8月も後半に差し掛かりいよいよスタンダード環境のローテーションが目前まで近づいてきている中、次期スタンダード環境を占うフォーマットであるスタンダード2022の注目度も高まってきています。
8月3週目の週末に、スタンダード2022フォーマットで賞金制の大会である「TGS Open Series Featuring MTG Arena」が行われました。
このイベントは参加費無料ともあって、まさに出場し得なイベントでした。このイベントを元にスタンダード2022のメタゲーム、各デッキタイプ毎の勝率、デッキリストをそれぞれご紹介します。
メタゲーム

イゼットドラゴン、緑単アグロ、青黒コントロールがTOP3となっており、この3つで凡そ全体の半分を占めるメタゲームとなっています。
特にイゼットドラゴンと緑単アグロは環境初期から台頭し続けているデッキであり、スタンダード2022の中心的なデッキがこの2つであるのは間違いないでしょう。

尚、このイベントはBO3であるためBO1で禁止となっている《高貴なる行いの書》の使用は認められています。そのため《不詳の安息地》とのコンボが存在する環境となっています。
ですが、結果から先に述べると本イベントでは上位デッキに名を連ねることはありませんでした。
勝率まとめ
Total WinRate | Izzet Dragons | Mono-Green Aggro | Dimir Control | Mono-White Aggro | Orzhov Control | Mardu Midrange | Orzhov Midrange | Jund Midrange | Gruul Aggro | Other | |
Izzet Dragons | 53% | ● | 30% | 50% | 69% | 67% | 88% | 60% | 56% | 100% | 42% |
Mono-Green Aggro | 65% | 70% | ● | 100% | 100% | 33% | 67% | 50% | 100% | 50% | 63% |
Dimir Control | 40% | 50% | 0% | ● | 0% | 0% | 100% | 60% | 33% | 0% | 42% |
Mono-White Aggro | 43% | 31% | 0% | 100% | ● | 0% | 33% | 0% | 0% | 33% | 65% |
Orzhov Control | 49% | 33% | 67% | 100% | 100% | ● | – | 100% | – | 100% | 44% |
Mardu Midrange | 44% | 13% | 33% | 0% | 67% | – | ● | 100% | – | 33% | 56% |
Orzhov Midrange | 42% | 40% | 50% | 40% | 100% | 0% | 0% | ● | 50% | 67% | 33% |
Jund Midrange | 53% | 44% | 0% | 67% | 100% | – | – | 50% | ● | 100% | 57% |
Gruul Aggro | 44% | 0% | 50% | 100% | 67% | 0% | 67% | 33% | 0% | ● | 41% |
Other | 52% | 58% | 37% | 58% | 35% | 56% | 44% | 67% | 43% | 59% | ● |
1イベントのみの結果であるため勝率はバラつきやすくサンプル数も少ない点には注意ですが、それでも各デッキ毎の勝率は参考にはなるでしょう。
目立つのは緑単アグロの強さです。使用者数2位でありながら合計勝率は64%とダントツのトップ。オルゾフコントロール以外には全てのデッキタイプに勝ち越しています。
イゼットドラゴンはデッキとしては強いものの、環境の双璧を成す緑単アグロに大きく負け越しています。
MTGのカードの性質的に赤いデッキはサイズの大きい緑クリーチャーの対処が難しく本質的に苦手としています。イゼットドラゴンにとっては緑単アグロはまさに目の上のたん瘤と言えます。
TOP8デッキ解説
優勝:緑単アグロ

見事優勝という結果を残した緑単アグロ。
本リストはメインボードの《豊穣の碑文》と《吹雪の乱闘》の除去カード以外は全て4枚に統一されており、シンプルかつ洗練されたデッキリストとなっています。
何らか尖った構築をせずどのデッキを相手にしても無難に戦えるのが特徴とも言えるリストで、それ故に緑単アグロの強さを遺憾なく発揮したことでしょう。
サイドボードに関しても除去コントロール相手の《秘密を知るもの、トスキ》と《蛇皮のヴェール》、同型やアグロ相手の《吹雪の乱闘》と《遺跡の碑文》の追加など、こちらも綺麗にまとまっており緑単アグロのお手本のようなリストになっています。
準優勝:ジェスカイミッドレンジ

