻略するためのアプローチ

今週はチャレンジャーガントレットが金曜日に行われたことで、それを皮切りとして週末のメタゲームが展開されました。

やはり先週までの活躍で圧倒的に注目されているデッキはナヤウィノータであり、ナヤウィノータを意識したアプローチを取るデッキが目立ちました。

先週述べたように、やはり《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》を採用する傾向が見受けられるようになっています。特にグルールアドベンチャーの変化はそれの最たるものでしょう。

グルールアドベンチャーはナヤウィノータ相手には《軍団のまとめ役、ウィノータ》さえ機能させなければ《エンバレスの宝剣》を絡めた突破力は上なのですが、その肝心な《軍団のまとめ役、ウィノータ》を除去し辛いのがネックでした。

そのために前環境でスゥルタイ根本原理のために《軽蔑的な一撃》で青をタッチしたように、今回は黒をタッチすることで《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》を採用するアプローチを取るタイプが出現しました。この柔軟性の高さも現在のグルールアドベンチャーの強さの1つですね。

結果として先週の対ナヤウィノータの勝率よりも今週は上がっており、数値上は殆ど5分という結果になっています。恐らくまだ不利であることには変わり有りませんが、以前より戦えるようになったことは間違いないでしょう。

そして、アグロデッキに強いデッキとしてまたまたナヤアドベンチャーデッキが浮上してきています。

本リストはチャレンジャーガントレットでトップ通過となったリストですが、以前と大きく違うのは《クラリオンのスピリット》を抜いて《火の予言》に変えて除去を増やしていることでしょう。

《クラリオンのスピリット》は《砕骨の巨人》で踏みつけられてしまうのでアドベンチャーデッキには弱いカードであるため、それを差し替えるのは対アグロ(特にグルールアドベンチャー)には良いアプローチになります。実際グルールには高い勝率を示しています。一方《巨人落とし》はコスト的に間に合わないことが多く《軍団のまとめ役、ウィノータ》は苦手です。

チャレンジャーガントレットでトップ通過となったのも、ナヤウィノータに一度もマッチングしなかったことが要因の一つかもしれません。

一方、コントロールデッキという方法でアグロデッキに対抗するアプローチを取っているのがイゼットコントロールです。

対アグロカードとしては出してターンが帰ってきたら勝ちという《キオーラ、海神を打ち倒す》をゴールに据え、そこまでは火力を中心とした除去で耐えるというゲームプランを取っているコントロールデッキです。

特に火力で対処しやすいクリーチャーが多いグルールアドベンチャーに強いタイプで前環境でも対グルールとして同じアプローチを取ったイゼットコントロールは存在していましたが、特にこのデッキによっては《恋煩いの野獣》を対処できる《バーニング・ハンズ》を得たのは大きな収穫でしょう。

ナヤウィノータには火力で対処し辛い4マナ域の《エシカの戦車》や《軍団のまとめ役、ウィノータ》を打ち消しで対抗するよう構築されていますが、通ってしまうと一転して厳しくなるのでナヤウィノータには5分程度の結果となっています。

当のナヤウィノータとしてはここまでメタられても勝率は5分以上を残していますし、先週より勝率は下がっているものの相変わらずの強さを見せつけています。チャレンジャーガントレットでは最も勝率も高く地力の高さは現在のスタンダードでトップと言えそうです。

こういったように全てのデッキが対アグロを大きく意識して、とあるデッキに対してのガードを下げているのですが、そのとあるデッキがやはりその隙をついた形でSCG予選を優勝しています。それは前環境王者のスゥルタイ根本原理です。

上記がSCG予選を優勝したリストですが特徴的なのは《狼柳の安息所》を抜いて、2マナ域の除去を8枚に加えて全体除去も厚めに取って対アグロをより意識したアプローチになっていることでしょう。

実際私も偶然ながら最近同じアプローチを取った根本原理を使っているのですが、最近のアグロはあまりにも展開が早く特に後攻では2ターン目に《狼柳の安息所》を張っている暇がありません。《厚顔の無法者、マグダ》のように早々に対処しないといけないカードも多く、《軍団のまとめ役、ウィノータ》も踏まえると対アグロには常に除去を構えておきたいのです。

このように先手後手で大きく強さが変わってしまう《狼柳の安息所》を抜いて除去を厚めに取ることで対アグロへの勝率を上げることに成功しています。

また最近は《乱動する渦》をサイドに取らず、アグロデッキは対アグロ寄せのアプローチをしていたことがスゥルタイ根本原理にとって追い風であったことでしょう。やはりスゥルタイ根本原理は侮れないということを示した結果であり優勝も納得です。

本環境の残り期間はグルール、ウィノータ、スゥルタイの3つがTier1であり続けそうに思います。

スポンサーリンク

7月5週目:ナヤウィノータ無双

先週の結果からやはり今週はナヤウィノータとグルールアドベンチャーの2種合計で全体の35%程を占めるメタゲームが展開されました。

そしてその結果はナヤウィノータが現在のスタンダードにおいて無双状態であるということです。

ナヤウィノータはかなり意識されているデッキであるにも関わらず、今週残した勝率はダントツのトップ。しかもナヤウィノータを除く使用率上位8種のデッキ全てに勝率50%オーバーと脅威的な結果を叩き出しています。

ナヤウィノータの強さの秘密は主に以下によるところでしょう。

  • 《軍団のまとめ役、ウィノータ》はアグロ同型であまりにも強すぎる
  • 《軍団のまとめ役、ウィノータ》は盤面にいなくても圧力をかけられる
  • 《エシカの戦車》を絡めた攻めはクリーチャー除去に頼るデッキでも対処が難しい

アグロ同型ではダメージレースが中心となりますが、《軍団のまとめ役、ウィノータ》は一度能力が起動してしまうと速攻持ちクリーチャーが出てくることで盤面だけでなくダメージレースも桁外れのレベルで一気に引き離してしまいます。

加えて《無私の救助犬》が非常に厄介で、ただでさえタフネス4という火力では対処できず除去し辛い上に、お供のお犬様によって守る動きも可能と簡単には除去もできません。そのため、ウィノータのデッキ構造上アグロデッキ対決では有利であることが揺るがないという点があります。

では、クリーチャー除去を中心としたコントロール等のボードコントロールタイプのデッキだったら勝てるのかと言われると、それも簡単ではありません。

《軍団のまとめ役、ウィノータ》の能力誘発は当然コントロールデッキにとっても厳しいものですから、何としても防いでいかなくてはいけません。

そのためには《軍団のまとめ役、ウィノータ》を除去しないといけないのですが、コントロールデッキ側にとっては相手の手札に《軍団のまとめ役、ウィノータ》がいることを想定し、盤面に非人間クリーチャーが一体でもいればインスタント除去を構えざるを得ません。《裕福な亭主》というコントロール側としては放置しておきたいクリーチャーですら盤面に残っていると受け側としては圧力がかかってしまうのです。

そして除去を構えてきている相手には《軍団のまとめ役、ウィノータ》を出さずに《エシカの戦車》を出せば良く、この《エシカの戦車》がまた受け側にとっては打ち消しでもない限り手を焼かされます。加えて《精鋭呪文縛り》での牽制もありますからそう簡単には攻めの対処ができないのです。

このあたりがナヤウィータの地力の高さたるところですが、前回述べた《軍団のまとめ役、ウィノータ》を引けるかどうかという安定性以外の弱点も存在します。

  • カードアドバンテージ源が殆ど存在しない
  • 非クリーチャー呪文をあまりデッキに入れられない

ナヤウィノータはいくつかのバリエーションがありますが、現在主流の型ではカードアドバンテージは《レンジャー・クラス》くらいしかありません。

《エシカの戦車》は困る存在ではあるものの《軍団のまとめ役、ウィノータ》に気をつければ息切れしやすいデッキであることは間違いありません。加えて非クリーチャー呪文が殆どないため《長老ガーガロス》といったパーマネントに触る術をメインでは殆ど持ちません。

ウィノータ側の盤面に非人間がいない状態にして返しのターンで《長老ガーガロス》を出せれば概ねゲームに勝てる展開となるでしょう。ナヤウィノータ側もデッキ構造上サイド後もあまり非クリーチャー呪文を入れたくないですからね。

対ナヤウィータ向けには特に今後良く見かけるようになるであろうカードとしては《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》だと思います。

黒1マナという構えやすいマナコストながら《無私の救助犬》がいても《軍団のまとめ役、ウィノータ》を簡単に対処することができます。

このカードはナヤウィノータに限らず《エッジウォールの亭主》や《厚顔の無法者、マグダ》など環境にタフネス1は多く無駄になることがあまりなく、今後メインに積むデッキが現れても不思議ではありません。実際私は最近《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》をメインに入れたスゥルタイ根本原理を使っていますが感触は良いです。(これに関しては別記事にする予定)


