【MTG】スタンダードメタゲーム解説(6月1週目)

スタンダード

スタンダードメタゲームについて時系列に沿って定期的に更新しながら解説します。

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6月1週目:禁止改定後のトップメタはやはりエスパー

別記事でも触れているように5月末で新たに禁止改定されたことで、それまでのスタンダードとは全く異なるメタゲームが展開されることが予想される中での初週となりました。

まずはいつも通りMOチャレンジ2回分の集計結果が以下の通りです。(参考にできるイベントの中でMOチャレンジが所謂ガチ勢が最も多いと思われるので、メタゲームを測る上で中心的に取り上げています)

もはやラクドスは見る影もなく、禁止改定前からのトップメタの一角であった禁止改定の影響を全く受けていないエスパーレジェンズが当然のように結果を残しています。しかも今週の結果としては圧倒的なまでの勝ちっぷりと言っても良いでしょう。

6/3付けのスタンダードチャレンジを制したのが上記のエスパーレジェンズ。

他のエスパーレジェンズと比べるとメインに《かき消し》を積みつつ、《かき消し》とやや相性の悪い《スレイベンの守護者、サリア》が1枚と少ない点。また《侵攻の伝令、ローナ》を4枚フル採用した上で、《侵攻の伝令、ローナ》と相性の良い《鴉の男》《賢明な車掌、トルーズ》といったクリーチャーが採用されていることでやや長期的な戦いも見越した構成となっている印象を受けます。

ラクドスが環境から消えたことで以前程は単体除去も連打されなくなっており、特にエスパー同型が増えた環境では《鴉の男》のような生き残っていると価値が出てくるクリーチャーにも以前より活躍しやすくなっているという背景もあることでしょう。

《かき消し》は汎用性の高い打ち消しではありますが、特に打ち消しを意識しているスペルは増加傾向にある《太陽降下》のような重めの全体除去です。このデッキはそこまで決着が早いデッキではないので《スレイベンの守護者、サリア》は間に合わないことも少なくありません。加えて《復活したアーテイ》も含めると狙ったスペルを咎めることは現実的に可能なラインなので、メタゲーム次第ではこういった構築のほうが適しているケースもありそうです。


このように細部の構成についてはまだまだ環境に応じて煮詰めていく部分はありそうですし、いつまで今週のような勢いが続くかはわかりませんが当面はトップメタの一角には居続けるであろうアーキタイプなのは間違いなさそうです。

6/4付けのスタンダードチャレンジを制したのは上記のアゾリウスコントロール。6/3にも似た構成のデッキが入賞しており、そのことからも現在の環境ではコントロールも有力なデッキとなっていることが垣間見れます。

白単ミッドレンジでもお馴染みの《軍備放棄》や《野心的な農場労働者》を入れたタイプで、これにより結果的に基本土地も多くなることから3マナの優秀なドローソースである《発見への渇望》も強く使えるというシナジーが取り入れられたタイプの構成になっています。

盤面を握ったりフィニッシャーの役割を果たすのはプレインズウォーカーとなっており、プレインズウォーカーと《太陽降下》を組み合わせたデッキは今後も色々と試されるであろうことは間違いないさそうです。

そして《放浪皇》や《永遠の放浪者》のような以前から活躍しているプレインズウォーカーもそうですが、禁止改定で大きく株をあげたと言っても良いのは《時間の旅人、テフェリー》でしょう。元々カード自体は強かったものの5マナと重いのでキャストしても《絶望招来》でサクッとやられてしまうのが環境的に難点で活躍し辛かったですが、その天敵がいなくなったことで更地で出せれば生存率はグッと上がりました。そして少しでも生存できれば相当強力であるのは見ての通りで、今後は青のフィニッシャーの定番となる可能性も出てきたように思います。

6/3入賞のリストと比べると打ち消しを減らして《魂の仕切り》のような盤面を捌くカードを増やしていたりと、上記の構成はエスパーを大きく意識しているのは間違いないでしょう。このようにメタゲームに合わせて常に微調整が必要となってくるデッキですが、その分対応力の高さは魅力的ですし《勢団の銀行破り》がいなくなった今後の環境では存在感を発揮していくアーキタイプになりそうです。

単色アグロの代表格である赤単アグロも相変わらず顔を見せています。

少しトレンドの変化を感じる点が《焼炉の徘徊者》がメインに4枚入れているリストが増えてきたところでしょう。以前はラクドスミッドレンジに対して微妙に効き辛かったりもありメインに採用するのは躊躇うところがありましたが、現在はエスパーや多色デッキが非常に多くこの効果が無駄になる相手が少なくなってきておりメインで問題ないケースが増えてきています。また《タルキールへの侵攻》を採用するリストも増えてきており、確かに表面の火力も裏面のドラゴンも(除去が減っていることもあり)有効となる相手が増えてきているように感じます。

そして全体的に速攻もしくは《焼炉の徘徊者》といったキャストしてすぐに何らかダメージを稼ぐ構成に特化した構築が主流で、全体的にソーサリータイミングの除去では何かしらダメージを食らってしまうことが避けられないように意図されています。これは特に白い相手には有効な構築で、早くもメタゲームの変化に対応した構築への変化が見られます。

ただやはりエスパーに対して若干不利であることは否めずサイドに4枚入っている《石術の連射》が的確に刺さらないと厳しい印象です。弱いデッキではありませんが、現状のトップメタに対してやや不利というのはちょっと辛いところかもしれません。

分類上は5色ドメインに分類しましたが、実態としては白単ミッドレンジに限りなく近い構成となっているのが上記のリスト。

白単ベースとすることで安定性を保ち《軍備放棄》を始めとしたクリーチャーを対処するスペルによって時間を稼ぐ構築となっています。禁止改定前の環境と比べるとミッドレンジよりもアグレッシブに攻めてくるタイプのデッキが増えてきているので、以前よりは序盤から盤面を捌きに行ける構成にしないとライフが保ち辛くなっているという判断からの構築かもしれません。

とは言えタップイン土地は計12枚と序盤のタップイン地獄に足をすくわれることも少なく無さそうですし、2マナ圏弱さ、特に《神憑く相棒》の弱さが個人的にはどうしても引っかかります。2ターン目はタップインからの《軍備放棄》でターンを過ごすのも理解できますし《永岩城の修繕》で捨てるとタダ得というのもわかりはするのですが、以前のように《絶望招来》の的という役割もない上に《婚礼の発表》が(メインには)ない中でこの1/1の価値があまり感じられないのが正直なところ。ですが他に対した2マナ圏がないのも事実ですし、このあたりは現在の白単ベースデッキの辛さといったところです。

ただ1枚採用されている《セレスタス》に関しては前環境よりも明確に使用する価値の上がった一枚と言って良いでしょう。以前は《削剥》が当たってしまう上に他に《削剥》が刺さるカードが少なかったのでメインに取り辛かったのですが、そういったリスクが大幅に少なくなったことでメインに採用しやすくなりました。《セレスタス》に関しては今後は以前より見かける頻度が上がるカードになると思います。




このように現在はエスパーがやはりトップメタであるものの、禁止改定によってスタンダードのデッキ選択の幅(禁止カードによってもたらされていた実質的なデッキ構築制限がなくなった)は大きく広がっており、以前は見かけなかったようなカードに対しても焦点が当たってくるような変化が出てきています。

そのため、現在のスタンダードはますますデッキを考えることに対しての楽しさが増しており流動的な変化が期待できるフォーマットになったのは間違いなさそうです。今後はこれまで見なかったデッキが登場してくることもありそうですからどのように変化していくのか楽しみです。

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5月2週目:「機械兵団の進軍:決戦の後に」リリースも何処吹く風?

スタンダード向け小セットである「機械兵団の進軍:決戦の後に」がリリースされたことで、今週からいくつか新しいカードが入った環境がスタートしています。

・・・ですが、小セットという事情を鑑みてもあまりカードパワーが高いセットではないことは明白で、少なくても現在の環境を変えるというセットにはならなさそうな雰囲気を既に漂わせています。

実際にいつも通り今週のMOチャレンジ2回分の結果をまとめたものが以下になっています。

まさにプロツアーの延長といったメタゲームで、相変わらずのラクドスミッドレンジの天下という状況。ラクドスミッドレンジに対抗するために5色ドメインが大きく増加する形となっています。5色ドメインに有利なアゾリウス兵士が優勝していたりするものの、基本的には相変わらずラクドスミッドレンジを筆頭にしたメタゲームが相変わらず展開されています。

デッキリストに関してもプロツアーで活躍したリストと殆ど同じで、ここだけ見ると「機械兵団の進軍:決戦の後に」の面影は全くと言って良いほど無く、リリースされたのが嘘であると感じるくらいにはメタゲームに影響を与えていない状況となっています。



・・・と、このように今週は入賞しているメタデッキの変化が少ない上に「機械兵団の進軍:決戦の後に」がリリースされたということもあるので新カードを使ったデッキをいくつか紹介する形にしたいと思います。

白単アグロ。こちらには2マナ域として《銅纏いの先兵》が採用されています。

白単であれば特に意識せずとも人間が多くなりますので《銅纏いの先兵》がすんなり入るのは当然と言ったところでしょう。見たままのシンプルな強さを持ったクリーチャーで、白系のアグロの2マナ域に定着しそうな一枚です。

赤単のアーティファクトランプデッキ。これには《再録されたレガシー、カーン》が採用されています。

同じマナ域の《マイトストーンとウィークストーン》以上のマナ効率を持っているとも言えるカードで、クリーチャーではあるもののアーティファクトであることで《喉首狙い》が当たらないため環境的に除去耐性を持っている点が優れています。《マイトストーンとウィークストーン》のほうが優れている点もあるので一長一短ではありますが、どちらも伝説というリスクがあるので5マナ域をスプリットして採用できるという選択が取れるようになったのも嬉しいところでしょう。

少し前にイゼット型も見られたアーキタイプですが、ラクドスミッドレンジに対して有利が付きやすいアーキタイプなのは少なくないメリットですし環境的に《兄弟仲の終焉》が少し数を減らしているのも嬉しいところでしょう。また活躍が見られるようになるか期待したいところです。

《囚われの黒幕、オブ・ニクリシス》により登場したのが、このラクドスコンボデッキです。

《完全なる統一》が場に出ている状態で《囚われの黒幕、オブ・ニクリシス》の相手1点によるトリガー能力が誘発すれば、互いの効果により延々とダメージを与えられるというコンボが内蔵されたデッキです。

そのコンボを除けば(若干劣化版とは言え)ラクドスサクリファイスともラクドスミッドレンジとも言えるような振舞いも可能で、《完全なる統一》はコンボ以外でも普通に使えたりと勝ち手段がコンボに依存しすぎていないという点はメリットとは言えますが、このコンボに関して言えばソーサリータイミングでしか唱えられない特定のカードを2枚揃えた上で、更に1点ダメージを相手に与えるというハードルは相当なものがあります。そのため、少なくとも現時点では流行ると言うほどまでの活躍は難しいであろうと思います。

ただ、やや低速にシフトしている現環境は決まれば勝ちというコンボを内蔵したデッキにとってチャンスとは言えますので、そういった環境的な立ち位置の良さに付け込むことができればワンチャンあるかもしれません。

あと、デッキリストという形の紹介ではないですが上記の《運命に導かれし者、ケイリクス》が登場したことでセレズニアエンチャントデッキも結構試されています。

このカード自体は強力で《無鉄砲》と組み合わせてコピー能力を誘発させにいくことができるのも強力ですが、現状ではラクドスの単体除去に対して有効な手立てが取れない上に《太陽降下》のような除去がどうしても厳しく、このカードでパワーアップはしたものの恐らくメタゲーム上に食い込んでくることはなさそうです。

少し前のように《スカルドの決戦》のようなカードがあれば少なくてもラクドスのような単体除去の雨に対してはある程度対抗できるようになるのですが、いまのカードプールでは厳しいでしょう。エンチャント全般という受けの広さからスタンダードローテーション3年という変化によるカードプールの広がりの恩恵を受けやすいでしょうし、今後という意味ではそれなりに期待できるのではないかと思います。

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5月1週目:プロツアー・機械兵団の進軍

プロツアー・機械兵団の進軍が開催され、今週はスタンダードのメタゲームが大きく動くこととなりました。まずメタゲームの分布は以下となりました。

公式でもメタゲームの詳細について触れられているのでそちらも参照して頂けるとわかりやすいですが、基本的には機械兵団の進軍がもたらした影響は以下が要点となっています。

  • 《石術の連射》《ぎらつく氾濫》の色対策カードによるエスパーや白系デッキの衰退
  • 上記による更なるラクドス(派生含む)デッキのメタゲーム支配
  • 《原初の征服者、エターリ》《希望の標、チャンドラ》《多元宇宙の突破》といったフィニッシュルートの増加

機械兵団の進軍による変化により元々トップメタであったラクドス(グリクシス)ミッドレンジが更に環境を支配することになったのは皮肉に感じるところですが、実際のところ前環境で後半に猛威を振るったエスパーレジェンドも今回はラクドスに苦戦しておりトップメタの2つの牙城を崩すようなデッキは現れませんでした。ラクドス/グリクシスミッドレンジは本大会の勝率でもトップを記録しています。

本大会優勝のラクドスミッドレンジ。同リストは現在世界最強チームと言われているグループで調整されたもので実際にTOP8に4名を送り出しており最も成功したデッキリストと言って間違いないでしょう。

除去多め、《勢団の銀行破り》4枚により対クリーチャーに強く出られる構成になっており、更に《夜を照らす》《強迫》をメインから取って《希望の標、チャンドラ》をフィーチャーした構成になっています。クリーチャーがやや少な目ですが、まるでバーンデッキのように《絶望招来》《夜を照らす》で間接的に勝つ道筋を持っておりクリーチャー除去の雨に対して耐性を持っているのも一つの特徴です。TOP8はドラフトの成績も影響するので一概にこのデッキだけの成果ではないとはいえ驚異的なパフォーマンスを見せたこのリストは今後のお手本となるでしょう。

グリクシスにしなかったのはマナトラブルを少しでも減らすことを重視しているようで、特にある程度の勝ち星をあげることが求められる(優勝以外にも価値がある)プロツアーではそれも納得の理由。プレイングにおいてもこのレベルでは当然ではありますがドメイン相手には2ターン目に攻め手を置ける手札をキープするといった相手に合わせたプレイが重要となるミッドレンジデッキを使いこなす乗り手の強さも相まっての成績となりました。

準優勝となったのが上記のラクドスリアニメイト。

《ギックスの残虐》からのリアニメイトを軸としてはいるものの枚数が3枚になっていたり《絶望招来》が取られていたりと、全体的にリアニメイト戦略に振り切った形にはなっておらずリアニメイト戦略を組み込んだやや重めの構成を取ったラクドスミッドレンジと考えるほうがしっくりくると言えるリストになっています。パワーカードをワンランク多めにすることでミッドレンジ相手に優位を取るように意識しつつも負荷を避けてバランスをとったデッキといったところでしょう。

これにより安定性を限りなく損なわないことに成功しており、ラクドスミッドレンジ然として振舞えるだけでなく墓地対策もそこまで苦にせず立ち回れるようになっています。《ファイレクシアの肉体喰らい》3枚も現在除去の中心となっている《喉首狙い》をかわせる点で活躍したことは想像に難くありません。

個人的にはかなり高い完成度を感じるリストで、ずっと進化し続けていたラクドスリアニメイトの一つの完成形を見たとも思える素晴らしいリストだと思います。

TOP8入賞のオルゾフミッドンジ。オルゾフミッドレンジといっても白単ミッドレンジのタッチ黒といった構成で、特に注目なのはやはりメインに2枚入っている《多元宇宙の警告》です。