準優勝となったジェスカイミッドレンジ。
ジェスカイミッドレンジと言ってはいますが、イゼットドラゴンが元になっているのは明白でイゼットドラゴンタッチ白といったほうが適切かもしれません。
白をタッチしてまで投入されているのは《アダルト・ゴールド・ドラゴン》で、このドラゴンは絆魂を持っていることを買って採用しているものと思います。
具体的にはイゼットドラゴンが苦手とする緑単アグロへの相性を改善するために、除去でアグロの攻勢を抑え込むのではなく《アダルト・ゴールド・ドラゴン》によって、地vs空という軸の違ったダメージレースをしかけて勝ちに行くゲームプランを取ることを意図したものでしょう。
確かに火力では緑単アグロに対抗するのは難しいので、こういったアプローチのほうが対抗手段としては有効のように思えます。
ですが、本イベントの結果としてはこのデッキが喫した2敗はどちらも緑単アグロに対してであったこともあり、緑単アグロの攻略にはもう一工夫必要なのかもしれません。
3位:緑単アグロ

TOP8には2つ緑単アグロが入賞しており、優勝に続きこちらが3位となった緑単アグロのリストになっています。
1位のリストと比較するとメインボードは「《節くれだった教授》の採用有無」「土地の枚数」「除去の枚数」「《フロギーモス》のメイン採用」といったあたりが主な相違点です。
私としては優勝のリストのほうが好みですが、その理由としてはまずサイドボードの差です。
カードブールの狭いスタンダード2022の緑単は、サイドに取りたいと思えるほど強いカードが(私見では)そこまで多くありません。そのため《節くれだった教授》を採用してサイドに講義カードを取るほうが、よりサイドボードを有効活用できると思います。
それにメインに除去を7枚と多めに採用していながら《貪る触手》を更にサイドに4枚採用しているのも少し引っかかります。どこまでサイドインするつもりで採用されているのかはわからないのですが、仮にサイドから4枚全部追加してしまうと除去カードと使うための格闘元となるクリーチャーも減ってしまって打ちづらくなり、かつアグロにとっては本末転倒となる攻めあぐねる展開を生む元にもなりますから除去カード過多のように感じます。
もう一つ気になるのが土地の枚数です。5マナ域の《フロギーモス》を採用しているにも関わらずランド22枚はちょっと厳しい印象です。
たしかに《カザンドゥのマンモス》はありますが、どちらかというとクリーチャーとして展開したいですし《レンジャー・クラス》やミシュラランドによって緑単といえどもマナの使い道は多いので、もう少し土地を多くしたいところです。
4位:黒単コントロール

4位入賞の黒単コントロール。
黒単コントロールといえばアグロに強いコントロールの代名詞であり、クリーチャーサイズをもろともしないことから特に緑系のアグロデッキに強いデッキタイプです。
このデッキは多くの除去により盤面をコントロールしながらプレインズウォーカーでゲームを掌握する構造になっており、クリーチャーも死亡することで能力を発揮するカードで占められているため、相手の除去カードを実質的に腐らせてしまうように構築されています。
《よろめく怪異》と《命取りの論争》はローテーション後は頻繁に目にすることになるであろうパッケージで、アグロには強いし宝物にしても良いしで本当に強力な組み合わせです。こういったタイプの黒いデッキでは定番になりそうですね。
ただこういった除去コントロールは青いコントロールタイプのデッキが苦手なのが通例で、準優勝のジェスカイミッドレンジに予選ラウンドも決勝ラウンドも負けてしまっています。加えて《パワー・ワード・キル》が効かないというこの環境特有の事象も厳しいところです。
手札破壊や継続的なアドバンテージを取れる強力なカードがあればそれも少し事情が変わってきますが、現状だと目ぼしいカードがあまりないので次期セットに期待したいところです。
5位:イゼットドラゴン