とにかく、現在のスタンダードはナヤウィノータを中心に回っています。ここまでの結果から見てもナヤウィノータのデッキパワーが相当高いのは間違いありませんがどういった変化が今後起こっていくのか楽しみです。

スポンサーリンク

7月4週目:勢いを増すアグロデッキ

スゥルタイ根本原理が中心的存在となっている構図は変わっていませんが、スゥルタイ根本原理がフォーゴトン・レルム探訪から得たカードが殆ど存在しないことに対し、アグロデッキはいくつかフォーゴトン・レルム探訪によって強化されたことで、アグロデッキの勢力は着実に増してきています。

今週はSCGチャンピオンシップ予選と日本選手権SEASON2が共にスタンダードで行われましたが、両イベントの結果を振り返ってみると今週勝ち組だったと言えるのはナヤウィノータグルールアドベンチャーの2つで間違いないでしょう。

SCGチャンピオンシップ予選優勝:ナヤウィノータ

ナヤウィノータSCGチャンピオンシップ予選で優勝しており、日本選手権SEASON2でも準優勝。かつ日本選手権SEASON2のTOP8半分がナヤウィーノータとまさに今週大暴れしたデッキとなっています。

ウィノータデッキはフォーゴトン・レルム探訪リリース以前は2色のボロスカラーが主流でしたが、フォーゴトン・レルム探訪から登場した以下の2枚がナヤを主流とする変化をもたらしました。

《裕福な亭主》は非人間クリーチャーとしてウィノータを誘発できることに加えて、宝物による色マナサポート+マナ加速により3ターン目ウィーノータを実現するカード。

特に同型では先にウィノータを場に出したほうが勝利すると言っても過言ではなく、これにより先手ゲーを少しでも緩和することができます。当然同型以外のデッキに対しても3ターン目ウィノータが強力なのは言うまでもありません。上記リストでは《ヤスペラの歩哨》に加えて《水蓮のコブラ》も搭載しており、より高速展開を意識したリストとなっています。

《敬愛されるレンジャー、ミンスク》は本体が人間であることに加えて、付随するクリーチャーが「ハムスター」なので非人間クリーチャーも展開できることがウィノータの能力に非常に噛み合っています。「ウィノータを場に出す前」「ウィノータから場に出す」のどちらのタイミングにおいても活躍できるという点で希少な存在となっています。

ウィノータデッキの難点は、ウィノータの能力故に人間と非人間をバランスよくデッキに入れる必要があるという制約。そしてその制約から《軍団のまとめ役、ウィノータ》への依存度がどうしても高くなってしまうため、《軍団のまとめ役、ウィノータ》を引けるときと引けないときで強さが大きく変わってしまうことにあります。

しかもデッキに4枚入れるのみでサーチするカードや引いてくる確率を上げるためのドローをもたらすカードもないことがそれに拍車をかけています。《軍団のまとめ役、ウィノータ》が出せたら強いが出せないと少し弱めのビートダウンデッキになってしまうという安定性には少し難のあるデッキです。それ故に成績が上振れも下振れもしやすいデッキではあるでしょう。

日本選手権優勝:グルールアドベンチャー

グルールアドベンチャーは一見大きく構成は変わっていないものの《レンジャー・クラス》とミシュラランドが本デッキの弱点を言えるマナフラッドによる負けを解消することに大きく貢献しているため、見た目以上にフォーゴトン・レルム探訪で強化されているデッキです。

このデッキの持ち味は《ヤスペラの歩哨》と《厚顔の無法者、マグダ》からの爆発的な展開力にありますが、一気に展開できる分中盤以降は手札が枯渇したり、少しでも土地を多めに引いてしまうとマナフラッドにより負けてしまいがちという意外と繊細なデッキでもあります。

《レンジャー・クラス》とミシュラランドは負け筋であるマナフラッドという本デッキの弱点を大きくカバーすることに成功しています。どちらもマナ食い虫なカードであるため、宝物トークンが無駄になることも発生し辛くなっています。

グルールアドベンチャーは《軍団のまとめ役、ウィノータ》を早々に出されてしまうと展開力で負けてしまうナヤウィノータは苦手ですが、今週の勝率を見ると他のデッキには大きく勝ち越しており、合計勝率も今週はダントツの数値を叩き出しています。

上記のリストはキーカードとも言える《リムロックの騎士》の枚数やミシュラランドのバランスにはまだ調整要素がありそうに思えますが、今後ますます増えそうなアーキタイプになりそうです。


その他に目立つアーキタイプとしては緑単とティムールアドベンチャーです。今週のメタゲームはスゥルタイ根本原理と緑単アグロを意識することから始まっています。特に緑単を意識するプレイヤーが多かったようで、緑単を狩るという意図からルーカ型のティムールアドベンチャーが大幅に増加しているのが目立ちます。

しかし、それらに対してスピードと展開力に勝るナヤウィノータとグルールアドベンチャーが勝ち星を重ねていったというのが今週の大まかな流れとなっています。

今週は使用者数の割にあまり活躍しなかったスゥルタイ根本原理もまたメタゲームに合わせて少し形を変えて適応しながら今後も存在感を示してくることでしょう。個人的には《バーニング・ハンズ》によって信頼性が下がった《長老ガーガロス》の採用バランスは気になるところです。

スタンダードはフォーゴトン・レルム探訪によってメタゲームは確実に変わってきています。来週以降の動向にも注目です。

スポンサーリンク

7月3週目:フォーゴトン・レルム探訪により強化された緑

「フォーゴトン・レルム探訪」がリリースされたことでスタンダード環境に新しい風が吹き始めています。

やはり既存のセット、特にエルドレインの王権があまりにも強力なためフォーゴトン・レルム探訪がリリースされたことでスタンダード環境が大幅に変わるような影響を与えることはなさそうですが、それでも確実にいくつかの変化をもたらすセットとなっています。

最も強化されたデッキとしては、事前の予想通りとも言えるであろう緑単アグロデッキです。

スタンダード2022においても緑単アグロは大きな活躍を見せていますが、現スタンダードにおいてもそれは例外ではありません。MTG Onlineのイベント、および海外の招待制オンライン大会のどちらにおいても優勝という快挙を成し遂げています。

上記のカードが「フォーゴトン・レルム探訪」の新戦力で、これまで緑が弱かった2マナ域を狙い撃ちしたかのように登場した《レンジャー・クラス》と《群れ率いの人狼》。これらによりデッキが一気に引き締まりました。

《レンジャー・クラス》は全てのレベルの能力が強力で、レベル2のクリーチャー強化だけでなく、レベル3でアドバンテージまで稼いでしまうので、これまで《グレートヘンジ》が担っていた役割までもある程度補えることが可能になっています。マナコスト的に緑単以外でも採用できるため今後のスタンダードにおいて中心的な存在となっても不思議ではないパワーカードです。

《群れ率いの人狼》は誰が見てもわかるくらいに強力なことしか書いていない2マナクリーチャーで、このクリーチャーもカードドローによりアドバンテージを稼げることから《レンジャー・クラス》も相まってこれまでの必須パーツに近かった《グレートヘンジ》をデッキから追い出す変化をもたらしています。

《ハイドラの巣》はこれまで《不詳の安息地》しか存在しなかったミシュラランドに追加する形で採用されています。高確率でタップインしてしまうこと以外にはデメリットは存在しないと言っても良く、2ターン目までにおけるのであれば基本地形の上位互換です。やはり緑単は《影の評決》といった全体除去に弱いので、そういった部分を補えるのは有難い存在です。

総じて、これらのカードによって緑単が弱かった2マナ域を補うだけでなく、《レンジャー・クラス》と《ハイドラの巣》という対処され辛いパーマネントによって緑単の弱点である単調な動きによる対処されやすさといった部分すらカバーするという強烈なパワーアップを成し遂げています。緑単は暫くスタンダードの有力デッキの一角であり続けそうです。

ですが、そんな緑単も前環境からのスタンダードの王様デッキといえるスゥルタイ根本原理には厳しい戦いを強いられます

緑色のカードの中には《出現の根本原理》に対抗するカードは実質的に存在しません。適当にクリーチャーを除去されつつ6~7ターン目に《出現の根本原理》を唱えるという動きをされてしまうと緑単では対抗手段がなくお手上げ状態なのです。

スゥルタイ根本原理は「フォーゴトン・レルム探訪」によって強化されたポイントはほとんど存在しないデッキではありますが、緑単の増加というのは相対的にスゥルタイ根本原理の立ち位置を良くしてくれることになります。緑系のアドベンチャーデッキはすべからずスゥルタイ根本原理を苦手としているのですが、本質的には同じデッキタイプである緑単も同様です。《出現の根本原理》を唱える前に相手を倒さないといけないというのは、クリーチャー以外のダメージ手段を持たない緑単では特に厳しいです。