白単ミッドレンジは細かくアドバンテージを取っていくことは得意なものの、いまいち決め手にかけるデッキでした。そこに《多元宇宙の警告》をタッチすることでデッキの弱点をフォローするという斬新な構築になっています。このカードの影響もあり自身はリアニメイトして嬉しい《永遠の放浪者》を3枚と多めにしているのも一つのポイントですが、現環境は《偉大なる統一者、アトラクサ》《原初の征服者、エターリ》《希望の標、チャンドラ》といった貰って嬉しいカードが増えているのもこのカードにとって追い風と言えます。

立ち上がりが遅れたりと2色にするデメリットも少なからずありますが、そこをフォローしているのが一家土地。結果的にタップインが増えてしまうデメリットはあるものの1マナで唱えられる《軍備放棄》でそれをフォローしており、加えて《セラの模範》で一家土地を使いまわせるシナジーまで生むことでデメリットをメリットに変えたりと細かい工夫も見逃せません。

正直このデッキがどこまでラクドスに有利がついているのか個人的には計りかねますが、いつも独創的なデッキを使っている印象のあるAutumn選手が今回もこのような個性的なデッキで入賞されたのは嬉しく感じます。

前週でも紹介したリストとよく似た5色ドメインもTOP8入賞しています。

特に打ち消しのないミッドレンジには強く、使用者もラクドスミッドレンジには100点と言及されているデッキです。やや青が少な目だったメタゲームに嵌ったことも好成績の要因の一つでしょう。

TOP8の他のデッキ分布的には優勝してもおかしくない印象でしたが、有利なラクドスミッドレンジに負ける形となりました。私もこのデッキ相手にラクドスミッドレンジで挑んだときには相手の回りが良いと勝てる気がしないといった印象を受けましたが、いくら相性が良くても必ず勝てる訳ではないのがMTG。

ただ今後のメタゲーム的にはもう少し数を増やしてもおかしくないであろうアーキタイプです。

TOP8入賞のアゾリウス兵士。正直個人的にはラクドスの《石術の連射》《ぎらつく氾濫》といった新カードもある中でよくここまで勝ち上がったなぁという印象のほうが強かったりはします。

といっても新戦力がない訳ではなく、特に《ゴバカーンへの侵攻》は注目の1枚。特に先手では非常に強いカードで、このカードを絡めて動きをソフトロックしている間に勝ち切るというプランが増えたのも勿論ですが、手札を覗けることで打ち消し構えをするかどうかの判断にも役立ってくれます。

《フェアリーの黒幕》は強いカードではあるものの《勢団の銀行破り》は相手ターンに起動すれば避けられたりすることもあり、アゾリウス兵士に入れるかどうかは未だ悩ましい部分はある印象です。ただこのカードの有無は置いておいてもクロックパーミッションのようにも振舞えるこのデッキはドメインのような重いデッキが増えれば増えるほど活躍する可能性がありますので、今後も決して無視はできないアーキタイプの一つにはなるでしょう。



そして、ここからはメタゲームの話ではないですがスタンダードのローテーションを2年→3年に変更するというスタンダードの方針を大きく転換する内容も発表されました。内容の是非はさておきとして、これにより結果的に《鏡割りの寓話》のローテーション落ちが伸びたことになります。そのため今度こそ《鏡割りの寓話》は禁止されるのではないかとの見方が強くなってきていますが、はてさて。。

加えて機械兵団の進軍が出たばかりですが、もう次のセットである「機械兵団の進軍:決戦の後に」のリリースを目前に控えています。これはリミテッドなしの小セットではありますが、もろもろ含め近いうちにスタンダードが大きく変化する可能性は高そうです。

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4月5週目:プロツアー直前の環境動向

機械兵団がリリースされて凡そ一週間と機械兵団の進軍がスタンダードに与える影響が見え始めてきたこの時期ですが、今回のセットで行われるプロツアーである「プロツアー・機械兵団の進軍」の開催まであと一週間という直前の時期。しかもこのプロツアーはスタンダードがフォーマットとして採用されているので、このイベントが今後のスタンダードに多大な影響を及ぼすことになるのは間違いありません。

そのため今週はプロツアーの直前ということで、メタゲームの動向を探りつつも個々のデッキについてはサラッと流す程度で触れていこうと思います。まずは今週のMOチャレンジ2回分の上位TOP8入賞したデッキのまとめが以下になります。

グリクシスを始めとしたラクドス系統のミッドレンジやリアニメイト。白系のミッドレンジ。そしてエスパーや諸々の他アーキ。と、パッと見は機械兵団の進軍がリリースされてからもアーキタイプとしてはあまり様変わりしていませんが、デッキ自体はアップデートされているものも少なくありません。

こちらは4/29のチャレンジを制した白単ミッドレンジ。このリストに関しては機械兵団の進軍のカードは一枚たりとも採用されていません。

決勝でグリクシスミッドレンジを退けて優勝しているあたり、やはり《偉大なる統一者、アトラクサ》を使わないラクドス系統のデッキ相手の強さは健在です。

こちらは白単ミッドレンジで分類してはいますが、白単コントロールといったほうが適切かもしれないリスト。

機械兵団の進軍でリミテッド最強カードと言っても良いであろう《太陽降下》4枚を筆頭にこれでもかというくらいに全体除去のオンパレード。こまでの全体除去と違って《太陽降下》《白の太陽の黄昏》といったカードは対処だけでなく勝ちを狙いにいけるので成立しているデッキと言っても良いでしょう。

クリーチャーデッキには悪夢のような相手となるリストで、スイス1位突破しているあたりからも注目のアプローチと言えるでしょう。

白単ミッドレンジの派生と言えるボロスミッドレンジ。

赤を足している理由は《鏡割りの寓話》と《原初の征服者、エターリ》。特に《原初の征服者、エターリ》が注目のアプローチでしょう。《原初の征服者、エターリ》は《偉大なる統一者、アトラクサ》に匹敵するくらいの決定力を持つカードで、白単ではこういった決定力を持つカードは採用できません。

デッキパワーを大きく上げる一枚であり、打ち消しを持たないミッドレンジには圧倒的なまでの強さを持つこのカードによって戦いやすくなる相手も少なくない注目のデッキです。

安定した実績を残し続けるグリクシスミッドレンジ。前週触れたように《希望の標、チャンドラ》が良く見かけるカードになってきたのが大きな変化点でしょう。

-Xから2つの対象を除去して盤面を更地にした後に中段の忠誠度能力と本体の常在型能力でゲームを決めるこのプレインズウォーカーは非常に強く、私も実際使ってみて驚いた一枚です。プロツアーでも良く見ることになるあろう一枚です。

4/30のチャレンジを制したのが上記でこちらもグリクシスミッドレンジですが、よく見ると固定パーツと思われているくらいのカードである《絶望招来》が一枚も採用されていないのが光るリストとなっています。

言うまでもなく《絶望招来》は強力なカードですが、あまりにも溢れすぎて意識されているカードでもありデッキ構造から対策されているカードの一つと言っても良い一枚。それ故にやや効き辛い相手も存在しており、加えて環境には《原初の征服者、エターリ》を筆頭に《絶望招来》以上の高コストのパワーカードが暴れており以前よりも《絶望招来》で抑えきれない側面があるというのも事実。そういった背景もあって《復活したアーテイ》などを加えて打ち消し多めで受けながら戦うタイプにシフトした構築にしたのではないかと思います。

確かに高コストのカードが増えるほどクロックパーミッション戦略は有効になりますし、これも変化に富むグリクシスの一つのアプローチとして納得させられるリストです。

4/30のチャレンジ準優勝の5色ドメイン。このリストには《金属の徒党の種子鮫》が採用されています。

確かに《金属の徒党の種子鮫》と版図は相性が良く、特に《力線の束縛》を版図により1~2マナで唱えつつの培養6は強力極まりないタッグです。このように《金属の徒党の種子鮫》は仮に除去されても培養は残せるよう意識してプレイすべきデッキでしょう。

こちらも5色ドメインですが、リストは前項の物とは大きく異なっています。

こちらは《ゼンディカーへの侵攻》が採用されており《装飾庭園を踏み歩くもの》も含めて多色のランプデッキといった形を取っています。全体除去も《太陽降下》が採用されており《装飾庭園を踏み歩くもの》があることで3→5へマナがステップできるのも採用理由の一つでしょう。

このように特にリストの差が大きめの5色ドメインですが、プロツアーで活躍しお手本となるリストが表れるのか注目したいところです。

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4月4週目:機械兵団の進軍リリース

新エキスパンションである「機械兵団の進軍」がリリースされ、新しいスタンダードが開幕しました。

カードパワーが全体的にイマイチという前評判もよく聞かれるセットでしたが、早速その機械兵団の進軍のカードを使ったデッキがイベントの結果に顔を見せてきています。

今週はリリースして間もありませんので、メタゲームというよりもイベントで結果を残したデッキから新カードに焦点を当てつついくつかピックアップして見ていきます。

前環境トップメタの一角であるエスパーレジェンド。新戦力となりそうなカードは決して多くはないですが《侵攻の伝令、ローナ》は新しい2マナ域として定着する可能性を秘めています。特にこれまで2マナ域は比較的人材難な印象でしたし《侵攻の伝令、ローナ》のルーティング能力によりこのデッキにありがちな回りムラもいくらか軽減してくれるので、デッキに良く噛み合っている一枚です。

サイドの《救済の波濤》はたった1マナながら単体除去だけでなく《兄弟仲の終焉》のような全体除去までカバーできる優秀な一枚です。この一枚があることでこれまで定番であった《兄弟仲の終焉》の枠を《ぎらつく氾濫》に差し替えるというのも充分選択肢として入ってくるでしょう。

こちらも前環境トップメタの一角であるグリクシスミッドレンジ。やはりこのデッキは細部をメタゲームに合わせていけることもあり今後もトップメタとして存在し続けそうな印象ですが、上記で新戦力として採用されているのは《希望の標、チャンドラ》。他に入賞していたグリクシスミッドレンジもこのカードを採用しているリストが多かったのも印象的です。

6マナと重いカードではありますが、その分少しでも場に定着したときには《絶望招来》をコピーしたりとゲームの決め手としての力を充分に有しています。グリクシスは基本的に細かく優位を築いていくデッキで、これまで《絶望招来》くらいしか1枚でゲームを決定付けるようなパワーカードがなかったですが、このカードが入ったことでカードパワーで戦う手段をこれまで以上に持ち合わせるようになったと言えそうです。

サイドの《石術の連射》はまさに見たままというカードですが、いまのメタゲームでは《切り崩し》より優先すべきかどうかは悩ましいところでしょう。もし《金属の徒党の種子鮫》がもっと流行るようであればこのカードの出番は増えるかもしれません。

本セットにより少ない枚数ながらも大きくパワーアップを遂げた印象が強いのがジェスカイ。こちらはジェスカイコントロールになっており、MOチャレンジを優勝しているという点でも注目すべきであろうデッキになっています。

注目のカードは《金属の徒党の種子鮫》。リミテッドでの強さに舌を巻いた方も少なくないであろうカードですが構築フォーマットにおいても注目の一枚。タフネス4ある点が偉く《切り崩し》《削剥》《兄弟仲の終焉》といったカードでは除去できないので環境的にナチュラルに除去耐性を持っているとも言えます。そしてとにかく生き残ってさえいれば自然と培養を発生させられるので、これ1枚がゲームの決め手になることも少なくありません。ここまでの軽さのフィニッシャーはこれまでこのカラーにはなかったので特にクリーチャー以外のスペルを多用するジェスカイにとっては期待の一枚でしょう。もちろんジェスカイ以外でも使えるカードですが、今のところジェスカイが一番相性が良さそうに感じます。

他は《ズルゴとオジュタイ》で、見ての通り能力的にもコントロールに適合している優秀なクリーチャーです。あまり多く引きたいカードではない上に新戦力ということで様子見の一枚採用になっていますが、今後定着するカードとなるか注目です。

ジェスカイは他にも新しい強力な全体除去《太陽降下》を使った形も組めそうですし総じて期待のアーキタイプの一つと言って良いでしょう。

上記はラクドスリアニメイト。これまでリアニメイト対象は《偉大なる統一者、アトラクサ》一択でしたがその枠に入ってきた新戦力が《原初の病、エターリ》。こちらも場に出たときの強さは相当な物を持っていますが《偉大なる統一者、アトラクサ》と違って(デッキに使わない)色マナを要求しないので普通にキャストしやすいという大きなメリットを持っています。マナベースも無理する必要はないので弱点の一つであったデッキの安定性を損ねてしまうというデメリットを軽減した上で、リアニメイトの強さを担保するというのはやはり相当に大きいメリットをもたらしている一枚と言えるでしょう。

《偉大なる統一者、アトラクサ》は一枚挿しでも《ギックスの残虐》からサーチしてくることができますし、今後ラクドスリアニメイトはこの形が主流になっても不思議ではないと思わされるリストとなっています。

何気に機械兵団で新戦力が多いアーキタイプの1つが赤単アグロです。

新しい2マナ域の《呪文槍のケンラ》と《血羽根のフェニックス》は特に採用が目立つカードで、これまで速攻2/2というすぐに立ち止まってしまうようなクリーチャーばかりだった2マナ枠がこれらで大きくアップデートされているのが印象的です。

他にも《ナヒリの戦争術》をメインにとって《黙示録、シェオルドレッド》を対処できるようになっていたり強力な4マナ域である《猛り狂う猛竜》が採用されていたりもしますが、個人的に目から鱗だったのが《過去と未来の剣》。いつ唱えても使い道のある火力呪文のおかげで能力が強く使えるカードとなっており、プロテクションも現環境では刺さる相手が多くメインボードから入っているのも納得の一枚となっています。

上記リストには入っていないものの、他にも《かき立てる炎》《レガーサへの侵攻》といったカードも赤単と相性が良さそうですし、まだまだアップデートの余地があるデッキです。

上記はアゾリウス兵士のアップデート版で、新しく採用されているのは《イーオスの遍歴の騎士》。

全体的に小粒で数を並べるデッキですので召集が非常に使いやすく相性の良い一枚。もともと《天空射の士官》のようなカードにより息切れし辛く継続的に戦力を展開できるデッキでしたが、このカードのおかげでそういった側面が更に強調されています。さらにこのリストでは《微風の歩哨》で《イーオスの遍歴の騎士》を戻して使いまわすこともできるようになっています。

兵士ではないという点だけは残念ですが、そんなデメリットよりも大きなメリットがこのカードにはあります。今後アゾリウス兵士の固定パーツになってもおかしくはないカードでしょう。





と、このように当然ながら既存のリストをアップデートしたものが大半を占めていますが、他にも《アモンケットへの侵攻》を採用した青黒型のリアニメイトだったり《ギラプールの守護者》を用いた白系ミッドレンジだったりと色々なアーキタイプが見られますので、今後もまだ見ぬデッキが登場していきそうな面白い環境になっています。

来週になるとある程度メタゲームも固まってくるであろうと思いますので、また来週にメタゲームを見ていきたいと思います。

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4月2週目:USA地域のFinals

今週はアメリアの地域選手権が開催されました。やはり本場アメリカということで参加者も939人と他地域と比べると段違いに多い参加者数となっており、熾烈な争いとなりました。

メタゲームは使用率トップがエスパーレジェンド。そこにほぼ同じ数で続いたのがラクドスミッドレンジと前回更新で触れた内容やMOで活躍していたことにより爆発的に使用者が増える結果となっています。そして白単ミッドレンジが3番手。それからまさの使用率4位となったグリクシスミッドレンジといった分布となりました。