5位入賞のイゼットドラゴン。
氷雪ランドを多めに採用し《霜噛み》を除去カードに据えつつ、赤の2マナ除去の定番となりつつある《ドラゴンの火》も合わせて4枚ずつ採用することで序盤の展開を支えています。
そしてドロー呪文で息切れを防ぎつつカウンター呪文で凌ぎながら、お馴染みの各種ドラゴンからの《アールンドの天啓》で押し切るというオーソドックスなタイプのイゼットドラゴンです。
サイドボードの《レイ・オヴ・フロスト》ですが、主に同型対策の《星山脈の業火》を対策するために必要です。勿論《黄金架のドラゴン》にも有効ではありますが、特に《星山脈の業火》は同型では《レイ・オヴ・フロスト》以外ではまともに対処ができません。
同型を意識するのであれば本リストのように2枚は取っておきたいところです。
6位:オルゾフアグロ

個人的にはTOP8のデッキで最も感銘を受けたデッキ。それがこのオルゾフアグロです。
いや、正確にはオルゾフクレリックと呼んだほうが良いのかもしれません。
《兵員の結集》で全体強化するという点もありますが、それ以上に目を引くのは《激しい恐怖》です。現スタンダードのディミーアローグが行っていたアプローチと同様に、クレリックに統一していることで相手側を一方的に殲滅することができるようになっています。
-3という修正値的にイゼットドラゴンには無力であることは否めませんが、緑単アグロといったアグロデッキには相当に強力な武器になります。まさにアグロデッキに強いアグロデッキという趣のあるデッキリストとなっています。
オルゾフは現スタンダードではスゥルタイ根本原理の影響で鳴りを潜めていますが、ローテーション後には大きな活躍を見せてくれそうですね。
7位:ジャンドミッドレンジ

私見ではスタンダード2022のデッキの中で最も欲張り感満載なデッキ、それがジャンドミッドレンジです。
《ヤスペラの歩哨》《厚顔の無法者、マグダ》のお馴染みの組み合わせ、そして《よろめく怪異》と《命取りの論争》パッケージに加えて《裕福な亭主》によって宝物トークンから強引に各色のマナを生み出せるように序盤を展開します。
その後は《イマースタームの捕食者》《黄金架のドラゴン》《エシカの戦車》《オリークの首領、エクスタス》という各色の強カードを叩きつけてカードパワーにより強引にゲームをもぎ取るといったデッキになっています。デッキリストによっては《スカルドの決戦》まで採用しているタイプもあります。
まさにカードパワーが高いことが正義とも言わんばかりの構成で、かつ《ヤスペラの歩哨》《厚顔の無法者、マグダ》という現スタンダードのグルールアドベンチャーでもお馴染みの驚異的展開力も兼ね備えているため、ブン回ったときの強さは折り紙付きです。多色であるためサイドボードの対応応力にも目を見張るものがあります。
一方でやはりマナベースには相当負担がかかっていることは否めず、安定性には欠けるデッキでもあります。マナさえ出ればプレイしていて楽しいデッキですし、そういったデッキが好きな方にはおすすめなデッキです。
8位:イゼットドラゴン

TOP8二つ目のイゼットドラゴン。
こちらのリストは《アールンドの天啓》が4枚されていたり《海門修復》や《星山脈の業火》もメインから2枚採用されており、かつ《プリズマリの命令》も4枚採用されていることからゲーム中盤以降をより意識しているように感じます。
《霜噛み》を採用していないあたりからも同型を強めに意識したのかもしれません。その分、緑単アグロはより明確に厳しそうな印象は受けます。
最も目を引くのはサイドボードの《さまようアルカイック》です。対コントロール向けですが、特にイゼットドラゴン同型には火力で除去し辛いサイズで色対策カードも効かないことから盤面に定着しやすく、相当相手にプレッシャーをかけることができるカードです。
5マナとコスト重めなのはややネックに感じますが、どれくらい活躍したのかは気になるところですね。
参考:メタゲーム上位サンプルデッキ
メタゲーム上位のデッキタイプかつ、TOP8圏外のデッキリストです。
ディミーアコントロール

白単アグロ

オルゾフコントロール

マルドゥミッドレンジ

オルゾフミッドレンジ

グルールアグロ

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