実際のところ緑単以外にトーナメントで結果を残しているのは圧倒的にスゥルタイ根本原理となっています。スタンダード2022が人気を博しているのもスゥルタイ根本原理がいないからという要因もあるかもしれませんね。

来週は今後のスタンダードを占う大きなイベントとなるであろう日本選手権シーズン2やSCGのチャンピオンシップ予選も開催されますので、デッキ毎の勝率も含めて今後の新環境スタンダードを追いかけていきたいと思います。

スポンサーリンク

7月1週目:ストリクスヘイヴンリーグウィークエンド(環境の締め括り)

MPLとMRLによるストリクスヘイヴンのリークウィークエンドの大会が行われました。もうすぐ「D&Dフォーゴトンレルム:探訪」がリリースされるため、現スタンダード環境の締めくくりとも言えるイベントとなりました。

メタゲームは以下のようになっています。

両リーグを合算すると「スゥルタイ根本原理」「ナヤアドベンチャー」「サイクリング」が使用率TOP3となっており、それぞれ使用者数が同率で10人となっています。

これだけで全体の6割を占めており、次点で「ティムールルーカ」5人、「ディミーアローグ」が4人、それ以外のデッキは全て使用者は2人以下という内訳でメタゲームが構成されています。

スゥルタイ根本原理が多いのは同然としても、ナヤアドベンチャーとサイクリングが同数だったのは少し意外だったように思います。ナヤアドベンチャーはCFBのプロ勢、サイクリングは主に日本勢がチームで選択したデッキとなっていたためこのような使用率となったものと思います。

そして、デッキ毎の勝率を使用率の降順で一覧としたものは以下になります。なお、各アーキタイプ毎の勝率内訳についてはデータが取れていないので未掲載です。

Arche TypeTotal
WinRate
Deck
Count
% OF FIELD
Sultai Ultimatum51.7%1020.8%
Naya Adventures46.7%1020.8%
Cycling53.3%1020.8%
Temur Lukka46.7%510.4%
Dimir Rogues54.2%48.3%
Gruul Adventures83.3%24.2%
Jeskai Combo33.3%24.2%
Mono-Red Aggro66.7%24.2%
Izzet Dragons16.7%12.1%
Abzan Blink16.7%12.1%
Temur Adventures33.3%12.1%

スゥルタイ根本原理はデッキパワーとしてはスタンダード最高峰なのは揺るぎありませんが、難点なのは多数のアーキータイプが存在するスタンダードにおいてメタゲームにあわせてデッキを調整する際にアグロ相手なのか同型相手なのかといった相手によりデッキに入るカードがあまりに性質が異なってしまうことです。

例えば《影の評決》や《神秘の論争》といったようなカードは一方には効くが一方には不要といったように有効な相手とそうでない相手があまりにも極端です。スゥルタイ根本原理というデッキ自体はどのデッキにも勝てるポテンシャルはあるものの、このあたりのカードのバランスとマッチングする相手がかみ合わない時にはどうしても厳しい戦いを強いられてしまいます。

スゥルタイ根本原理がどういったバランスでこれらのカードを採用してくるのか。スゥルタイ根本原理を使う側も使われる側もこのバランスの読みがスタンダードのデッキ選択において重要な要素となるのです。

ここ最近は同型相手には弱いものの比較的万能選手ともいえる《長老ガーガロス》を多めに取ることが主流になっていました。

そして、それを見越して一部のプレイヤーはナヤアドベンチャーを持ち込んだのであろうと予想されます。

ナヤアドベンチャーはとにかくスゥルタイ根本原理が苦手で、逆にそれ以外のデッキは有利な相手も多いデッキタイプです。

そんな苦手なスゥルタイ根本原理が《長老ガーガロス》を多数積むことでアグロ対策をしているところに刺さる《巨人落とし》。そういった背景により相性は悪いながらも善戦は出来ると見越した選択であると思います。実際のところ最近はナヤアドベンチャーのスゥルタイ根本原理に対する勝率は改善傾向にありました。

一方、サイクリングは《長老ガーガロス》には手を焼かされるものの、もっとキツいカードである《エルズペスの悪夢》はあまりスゥルタイ根本原理に採用されておらずマークがやや下がっていること、また苦手な赤単やグルールといったデッキが減っているのもメタゲーム的に追い風であったこともあり選択したプレイヤーは多かったのでしょう。

サイクリングはMOのようなオンライントーナメントで日本人プレイヤーが好成績を収めていたことで一部では注目されているデッキではありました。

特にメイン戦では相棒として使えないものの、サイド後にはスゥルタイ根本原理といった相手に不要な《アイレンクラッグの紅蓮術師》を抜き《夢の巣のルールス》を相棒として使うというアプローチが注目されていた部分で、今回日本勢のプレイヤーはこのアプローチを採用していました。

相棒はメインデッキから相棒の条件に合うようにデッキ構築をするという考えが先行しがちなので、こういったアプローチを取ることを考え出したのは素晴らしいと思います。

またおそらく今回は比較的得意とするナヤアドベンチャーがフィールドに多かったのもサイクリングが好成績を収めた要員の一つであることでしょう。ナヤアドベンチャーでは《アイレンクラッグの紅蓮術師》は除去されにくく、《エンバレスの宝剣》といったカードもないため1/1トークンによるブロックも突破されずそこまで速度も早い訳ではないためです。

こういったように、スゥルタイ根本原理がいかにいまのスタンダードに影響を及ぼしているのかが色んなところからうかがい知ることができるのは面白いですね。


さて、そんなスゥルタイ根本原理を中心に回ってきた現在のスタンダード環境ももうすぐ終わりを迎えようしています。「D&Dフォーゴトンレルム:探訪」がリリースされることでスタンダードにどのような変化が訪れるのか今からとても楽しみです。

スポンサーリンク

6月4週目:ジェスカイ変容の実力は本物

ストリクスヘイヴンチャンピオンシップを機にスタンダードのメタゲームに登場したジェスカイ変容(ジェスカイコンボ)ですが、今週の結果からそのデッキパワーはやはり本物であったと言えそうです。

ジェスカイ変容はチャンピオンシップ以降も、しばらくはそのデッキ構造とプレイが難解であるためかそこまで高い使用率は見せていませんでしたが、時間の経過と共に徐々にプレイヤーも増えてきたようです。実際に今週はメタゲームの使用率で上位に挙がってきており、かつ勝率も高い結果を残しています。

ジェスカイ変容はとにかく一度コンボが決まってしまうと膨大なアドバンテージ差がついてしまうので、このコンボを決められる前に倒すかコンボを決められないように妨害するか、のどちらかが重要になってきます。

ただ前者のようにコンボを決める前に倒すというアプローチは除去やバウンスを多く有するこのデッキに対してはなかなかに難しく、現実的には後者の妨害手段が勝つためには重要となります。

幸いコンボがクリーチャー軸であるためクリーチャー除去でコンボに干渉できるという点は救いとも言えるところで、特にカウンターも除去もあるイゼットドラゴンだとこのデッキに有利に戦うことができます。スゥルタイ根本原理はストリクスヘイヴンチャンピオンシップの時にはジェスカイ変容が負け越す結果ではありましたが、スゥルタイ側は勝つためにはマナを大きく使用するビッグアクションが必要になりがちなので、その隙にコンボを決めることができるジェスカイ変容のほうが相性的にはやや有利というのが最近の結果からも事実として示されています。

白単は火力で対処し辛いクリーチャーと多少の妨害手段を兼ね備えているため本デッキに戦うことはできそうですが、その他に存在するメタゲーム上のデッキは殆どがジェスカイ変容側のほうが有利となっています(恐らくディミーアローグ以外には大抵有利でしょう)。そういう意味ではスタンダードのベストデッキとまで言えるかもしれません。

実際今週のトーナメントをいくつか確認するとそう多くはないジェスカイ変容が軒並み上位に名を連ねているのです。デッキの動きが知れ渡っている現時点でこれほどの結果を残すということは、その実力は本物であったということを証明するには充分でしょう。

このデッキに効果的なのは墓地対策とクリーチャー除去の2点です。クリーチャー除去としては入れられるデッキは限られますが《レッドキャップの乱闘》が最も効果的です。赤いデッキを使うのであれば多めに採用しても良いでしょう。

トーナメントに出場するのであれば本デッキを使用するのもおすすめですが、警戒も怠らないようにしたほうが良さそうです。

スポンサーリンク

6月2週目:イゼットの隆盛と赤単の凋落

今週のメタゲームとしてはストリクスヘイヴンチャンピオンシップの流れを汲んだものになっています。

イゼットドラゴンとスゥルタイ根本原理のツートップ環境であることには変わりませんが、最近目立ってきたポイントとしてはイゼットドラゴンがますます数を増やしていることと、赤単がメタゲームから大きく衰退しつつあるということです。