TOP8に関してはラクドスリアニメイト*2、エスパーレジェンド*2、4色コンボラクドスミッドレンジ白単ミッドレンジセレズニア毒性といった形で比較的様々なアーキタイプが入賞しました。更にTOP2はどちらもラクドスリアニメイトと苦手なグリクシスミッドレンジが減ったことの恩恵を受けた形となりました。

こちらがそのラクドスリアニメイトのリスト。TOP2の両者の細部は異なるもののこれから述べるような点はどちらのリストも同じで、非常に構成が良く似ていることから現在の最適解だったと言えるかもしれません。

まずラクドスの現在のトレンドとも言える《切り崩し》4枚に加えて《兄弟仲の終焉》もメインから多く採用されており、かなりアグロを意識していることが伺えます。特に《切り崩し》は一時あまり採用されていなかったりしましたが、エスパーレジェンドの流行に合わせて最近はラクドスの必須パーツとなりつつあります。

そして注目は《燃え立つ空、軋賜》でしょう。恐らく死亡時誘発の宝物トークン3つを強く見ての採用で《ギックスの残虐》からのリアニメイトだけでなく普通にキャストして《偉大なる統一者、アトラクサ》を場に出しやすくなっています。また《偉大なる統一者、アトラクサ》で捲るクリーチャークリーチャー枠の当たりとも言えるカードとしての意味もあるので、今回の結果を見ているとラクドスリアニにとって《燃え立つ空、軋賜》はマスターピースだったと言えるかもしれません。

サイドに一枚入っている《蝕むもの、トクスリル》は白系アグロ。主にセレズニア毒性の対策カードで、それらに対してはこれさえ場に出せれば瞬時にほぼゲームを完封することができるくらいの強さを誇ります。1枚挿しでも《ギックスの残虐》から探してこれるのでサイドを割く価値は充分にあります。

上位入賞でも一際異彩を放っているのが上記の4色コンボデッキ。しかもスイスラウンド1位抜けしており凄いの一言しかありません。

キーとなっているのが《共同魂の刃》。これと伝説ルールを利用することで意図的に伝説クリーチャーをコピーして墓地に落とすことができるようになります。《夜明けの空、猗旺》《燃え立つ空、軋賜》をコピーしてその死亡能力を誘発させられますが、そこに《アーボーグのラタドラビック》が合わされば伝説ルールで生け贄に捧げつつトークンが生まれますので、そのトークンにまた《共同魂の刃》をつけることで死亡誘発能力を繰り返し使うことができます。

《夜明けの空、猗旺》であれば2マナで繰り返し死亡誘発させられるのですぐに圧倒的な盤面が出来上がりますし《燃え立つ空、軋賜》であれば宝物トークン3個生み出すことで2マナ装備の差し引きで1マナ浮くため無限マナとなります。もし両方のドラゴンが揃えば《夜明けの空、猗旺》を無限に死亡誘発させられますし+1/+1カウンターを乗せ続けることで一撃で相手を葬ることができます。両方揃っていなくても《夜明けの空、猗旺》さえあればすぐに盤面が完成させられるのでそれで充分とも言えます。

中速デッキ同士の対決においてはこういった決まれば勝ちといった要素を持っているデッキは強く、ミッドレンジ環境になればなるほど輝きそうなデッキです。

そもそもこれを実践レベルまで昇華し、このレベルのトーナメントで勝ち上がるというのは並大抵のことではありません。優勝こそ逃したものの今大会最注目のデッキとなったことは間違いないでしょう。

上記はTOP8入賞のセレズニア毒性。特徴的なのは《無鉄砲》が4枚採用されている点です。

セレズニア毒性はクリーチャーが小粒なため中盤以降は本体へダメージを通すことに難儀することも多いですが《無鉄砲》でパワーを上げつつのトランプルにより少しでも本体ダメージの確率を上げるために採用されています。《敬慕される腐敗僧》の能力を誘発させられることも可能なので、なるほどと思わされる採用となっています。

このデッキは現環境の中でもピーキーな性能のアーキタイプで、今後もメタゲームを席捲するとまでは言わないまでにしても忘れたころに登場したりと使い時が良ければ活躍できるでしょうから、仮に今後あまり見ないデッキになったとしても頭の片隅にはおいておいたほうが良いデッキかもしれません。




そして、併催されたオープンイベントも400人近くの参加者と盛況で、こちらの上位入賞でも面白いデッキがありましたので一つ取り上げたいと思います。

こちらはシミック型の毒性デッキです。一部では見られたデッキタイプですが、しっかり結果を残したものはこれまで殆ど見られませんでした。

毒性と言っても毒性要素は《敬慕される腐敗僧》のみ。ここに《陽気な呪文盗み、アイヴィー》を重ねることで採用されたインスタント群を多重誘発させ《敬慕される腐敗僧》の能力を繰り返す誘発させることができます。

このデッキの強みは戦闘ダメージでなく《敬慕される腐敗僧》の能力で毒を盛れるために相手からすると避けることが困難な点にあります。そしてマナさえ浮いていれば《敬慕される腐敗僧》を除去スペルで対処しようとしても毒を盛られた上で避けられるといった形でむしろ逆効果になることが多く、対処するのが困難を極めます。

一方で《敬慕される腐敗僧》が引けなければ毒性は全く機能しませんし、代わりになるカードもないためキーカードが4枚という安定性には欠ける部分があるのは否めません。このリストでは《秘密を掘り下げる者》や《嵐追いのドレイク》のように毒性に依存しない勝ち手段を設けることで工夫はされていますが、どうしてもその不安定要素で負けてしまうゲームは避けられないでしょう。




さて、そろそろ機械兵団の進軍のリリースが近づいており現環境のスタンダードも終わりを迎えようとしています。現環境はグリクシスの1強環境で終わるのかと思いきや特に3月以降は大きく環境が動いた印象で、これまで触れたようにグリクシスにも様々なアーキタイプが活躍し近年でも稀にみるくらいの良環境であったと言えるでしょう。

現在は基本的にミッドレンジ環境と言えますが、機械兵団の進軍のカードを見る限りミッドレンジ環境は恐らく続いて行くでしょう。そんな環境の中、機械兵団の進軍のカードがどういった形で活躍していくのか今から楽しみです。

次回は機械兵団の進軍がリリースされてからまた環境を追いかけていきたいと思います。

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3月4週目:カナダ、中国のCycle2 Finals

今週はカナダ中国にてCycle2 Finalsが行われましたので、そちらの結果を見ていきたいと思います。

やはり前回更新で触れたエスパーレジェンドの今回の結果は注目されるところでしょう。両TOP8の16デッキの内訳は以下のようになっていました。

ジェスカイコントロールのような珍しいデッキが入賞していたりはしますが、基本的には先週の分布と大きく変わらない結果になっています。ただし地域別で見ると中国ではグリクシスミッドレンジがTOP8に4つである一方でカナダはまさかの0だったり、エスパーレジェンドはカナダでTOP8に3つ入賞していたりといった違いは見られます。

アーキタイプ毎の勝率で見ると白単ミッドレンジとラクドスミッドレンジの勝率が高く、毎週違ったデッキが好成績を残しているあたり現在のスタンダードの多様性を物語っているとも言えます。特にカナダはラクドスミッドレンジがTOP16に4つ入賞しており目を見張る活躍を見せています。

上記はカナダでTOP8に入賞したラクドスミッドレンジ。TOP16の他のデッキを比較すると多少デッキリストにバラつきはありますが、基本的にどの入賞デッキも同じ構成になっています。

《剃刀鞭の人体改造機》《墓地の侵入者》をはじめとした除去されても爪痕を残していくクリーチャーによって攻撃を仕掛けられる構成。そこに加えて《切り崩し》4枚というテンポを重視したカード選択により序盤のリードを築き上げることを重視しています。そうして得たリードを《絶望招来》のような強力なパワーカードでゲームに蓋をしていくといった戦略を取っています。

長期戦になるとグリクシスミッドレンジが有利なのでそこのレンジで戦わないような工夫をしながら、最近はアグロをはじめとしてクリーチャーで盤面を制圧していくデッキが増えているところに刺さる《切り崩し》を用いるといったように環境デッキに対しての工夫が凝らされた構成になっています。またメインに一枚入っている《ギックスの命令》も特にアグロデッキに強いカードで、最近はサイドインするデッキも多いということもありメインに一枚移されているところからも環境読みが伺えます。

少し前はどちらかと言えばパワーカードで押していく構成が目立ったラクドス系のミッドレンジですが、数枚のスロットが変わっただけでやや違ったゲームプランになっているのが面白いですね。

2色になって立ち上がりが良くなっている点も含めグリクシスに比べるとアグロに有利な点や、本イベントのような多くの回数を戦うという点において無視できない要素の1つである安定性の高さから大会で使うデッキとして今後も有力な選択肢の一つとなりそうです。

カナダ地域を優勝したのが上記の白単ミッドレンジ。

今週は白単ミッドレンジの活躍がやや目立ちましたが、こちらもトレンドにやや変化が見られます。それは《告別》《永遠の放浪者》による6マナ域のリセットボタンの採用枚数が増えていることです。

《永遠の放浪者》は比較的テンプレ採用に近い印象ですが、上位入賞デッキはここに加えて《告別》を採用しているリストが大半でかつ《聖域の番人》の採用が減っています。このあたりからもどのようなメタゲームを意識しているか垣間見られます。やはりエスパーレジェンドを特に意識したものでしょう。

クリーチャー除去がほぼ全てソーサリータイミングという弱点は抱えていますが、逆に言えばソーサリータイミングの除去が間に合うデッキ相手には強力なデッキである白単ミッドレンジ。しかもグリクシスに対しても有利に戦えるとなると今のメタゲームで好成績を残すのは納得できるところです。

カナダのTOP8に入ったジェスカイコントロール。今回の入賞デッキの中でも一際異彩を放っています。

現在のスタンダードでほぼ死滅している感のあるコントロールデッキですが《切り崩し》の採用が増えたりといったようにコントロールデッキにとってやや追い風となっている環境変化の背景もこのデッキの入賞を後押ししたことでしょう。

採用されているカードの中でも個人的に面白いと感じる選択は《攪乱プロトコル》。基本的に3マナカウンターという枠ではありますが、他の3マナカウンターについているおまけが現在の環境的にあまり有効なカードがない中で、2マナで唱えられるコスト削減効果をそれなりに狙っているいける構成にした上での採用になっています。

具体的には《鍵の秘密》の調査トークンにより2ターン目からキャストできたり《鏡割りの寓話》の宝物トークンや《金線使い、サヒーリ》のトークンといったように、それなりに2マナでキャストできる機会も多くなっています。これはコントロールデッキにとって注目のアプローチと言えそうです。

デッキ内のカード選択だけでなく環境的にコントロールが適応しているかというのも重要で、とにかくメタゲームに合わせることが特に重要なアーキタイプですが、前述のように現在はクリーチャーデッキが注目されていることでコントロールデッキも活躍できる環境になっているということを示した入賞で興味深い結果になっています。

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3月2週目:今週のCycle2 Finals の注目はエスパーレジェンド

今週は先週に続きCycle2 Finalsが「Europe/Middle East/AfricaWest CanadaBrazil, Chinese Taipei」の計4地域で開催されました。今週の結果はやはり先週の結果を大きく受けたものとなりますし、どのような結果になるのかは注目が集まったところでしょう。

まずはこの4つの地域のTOP8の合計32デッキの入賞数をまとめたのが以下になります。

そして4地域合算のアーキタイプ使用率をまとめたのが以下になります。

グリクシスミッドレンジなどは概ね使用率に比例した結果にはなっていますが、明らかにエスパーレジェンドは使用率に対してTOP8入賞率が非常に高い割合になっています。

実際に各アーキタイプの勝率を分析してみると、エスパーレジェンドは6割と抜けて高い勝率を残しており今週の勝ち組みであったことは間違いありません。特にヨーロッパ地区は参加者数の多さで見ても他と比較して激戦地区と言えるトーナメントでしたが、そこでトッププレイヤーが持ち込んだエスパーレジェンドはTOP8に2人、TOP18に一人と目覚ましい結果を残しています。

上記がそのエスパーレジェンドのリストです。使用者がトッププレイヤーという事実はあるにしても全く同じデッキリストがTOP18に3人も入賞するというのはデッキリストが優れていたというのも間違いありません。

まずメインボードで特徴的な点としては《剃刀鞭の人体改造機》《婚礼の発表》《輝かしい聖戦士、エーデリン》の採用。そして《夜明けの空、猗旺》のような5マナ域は使わず全体的に軽めの構成になっていることが挙げられます。

このデッキで負けるパターン(もしくはマリガンを強要されるパターン)として2マナクリーチャーが展開できないパターンが一つありますが《剃刀鞭の人体改造機》はそこを埋める穴となりつつも、墓地から帰ってくる効果により後半にも活躍を見せてくれます。無色マナであることから3色デッキのこのデッキでも問題なくキャストできますし、特に対グリクシスの《剃刀鞭の人体改造機》の強さは既に周知の通りです。

そして《輝かしい聖戦士、エーデリン》が3枚採用されていることからも3ターン目からライフ的な圧力をかけていくことが重視されていますようで、全体的に軽めの構成になっていることからもとにかく序盤から主導権を握っていくことに重きを置いたリストとなっています。《離反ダニ、スクレルヴ》からブロックされない《輝かしい聖戦士、エーデリン》の攻撃は例えば対セレズニアアグロのようにライフレースせざるを得ない相手において効果的に働きますし、そういったメタゲームを見越した選択という理由もありそうです。

そして《婚礼の発表》は自分の《スレイベンの守護者、サリア》にひっかかったり《絶望招来》の的になってしまったりといった理由で最近はエスパーのメインで見ることはなくなっていましたが、アグロが増えてきているメタゲームも見越してかメインから採用されています。恐らくこれを採用しても対グリクシスに対しての勝率が大きく損なわれることはないという見立てもあったことでしょう。実際の結果を見てもグリクシスを含め様々なデッキを打ち倒して使用者軒並み上位入賞ですから、間違いなく今週最も注目を集めるデッキリストとなっています。

今週も多くの使用率と入賞者数を記録したグリクシスミッドレンジですが、同じグリクシスといっても今週入賞したリストを見ていると《切り崩し》《兄弟仲の終焉》といったカードをメインから採用しているリストが目立っており、赤単やセレズニアといった対アグロが大きく意識されている傾向を見て取ることができます。実際今週は赤単は明確な負け組みデッキとなっており、対グリクシスに対しても決して高い勝率は残せていません。

上記はヨーロッパ地区を優勝したリストですが、上記は更に《ギックスの命令》や《墓地の侵入者》までメインに据えられており非常にアグロを意識したリストになっています。実際TOP8はエスパーレジェンド3連戦を全て制しての優勝と、この構成がハマったことによる結果というのは間違いなく、対応力の高いグリクシスだからこそ常にメタゲームに合わせてリストを調整することの重要性を再認識させられるリストとなっています。



他に《墓地の侵入者》《黙示録、シェオルドレッド》といった要素で対赤単に強い赤単、というようなデッキであるラクドスアグロの入賞も見受けられますが、中でも最も変わり種の入賞デッキについて触れて終わりとしたいと思います。

今週入賞したリストでも異彩を放っているのがカナダ西部地区を準優勝した4色レジェンド(4色スライム)です。一部のプレイヤーが好んで使っているアーキタイプという印象でしたが、今回ここまで大きな結果を残したのは珍しいと言えます。