特にイゼットドラゴンが数を増やしているというのがポイントで、恐らく増加の最も大きな理由は多少の有利不利はあるもののメタゲーム上のどのデッキ相手にも戦えるという点でしょう。何よりスゥルタイ根本原理を相手にしても善戦出来るということは大きな選択理由の一つになります。(一部ではスゥルタイvsイゼットではイゼットのほうが有利という声も聞きますが、私は限りなく5分だと思っています)

イゼットドラゴンとスゥルタイ根本原理のデッキとしての性質をざっくり比較すると「イゼットのほうが手数が多く動きが軽快」「カウンター等の妨害手段はイゼットのほうが豊富」「スゥルタイは一枚のカードで勝てるパワーがある」といった要素をあげることが出来ます。

「イゼットのほうが手数が多く動きが軽快」という要素により、アグロデッキを相手には序盤に遅れを取りがちなスゥルタイに比べると有利に立ち回ることができます。イゼットは《霜噛み》や《砕骨の巨人》をはじめとした序盤からアグロに強いスペルで牽制していくことが出来ますが、スゥルタイは《耕作》といったマナ加速から《影の評決》や《長老ガーガロス》でアグロに対抗することを主とします。その分動きが大味ですからアグロが付け入る隙が生まれることも多いです。

「カウンター等の妨害手段はイゼットのほうが豊富」ということはどんな相手にも比較的戦いやすいという長所を生みます。これによりスゥルタイ相手にも善戦出来ますし、何よりメタゲーム上に様々なデッキがあるときほど安心してプレイできる要素になってきます。ただしイゼットはパーマネントが盤面に出てしまった後の対処方法には乏しいデッキです。《厚かましい借り手》によるバウンスは一時しのぎで根本的な対処になりませんから相手の動きに対してより繊細なプレイが求められます。それ故にプレイしていて楽しいと思う人も少なくありません。

スゥルタイ側が大きく勝る長所としてはやはり「一枚のカードで勝てるパワーがある」ということでしょう。勿論《出現の根本原理》のことで、とにかくこれを唱えれば勝ちというのはわかりやすく強力です。それ故にアドベンチャー系のようなミッドレンジタイプのデッキ相手にはイゼットよりもスゥルタイのほうが有利に立ち回ることができます。イゼットも《黄金架のドラゴン》&《アールンドの天啓》という必殺ムーブはあるものの《出現の根本原理》たった一枚という容易さには及びません。

これらの要素から人気をイゼットとスゥルタイが人気を二分しつつありますが、このイゼットドラゴンの増加によりもっともあおりをくらっているのが赤単アグロでしょう。赤単はスゥルタイには善戦出来るもののイゼットには厳しい戦いを強いられます。ここまで苦手なイゼットが増えてしまうと赤単アグロを使用することを躊躇うのは当然で、数を大きく減らしてきています。

さて、メタゲームがこのような流れになってきている中では私はとあるデッキが輝きを増すと思っています。それはディミーアローグです。ローグは赤単があまりにも厳しいですが、反面イゼットにもスゥルタイにも有利に戦えるデッキです。そんなローグはこのメタゲーム下なら活躍するための土壌が整っていると言えるでしょう。現時点ではローグはおすすめのデッキです。

ちなみにジェスカイ変容はもう少し数が増えるのかなと考えていましたが、おそらくプレイ難易度の高さから避けているプレイヤーも多いのであろうと思います。デッキの動きも認知はされているのでわからん殺しというメリットも無くなってきているというのもありますからこれからがデッキの力が試されるフェーズでしょう。こちらにも注目です。

スポンサーリンク

6月1週目:ストリクスヘイヴンチャンピオンシップ

競技シーンでは今シーズン最後となるチャンピオンシップであるストリクスヘイヴンチャンピオンシップが行われました。

スタンダードのメタゲームとしては以下の通りとなっていました。

Strixhaven-Championship-Standard-Metagame.jpg

概ね戦前の予想から大きな違いはないと言えるでしょう。ディミーアローグが数を増やしているのは、本大会で参加者が持ち込むデッキは特にスゥルタイ根本原理とイゼットドラゴンが多いであろうということは参加者の誰しもが予想出来ていたことなので、両者に対するアンチデッキとして持ち込んだプレイヤーが一定数存在したのではないかと思います。このレベルの大会ではなく、特に赤単が一定数居るようなトーナメントやラダーだとディミーアローグを持ち込むのは管理人としてはあまりおすすめはしません。

ただ、一点以外だったと言えるのはジェスカイ変容を一部の調整グループが持ち込み大きな結果を挙げたことです。

ジェスカイ変容

デッキ自体はリーグウィークエンドでも一部のプレイヤーが使用していたので認知はされていましたが、デッキパワーがあまり高くないと思われいたためか注目度は低めでした。しかし本大会では調整を重ねた本デッキを持ち込んだプレイヤーが一定数存在しており、しかも高い勝率を上げているのです。

参加者の中でもジェスカイ変容を意識していたプレイヤーは少なく、そもそもその動きすらあまり知らないというプレイヤーも少なくなったことでしょう。そういった要素が今回の勝率を生んでいる要因の一つでもあると思います。本デッキは変容と名前は付くものの実態はコンボデッキとなっており《黄金架のドラゴン》に《伝承のドラッキス》を変容することで宝物を生み出しつつ《非実体化》と合わせて墓地のカードを無限に使いまわすコンボを備えています。

スゥルタイ根本原理は除去でコンボに干渉できる上に根本原理という必殺技を兼ね備えているのでやや相性が悪いと思われますが、特にアグロデッキのような相手にあまり干渉しないタイプのデッキに対して相性が良いデッキとなっています。決して最強レベルに強いデッキではないと思いますが、今後は本デッキの動きと戦い方を知っておく必要があると思います。基本的にクリーチャーベースのコンボなので《レッドキャップの乱闘》は特に有効です。

その他には大きなトピックはなく比較的順当な結果であったと言えるでしょう。次のスタンダードローテーションまでは今回のようなメタゲームが続きそうです。

スポンサーリンク

5月4週目:日本選手権予選のメタゲーム

今週のメタゲーム状況としては先週のリーグウィークエンドの延長線となっており大きくは変わりません。そこで今週は少し趣向を変えて国内トーナメントである日本選手権シーズン2の予選に焦点を当てて、国内のメタゲームについて探っていきたいと思います。

5/15より日本選手権シーズン2の予選が開始されています。土日に行われており執筆時点で4日分行われていますので、4日間の結果をまとめてご紹介します(デイリートライアルも行われていますが今回は週末のウィークリートライアルのみに焦点をあてています)

メタゲームについては以下のようになっています。

やはりスゥルタイ根本原理が圧倒的に使用率トップとなっています。割合としてはおおよそ3割程度。これは世界的にも同程度ですから、国内トーナメントでもスゥルタイ根本原理を意識することは必須と言える状況です。その他のデッキについても目立った点はあまりありませんが、スゥルタイネストが8位であることが少し気になるポイントでしょう。

スゥルタイネストは《巨獣の巣》をキーカードとしたコントロール寄りのデッキで、《巨獣の巣》を設置したターン以降は豊富なドロー呪文を活用しながらコストの重いカードをいとも簡単に連打するデッキで中盤以降に本領を発揮するデッキです。その分、ドロー呪文で序盤を過ごすことが多くそれ故に盤面に影響を与えないターンが多いことがデメリットとしてあり、アグロデッキに押し切られがちという弱点があるデッキです。その分スゥルタイ根本原理のような遅いデッキには強いデッキです。回り出したらプレイしていてとても楽しいデッキでもあります。

そして、使用率上位8アーキタイプの予選4日分の勝率については以下の通りです。

 Total
WinRate
Sultai UltimatumIzzet TempoMono-Red AggroNaya AdventuresJeskai CyclingGruul AdventuresMono-White AggroSultai Titan’s NestOther
Sultai Ultimatum47%48%37%50%35%46%29%39%55%
Izzet Tempo52%52%69%37%50%50%44%56%55%
Mono-Red Aggro55%63%31%38%73%50%33%67%63%
Naya Adventures57%50%63%62%44%63%50%50%67%
Jeskai Cycling54%65%50%27%56%0%0%33%65%
Gruul Adventures53%54%50%50%38%100%22%100%65%
Mono-White Aggro59%71%56%67%50%100%78%29%52%
Sultai Titan’s Nest54%61%44%33%50%67%0%71%52%
Other43%45%45%37%33%35%35%48%48%

スゥルタイ根本原理は相当意識されているためか、やや苦戦している様子です。目立った勝率を上げているのは白単アグロです。《精鋭呪文縛り》によりスゥルタイ根本原理に対する勝率も改善しており、イゼットテンポといったデッキにも戦えるデッキであることからメタゲームの立ち位置は悪くないデッキと言えます。ただ、上記の数値はあくまで4日分のデータなので偏ることもありますから参考程度としたほうが良いと思います。特に白単はサイクリングが苦手な相手の一つなのですが、この表では100%になっています。これは3マッチして3マッチ取っている結果であるのですが、もしサイクリングが多いなら白単は管理人としてはあまりおすすめしないデッキです。実際サイクリングをそれなりに使っていた管理人は白単は当たって嬉しいデッキでしたし負けることもあまりありませんでした。

またイゼットテンポがリーグ以降メタゲームで大きく数を増やしている点は注意すべきところです。イゼットテンポは《黄金架のドラゴン》が動き出したら手がつけられなくなるデッキなので、サイドボードに取る《レッドキャップの乱闘》は以前よりも優先度は増していると言えるでしょう。《長老ガーガロス》もイゼットに有効ですので活躍しやすい環境になっています。

もし日本選手権予選に参加されるのであれば、特にスゥルタイイゼット赤単には充分に対策をするようにしましょう。他にも対策すべきデッキは多いですが、とりあえずこの3つのアーキタイプは対策必須です。この3つに絞ると今回勝率の良かった白単は確かに有力な選択肢と言えそうです。

スポンサーリンク

5月3週目:ストリクスヘイヴンリーグウィークエンド

MPLとMRLによるストリクスヘイヴンのリークウィークエンドの大会が行われました。

メタゲームは以下のようになっています。

両リーグ共にスゥルタイ根本原理が使用率トップ。そして次点でイゼットミッドレンジ(イゼットテンポ)、ジェスカイサイクリングというメタゲームとなりました。

各選手個別の詳細な勝敗がわからないため勝率まとめは集計出来ていませんが、スゥルタイ根本原理と赤単アグロは比較的成績が良い結果であったようです。

もう語るまでもないようなことですが、現在のスタンダードにおいてまずはスゥルタイ根本原理を意識することがスタートラインとも言える状態です。そしてスゥルタイ根本原理と対峙するためには青の打ち消し呪文を構えることが大きな対抗策となります。イゼット、サイクリング共に青を含むデッキであり、打ち消しを構えることでスゥルタイ根本原理に対抗できるという点がデッキ選択率を伸ばしている理由の一つです。加えて、両デッキとも他のデッキにもまんべんなく戦えるのも大きなポイントでしょう。

しかし、イゼットもサイクリングもスゥルタイ根本原理に対して有利かと言われると実はそこまで有利という訳でもないのが実情で、私見ではどちらもスゥルタイ根本原理に対してはほぼ5分という印象です。いくら打ち消しを構えられると言ってもサイド後には《強迫》で手札を攻めてきますし、スゥルタイ側も打ち消しに対抗するために打ち消しを増やしてきます。またスゥルタイ根本原理はメタゲームに合わせてデッキを調整出来るというメリットがあり、昨今は特に赤を含むデッキ全般に有効である《長老ガーガロス》をメインに多めに取るようになってきています。こうした理由で打倒スゥルタイ根本原理は容易なことではないのです。スゥルタイ根本原理に対して本当に有利と言えるデッキはディミーアローグぐらいかもしれません。それほど意識されてもなお高い勝率を叩き出し続けるのがスゥルタイ根本原理なのです。

イゼットは《砕骨の巨人》《厚かましい借り手》《霜噛み》といったアグロに対して優秀なスペルを搭載していることで赤単アグロにも有利になっていますが、サイクリングの1/1飛行トークンの群れに対処することが出来ないためサイクリングを苦手としています。サイクリングは逆に赤単のような1/1トークンのブロックを突破してくる《エンバレスの宝剣》を搭載しているアグロデッキを苦手としています。このあたりはメタゲームに応じて柔軟なデッキ選択が必要になってくるポイントになります。

アグロデッキはスゥルタイ根本原理を意識してより高速にシフトする動きが加速しており、グルールアドベンチャーもといグルールマグダはこれの最たるものでしょう。《厚顔の無法者、マグダ》から生み出す宝物トークンと《ヤスペラの歩哨》によるマナ加速でブン回った時の早さは赤単すら凌駕するデッキです。サイクリングも動き出しが遅いため速攻で動かれるとなすすべもなく、こちらも有力なデッキ選択と言えそうです。

今後も多少のメタゲームの変化はあるでしょうが、スゥルタイ根本原理が中心の構図は秋のスタンダードローテーションまで変わることはなさそうです。特にスゥルタイとイゼットに有利なディミーアローグはまた増える可能性が高そうですし、アグロに有利なティムールアドベンチャーも数を増やす可能性はなくはありません。今後もスタンダードではその時点でどのデッキの使用者が多いかを予想してデッキを使用することが必要です。

国内イベントとしては、現在日本選手権シーズン2セカコロといった大会が直近に控えています。スタンダードで大会にチャレンジしたい方は要チェックのイベントです。私見では国内ではサイクリングを使用する方が多いイメージがありますので、グルールマグダあたりは良い選択かもしれませんね。

スポンサーリンク

5月2週目:スゥルタイ根本原理の再台頭

今週はSCGストリクスヘイヴンチャンピオンシップ予選がスタンダードフォーマットで行われましたので、よりスタンダードが盛んに行われた週となりました。

ストリクスヘイヴンにより一部目新しいデッキも生まれつつありますが、現状はスゥルタイ根本原理による支配力が前環境より更に強くなっている状態であるということをメタゲーム結果が示しています。実際にSCG予選を優勝したのはスゥルタイ根本原理となりました。

SCGストリクスヘイヴン優勝:スゥルタイ根本原理

スゥルタイ根本原理は地味ながらもストリクスヘイヴンで強化されているデッキで、4ターン目に能動的に取れるアクションの選択が増えたことが一番の強化ポイントです。このリストでは《クアンドリクスの栽培者》ではなく《ひらめきの瞬間》が採用されており、特に同型を見据えるのであれば《ひらめきの瞬間》のほうを優先して採用するのは納得の選択です。

ディミーアローグは以前としてスゥルタイ根本原理を倒すデッキの筆頭と言える存在で、スゥルタイ根本原理の増加と共に数を伸ばしていますが苦手デッキが本当に苦手なのが難点でディミーアローグでトーナメントで勝ちあがるにはマッチング運もそれなりに必要となるのが辛いところです。その点、スゥルタイ根本原理はディミーアローグで言うところのvs赤単といったような超が付くほどの苦手マッチアップはほとんど存在しておらず、それがスゥルタイ根本原理が台頭する理由の一つになっています。

その他の点では、ストリクスヘイヴンがスタンダードに与えた影響は大きく分類すると3つ浮かび上がってきます。

  • プリズマリ大学によるイゼットデッキのパワーアップ
  • 履修を含むトークン型の新しいラクドスサクリファイス
  • 《精鋭呪文縛り》による白いデッキの強化

イゼットテンポがプリズマリ大学の力を受けてスタンダードのメタゲームに帰ってきました。プリズマリ大学では宝物トークンによるマナ加速を用いて強力なスペルを叩きつけるという戦略が推奨されており、イゼットテンポもそれにならった戦略を伸ばして強化されています。以前の形では宝物トークンはどちらかというとノーガードの隙を減らす目的が主でしたが《マグマ・オパス》という根本原理クラスの強力なスペルでマナ加速によるゴールが生まれたのは大きいでしょう。青いデッキに強い青いデッキことディミーアローグは苦手ですが、バウンスと軽量除去により赤単アグロやアドベンチャー系のデッキ相手を得意としています。スゥルタイ根本原理相手にもカウンターがあるので、有利とまでは言わないにしてもそれなりに戦うことが出来ます。

ラクドスサクリファイスについては前回分の更新でも触れたトークン履修型の形が、有名配信者の影響もあったためか数を伸ばしています。

SCGストリクスヘイヴンチャンピオンシップで3位の結果を残したのが上記リスト。《検体探し》が抜けてより洗練されたリストになっています。アグロには構造上有利で《想起の拠点》による飛び道具効果もあるため、特に《オリークの首領、エクスタス》を採用しているタイプであれば裏面も用いることでサイクリングの1/1トークンの群れも無視してダメージを飛ばすことが可能で相性が改善しています。ただラクドスサクリファイスは以前から抱えているスゥルタイ根本原理がキツイという問題を抱えたままで、それを乗り越えることまでは出来ていません。それさえいなければトップメタになってもおかしくはなさそうですが・・・という感じを受けます。メタゲーム次第での選択肢の一つとして念頭においておきたいデッキになっています。

最後は《精鋭呪文縛り》による白いデッキ、特にナヤアドベンチャーの強化です。ナヤアドベンチャーはスゥルタイ根本原理がキツイという大きな弱点を抱えていたのですが《精鋭呪文縛り》により相性が少なからず改善していて、今週の勝率を見る限りは大きく改善している可能性もあります。今週の数値は勝ち越していますが、私はまだ不利であることには変わりないと思っています。事実SCGストリクスヘイヴンチャンピオンシップ予選2位となった異色の4色アドベンチャーは、メインはナヤアドベンチャーでありながらサイドからカウンターをタッチするという構成でマナベースにかなり負担をかけてまで対策しています。それでも決勝ではスゥルタイ根本原理に敗れています。

来週はリーグウィークエンド、およびMTGアリーナ上でもチャンピオンシップ予選がスタンダードで開かれます。スゥルタイ根本原理のマークはかなり上がりそうな印象ですが、来週も支配的な数値を見せるのかどうか注目です。

スポンサーリンク

4月4週目:ストリクスヘイヴンがもたらすスタンダードの変化は小さめ?