一言で言えばエスパーレジェンドに緑を加えて、マナベースやクリーチャーが全てより我が儘な感じとなっているデッキですが《大スライム、スローグルク》と各魂力土地のコンボだったり《グリッサ・サンスレイヤー》のような強力な伝説クリーチャーが使えるようになって、より長期戦に強いデッキタイプとなっています。《生ける治療、メリーラ》が採用できるので先週活躍したセレズニアアグロに一定の耐性を持たせられるというのも選択理由の一つだったのかもしれません。

その分タップイン土地が多かったりとエスパーレジェンド以上にマナベースに負担がかかっているので序盤の立ち上がりに難を抱えたデッキタイプですが、スイス13回戦をTOP8入賞した上での準優勝と筆者が想像するよりも戦えるデッキだったということでしょう。今後どこまで活躍するかはわかりませんが、こういうデッキでもチャンスがあるのが今のスタンダードと言えるのは間違いありません。



実際に現在のスタンダードは非常にバランスが取れており、ここ数年で最も面白いスタンダード環境という声が聞かれることも少なくありません。それは筆者も同感でオリジナルデッキで工夫して勝つという楽しみ方もおススメな良環境です。残る大きなイベントは少なくなってきましたが、まだまだこの環境を楽しんでいきたいですね。

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3月1週目:久々のスタンダードプレミアイベント開催(Cycle2 Finals)

今週は地域別チャンピオンシップ Cycle2 Filals が開催されました。

日本を含め計3ヵ国の同時開催。プレミアイベントとしては久々にフォーマットがスタンダードということもあり注目度も高かったのではないでしょうか。

3ヵ国分の合算で見ると、メタゲームとしてはグリクシスミッドレンジが約27%と圧倒的な一番人気。それから白単ミッドレンジ約10%、エスパーアグロ約7%、最近勢いを見せている赤単アグロが7%・・・といった形で続いています。こちらのページに分布詳細は掲載していますが、このメタゲームに関しては概ねのプレイヤーが予想していた通りであったといったところでしょう。

まずは3ヵ国分(正確には3地域)の「Japan/South Korea, Australia/New Zealand, South East Asia」TOP8合算の結果は以下の通りです。

  • グリクシスミッドレンジ:10
  • 白単ミッドレンジ:3
  • エスパーアグロ:3
  • セレズニアアグロ、青単テンポ、グリクシスリアニメイト、ジャンドミッドレンジ、ジャンドリアニメイト、ラクドスミッドレンジ、赤単アグロ、5色コントロール:各1

このようにグリクシスミッドレンジが圧倒的多数。しかし「Japan/South Korea」に限って言えば入賞1つと使用率に対して入賞率の低さ、及び全体勝率から言っても間違いなく負け組のアーキタイプとなりました。この数は他の2地域(どちらもTOP8半数以上)で支えた数字と言えます。

こういったプレミアイベントにおいて現在のグリクシスミッドレンジのように安定した強さを持つデッキは好まれる傾向にあります。ですが、これは誰しもがわかっていることでそれに対して赤単アグロを始めとしたトップメタにある程度勝算のあるデッキを持ち込むというプレイヤーも少なくありません。この傾向が日本では強かったということでしょう。私見も挟みますが実際いまのグリクシスミッドレンジは安定して強くはありますがメタられても勝ち抜けるほどにデッキパワーが突出している訳でもない印象で、日本のメタゲームは他地域より一歩進んだ形となっていたようです。

そしてその日本で優勝したデッキはこれまで過少評価されていたデッキであり相当に大きなインパクトを残しました。今後のメタゲームに大きな影響を与えることになりそうです。

セレズニアアグロ。一度見捨てられた感もあるこの毒性アグロは丁度このチャンピオンシップ開催直前くらいから一部では話題になっていたデッキだったのですが、今回優勝するとは誰も予想だにしていなかったことでしょう。

セレズニアアグロは毒性により現環境最速筆頭である赤単アグロに勝るとも劣らないリーサルの早さを持っています。

《スクレルヴの巣》によって延々と出てくるトークンや除去避けの《タイヴァーの抵抗》によって相手の除去をある程度かわしたりと何気に除去耐性を持っているアグロなのが赤単のようなアグロとは異なるところです。《スクレルヴの巣》のトークンはただの1/1ですが《種子中枢》で強化することで相手クリーチャーを相打ちを取ったり、堕落によって全員絆魂を得てライフレースを捲ったりと見た目以上に対処し辛いデッキになっています。また《敬慕される腐敗僧》の能力を《タイヴァーの抵抗》で誘発させて除去をかわしながら間接的に毒をもっていく様はまさに赤の直接本体火力に通ずる厄介さです。

今回のこのリストはシンプルなら土地の取捨選択も含めてこれまでのセレズニアアグロと比べても完成度が一段高かったのは間違いなく、それも勝因の一つだったということでしょう。これまでのリストはセレズニアアグロの真価があまり発揮できていなかったのかもしれません。

今回は誰からもメタられておらず、また戦い方も熟知されていなかったというのも大きなアドバンテージとして働いたことでしょう。恐らく今後大きく数を増やしそうなアーキタイプですが、今後も勝ち続けられるかどうかは注目が集まるところです。

なお、このデッキはBO1でも強いデッキなのでBO1のデッキとしてプレイしてみる点でもおススメのデッキです。

South East Asia地域を優勝したこの5色コントロールもまた一つ興味深いリストです。赤のカード自体は使っていませんが版図の都合で山も組み込まれた結果として5色となっています。

遅めのミッドレンジ対決で勝つならパワーカードが正義と言わんばかりのデッキになっており、アグロデッキのような早さというアプローチではない形でミッドレンジ環境を攻略しようとしている形です。

もっとも目を引くのは《伝染病のヴォラック》でしょう。このリストは5色と言えど全体的に白青緑の3色で構成されて安定度を上げている点に工夫が感じられます。例えば赤の《鏡割りの寓話》は3ターン目までに赤マナを必要とさせるのでやや展開に負担をかけてしまう要素があるのは否めません。このクリーチャーを採用することで3ターン目展開を安定させた上、デッキ的に土地は多く必要だけど入れすぎるとマナフラッドになるという土地を25枚にしてもデッキが回りやすくなる。加えて《偉大なる統一者、アトラクサ》の能力でクリーチャーを引っ張ってくる部分の枠となるという非常に考えられた一枚となっています。

一見リミテッドでは強いというリミテッド専門向けに捉えてしまいそうな《伝染病のヴォラック》ですが、考えれば考えるほどデッキに噛み合っておりこれを採用するという着眼点には脱帽します。



Australia/New Zealand地域はグリクシスミッドレンジの優勝。リストも比較的スタンダードな構成になっていましたのでこちらは解説を省略します。他のTOP8のデッキに関しても細かな調整は見受けられるものの個人的にはそこまで気になった構築はなかったので解説を省略しますが、気になる方はリストを見て頂ければと思います。

ファイレクシア完全なる統一はスタンダードに関してはそこまで・・・と言われていた感もあるセットですが、ここにきてそうとも言い切れなくなってきたのがとても面白いですね。特にセレズニアアグロは今後要注目のデッキとなりそうです。

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2月4週目:3すくみのメタゲームに割って入るテンポとアグロ

まずは今週もMOのイベント集計結果を掲載します。

今週も依然としてグリクシスミッドレンジが頭一つ抜けており、先週触れたようにグリクシスミッドレンジがトップメタなのは変わらずといった状況です。

ただし、グリクシスミッドレンジ一強という訳ではなくこれはメタゲームが回った結果とも言える状況となっています。

具体的にはグリクシスミッドレンジに有利な白単ミッドレンジが環境初期に流行し、その白単ミッドレンジに対して有利な5cアトラクサが流行。そこに打ち消しを有するグリクシスミッドレンジ5cアトラクサを駆逐し再流行・・・といった3すくみのメタゲームの結果が現在と言えます。


これを受けた今週の結果はグリクシスミッドレンジ以外のデッキ分布に如実に表れているのが面白いところです。

今週は勝利数で2番目につけているのが青単テンポ。基本的に5cアトラクサを含めた遅めのミッドレンジ全般に有利なため、現在のメタゲームではここまで入賞数を増やしてくるのも納得といったところでしょう。今回は2/25,2/26の2日分の結果を集計していますが、特に2/26に青単テンポ2つ、イゼットテンポ1つとTOP8中3つが青いテンポデッキが入賞するという目覚ましい結果を残しています。

もうあまりこのデッキに対して触れることも特にありませんが、5マナの《知識の流れ》を2枚程度採用する形が増えているような印象は受けます。

《消えゆく希望》4枚入りもトレンドで、これによりテンポを得ることで失ったカードアドバンテージを《知識の流れ》で取り戻すような構築になっています。加えて《発見への渇望》も概ね4枚入っているリストが多いです。そのため上記のリストは《天上都市、大田原》が入っているものの《島》のみの土地構成にしているリストもあります。

打ち消し呪文の選択も含めて個人差も少しありますが、基本的にはミッドレンジ全般に有利なため相変わらずメタゲームの隙間を縫って活躍を見せるアーキタイプとなっています。現在のメタゲームには適合しているように思えますので、来週以降も一定割合活躍するのではないかと思います。

アグロデッキもメタゲームの隙間を縫うようにしっかり活躍を見せています。本環境のアグロと言えばアゾリウス兵士が筆頭と言えますが、今週は赤単アグロが大きな活躍を見せているのも一つのトピックでしょう。

ファイレクシア完全なる統一の恩恵は少なく、サイドボードに入っている《焼炉の懲罰者》くらいと言っても良いデッキですが低速に進みがちな現在のメタゲームにおいて環境最速のアグロデッキである赤単アグロも付け込む隙があるというのは間違いなさそうです。

無謀なる衝動》が4枚入っているのがずっと赤単のトレンドでしたが、今週活躍した赤単アグロは何れもこれを採用せず、とにかく全速力で相手を倒すことにシフトした構成が目につきます。いくらアドバンテージを稼ごうが現環境の赤単だと少しの出遅れが命取りということを表していると言っても良いでしょう。

カードパワーの高いデッキが多い中において、そこを出し抜くにはやはり速度が一つの武器となるということを体現しているのが現在の赤単の立ち位置です。


このように基本的には3すくみのメタゲーム。その中でデッキパワーや対応力の高いグリクシスミッドレンジが安定して頭一つ抜けているといった状況ですが、そういった状況を鑑みて青いテンポデッキやアグロデッキを選択したプレイヤーもしっかり結果を残しています。勝ち切るには出場する大会の性質を鑑みてデッキを選択するのも現在のスタンダードでは重要な要素ということでしょう。

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2月3週目:ファイレクシア完全なる統一の後もグリクシスは健在

「ファイレクシア完全なる統一」(ONE)のリリースから凡そ2週間。そろそろ新環境のスタンダードのメタゲームも形作られてくる時期となってきました。

今週はプロツアー・ファイレクシアが行われたのでパイオニアに注目が集まっている週ですが、引き続き本項ではスタンダードを見ていきたいと思います。まずはいつものMOイベント入賞集計結果です。

やはりというべきか、グリクシスミッドレンジは新環境でも相変わらずの大活躍。現在においてもトップメタであることは間違いないであろうという結果を残しています。デッキの構成自体はあまり前環境から変わっていませんが、ファストランドによってマナ基盤が強化されています。

その他のアーキタイプについてはファイレクシア完全なる統一の影響が濃いデッキもそれなりに多く、アトラクサデッキはまさにその筆頭と言える存在。アトラクサのように多色の重めのデッキが増えていたことにより、その隙を突くようにアゾリウス兵士といったデッキもそれなりの数を見せています。

以下、入賞デッキから注目のデッキをピックアップして見ていきます。

19日付のMOスタンダードチャレンジを制したのが上記のグリクシスミッドレンジ。スイス一位、決勝トーナメント優勝とまさに完全勝利と言っても良い結果を残したデッキリストです。

前述の通りONEからファストランドでマナ基盤が強化されたのが最も大きい部分ですが、メインに一枚挿してある《青の太陽の黄昏》が光る構成になっています。X5以上で決定打になりえるくらいの強さを発揮するのは勿論ですが、《鏡割りの寓話》トークンをコスト2でパクってしまえるという軽さもあったりします。ただ場に出た時点で仕事をしてしまう《死体鑑定士》のようなクリーチャーも多い中ではあまり多く採用するのもはばかられるので枚数は抑え目になっています。

上記では採用されていませんが、中には《気まぐれな厄介者》を採用して主に《絶望招来》を使いまわすというリストも入賞していました。ファストランド以外のONEのカードがどこまで使われるかまだ変化の余地があるかもしれませんが、何れにしてもONE後もスタンダードを牽引する存在であるのは間違いなさそうです。

リリース以降、(シングルカード価格的にも)ONEの出世頭とも言える《偉大なる統一者、アトラクサ》。その強さ故に色々な形が試され続けており、最近はこのラクドスをベースとした《ギックスの残虐》型のタイプが主流になりつつあります。

便宜上5cアトラクサと括ってはいますが《偉大なる統一者、アトラクサ》を除けばラクドス2色で構築されており《偉大なる統一者、アトラクサ》を採用しているにも関わらずデッキの安定性が大きく損なわれていないというのは大きな強みです。多色化すると初動がどうしても遅れてしまいますので、このアプローチには脱帽です。

基本的にはラクドスミッドレンジで《絶望招来》のスロットが《偉大なる統一者、アトラクサ》に回された形と言っても良く、特にミッドレンジ相手には《絶望招来》以上にゲームを決定付ける《偉大なる統一者、アトラクサ》は大いに活躍してくれます。これまで赤黒系の対決でアドバンテージ差をつけるカードというのはかなり限られていましたが、そこに《偉大なる統一者、アトラクサ》という選択肢が生まれたと言っても良いでしょう。

《偉大なる統一者、アトラクサ》を採用している都合もあり、場に出たときによりリソースを稼げるよう《強迫》《兄弟仲の終焉》《魂転移》といったソーサリー、《ヴェールのリリアナ》といったプレインズウォーカーとカードタイプを意識した形でメインボードが構成されています。《偉大なる統一者、アトラクサ》を使う場合はサイドボード後も含めこのあたりのバランスにも気を配りたいところです。

今後も含めてONEで最も注目なのは《偉大なる統一者、アトラクサ》と言っても良いかもしれません。カード的に色々な使い方がありそうですから今後も試行錯誤され続けることになりそうな一枚です。

グリクシスミッドレンジは他のラクドス派生ミッドレンジの中でも最もONEの恩恵を受けたアーキタイプと言っても良いかもしれません。

ファストランドに限らず《硬化した屑鉄喰らい》《グリッサ・サンスレイヤー》《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》《免れ得ぬ破滅、ルーカ》とONEの新カードが多めに採用されており、大きな恩恵を受けていることは一目瞭然です。

能動的に2ターン目を埋める《硬化した屑鉄喰らい》はマナ加速だけでなくタフネス3があるため《税血の収穫者》をはじめとした2点では落ちないスタッツなのが偉く、墓地からカードを取り除く効果も前述の《偉大なる統一者、アトラクサ》のようなリアニメイトを無理なくメインボードから止められるのも見逃せないメリットの一つです。2マナクリーチャーがこれを含めて8枚体制になったことで《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》が使いやすくもなっています。

その《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》は《税血の収穫者》を使いまわすことが主な目的で、これにより-2能力がさながらソーサリー除去(血トークン付き)のように使えるのでそれだけでも充分強力と言えます。同じく3マナ域の《グリッサ・サンスレイヤー》は戦闘では実質無敵。マウントを取っていくことも守りに回ることも可能で《鏡割りの寓話》を除くとこれほど優秀な3マナ域もなかなかないと言っても良いくらいです。