ストリクスヘイヴン:魔法学院がリリースされてから初のスタンダード大型大会が行われた今週。新規エキスパンションがもたらす環境の変化を占うという意味でも注目されていた大会結果を確認することで、ストリクスヘイヴンがもたらした変化を追っていきます。

先に結論からですが、ストリクスヘイヴンは昨今リリースされたエキスパンションの中でも最もスタンダードへの影響力が小さいエキスパンションとなるかもしれません

今週はスタンダード注目の大会として「SCGストリクスヘイヴンチャンピオンシップ予選」と「CFB Pro Showdown April 2021」の二つの大会が行われました。両大会のTOP8アーキタイプの内訳を合算すると以下のような内訳です。

  • スゥルタイ根本原理:6
  • ラクドスサクリファイス:2
  • ジェスカイサイクリング:2
  • ナヤアドベンチャー:2
  • ディミーアローグ:1
  • ティムールアドベンチャー:1
  • グルールアドベンチャー:1
  • 白単アグロ:1

上記の通り新しいアーキタイプは一つも存在せず。環境直後というデッキパワーがモノを言いやすい状況において、スゥルタイ根本原理の高い実力を示す結果となっています。今週は小さいながらもストリクスヘイヴンのカードがスタンダードにもたらした変化を中心に見ていきます。

まずは見事にCFB Pro Showdown を優勝したスゥルタイ根本原理です。

ストリクスヘイヴンからは《クアンドリクスの栽培者》と《方程式の求解》《オニキス教授》が採用されています。《クアンドリクスの栽培者》は見ての通りランプ要員ですが、3/4という地味にしっかりとしているスタッツにより戦闘でのブロックにも適しておりランプデッキに重要となる時間を稼いでくれる要員として採用されています。《霜噛み》でも焼かれないサイズなのが偉く特にアグロに対してしっかり仕事をしてくれます。《方程式の求解》は、5枚目の《出現の根本原理》として80枚デッキのためしばしば発生する《出現の根本原理》を引けないケースを緩和してくれるだけでなく、メインボードに1枚ずつ忍ばせているカードも必要に応じて探してこれるといういぶし銀な活躍をしてくれるカードです。《オニキス教授》は言わずもがな《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス》とのコンボにより即奥義からすぐにゲームを決めるという即効性のあるプレインズウォーカーです。

また上記リストには採用されていませんが《ウィザーブルームの命令》を採用しているリストもあります。基本的には土地を戻すこととタフネス1のクリーチャー(主に《エッジウォールの亭主》)を除去することが中心になりますが、《型破りな協力》や《乱動する渦》といったこれまで対処し辛かったパーマネントに触れるので今後評価があがってよく見かけるように可能性はありそうです。このように少々地味な印象はありますが、スゥルタイ根本原理を強化するカードがストリクスヘイヴンにあり今回の好成績をアシストしています。

また、ストリクスヘイヴンで一番注目されていたであろう《精鋭呪文縛り》はナヤアドベンチャーや白単アグロといった白を含むデッキ全般に採用されはじめています。特に重いスペルを沢山積んでいるスゥルタイ根本原理に効果的なカードで、特に白はこれまで有効な対策手段が少なかったため相性に改善に貢献してくれるカードです。

そして今回最も一風変わったリストで結果を収めていたのが CFB Pro Showdown 準優勝のラクドスサクリファイスです。

サクリファイスを中心に据えてはいますが、1/1をはじめとしたクリーチャートークンを中心に据えた戦術となっているところがこれまでになかった独創的な構築となっています。《想起の拠点》を搭載することによりサクリファイスの価値を上げているのが特徴で、《ひきつり目》とそれがもたらす講義カードである《害獣召喚学》を中心に1/1でしぶとく生き残りつつも地味に相手のライフを攻めていき、《オリークの首領、エクスタス》で後半の息切れを防止しつつ、裏面の《血の化身の目覚め》では相手のライフを攻めていく要素を加速するという、全体的にまるで吸血鬼のように徐々に相手を苦しめていくデッキになっています。その戦い方からアグロデッキ相手には有利ですが、従来型のラクドスサクリファイスがそうであったようにスゥルタイ根本原理は相変わらず厳しい相手として立ちはだかってきます。スゥルタイ根本原理の使用率が下がれば日の目を見そうですがスゥルタイ根本原理はメタゲームに一定数居座り続けることになりそうなのでなかなか立ち位置は厳しいかもしれません。ですが、今週の好成績デッキの中でストリクスヘイヴンのカラーが一番発揮されたデッキとして嬉しく感じますね。

その他の入賞デッキに関しては、前環境からほぼ変化はありません。赤単は上記で入賞はしなかったものの使用率としてはメタゲーム上位である3位です。ストリクスヘイヴンからは《講堂の監視者》が採用されており、デッキの大幅な強化とまでは言えないものの1マナのクリーチャーの層が少し厚くなったという点でストリクスヘイヴンの恩恵を受けているデッキです。

総評として、全体的にストリクスヘイヴンがもたらしたスタンダードへの変化は小さく、既存デッキで一番強化されたのは前環境からトップメタであったスゥルタイ根本原理かもしれません。筆者としてはストリクスヘイヴンでもう少し環境が変わってほしかったなぁ・・・と思いはしつつも、今後も変化を楽しみにしながら結果を追っていきます。

スポンサーリンク

4月1週目:固まり始めたメタゲーム

前週のカルドハイムチャンピオンシップを受け、4/1週目のメタを見るとスタンダードのメタゲームもやっと固まり始めたと言えます。

Tier1としては「ティムールアドベンチャー」「スゥルタイ根本原理」「赤単」なのは使用率から見ても間違いなく、この3つのアーキタイプは使用率が拮抗しているだけでなく、3つのアーキタイプ合計でフィールドの7割近くを占めているメタゲームとなっています。

ですが、大会を優勝するのは必ずしもこの3つのアーキタイプではないあたり現在のスタンダードが如何に健全な環境であるか見て取ることができます。

まず、SCGストリクスヘイブン予選を優勝したのはティムールアドベンチャーとなりました。デッキの内容はカルドハイムチャンピオンシップでJavier Dominguez選手が使用したリストの完コピとなっており、《アールンドの天啓》が入っていないタイプのものです。特に同型やディミーアローグを相手にした場合には重たくて青いスペルはカウンターの良い的になってしまいがちなので、メタゲームによってはこちらのタイプのほうが良い場合もあります。ただその分スゥルタイ根本原理には明確に弱くなってしまうので、このあたりはメタ読み次第と言えます。

次に日本選手権Season1を優勝したのはナヤフューリーとなりました。

日本選手権優勝:ナヤフューリー

メインボードに関しては前週のSCG予選を優勝したリストとほぼ同じ(1枚違い)内容となっています。《エンバレスの宝剣》により従来型より打点を挙げているタイプで恐らくスゥルタイ根本原理とサイクリングを意識されていたのではないかと思われます。尚、日本ではセカコロの結果もあってかサイクリングが海外と比べてもやや多めの印象で、実際にティムールとスゥルタイについで三番目の使用者数に位置していました。

海外のInsight Esports Presents Standard OpenというMPLやMRL所属選手も出場しているハイレベルな大会ではマルドゥミッドレンジというやや変わり種とも言えるデッキが優勝しました。

マルドゥミッドレンジ

ラクドスミッドレンジにナヤヒューリーをハイドリッドしたようなデッキで、ラクドスミッドレンジの弱点である打点の低さを《憤激解放》コンボでカバーしているデッキと言えます。ラクドスではアドバンテージを稼ぐのは難しかったですが、それも《スカルドの決戦》が補っています。《エッジウォールの亭主》や《群れの番人》の差によりアドバンテージを取るのはナヤには劣るものの、相手や回りによっては《初子さらい》を絡めてガードを無理やりこじ開けながらビートダウンしていくことで攻撃的に展開していくことが可能なデッキです。またローグに対しては脱出カードや《スカイクレイブの影》を取れるあたりナヤよりも分があります。