サイドボードに採用されている《向上した精霊信者、ニッサ》はアーティファクトエンチャントを割れるのも頼もしく、その対象の多い白単ミッドレンジには特に強かったりします。《豪火を放て》も含め、エンチャントアーティファクトに対して大きな耐性を持っているのがジャンドの大きな強みの一つと言っても良いでしょう。

グリクシスコントロールと分類していますが《精神接合器》を中心としたスペルに傾倒したデッキで挑戦的なリストになっています。

黒は基本的にクリーチャー除去のためにタッチされていますが、サイドボードに仕込まれている《黙示録、シェオルドレッド》はサイドボード後に相手が抜いてくるであろうクリーチャー除去の裏目を付くことができるようにもなっている点で工夫されています。

そういったクリーチャー除去や打ち消しで凌ぎながら、隙を見て《精神接合器》を設置。これのコスト軽減効果を持って《ハーキルの最後の瞑想》《青の太陽の黄昏》《銀の精査》といった重たい強力なスペルで相手と差をつけるように立ち回っていきます。特に《銀の精査》で大量アドバンテージを取れれば勝機はグッと近付きます。

《精神接合器》を割られると辛いというのもありますが、難点なのは打ち消しやクリーチャー除去のバランスや選択といった脇を固めるスペルの構成でしょう。どれも一長一短あるものばかりなので、相手によっては効き辛いカードも少なくありません。このあたりの取捨選択はメタゲームに合わせて継続して調整を入れていく必要はあるでしょう。

とは言え《精神接合器》を中心に据えたデッキもスタンダードで戦えるということを一つ示してくれた意味でも興味深いリストです。こういったデッキが好きなプレイヤーも一定数おられるでしょうし、構築を追求していくのも楽しそうなアーキタイプです。

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2月2週目:ファイレクシア完全なる統一の開幕

いよいよ「ファイレクシア完全なる統一」(ONE)がリリースされ、新しいスタンダードが開幕となった今週。

リリースされてまだ数日ということで流石に現時点では実験的な段階ではありますが、早速「ファイレクシア完全なる統一」のカードを用いたデッキがイベントで入賞してきています。

今週はまだリリースから第一週ですので、メタゲームという視点よりも「ファイレクシア完全なる統一」のカードにスポットを当てながらMTGアリーナのメタゲームチャレンジ7勝デッキやMOのイベントで結果を残したデッキからピックアップして見ていきたいと思います。

上記はONE注目の「毒性」をフィーチャーしたセレズニア毒性アグロデッキです。

毒性持ちクリーチャー、それらをサポートするコンバットトリックを含むスペル、といった二軸のシンプルな構築になっており非常にシンプルな構成になっています。

クリーチャーは毒性持ち以外採用し辛いこともあり、ONEのクリーチャーで占められています。《敬慕される腐敗僧》《離反ダニ、スクレルヴ》《スカイクレイブの巣》《ふくれた汚染者》あたりは当然の採用といったところですが《顎骨の決闘者》は《農家の勇気》《タイヴァーの抵抗》といった強化スペルを多めに積むことで価値を上げて採用といった形になっています。

ただ1マナの《這い回る合唱者》の弱さは気になりますし、毒性と各強化スペルの相性がやや悪いのはどうしても気になってしまう部分でしょう。カードプールの狭さ故に致し方のない部分がありますが、サイドに《婚礼の発表》が入っていることからも毒性だけに頼らないような要素も入っており工夫が見て取れます。

個人的にはやや厳しいかなといった印象を受ける毒性デッキですが、まだまだリストは洗練されていくでしょうし今後環境にどこまで食い込んでくるか注目したいところです。

こちらはジャンドミッドレンジですが、ONEのカードを用いることで新しいジャンドミッドレンジの形を見せた構築となっています。

最も特徴的なところは《樹海の幻想家、しげ樹》と《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》の組み合わせになっており、《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》の常在型能力により即時タップ能力が起動できるだけでなく魂力を使って墓地に落ちた《樹海の幻想家、しげ樹》を回収できたりと、中長期戦にも強いアドバンテージ源となるコンボがデッキの潤滑油となっています。このあたりはONEによってもたらされた新しい形と言えます。《硬化した屑鉄喰らい》も《歓喜する喧嘩屋、タイヴァー》と相性が良いクリーチャーですが、墓地を取り除く効果が何気に《死体鑑定士》の牽制となるのも無視できないところでしょう。

また緑黒という色は《グリッサ・サンスレイヤー》が使えるというメリットもあります。3マナなのに地上戦は無敵、誘発能力も強力と、最近強さが目覚ましい3マナ域にまた入ってきた強力な一枚で、今後もよく見かけるクリーチャーとなりそうです。

そして、赤緑と赤黒の2種ファストランドが入ったことでマナベースが以前よりも強固になったことも嬉しい要素です。これにより見た目《絶望招来》が入ってるとはとても思えないような構成でありながら、以前よりも更に《絶望招来》を唱えやすくなっています。

ボロス招来。こちらもONEから恩恵を受けたアーキタイプとなったようです。

新しい《報復招来》のつり先となっているのが新カードである《偉大なる統一者、アトラクサ》。誰の目からみても場に出さえすれば非常に強いのは明らかなクリーチャーですが、スタンダードのコスト踏み倒しの定番である《報復招来》のお供となるのはやはり必然だったといったところでしょうか。

これまでは《報復招来》を決めてもクリーチャーを対処されるとネタ切れになってしまうという一つの負けパターンがありましたが《偉大なる統一者、アトラクサ》は仮に対処されてしまっても自らの能力で次の弾丸を補給できるので、以前よりも釣ってさえしまえば勝てるという要素が強くなっています。間違いなくこのアーキタイプの強化に繋がるクリーチャーであり、以前よりも今後は数を増やすアーキタイプとなるかもしれません。

また一枚だけですが《慈悲無き者、ナヒリ》が採用されています。中段のルーティング能力がデッキと相性が良いだけでなく《偉大なる統一者、アトラクサ》で引っかかるカードタイプ(=プレインズウォーカー)を増やす意味合いもあるでしょう。下段のリアニメイト能力もこのデッキでは嬉しい能力です。

エスパーアグロ。このアーキタイプは前環境から大きな存在感を見せているアーキタイプですが、こちらもONEのカードで強化されたアーキタイプと言っても良さそうです。

そのカードは《離反ダニ、スクレルヴ》。エスパーは《策謀の予見者、ラフィーン》を始めとして除去されなければ強力というクリーチャーの存在が強み(逆に言えば序盤の展開を除去で凌がれるのが負けパターン)ですが、《離反ダニ、スクレルヴ》の登場によりそういった弱点が大きくカバーされており、この1枚だけでデッキパワーを一段階上げたと個人的には感じています。《離反ダニ、スクレルヴ》から2マナクリーチャー、3ターン目《策謀の予見者、ラフィーン》とつなげられると特に先手では簡単に勝ててしまうムーブです。

《離反ダニ、スクレルヴ》は伝説なので《英雄の公有地》から出せるのも素晴らしく、これまでなかった1マナ域という軽さを埋める点でも非常にデッキに噛み合っています。

たった一枚の強化。それだけでもONE後のスタンダード本命デッキとなる可能性は充分に感じられます。

白単ミッドレンジもONEの恩恵を受けたアーキタイプの一つです。

《骨化》は白単では2マナの確定除去と言っても良いカードで、これまで対処し辛かったプレインズウォーカーもこれで触れるようになっています。以前から存在している《軍備放棄》と合わせ、とても白単とは思えないクリーチャー除去の性能を有しているのがONE後の白単ミッドレンジの特徴と言えます。

もう一つの新しい顔が《永遠の放浪者》。このプレインズウォーカーは-4でほぼ盤面リセットという動きもできますが、リセットが不要の盤面であっても中段の能力で適当に2/2を生み出しているだけで強いといった、どんな盤面であっても強みを発揮できるというのが嬉しいところ。+1の能力も《第三の道のロラン》や《野心的な農場労働者》を使いまわすだけでなく、カウンターの切れた《勢団の銀行破り》を再びドローエンジンとして復活させるといった使い方もあり、長期戦の強さを一段階引き上げてくれる存在となっています。

白単であるのにも関わらずONE後は更に万能感の高いデッキとなっており、以前よりも人気を集めるアーキタイプとなるかもしれません。

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1月4週目:環境末期に多様性の兆し

「ファイレクシア:完全なる統一」のリリースが迫っている時期ですが、今回は直近のMOスタンダードチャレンジ2回分(計16デッキ)を集計していきます。まずはいつものTOP8入賞数をまとめたグラフです。

たった2回分の結果とは言え、ここにきて何か特定のアーキータイプが抜け出すという結果ではなく多くのアーキタイプが同程度の勝利数という多様性のある結果となりました。

ここではMO分しか集計していないというのはあると思いますが、日本の店舗大会等でもやはりグリクシスミッドレンジは頭一つ抜けている感はあるものの決してグリクシスミッドレンジだけが勝っている環境ではないということを示している点でも面白い結果と言えます。

今回も個人的に注目のデッキリストについて取り上げていきたいと思います。

たまに見かけるデッキであるマルドゥミッドレンジでしたが、ここにきてTOP圏内に3つと今週は目立った結果を残しています。しかも3つともほぼ同じリストでの入賞となっています。

マルドゥの特徴としては盤面を取ることに長けている(パーマネントを展開しあう局面に強い)ことが一つあげられるでしょう。3マナ域の強力なパーマネントである《婚礼の発表》《鏡割りの寓話》を両方強く使えるのはこのカラーくらいという特権もありつつ、それらと相性の良い《忘却の儀式》によって相手のどんなパーマネントも対処してしまうというのは大きな強みです。

また《怒りの大天使》による除去+ライフゲインや、《セラの模範》のアドバンテージと《黙示録、シェオルドレッド》とは違って除去されても何らかの効果を残すタイプのクリーチャーも多く、単純なクリーチャー除去に対して相手に何らかの損を押し付けていけることもあり長期戦に強めなミッドレンジになっています。

一方で後手の弱さに関しては懸念材料で、特に相手の3ターン目の行動に対する受けが弱く、また全体的にスロースタートなカードが多いので展開負けしがちな点は弱点と言えます。後攻2ターン目に最適な《かき消し》や後手2ターン目でもそれなりに強い《スレイベンの守護者、サリア》といったカードもないのは結構しんどいところはあります。メインに《切り崩し》が入っているのはそういった点を考慮してのことなのかもしれません。

その分先行でパーマネントを先に展開していけるケースでは強みを発揮しやすいとも言えます。何より同リストが3つ入賞していることからも強さは本物と言って良いでしょう。

上記は入賞していたボロス招来ですが、デッキリストを一目見ただけでその潔いリストに惚れ惚れしてしまいました。

これまでのボロス招来は《報復招来》で《産業のタイタン》《聖域の番人》を出すという路線でしたが、このリストではそういった側面も残ってはいるものの《ファイレクシアへの門》に最もフォーカスを当てた構築となっています。

《産業のタイタン》《聖域の番人》は追放除去によりつりあげても負けてしまうことがちらほらあったりしますが《ファイレクシアへの門》はより対処に限られますし、現環境だと即《削剥》でもされない限りはそれら以上に勝ち手段として強力。これを《報復招来》に加えて《修復と充電》を追加しつつ拾い上げるという動きは殆ど鉄板ムーブと言えます。《ファイレクシアへの門》を4枚入れるというのは結構勇気のある構築ですが、ここに全力投球しているあたり非常にカッコいいリストです。何気に《鋼の熾天使》もつり先として結構強かったりするのも良いですね。

やはり妨害手段が少ないデッキには特に強く、白単ミッドレンジのようなデッキ相手にはかなり強力なデッキです。他にも決まりさえすれば勝ちという動きがある以上、墓地対策されない限りはどんなデッキ相手にも勝機があるデッキであるとも思います。

大味な動きが好きな方には是非プレイしてみてほしいリストとなっています。

エスパーミッドレンジとここでは括っていますが、デッキ自体はエスパーアグロと言っても良いであろうデッキで基本的にデッキのカードは殆どクリーチャーとなっているリストとなっています。

クリーチャーは伝説クリーチャーしか入っていませんが《アーボーグのラタドラビック》も入っておらず《英雄の公有地》という事情もありますが、強いクリーチャーを集めたら基本的に伝説だけになるというのが本懐と言ったところでしょう。

とにかく押せ押せのデッキで《スレイベンの守護者、サリア》からの《策謀の予見者、ラフィーン》という先手鉄板ムーブもありつつ、ここが成就しなかった場合でも《ヨーグモスの法務官、ギックス》が充分変わりとして働くようになっており、序盤から攻めていけさえすれば息切れせずに展開が見込める点が強力です。クリーチャーだけとは言え《賢明な車掌、トルーズ》がアドバンテージ源になっていたり《復活したアーテイ》で打ち消せたりとクリーチャーだけになっているとは思えない動きができるのも本デッキの特徴です。

またパーマネントをほぼクリーチャーだけにしていることで《絶望招来》に対抗しているという意図もこの構築にはあるでしょう。基本的にエスパーといえば《婚礼の発表》は必須パーツと言っても良いくらいでしたが、やや相性の悪いグリクシスに対抗するためにこういった構築にシフトしてきたものと思います。


グリクシスもそうですが、エスパーも「ファイレクシア:完全なる統一」リリース後も恐らくTier1で居続けるデッキとなるでしょう。それくらい地力の高いアーキタイプです。

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1月2週目:アゾリウス兵士の躍進

年末年始と少し期間が空きましたが、今年一回目のスタンダードのメタゲーム遷移について触れていきたいと思います。

今回は2023年1月分以降に行われたMOスタンダードチャレンジ3回分(計24デッキ)を集計していきます。まずはいつものTOP8入賞数をまとめたグラフです。

アゾリウス兵士がここにきてグンと数を伸ばしており入賞数トップという結果を残していきます。しかも今回集計した3イベント全てアゾリウス兵士が優勝しているという事実も見逃せないところでしょう。

そして今回集計したイベントの実施日は「1/1、1/7、1/8」の3イベントになっていますが、この3日間の入賞数を確認するとよりメタゲームの変化を感じることができます。簡単にですが入賞数TOP3のアーキタイプの入賞数遷移をまとめると以下のようになっています。

見ての通りアゾリウス兵士の入賞数は尻上がりに伸びており、それに伴って特に白単ミッドレンジの入賞数が落ちていることがわかります。

これはグリクシスミッドレンジをメタっている白単ミッドレンジがここ最近伸びてきていたところに、その白単ミッドレンジをメタったアゾリウス兵士が割って入ってくるというメタゲームの変化が起きていると言っても良いでしょう。

グリクシス一強だったメタゲームからグリクシスを攻略してきたデッキの登場、さらにそのデッキを攻略するデッキの台頭、とメタゲームがグルグル回り始めていることを示しているのが今回の結果と言えそうです。

1/8のイベントを優勝したアゾリウス兵士のリストが上記になっています。

基本的に各々でリストの差は少ないアーキタイプで、2マナ域の《敬虔な新米、デニック》の枠が《微風の歩哨》だったり、《とんずら》の枠に《呪文貫き》や《交渉団の保護》を挿しているといったリストも見かけますが、現在最もポピュラーな形と言えそうなのは上記のリストの型になっています。

どのカードも一長一短あり《微風の歩哨》は飛行持ちというだけでなく除去避けという強みもある中《敬虔な新米、デニック》は絆魂が特に嬉しいので非常に悩ましいところ。インスタント枠の《とんずら》は1マナという軽さに加え、基本的に《兄弟仲の終焉》《告別》のような全体除去でもない限りは打ち消しでなくても《とんずら》で対応できたりもするので、最も無難なインスタントという印象はあります。

アゾリウス兵士はデッキに採用するカードは兵士がキーとなる都合で大半が固定スロットとも言え、それ故にデッキ構成であまり差をつけ辛いデッキなので活躍できるかどうかはまさにメタゲーム次第とも言えるアーキタイプですが、まさにその追い風が来ていることが今回の活躍の要因と言って間違いないでしょう。



こうなるとまたグリクシスミッドレンジが伸びてきそうなメタゲームとなってくるような気もしてきますが、今後どのように変化していくのか見守っていきたいと思います。

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12月3週目:グリクシスと白単以外で活躍したデッキ

今週は執筆時点では一回分のMOチャレンジ(12/17実施分)しか参考となるトーナメントの情報がありませんが、TOP8を見てみるとグリクシスと白単という現在のツートップは相変わらずその姿を見せているものの、面白いデッキがいくつか入賞しているのが目を惹きます。

TOP8の内訳は「グリクシス、白単ミッドレンジ*3、イゼットアーティファクト、青白兵士、黒単アグロ、アゾリウスコントロール」となっています。

正直一つのトーナメントだけでメタゲームを測るのは如何かとは思いますが、少なくても白単ミッドレンジが増えてきたことによりグリクシスミッドレンジが以前に比べるとやや減速(といってもトップメタであることには変わりありませんが)。それによって他のデッキにもチャンスが生まれ始めていると考えても良い結果と言えるでしょう。

今回はこの中でも特に目を惹くであろう2つのデッキを見ていきます。

イゼットアーティファクト。誰しもイゼットでアーティファクトを主体とするデッキは頭によぎりはするものの実戦レベルで形にすることが難しく、今回結果を残したこのデッキは一際目を惹くデッキリストと共に大きな爪痕を残しました。

アーティファクトと言ってもアーティファクトに傾倒した構成ではなく、主に5マナ域以上のゲームを決めに行くカードがアーティファクトを主体としているといったリストになっています。

3マナ以下は《鏡割りの寓話》はさておきにして、打ち消しやクリーチャー除去が中心でこれらで序盤を凌ぐという無難な形で入ることがメインになっていますが注目は《厳しい授業》の4枚採用でしょう。このデッキは5マナ域は一つポイントとして置かれているのが明らかで、4枚ずつ採用されている《マイトストーンとウィークストーン》《瞬足光線の大隊》を一足早く展開することに繋がるカードとして《厳しい授業》のパワーストーンを重要視しているものと思います。《鏡割りの寓話》の宝物トークンでも可能ですが《厳しい授業》が追加で存在することで5マナ域にスムーズに繋がりやすくなっています。

サイドに入っている《スランの蜘蛛》もメインに入って良さそうなカードですが《厳しい授業》は打ち消し構えと相性が良いので立ち回りの幅を広げてくれることから《厳しい授業》が優先させているというのもあるかもしれません。

それにしても《マイトストーンとウィークストーン》が4枚入っているのに《護国卿、ウルザ》が一枚も入っていないあたり、とてもセンスを感じます。《マイトストーンとウィークストーン》は《街並みの地ならし屋》に繋げるのは勿論のこと、それでいてデッキ内で《黙示録、シェオルドレッド》を対処できる数少ないカードというのを兼ねているだけで充分強力ですし、さらに《護国卿、ウルザ》を入れないことで相手の単体除去(特に流行りの《喉首狙い》)に耐性を持たせる意図もあるでしょう。このあたりはかなり試行錯誤されたポイントなのかもしれません。

全体的に新しいデッキとして参考にしたくなる素晴らしいリストとなっています。

兄弟戦争で地味ながら強化されているアゾリウスコントロール。稀に姿を見るアーキタイプですが、今回TOP8入賞を果たしました。

2マナ域の《魂の仕切り》はアゾリウスコントロールの2マナ域の有力なカードとして定着した印象があります。スタンダードに限らずパイオニアのような環境でも見られるカードで、対処に困る《婚礼の発表》のようなエンチャントも含めパーマネントを対象に出来る点も優秀で追加2マナ付与も含め、アゾリウスコントロールにとって欲しい時間を稼ぐことに大活躍してくれます。カードアドバンテージはロスするカードではありますが《告別》を唱えるまでの時間も稼いでくれますので、その程度のアドバンテージロスは稼いでくれる時間と比べると些細なものです。

《絶望招来》がどうしても辛い《時間の旅人、テフェリー》は控えめの2枚採用。グリクシス以外には強力なものの、如何せん《絶望招来》が環境に多すぎてなかなか目立った活躍ができないプレインズウォーカーですが、また今度のメタゲーム次第で姿を見せることも増えるかもしれません。

また、打ち消しが《かき消し》《否認》のような2マナ域ではなく《中略》《洗い落とし》が入っているのが珍しい選択と言っても良いかもしれません。特に《洗い落とし》は1マナで打つケースが比較的少ない環境だと思いますのでどういった意図があるのかは若干気になるところです。

アゾリウスコントロールは白単ミッドレンジのように《絶望招来》のような飛び道具が少なく基本ソーサリータイミング、加えて攻めがそこまできつくないというデッキには比較的優位に戦えるので白単ミッドレンジが増えた現在のメタゲームでは選択する理由も出てきたアーキタイプという印象です。今回結果を残したのもそういった背景は一つあるでしょう。

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12月2週目:広がりを見せる白いミッドレンジの活躍

先週で触れたようにスタンダードに大きな影響を与える予感もあった白単ミッドレンジの活躍は今週も続くのかが今週のポイントであろうことは間違いないでしょう。ということで、今週はMOのプレミアイベント12/4(前週記事では触れていなかったので)と12/10開催分の計3回分を集計した結果をまとめました。

グリクシスミッドレンジがトップメタであるという構図が変わっていませんが、明らかに白単ミッドレンジがグンと伸びてきており、完全にグリクシスミッドレンジ一強だったメタゲームに白単ミッドレンジ食い込んでくる形になっているのが見て取れます。

上記はショーケースチャレンジを優勝した白単ミッドレンジのリストです。前週紹介した白単ミッドレンジがベースになっているのは間違いないですが、土地が《ミシュラの鋳造所》ではなく《道路脇の聖遺》だったり《告別》がメインに1枚挿してあったり、という差がありますが最も大きな特徴はメインに《第三の道のロラン》が4枚入っていることでしょう。

《鏡割りの寓話》《勢団の銀行破り》《婚礼の発表》の使用率があまりにも高く、サイドに《第三の道のロラン》を入れても結局サイドインする確率が極めて高いからメインから入れておくほうが良いのでは、とでも聞こえてきそうな採用と枚数です。場に出た時点で仕事をするタイプなので伝説のデメリットであるという被りもそこまで痛手ではないという理由もあっての4枚だと思いますが、それほどこのクリーチャーが現在のメタゲームで強力であるということはこの結果が証明していると言っても良いでしょう。

白単ミッドレンジは基本的に前週紹介したタイプがトレンドですが個々で若干リストに差があるデッキで、このデッキはどちらかというと前週紹介したデッキをややコントロール寄り(ロングゲームを見据えた形)にシフトしたような印象です。《第三の道のロラン》4枚によってアドバンテージ合戦を制したことがこの結果をもたらしたのではないかと思います。

ここにきて活躍が著しい白単ミッドレンジは更に勢力を増やしていくのかもしれません。

こちらはショーケースチャレンジ準優勝のグリクシスミッドレンジ。このリストの使用者は有名な強豪プレイヤーの方で、ずっとグリクシスミッドレンジを使い込んでおり、しかもメインに《さまよう心》を入れた形を使い続けている印象があります。この方の影響もあってか、他のグリクシスミッドレンジにも《さまよう心》を入れたタイプを前より見かけるようになってきたようにも思います。《さまよう心》は追加の《死体鑑定士》のような性能で《キキジキの鏡像》とも相性の良いクリーチャーであり、すぐに除去されてしまいがちな《黙示録、シェオルドレッド》よりもほぼ確実にアドバンテージをもたらせることを加味して《黙示録、シェオルドレッド》より優先して採用されているものと思います。

またこのリストでは採用されていませんが、最近はメインに《刃とぐろの蛇》を1~2枚挿しているグリクシスミッドレンジもかなり増えてきています。

カードアドバンテージの塊のようなクリーチャーで、基本的にミッドレンジ対決で《絶望招来》でアドバンテージを取り合うような対決をこのクリーチャーを入れることで差をつけるといった用途が主になります。コストはやや重いですが、6マナでキャストしても概ねこれ一枚でカード3枚分以上の働きをしてくれます。1枚でここまでカードアドバンテージを取るカードもあまり多くありませんし、最近評価を上げてきたカードの1枚となっています。


このようにメタゲームもここにきてやや変化が見られるようになってきています。特に白単ミッドレンジは今後も要注目のアーキタイプとなるのは間違いないでしょう。

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12月1週目:グリクシスの海を渡る白いミッドレンジ

前週で述べたように現状のメタゲームはグリクシスミッドレンジの一強とも言えるくらい歪んだ状態が続いています。事実12/3のMOスタンダードチャレンジでTOP8の半分以上をグリクシスミッドレンジが占めているのですが、ワンツーフィッシュしたデッキは何れもグリクシスではなく白いミッドレンジデッキでした。この事実は注目に値すべきものでしょう。

今週はその白いミッドレンジデッキを取り上げていきます。

上記が12/3のMOスタンダードチャレンジを優勝した白単ミッドレンジ。従来の白単ミッドレンジといえば《告別》を用いたコントロール寄りの構築が多かったのですが、このデッキは攻撃して主導権を握っていくことも可能となっておりまさにミッドレンジデッキと呼べるものになっています。

《勢団の銀行破り》が4枚とフル採用されていることが一つの特徴で、これはアドバンテージ源としてだけでなくアタッカーとしての役割もこなせる構築としていることからのフル採用でしょう。《鏡割りの寓話》《婚礼の発表》《策謀の予見者、ラフィーン》といったカードが主軸になっていると搭乗3が満たせないことが多々ありますが、このデッキは《選定された平和の番人》《鋼の熾天使》という3マナパワー3が8枚体制で採用されており、3ターン目搭乗からの攻撃が現実的に可能となっています。特に《鋼の熾天使》は搭乗しつつ飛行や絆魂を《勢団の銀行破り》に付与してのアタックは強力極まりなく、ダメージレースを大きく優位にしてくれる組み合わせとしてこのデッキの黄金ムーブとも呼べる動きになっています。

この《鋼の熾天使》からのムーブは最近黒い除去の主流となっている《喉首狙い》では止めることができないのも一つポイントと言って良いでしょう。

他にはお馴染みの《聖域の番人》もそうですが《絶望招来》を構築でカバーすることを意識しているようで、生け贄に捧げても痛くない2マナ域のクリーチャー選択はまさにそれを示していると言って良いでしょう。《野心的な農場労働者》も《神憑く相棒》も場に出た時点で仕事をしてくれますし、《神憑く相棒》に至ってはエンチャントとして《婚礼の発表》を《絶望招来》から守るという献身っぷりを発揮してくれます。土地23枚という少ない枚数も《野心的な農場労働者》がカバーするように考えられた枚数ですし、非常に練られたデッキであるということが読み取れます。

サイドの《束の間の霊魂》も面白い選択で、これは主に序盤からプレッシャーを掛けたい相手に対してのサイドボードでしょう。環境的にあまり多くはありませんがコントロールデッキに強いクリーチャーで一時的に追放することで相手のクリーチャー除去をかわしながらプレッシャーを掛けていくことができます。白単はどうしても相手に干渉する手段が少ないので、相手によってはこういった方法で圧をかけていくしかないときもあります。



総じて非常に高い完成度でまとまった白いミッドレンジデッキという印象で、今回はグリクシスを退けての優勝ですが今後はどうなるのか活躍に期待したいデッキになっています。

こちらは準優勝のマルドゥミッドレンジ。3色デッキではありますが、基本的に白が濃い構築となっており白いミッドレンジと呼んで差し支えないものでしょう。

基本的にはクリーチャー除去と《鏡割りの寓話》のために赤黒をタッチしている構成で、2マナ域のパーマネントは《勢団の銀行破り》のみ。こちらにも《鋼の熾天使》が入っており《勢団の銀行破り》《鋼の熾天使》のムーブは一応可能ではありますが、《集団失踪》までメインから入っておりやや受けの構成となっています。耐え気味に立ち回り序盤のライフロスは《怒りの大天使》《鋼の熾天使》の絆魂で補うように立ち回ることで押し負けないことを意図しているように思います。白いミッドレンジでは定番カードと言える《婚礼の発表》が入っていない点からもそのあたりは読み取れる部分になっています。

このように受けるカードが入っている分、押し引き(攻めるか守るか)のタイミングはしっかり判断していく必要があるので、ややプレイ難易度は高いデッキと言っても良いかもしれません。

やはり赤を使う=《鏡割りの寓話》が使えるというのが最大のメリットで、このデッキの場合は《聖域の番人》を《キキジキの鏡像》からコピーできるようになれば概ね負けることはないという必殺技となります。そう簡単に決まる訳ではないですが、こういった勝ち筋があるかないかでは大きいものがあります。

《絶望招来》に対する耐性を鑑みても個人的には前項の白単のほうがグリクシスに戦えそうな印象ですが、このデッキもグリクシスを倒しての準優勝となっている訳ですからグリクシスに戦えない訳ではなさそうです。何れにしてもこのデッキも含めて白いミッドレンジが現環境で活躍できることを証明した結果となっています。


このように現在は正直グリクシスで凝り固まった感もある状況ですが、こういった状況でも新しい切り口でデッキを構築し結果を残すプレイヤーには尊敬の念を覚えます。この結果が現在のメタゲームにどういった影響を及ぼすのか今度も注目していきたいと思います。

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11月4週目:兄弟戦争後もグリクシスの牙城崩せず

兄弟戦争のリリースから2週間程度とそろそろ新環境のメタゲームが形成されてきたといえる中、今週行われた大きなスタンダードのイベントとしてMOのショーケースチャレンジが開催されましたのでそちらを見ていきたいと思います。

まずTOP8に残ったデッキですが・・・

  • グリクシスミッドレンジ*5
  • 青白兵士*2
  • 青単クロックパーミッション*1

と、圧倒的なまでにグリクシスミッドレンジが勝っており優勝もグリクシスミッドレンジとなりました。ここだけ見ると青白兵士が加わったことを除くと兄弟戦争後もメタゲーム殆ど変わっていない感もなくはないといったところですが、詳しく見ていきます。

上記が優勝のグリクシスミッドレンジ。メインボードは世界選手権を優勝したグリクシスミッドレンジを踏襲しており、《強迫》《ヴェールのリリアナ》といったスロットを抜いて《復活したアーテイ》や《切り崩し》増量に当てるといった現在のメタゲームに合わせて微調整はされたリストになっています。

兄弟戦争によって青白兵士を中心として前環境よりはアグロが増えたことは間違いなく、それらに対して《強迫》《ヴェールのリリアナ》は弱いのでそういった環境の変化を加味した調整なのでしょう。といっても基本は前述の通り世界選手権優勝デッキがベースであり、やはり除去やクリーチャー選択等のバランスが秀でているリストということが改めて証明された形とも言えそうです。

サイドボードに目を向けると《兄弟仲の終焉》が2枚入っている点が新顔と言える部分です。基本的にはオール3点の除去としてアグロ向けに取られているカードです。ただ3点オールは同型やエスパーにも無駄にはならないこともあり、完全に不要になるというマッチアップが現状少ないことからTOP8の他のグリクシスではメインボードに《兄弟仲の終焉》を積むリストも現れています。