実はこのデッキは今回が初出という訳でなく以前から存在自体は認知されていたものではあるのですが、大きな結果を残したのは今回が初めてです。緑に比べるとカードをドローすることもあまりできずマナベースが結構厳しいのは難点ではあります。

次のエキスパンションである「ストリクスヘイヴン:魔法学院」のリリースが迫ってきていますので、カルドハイムのメタゲームとしてはほぼこれで固まったと言えそうです。次のスタンダードはどうなるのでしょうか。いまから楽しみです。

スポンサーリンク

3月4週目:環境末期なのに混沌としたメタゲーム

3/26~28にカルドハイムチャンピオンシップが開催されました。メタゲームは大きく偏ることなく形成されており、この環境末期の時期であってもスタンダードのメタゲームが混沌としているのはそれくらいバランスが取れているフォーマットということでしょう。

メタゲームとしてはスゥルタイ根本原理がトップ、次点でティムールアドベンチャー、赤単といったあたりがTier1と言っても良い形で展開されています。参加者の方が意識していたのは、全方位に有利を取ることは現在のスタンダードでは困難なため、どのデッキに対して有利なデッキを持ち込むか、という視点でデッキを選択している方が多そうな印象です。グルールフードはまさにその筆頭と言えるデッキです。

そして、カルドハイムチャンピオンシップを優勝したのは「ディミーアローグ」でした。

カルドハイムチャンピオンシップ優勝:ディミーアローグ

最近のディミーアローグは打ち消しが以前より多めに取られており、有利なマッチアップであるスゥルタイ根本原理やティムールアドベンチャーに対して、星を取りこぼさないように意識されています。本デッキもそのような形となっています。苦手なサイクリングに対しても《天頂の閃光》さえカウンターしきれば戦えるためカウンターが多めのほうが勝率が改善傾向にあります。

何よりTier1の2つに対して有利というのはこのデッキを選ぶ大きな理由で、環境末期の今存在感を一段と強めています。もう一つのTier1の赤単はかなり厳しいマッチアップなものの、決勝トーナメントはうまく当たることなく優勝という結果を残しました。決勝トーナメントを見ていてもマッチングの運という要素はいまのスタンダードでは結構大きい要素である印象です。

SCGストリクスヘイブン予選では、若干久々感のあるデッキであるナヤフューリーが優勝しました。

ナヤフューリー

《エンバレスの宝剣》が入っているのが特徴的なリストです。《厚かましい借り手》が更にクリーンヒットしてしまうようにも見えますが、優勝者のマッチングされた結果を見ると赤単と5回、ティムールアドベンチャーと4回という結構偏った当たり方をされていました。赤単は有利だと思いますが、ティムールを3-1で切り抜けており不利マッチのように思えるのですが勝負強さを発揮されての優勝であったのかもしれません。

何れにしてもどのデッキにもチャンスがあるというのはカルドハイム環境のスタンダードでの結論となりそうです。

スポンサーリンク

3月2週目:振り出しに戻りつつあるメタゲーム

先週はサイクリングが目立った活躍を見せたこともあり、やはり対策が厳しくなりました。

特に目立ったのは赤単アグロの再隆盛です。初速が遅いサイクリングに対して赤単は有利に立ち回ることが出来ること、そしてティムールアドベンチャーを始めとしたミッドレンジがやや増加傾向ということもあり、スゥルタイ根本原理がやや増加しているといった背景もあるでしょう。

そんな中、SCGストリクスヘイブン予選を優勝したのは白単アグロでした。

SCGストリクスヘイブン予選優勝の白単アグロ

デッキリストを見ただけで、やはり現在のスタンダード環境で勝つためにはメタゲームに合わせたデッキ選択と構築というのが一番重要な要素であるというのを体現しているデッキリストになっています。

サイクリングやナヤスピリットが増加しているため、単純に単体でパワータフネスが高いクリーチャーというのは1/1のチャンプブロックで防がれてしまうため現在は価値が下がっています。またタフネスが1であるアグロクリーチャーも同様です。

そこで《石とぐろの海蛇》と《影槍》をメインに採用しているというのがこのデッキリストの大きな特徴でしょう。《影槍》は特にサイクリングに対して有効で、トランプルという現環境で価値が上がっている能力だけでなくライフゲインにより《天頂の閃光》のリーサル圏外にまでライフをあげてくれるというのも見逃せないポイントです。《影槍》は緑系ミッドレンジのサイドボードでもよく見かけるようになっています。

緑系ミッドレンジ増加によりスゥルタイ根本原理の増加→スゥルタイ根本原理とサイクリング増加を受けて赤単の増加→その中で白単アグロが優勝するというのは、少し背景は異なる部分はあるもののまさに2月上旬頃のようなメタゲームになってきはじめているといった様子です。具体的なメタゲームに関してはこちらにまとめていますので参考にしてください。

同時期のもう一つ大型イベントである、CFBPro ShowDown March を優勝したのはティムールアドベンチャーでした。こちらはメインのリストに関しては変わり映えはしないものの、サイドボードに《長老ガーガロス》が4枚搭載されているのが目を引くデッキリストになっていました。

《長老ガーガロス》はサイクリングに対しても有効ですから、こちらも先週活躍したサイクリングに対してしっかり対策を行っている形になっています。やはり勝つためには直前で活躍したデッキに対して対策をするというのは必須ですね。

いまのスタンダードはデッキパワーがどれも団栗の背比べ状態で勝敗は紙一重の差であることが多いです。そのような現在のスタンダードでは同じデッキを使い続けて勝つというよりはデッキで勝つというほうが有効な手段であるというのが結果から見て取れるように思います。もちろんマッチング運というのにも左右はされてしまいますが、勝ったデッキリストからは細かい調整が見て取れますから準備を尽くして天命を待つという感じで大会に望むのが良いかもしれません。

スポンサーリンク

3月1週目:サイクリングの復権

ナヤは一撃コンボを決めてくるし、ティムールは《黄金架のドラゴン》と《アールンドの天啓》でおしきってくる。単体で強いクリーチャーは《巨人落とし》で落とされたり、《厚かましい借り手》でバウンスされてしまう。つまり環境的にクリーチャーの数を並べて戦うことが有効なメタゲームになってきます。

ナヤアドベンチャー以外に飛行の1/1トークンを量産することが得意なデッキと言えば・・・そうサイクリングデッキです。

存在は以前より認知されていたものの、リーグウィークエンドで一定の成績を収めたこともあって再注目されるようになります。

トークンの群れを貫通してくる《エンバレスの宝剣》や《探索する獣》には手を焼きはするものの、《黄金架のドラゴン》は構造上対処が容易です。またスゥルタイ根本原理も得意としており、1/1トークンをインスタントタイミングで生み出すことが出来るために《キオーラ、海神を打ち倒す》もそこまで苦としません。そしてティムールアドベンチャーとも戦えるデッキとして脚光を浴びます。(ナヤはスゥルタイ根本原理は苦手)

そして、ティムールアドベンチャーキラーとしてまたまたディミーアローグも注目を集めるようになったのですが、サイクリングはディミーアローグに対して圧倒的に有利です。切削されることで勝手に墓地にサイクリングカードが大量に貯まるので、適当に切削された後は《天頂の閃光》が一撃で20点を超える必殺カードになってしまいますので、隙を見て唱えるだけで勝ててしまうのです。

実際に3/7に行われたSCGストリクスヘイブン予選はサイクリングvsディミーアローグが決勝のマッチアップとなり、サイクリングが優勝しています。

優勝デッキには採用されていませんが《アイレンクラッグの紅蓮術師》が入っているリストも多いです。動き出すとアグロに対して非常に有効な働きをします。

ちなみに筆者もサイクリングを使用してSCGストリクスヘイブン予選に参加していたのですが、4色予言された破滅とマッチアップし、そのデッキは除去が満載な上に《エルズペスの悪夢》まで4枚採用されていたので笑ってしまうくらい勝てる気がしませんでした。(実際手も足も出ませんでした)

盤面を対処されてしまうとサイクリング側としては基本的に《天頂の閃光》に頼るしかないため、墓地まで綺麗に掃除されてしまうと勝つことが困難になります。サイクリングに勝つにはそういった手法を取ると良いですね。あとは《傑士の神、レーデイン》の裏面である《守護者の盾、ヴァルクミラ》も劇的に効きます。《天頂の閃光》と《繁栄の狐》以外はほとんど1/1や1点ダメージなので大半を無力化出来ます。