このように流行りのグリクシスでありながらも対アグロをしっかり意識されており、それが決勝で青白兵士を退けた理由でもあると言えるでしょう。

準優勝は上記の兄弟戦争後の新アーキタイプである青白兵士。現時点では兄弟戦争による環境の変化を最も感じるアーキタイプと言って良いでしょう。TOP8に2つ入賞していることもあり強さも本物なのは間違いありません。

メインボードに関しては殆どこのリストで完成された感もあり、これがテンプレの青白兵士といっても良いでしょう。別で触れているデッキでもありここではもうあまり語ることもないデッキですが、デッキリストが固まった感があるというのは考えておいて良い部分でもあります。

つまり仮想敵として想定しやすいデッキでもあるということで、少なくても練習相手として想定しておくリストと本番で対戦するリストに大きな違いがない可能性が高いため練習の成果を出しやすい相手でもあるということです。その分、他のデッキと比べると伸びしろが少ないデッキとも言えるように思います。

そのためメタゲーム上にいると意識されやすく、実際前述の通り決勝に残ったグリクシスはしっかり青白兵士を意識したリストになっており負けてしまっているのでTier1に居座るのは難しいデッキかもしれません。

こちらもTOP8のグリクシスミッドレンジです。これを取り上げたのはメインボードに《絶望招来》が入っておらず、《ギックスの命令》が2枚積まれているといった点が斬新であったことが理由です。

《ギックスの命令》は汎用性の高いモードもありますが、アグロ相手に強いモードが多く対アグロを見ると《絶望招来》よりも優れていると言っても良いカードです。実際メインボードから《兄弟仲の終焉》が積まれている点からも青白兵士を意識した構築となっているものと思います。

ですがその分、黒ミッドレンジ同型対決には弱くなっており実際TOP8ではグリクシス同型に敗北を喫しています。とは言えこういった構築もありという形を一つ見せてくれたリストになっています。



このようにTOP8はグリクシス祭りで世界選手権後から続くグリクシスがTOPというメタゲームの牙城は未だ崩せず、といったところなのが現状でしょう。TOP8以下を見渡すとエスパーミッドレンジ、白単アグロ、赤単アグロといったように色々なアーキタイプが見えますが、グリクシスには及ばないといったところです。今後グリクシスを脅かすデッキが登場するのかは期待したいところです。

最後に19位という惜しい順位に入賞していたデッキリストを取り上げて終わりたいと思います。

まさかの《ガイアの具現、ティタニア》を狙ったデッキ。個人的には合体の中でも《ガイアの具現、ティタニア》は流石にキツイと思っていたのでこの順位まで入賞するというのは非常に驚きました。アーキタイプとしてはジャンドミッドレンジといっても良いでしょうが、やはり《ガイアの具現、ティタニア》デッキと呼びたいデッキです。

山札を掘って墓地を肥やす手段としては《鏡割りの寓話》以外には《ブランチウッドのうろつくもの》《樹海の幻想家、しげ樹》《ラトスタイン翁》が採用されており、特に《ブランチウッドのうろつくもの》は序盤の壁としても活躍してくれるので強力な一枚です。このカードのおかげでこのデッキが成り立っていると言っても良いくらいのカードでしょう。

肥やした墓地から《ガイアの具現、ティタニア》のサイズアップは勿論ですが、他にも《ウィンドグレイスの魂》更には《戦墓の再誕》といったカードまで入っており、合体に頼り切らずに戦えるようにもなっています。また3枚入っている《ギックスの命令》もポイントで、絆魂からライフを回復して安全圏までライフを引き上げたりと序盤の立ち上がりに不安を抱えるというデッキの弱点をカバーするカードとして大きな活躍を見せてくれるカードです。

他に特徴的なカードは《空漁師の蜘蛛》です。基本的には《ブランチウッドのうろつくもの》や《ラトスタイン翁》から生み出した1/1を生け贄にしたいカードとなっており、効果の汎用性が高いカードです。ジャンドなので《豪火を放て》のようなカードも採用可能なのですが、それよりも優先して入っているのはデッキ構築の参考にするべきところでしょう。


このように非常に面白いデッキですが、このデッキを使っていたのは殿堂プレイヤーということもあり注目して良いデッキなのは間違いないでしょう。気になった方は是非プレイしてみてほしいデッキです。

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11月3週目:兄弟戦争の幕開

いよいよ兄弟戦争がリリースされ、新しいスタンダードがスタートしました。兄弟戦争は強力なカードも多く環境に大きな変化を与えそうなエキスパンションなので、このリリースを心待ちにしていた方も多かったことでしょう。

さて、今週はまだリリースして1週間にも満たない期間での週末とのことでメタゲームと呼べるほどの状況ではないですがMOも含めいくつかのイベントが新スタンダードで開催されましたので、そこで結果を残したデッキを見ていきたいと思います。

まずはMOスタンダードチャレンジ(11/19)で上位に入ったデッキについて触れていきます。

優勝となったのは黒単ミッドレンジ。ミッドレンジといっても基本的には黒の優秀なクリーチャーでビートダウンしていくアグロに近いデッキとなっています。

黒の強さは前環境から立証済みですからそこに新カードを加えてデッキを強化するのは最も無難な方法と言えます。黒単は土地によるもたつきが少ないので、その立ち上がりの良さを生かして1マナ域からのビートダウン戦略を取れるのが他の黒系ミッドレンジより優れたポイントとなっています。

新しいクリーチャーとして2マナ域には《苦難の影》《剃刀鞭の人体改造機》。《苦難の影》は実際使ってみて強さに驚いた一枚で、サイズアップ能力により中盤以降でも厄介な存在になるのは勿論のこと《夜明けの空、猗旺》のようなクリーチャーを相手にしたときの追放効果はおまけとは言えないくらい役に立ちます。複数枚引くと若干使い辛くなってしまうので採用枚数は悩みどころですが、今度活躍しそうなクリーチャーです。《剃刀鞭の人体改造機》は特殊地形も多いこの環境では墓地から帰ってきやすさもあり、まさに見たままの攻めに向いた性能を持っています。

そしてこの肉押し戦略を取る理由にもなっているのが《ヨーグモスの法務官、ギックス》。1,2ターン目にクリーチャーを展開した上での《ヨーグモスの法務官、ギックス》はわかりやすいブン回りで、特に黒単にとっては嬉しい新戦力となっています。

現状兄弟戦争のトップレアである《ファイレクシアの肉体喰らい》も4枚入っています。このカードは弱いという声もちらほら聞こえはするものの威迫が《ヨーグモスの法務官、ギックス》と相性が良いというシナジーもあります。このカードの使用率が今後どのようになるのかについては気になるところですね。

単色ということで《ミシュラの鋳造所》も使いやすくしっかり4枚入っています。ただし土地総数24枚、しかも黒マナ20枚で《絶望招来》4枚というのはややきつそうな印象なのでそのあたりは改善点かもしれません。《人体改造機の冠》についてはお試し枠かもしれませんが、あまり多くを引きたいカードではないという判断もあったことでしょう。

何れにしてもこの黒単は無難に強くまとまっているデッキという印象で、特に環境初期で結果を残すのは頷けるところです。

準優勝はグリクシスサクリファイス。ラクドスではなくグリクシスになっているのは兄弟戦争の新カードによるもので、なるほどと思わずにはいられないデッキリストになっています。

そのカードは《第三の道の偶像破壊者》と《金線使い、サヒーリ》。新しいエンジンである《ミシュラの研究机》も含めアーティファクトが多いデッキなので能力も使いやすく、出てくるトークンもアーティファクトであるため《鬼流の金床》との相性も抜群。青を足すのも納得の構成となっています。これらによりラクドスよりも更にクリーチャーが横に並びやすく線は細くなっていますが、それが《金線使い、サヒーリ》の奥義とも相性が良い点なのもシナジーが持たれているところです。

サクリファイスといえばラクドスというのはある種刷り込まれたイメージでしたが、グリクシスという新しい構築はまさに環境に新風をふかせることになるかもしれません。

3位はエスパーレジェンドアグロ。《アーボーグのラタドラビック》は1枚と抑えられていますが、デッキの大半が伝説クリーチャー。《ヨーグモスの法務官、ギックス》が採用されている都合もあってかデッキのカードは土地以外全てクリーチャーという徹底ぶりです。

基本的にはエスパーではお馴染みの2マナクリーチャーからの《策謀の予見者、ラフィーン》という動きが主なパターンですが、2マナクリーチャーの枚数を厚めに取ることで安定して展開できる可能性をあげており、また《輝かしい聖戦士、エーデリン》に加え《ヨーグモスの法務官、ギックス》があることで《策謀の予見者、ラフィーン》が引けなかったとしても前のめりに攻めやすくなっています。

兄弟戦争の恩恵は少ないですが土地に《地底の大河》が入ったことで展開のしやすさは少なからず上がっています。《敬虔な新米、デニック》《ファイレクシアの宣教師》に絆魂があることで多少の土地からのダメージはカバーできます。こういったマナベースの充実も特にアグロ戦略とっては嬉しいところでしょう。

4位は青白兵士。兄弟戦争でフィーチャーされている兵士デッキが早速結果を残しています。

1マナ域の《徴兵士官》《ヨーティアの前線兵》から始まり、クリーチャーは全て3マナ以下という横並べ+強化を図りながら高速でゲームの決着を狙って行くアグロデッキです。

デッキのクリーチャーは大半は兵士デッキだったらこのあたりのクリーチャーになるよねといったところですが《戦闘態勢》が2枚入っているあたりはやや個性的といった印象を受けます。多少強化手段があるとはいえ、如何せんデッキのクリーチャーの大半が貧弱なので相手のクリーチャーの前に攻めあぐねてしまうケースも多く、少しでも強化する手段があるに越したことはありません。重めの《忘却の輪》として使える可能性も秘めていますし《スレイベンの守護者、サリア》とアンシナジーであってもデッキに欲しいという判断だったのかもしれません。

サイドに入っている《カイラの再建》も面白いところで、これは恐らく除去満載のデッキ相手に当たったときのサイドボードかと思います。1枚でほぼX枚数のクリーチャーを引っ張ってこれるので、除去され続けて相手のリソースも切れ始めたところで一気に盤面の復旧を狙うことができます。

5位はエスパーミッドレンジ。既存のエスパーミッドレンジに近い構成ですが《勢団の銀行破り》4枚と《ヨーグモスの法務官、ギックス》が3枚入っているあたりは既存とは異なる部分になっています。

《勢団の銀行破り》4枚というのは最近のトレンドとは異なる構成ですが、恐らく3ターン目に《ヨーグモスの法務官、ギックス》から搭乗して攻撃するというムーブが強いと判断しての採用なのでしょう。確かに3ターン目の4/4のアタックは本体で受けざるを得ないことも多いので《ヨーグモスの法務官、ギックス》の能力を誘発させやすい動きではあります。

その分3ターン目《策謀の予見者、ラフィーン》がやや使い辛くなってしまうというデメリットは出てきてしまいますが、この方はそれくらい《ヨーグモスの法務官、ギックス》を強く見ているという表れなのかもしれません。

全体的に打ち消しも多めに入っていたり受けなのか、《ヨーグモスの法務官、ギックス》が入っていることで攻めなのか、どっちつかずな印象。良く言えばどっちにも対応できるとも言えるかもしれませんが、現在は前のめりな構成のデッキがトレンドですのでその点を踏まえてどちらかに寄せたほうが良さそうな感じはします。

6位は黒単ミッドレンジ

基本的には1位のデッキと似た構成なのでここで多くを語ることはありませんが、2マナ域に入っている《暮影の騎士》は目を惹かれるところでしょう。最近は絆魂を持つクリーチャーも多くライフゲインできない能力も地味に役立つときがありますが、それ以上に威迫を持っていることで《ヨーグモスの法務官、ギックス》を活かしやすいという点から採用しているものと思います。特に2マナ域のクリーチャーは兄弟戦争によって充実したことでプレイヤーによって選択の違いが見られるのは面白いところです。

7位は5色ジョダー。環境初期から5色デッキを使うあたり、恐らくこの方は《統べるもの、ジョダー》が好きなのかもしれませんね。

と言っても確かに兄弟戦争からしっかり新戦力は採用されており特に《忠実な護衛、ハジャール》は4枚採用。このカードは単純に2マナ3/3が強いだけでなく《統べるもの、ジョダー》などを守ったりと中盤以降の活躍も見込めるので、確かにこのデッキでのフル採用は頷けるところです。2マナ域は肝になる部分でもあるので、ここの新戦力は大きいものがあります。

《ガイアの眼、グウェナ》は1枚ではありますが個人的には納得の採用で、このクリーチャーから《統べるもの、ジョダー》に繋げるというムーブは強力極まりない流れです。伝説とは言え個人的にはもう少し枚数を増やしても良さそうな印象です。

《肉体装置技師、アシュノッド》は1マナなので《統べるもの、ジョダー》の続唱効果(下側の効果)を2マナクリーチャーでも無駄にしないように入投入されているものと思います。《忠実な護衛、ハジャール》が入ったことで2マナ域が充実したのも一つの理由ではあるでしょう。

このデッキも兄弟戦争でパワーアップしたデッキなのは間違いなく、今後も一部のプレイヤーに好まれるデッキとして稀に姿を見せるアーキタイプとなりそうです。

MOチャレンジ最後の8位となったリストがこちらの青黒ミッドレンジ。かなり個性的な構成のデッキになっています。

まず《肉体の裏切者、テゼレット》が4枚入っているあたりに狙いが透けて見えてきます。4/4を生成する能力以上に《勢団の銀行破り》を起動コストなしでドローさせるという点に加え、新カードである《高波エンジン》が育てやすくなるという点を狙っての採用なのでしょう。他の2マナ以下のカードは打ち消しやクリーチャー除去になっていることもあって、序盤は打ち消しや除去を絡めて乗り切ってこれらのカードでアドバンテージを取っていくというゲームをやや長めに見た構成となっています。

他には《刃とぐろの蛇》が採用されている点が目を惹きます。青黒絡みの6マナで唱えると相手とカードアドバンテージ差を一気につけることができるので、このカードをゲームの決定打として採用することで長期戦で差をつけやすくなっています。

《肉体の裏切者、テゼレット》を採用すると青青を要求するのでどうしても《絶望招来》が使えなくなってしまいますが、兄弟戦争の新しいカードのおかげでこういった構築もありということを教えてくれるリストとなっています。




さて、ここまでMOで結果を残したデッキを見てきましたが、総括すると全体的に前のめりなデッキが多くなっており、序盤からクリーチャーを展開して攻めて行くスタイルのデッキが増えた印象です。特に《ヨーグモスの法務官、ギックス》を上手く使うように工夫したデッキが多く、このカードが肉押しのスタイルを増やした一因であるとも言えるでしょう。

やはり現状は引き続き黒いデッキが多くなっていますが、青白兵士も入賞していたりしますので、今後黒いデッキ以外を見かけることも増えるようになることを期待しています。

また、MO以外にもう一つ主に国内向けのイベントである蒼紅杯というイベントも行われていますのでそちらは1つ個人的に気になったデッキについて触れて今週は終わりにしたいと思います。

こちらは準優勝されていたアゾリウスコントロールです。

兄弟戦争の注目カードの一つである《時間の旅人、テフェリー》。ただ環境的に使い方が難しい一枚でもありますが、まさにその《時間の旅人、テフェリー》をしっかり活用するように構築されているのが光るリストとなっています。

《時間の旅人、テフェリー》の「カードを引くするたび」を誘発させるためのドローソースとして《銀の精査》に加え、《発見への渇望》《第三の道の機構》が採用されています。特に《第三の道の機構》は注目の一枚で、カードアドバンテージは得られませんが《時間の旅人、テフェリー》の誘発だけでなく、ライフゲインにより終盤の詰めで競り負けてしまうことを避けたり《告別》までの時間を稼いだりとコントロールにとって欲しい時間を得られる一枚となっています。3枚入っているあたり強いカードと判断しての採用なのでしょう。

兄弟戦争の新カードは青白コントロールにとって序盤を凌ぐカードにも新戦力がありました。《軍備放棄》は優秀な1マナ除去で、このカードのために土地も《アダーカー荒原》を使わず《ラフィーンの塔》のように土地タイプを持つカードを使う等の工夫が見られます。また《魂の仕切り》は時間を稼ぐにはうってつけの一枚で、パーマネントを対象に取れるので《婚礼の発表》のようなエンチャントですら一時的に退かすことができるのも優れています。プレインズウォーカーさえ安定して動かせるようになれば、この程度のカードアドバンテージのロスは取り返せますので今後コントロールの定番カードとなっても不思議ではありません。

《時間の旅人、テフェリー》を使ったコントロールはメタゲームに食い込むことができるのか今後も注目したいところです。


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10月5週目:注目の世界選手権結果

現環境の総決算とも言える時期に大注目となる第28回世界選手権が開催されました。エスパーやジャンドといった黒いミッドレンジが間違いなく大本命と言える中で、猛者32名が持ち込むデッキは世界中のMTGプレイヤーが注目していたことでしょう。

まずはメタゲームですが、想像以上に偏った結果となりました。

エスパーミッドレンジが本命なのはほぼ間違いないと思ってはいましたが、約7割とここまで使用率が偏るとは驚きました。ですが、ここまで来ると注目なのはエスパー以外のデッキがどこまで活躍できるかということでしょう。

世界選手権の決勝ラウンドに残ったTOP4は「エスパー*3、グリクシス*1」とこのメタゲームの偏りから見るとそうなるよねといったところなのですが、TOP4はスタンダードラウンド以外の結果も左右します。スタンダードラウンドだけに注目すると大きな活躍を見せたのは妥当エスパーとして持ち込んだのであろう《傲慢なジン》デッキでした。

先週も紹介していた青いテンポデッキ。これを見事に消化させて持ち込んだ2人のプレイヤーは共にエスパーに対して3-0。つまり双方共にエスパーに対して負けなしという際立った結果を残しました。

特にイゼットはかなり個性的なデッキとなっており本当に驚かされました。このイゼットは青単と比較するとややロングゲームも見据えた構成になっており、それは《嵐風招来》《溺神の信奉者、リーア》といったカードの選択にも表れています。《溺神の信奉者、リーア》がロングゲームに強いのはもちろんのことですが《嵐風招来》は《黙示録、シェオルドレッド》やエスパーミラーを想定してよく採用される《夜明けの空、猗旺》あたりにはクリティカルに刺さるカードです。

赤を採用することで《鏡割りの寓話》が使えるのは勿論として、火力により相手クリーチャーを根本的に対処することができるようになっており、バウンスでお茶を濁すしかなかった《黙示録、シェオルドレッド》に対しても《引き裂く炎》で対処するという手段を用いることができるようになっています。

《墓所の照光者》の採用も光るところで、墓地対策というよりはアタッカー兼アドバンテージ源のように働くカードとして採用されているものと思いますが、タフネスが3あるため《巨竜戦争》の2点ダメージで死亡しない相性の良さもあっての採用でしょう。実際ゲームプレイを見ていても《巨竜戦争》との組み合わせがしっかり機能したゲームもありましたし、《巨竜戦争》はメインに一枚しか入っていなくてもデッキ公開制では入っているという事実が相手に影響を与えますから、見た目以上に活躍したカードとなったことでしょう。

この大舞台でこのようなデッキを持ち込んで結果を残すというのは見事としか言いようがありませんね。

青単は先週から紹介しているデッキですが、本リストでは《切り崩し》が当たったり捲れによって強さがブレやすい《秘密を掘り下げる者》を外し、クリーチャーは《傲慢なジン》《トレイリアの恐怖》のみとなっています。その分浮いたスロットに《かき消し》だけでなく《否認》《本質の散乱》がメインから多めに入っていることで打ち消しが非常に多めになっていることが特徴です。

ミッドレンジ環境が進むほど打ち消し呪文は効果的に機能しやすくなりますし《夜明けの空、猗旺》《絶望招来》のようなカードはまさに打ち消しのうってつけの的となります。

弱点があるデッキであっても、プロレベルのイベントでは強いデッキにメタゲームが偏りやすくトップメタデッキに強いのであればそれを持ち込むという戦略は有効になりやすいですし、少ないプレイヤー数であるからこそ尚更効果的に機能する結果になったのではないかと思います。

この青いデッキ2種がTOP4に残れなかったことは個人的には残念ですが、本大会のスタンダードにおいて圧倒的パフォーマンスから大きな注目を集める結果となりました。


個人的にはMTGアリーナのラダーで使うデッキとしては(色々なデッキにマッチアップしやすいので)こういった青いデッキよりエスパーミッドレンジのようなデッキのほうが無難だとは思いますが、とは言え今まで以上に数を増やすことにはなりそうです。

こちらは見事に優勝を収めたグリクシスミッドレンジ。TOP4唯一のエスパー外のデッキでしたが、エスパーを意識して持ち込まれたデッキとなっており見事に予選ラウンドも含めエスパーをなぎ倒しての優勝となりました。

《食肉鉤虐殺事件》がなくなったことで横並べに対処し辛くなり特に《婚礼の発表》の対処に困りやすくなったことで、グリクシスであってもエンチャントを対処できる《絶望招来》は重要との判断があったことと思いますが、しっかり4枚採用されています。

2マナ以下のインスタントソーサリーの採用に調整具合が感じられ、特に《強迫》《切り崩し》の2枚ずつの採用はやはりエスパーを強く意識した結果の表れでしょう。エスパーの厄介なところは相手に対処を迫る3マナのカードの性質が異なっている点にあります。具体的には《策謀の予見者、ラフィーン》と《婚礼の発表》のことですが、かたや《切り崩し》が適切な回答になるもののもう片方には《切り崩し》では辛いという押し付けに対する回答が一筋縄ではいかないところです。

そういった背景もあり2枚ずつこれらのカードを散らしたという理由も恐らくあるでしょう。また環境に多い《かき消し》で《絶望招来》を消されないように安全確認するための《強迫》というところもあると思います。このように《強迫》をメインに入れたことは好成績に寄与したのではないかと思います。

こちらは準優勝となったエスパーミッドレンジ。エスパーミッドレンジが大多数を占めていたといっても各々レシピの細部はやはり様々な工夫が見られます。

このリストでまず目を惹くのは《屍術の俊英、ルーデヴィック》です。3ターン目《策謀の予見者、ラフィーン》から攻撃していく際、2ターン目に出したクリーチャーが相打ちにならずに攻めて行くには《しつこい負け犬》《税血の徴収者》のパワー3ラインを考慮するとタフネス3あるクリーチャーでないと務まりません。《敬虔な新米、デニック》は勿論のこと《屍術の俊英、ルーデヴィック》もこのラインをまず満たしている点が優秀です。

そして特にエスパーミラーでは墓地にクリーチャーは概ね残っている状況になるので、変身させるこの能力が後半にも生きてきます。《策謀の予見者、ラフィーン》《黙示録、シェオルドレッド》《夜明けの空、猗旺》とコピーして強いクリーチャーは数多く《しつこい負け犬》の奇襲以上に後半でも活躍が見込めるクリーチャーとして強さを発揮していました。《英雄の公有地》とも相性が良く今後のエスパーミッドレンジの2マナ域の定番となりそうです。

この存在もあって2ターン目以降の押し付けが非常に強く、5枚と多めに採用されている《夜明けの空、猗旺》まで毎ターン強力なパーマネントを押し付けていけるのはエスパーの強みです。実際このリストは《かき消し》も1枚と最低限の採用となっており《婚礼の発表》を1枚押しのけてまで《選定された平和の番人》を入れていたりと押し付けの強さを前面に押し出した構築となっているように感じます。エスパーミラーはどうしても先手が有利になりやすいですが、輪をかけて先手番の勝利は絶対に逃さないと言わんばかりの意識を感じることができます。




さて、まだ期間は2、3週間残っているとは言えこの世界選手権を持って現在のスタンダードは一旦一段落といった印象があります。次は「兄弟戦争」のリリースを持って新しいスタンダードが幕をあけることになります。まだ執筆時点で全カードは明らかになっていないものの、すでにわかっている範囲でも「兄弟戦争」は強力なカードが散見されますので、おそらく大きく環境が変わることになるでしょう。

また兄弟戦争がリリースされる頃あたりから新しいスタンダードのメタゲームを追いかけていきます。

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10月4週目:メタゲームは相変わらず黒い環境に

《食肉鉤虐殺事件》禁止から時間も経過し、禁止後の環境変化も進んできた時期にあるといった中ですが、イベントで結果を残しているデッキを見るとデッキリストそのものにはやや変化は見られるとは言えやはり黒い環境であることは変わらず、メタゲーム自体は《食肉鉤虐殺事件》禁止でも大きな変化はないといった様子になっています。

今週もMOのイベントであるスタンダードチャレンジの直近2回分のTOP8(16デッキ)を中心に見ていきます。

先週の結果も踏まえると、現在はエスパーミッドレンジとジャンドミッドレンジの2強環境であると言ってほぼ間違いないでしょう。先週はあまり触れられませんでしたが先週のアリーナチャンピオンシップ予選ウィークエンドを勝ち上がったアーキタイプも最多はエスパーミッドレンジとなっていたようで、ジャンドエスパー2強環境ではありながらもどちらかと言えばエスパーミッドレンジが頭一つ抜け出しているような印象です。

そしてこの二つのTier1を攻略しようという意図で手に取ったであろうアーキタイプが今週は入賞数同率2位まで出てきているのが印象です。もちろんそれは青単テンポのことです。

青単テンポは特にBO1で一定の使用率のあるアーキタイプという印象でしたが、特に今週はBO3でも結果を残してきています。

青単テンポは主に《秘密を掘り下げる者》《傲慢なジン》《トレイリアの恐怖》を早期に展開し、打ち消しやバウンスでお茶を濁している間に攻撃を刻んで相手を倒し切るという戦い方をするデッキです。飛行クリーチャーが多いため攻撃が通りやすく、打ち消しやバウンスは特にコストの重いカードに対して効果的に作用するため、ミッドレンジのような遅いデッキに対して有利に戦えるアーキタイプです。特に《傲慢なジン》が強くパワーが半端なく成長するため想像以上の打点から早めにライフを削り切ることができるのが強みです。

このリストでは《消えゆく希望》だけでなく《とんずら》も4枚フル採用されているのが印象的。展開したクリーチャーの除去避けを多めに採用しつつバウンスも多めに入っていることから、序盤から築き上げたリードを譲らないといった意図が感じられます。相手としては飛行クリーチャーはクリーチャー除去以外では攻撃を防げないことが多いので《とんずら》で飛行クリーチャーを守られるのはかなり厄介な動きとなります。

《墓地の侵入者》《ヴェールのリリアナ》といった序盤に通すと致命的になるカードはあるものの打ち消しを抱えるためそう簡単には通りませんし、現在は黒単のように序盤から軽快に動くタイプよりもエスパーやジャンドのように多色化が進んでいて序盤をリードしやすいこともこのデッキにとっては追い風になっています。

サイド後になると《未認可霊柩車》がこのデッキにとっては非常に厳しいカードとして相手に投入されがちです。特に相手先手2ターン目に唱えられたときにはかなり対処手段が限られますが、このリストに《呪文貫き》がメインから3枚入っているのはそういった動きに対抗できるようにという意図もあるものと思います。そして万一通ってしまったときに対処できるカードとして《真髄の針》がサイドに用意されています。場に出てしまった《未認可霊柩車》を簡単に対処できるカードは青単だと《真髄の針》くらいしかありませんので、相手のサイドボードに対するサイドボードとなっています。


決してデッキパワーが高いデッキではありませんし明確な弱点も存在する上なかなか優勝というところまでは勝ち切れていないですが、この二強環境が継続すればするほど姿を見せるアーキアイプとなるかもしれません。


この他に筆者が気になったデッキリストを一つ取り上げたいと思います。

こちらはTOP4に入賞していたオルゾフミッドレンジ。一見普通のオルゾフミッドレンジに見えるかもしれませんが、よく見るとノンクリーチャー構成になっており《告別》も4枚採用。勝ち手段は計12枚入っているプレインズウォーカーが中心となっており、オルゾフミッドレンジというよりもプレインズウォーカーコントロールといっても良いデッキになっています。

ノンクリーチャーとなっていることで相手のクリーチャー除去を有効に使わせないようになっているだけでなく、自身の《告別》はプレインズウォーカーが中心となっていることも相まって非常に使いやすいように構築されています。

《運命的不在》が4枚入っているのも目を惹きますが、これは恐らく相手のプレインズウォーカーを破壊できるという点を大きく見ているための採用でしょう。ノンクリーチャーであることもあり相手のプレインズウォーカーを対処し辛くなっていますので《運命的不在》でカバーしているのではないかと思います。

《告別》4枚というリセットのおかげで相手に盤面を握らせないようにできますし、特に中速のデッキ相手だと《告別》が間に合うことから打ち消しをもたないタイプの中速デッキに強い構成になっています。ですが、動きが大振りになっている分打ち消しが厳しくエスパーミッドレンジのような相手は若干厳しそうという印象はあります。


とは言え、全体的になるほどと思わされる構築になっており、また新しい構築の1パターンを見ることができたのは非常に興味深く感じました。このリストそのままでも良いと思いますが、この考え方を参考にしてリストを変更してみるのも面白そうですね。


さて、来週は久しぶりとなる大型イベントである「第28回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」が開催されます。参加者は他のプレイヤーとは比較にならないくらいスタンダードを研究して練り込んできているでしょうから、そういったプレイヤーがどんなデッキを持ち込んでくるのか楽しみです。

※本週以前の内容についてはこちらのページに移管しました。

コメント

  1. 匿名 より:

    とても分かりやすくまとめてくださり大変助かっています いつもありがとうございます
    毎週楽しみにしています

    • MasaKMasaK より:

      温かいお言葉ありがとうございます。励みになります m(__)m
      また新環境も追いかけていきたいと思います。

  2. 匿名 より:

    いつも分かりやすく解説まで入れてくださり非常に助かってます
    11月3週目のジョダーデッキを実際に回してみて《肉体装置技師、アシュノッド》の採用理由に得心が行ったのでご報告をば
    恐らく1マナ伝説人間ということでジョダーの続唱効果で2マナ伝説から出す為のカードだと思われます
    グウェナからジョダーを出した直後にアンタップしたグウェナから即キャストできる2マナ伝説で続唱の動きがかなり強力でした

    • MasaKMasaK より:

      コメントありがとうございます。

      >《肉体装置技師、アシュノッド》の採用理由に得心が行ったのでご報告をば
      ありがとうございます。仰る通りだと思います。見落としていました。
      参考に文中も編集いたしました。

      >グウェナからジョダーを出した直後にアンタップしたグウェナから即キャストできる2マナ伝説で続唱の動きがかなり強力でした
      それは本当に強力な動きですよね。そういったほぼ勝ちと言えるほどの回りが可能なのはこのデッキの大きな魅力ですね。

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