スポンサーリンク

2月4週目:KHMリーグウィークエンド

そのようなアグロデッキと緑を中心としたミッドレンジデッキがメタゲームの中心である状態の中開催されたリーグウィークエンド。

ナヤフューリーの使用者が多い結果となりましたが、そこで目立った活躍を見せたのが前週のMOチャレンジで優勝していたティムールアドベンチャーとナヤアドベンチャーでした。こちらにも詳細を掲載しています。

ティムールアドベンチャー

バウンスによりテンポを稼ぎながら《アールンドの天啓》により先に押し切るという構図になっており、特に《厚かましい借り手》がアグロやナヤフューリーが中心となっているメタゲームで強さを発揮するデッキです。リーグウィークエンドで使用者が軒並み好成績を収めたことで大きく注目を集めることになります。

そして時をおなじくしてMPL/MRLリーグウィークエンドでの使用者はいませんでしたが、《クラリオンのスピリット》を中心として小粒クリーチャーを展開し《秘密を知るもの、トスキ》によりアドバンテージを得ながら更に展開し・・・という横並べ型のナヤアドベンチャーが現れはじめます。

ナヤアドベンチャー 横並べ型

幾度となく姿を変えるナヤアドベンチャー。今回はなんと呼べば良いのか・・という感じですが、《ヤスペラの歩哨》により序盤から爆発的に展開することが可能になっており《クラリオンのスピリット》により小粒の飛行クリーチャーを横並べにします。飛行というのがポイントで、それにより《黄金架のドラゴン》をチャンプブロックすることが容易になるのです。

構造上ナヤフューリーにも有利で、かつティムールアドベンチャーにも有利なデッキです。リーグウィークエンドでティムールが活躍したことからもこのデッキが数を増やし始めます。尚、このデッキは《フェリダーの撤退》を採用して更に横並べを推し進める形に発展していきます。

スポンサーリンク

2月3週目:《憤激解放》コンボの大頭

メタゲームの中心は白単及び赤単の単色アグロとなっていた中、ナヤカラーでありながら従来のアドベンチャーとは大きく異なるコンボ型のデッキが打倒単色アグロとして名乗りを上げます。《憤激解放》を中心としたナヤフューリーです。

ナヤフューリー

《憤激解放》を《黄金架のドラゴン》に唱えると呪文の対象となるため、宝物トークンが生まれるので実質フリースペルとしてキャストできます。そこに《スカルドの決戦》の+1/+1カウンターが組み合わさると、実質フリースペルを唱えつつ《黄金架のドラゴン》がどんどん育っていきます。攻撃が通らなかったとしても《カズールの憤怒》による投げ飛ばしによって本体に直接ダメージを与えることも可能というコンボを備えているのが特徴です。

コンボは比較的早く決まる(《恋煩いの野獣》に《憤激解放》を2回打っても一撃で20点になる)ので、単色アグロに対して有利を取れるデッキとして爆発的に数を増やし始めました。これによりまたメタゲームが混沌としはじめます。

スポンサーリンク

2月1週目~2月2週目:大スゥルタイ根本原理時代~単色アグロの復権

これまでグルグル回り続けていたメタゲームでしたが、スゥルタイ根本原理が本物であることが証明されるやいなやメタゲームのシェアを5割占めてしまうほどに勢力を伸ばし始めます。

イージーウィン

スゥルタイ根本原理はとにかく《出現の根本原理》が唱えてしまえば勝ちとも言えるほどの必殺技となっていることが特徴で、《古き神々への束縛》もこのデッキに噛み合い過ぎているほど強力。各種パワーカードによるデッキパワーも本物であり、スゥルタイ根本原理をどうやって倒すのか、または使うのかという状態になりはじめます。グルールアドベンチャーですら《出現の根本原理》を唱える前に倒すのは難しく分が悪い程に強いデッキだったのです。

スゥルタイ根本原理を倒すには、デッキ構成上重めのパワーカードに頼っているために「《出現の根本原理》を打ち消す」「《出現の根本原理》を唱える前に倒す」の2つのアプローチが考えられます。前者のアプローチとして、グルールアドベンチャーやボロスアグロが青をタッチして少量のカウンターを積むことにより延命している間に倒すという形で対抗するデッキが現れ始めますが、なかなか毎回上手くいくような手法ではありません。また《出現の根本原理》を搭載しないコントロール特化型のスゥルタイコントロールも現れますが、スゥルタイ根本原理もハンデスやカウンターによりコントロール相手向けのチューンアップにすることも可能なので、こちらも大きな優位性を築くのは難しい状態です。

そして、後者のアプローチで彗星のように現れたのが赤単アグロです。

各種速攻を持つクリーチャーとお馴染みの《エンバレスの宝剣》、またカルドハイムの《不詳の安息地》により盤面をリセットされたとしても継続する攻撃力により、スゥルタイ根本原理キラーとして一大勢力を気付き始めます。

また、それと時を同じくして白単アグロも勢力を伸ばしはじめます。

白単アグロは赤単よりは速度が落ちるためスゥルタイ根本原理への相性としては赤単にやや分がありますが、白単はカルドハイムの新戦力に大幅に強化されており速度は決して遅くはありません。また白単は赤単に対してもやや相性が良いというのも長所です。特に《傑士の神、レーデイン》の裏面である《守護者の盾、ヴァルクミラ》はかなり効果的です。

そして、実際に2/15に行われたSCGカルドハイムチャンピオンシップでは見事に白単アグロが優勝しています。

また、2/14に行われた CFBPro Showdown では、増加するアグロを見越してか、それらと相性の良いエスパーの《予言された壊滅/Doom Foretold》デッキが優勝しています。実際に優勝者がマッチングしていた結果を見ると過半数がアグロデッキでした。

メインはスゥルタイ根本原理が厳しそうに見えますが、サイドには対策が手厚く取られています。

また、同じく2/14にMPLやMRLの選手も多く出場するハイレベルな大会となった F2K United Valentine Invitational ではスゥルタイ根本原理がトップの使用者であり、優勝もスゥルタイ根本原理となっていました。

このように徐々に「スゥルタイ根本原理」「単色アグロ」「アグロキラー」の3すくみになりはじめました。

スポンサーリンク

1月末(カルドハイムリリース直後)~2月1週目:グルグルするメタゲーム

カルドハイムリリース直後カルドハイムより早々に頭角を現したのは以下の2枚です。

《スカルドの決戦》はスタンダード禁止カードの《僻境への脱出》を彷彿とさせるアドバンテージカードでありながら、2章3章の+1/+1カウンターをクリーチャーに置く効果がアグロデッキにとって優秀。前環境トップメタであるグルールアドベンチャーに《スカルドの決戦》を搭載することで、よりカードアドバンテージを取得する能力に秀でたタッチ白のグルールアドベンチャーが環境に台頭しはじめます。

ナヤアドベンチャー(Naya Adventure)

《黄金架のドラゴン》は宝物トークンを生み出す効果により、5ターン目に5マナでキャストしてアタックした後でも2マナを構えられる能力が2マナ域に優秀なスペルを持つ青赤イゼットカラーと非常に相性が良く、イゼットテンポと呼ばれる前環境にはない新しいデッキも使用者を伸ばしていました。尚、この《黄金架のドラゴン》はイゼットだけでなくグルールアドベンチャーのような赤を含む殆どのデッキで採用されはじめるポテンシャルを示していました。

イゼットテンポ(Izzet Tempo)

これらの新勢力に対して相性の良い前環境有力デッキである緑単フードが勢力を伸ばしはじめた直後、緑単フードだけでなく前述の新勢力2種に対しても相性が良いことがわかってきた前環境有力デッキであるディミーアローグが爆発的に数を伸ばし始めたのです。

ディミーアローグ(Dimir Rogue)

そんなディミーアローグに対して相性が良いデッキと言えば・・・そうラクドスミッドレンジです。赤黒の両面ランドだけでなくカルドハイムからいくつかラクドスを強化するカードがあったため、そのリストが出始めるや否や急速に勢力を拡大しトップメタにまで躍り出ます。

ラクドスミッドレンジ

そのようなメタゲームである中、カルドハイムリリース後では初となる大規模オンライン大会であるSCGカルドハイムチャンピオンシップ予選が開催。そのラクドスをバッサバッサとなぎ倒して優勝したのがスゥルタイ根本原理だったのです。

スゥルタイ根本原理

一部では存在は認知されていたデッキだったのですが、いままで注目されていなかった《出現の根本原理》であること、及び一見ファンデッキに見えなくもないデッキであることからやや懐疑的なデッキであったのですが、この優勝をきっかけとして注目を集めることになります。

これがカルドハイムのリリースから約1週間のメタゲームの流れです。とても1週間とは思えないくらいのスピードでグルグル回っていることがお判りいただけるかと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました