スタンダードローテーション3年を受けて行われた2023/5/29付けの禁止改定において、以下の3枚が禁止となりました。
当然ながら何れのカードもこれまでのスタンダードの顔と言っても良いであろうカードばかり。
これらの禁止について私も思うことがない訳ではありませんが、禁止が決まった以上これらのカードの禁止が本当に妥当なのかということを考えてもあまり建設的ではないと思いますので、ここではそういったことは置いておき今回の禁止改定によってスタンダードにもたらされる変化について考えてみたいと思います。
この記事は今回の告知があってから数時間しか経っていないというタイミングで書いていますので、予想という域を出ませんが少しでも参考になる部分があればと思います。
ラクドスの凋落
当たり前の話ですが、もっとも大きく変化するのはグリクシスやラクドスミッドレンジといった黒系ミッドレンジです。

特に上記のような《絶望招来》を据えたオーソドックスなタイプのミッドレンジはデッキの中の11~12枚程のパーツを失うことになります。これはデッキの1/6程度で大打撃どころではないくらいの影響です。
禁止カードだけでなく《税血の収穫者》のような単体でそれなりに強いカードではあるものの《キキジキの鏡像》との相性の良さという一面もあって採用されていたカードもあり、相棒を失ったことである種パワーダウンしたと言えますので、とにかく骨格を失ってしまったアーキタイプとなりました。このデッキは除去を連打しそのリソースを《勢団の銀行破り》《絶望招来》で補填することがメイン戦略でしたが、同じような戦い方は難しくなります。
しかも《絶望招来》がなくなったことでプレインズウォーカーやエンチャントに触り辛くなり、黒の除去が本来苦手とするそれらのカードによって対抗しやすくなるという変化もあります。
今後ラクドス系統のミッドレンジを組むこと自体は不可能ではないと思いますが、このタイプに関しては存続するにしても大きく形を変えることを余儀なくされることになります。何れにしてもメタゲームからの凋落は避けられそうにありません。
ですが、ラクドス系統のデッキは全て存続できない訳ではありません。

上記のようなリアニメイト型は今後も充分存続可能でしょう。
《鏡割りの寓話》は勿論痛手ですが、これがないからといって存続できないほどではなく《ギックスの残虐》からのリアニメイトは今後も実現可能です。
確かに《勢団の銀行破り》も使用しているケースは多かったですが、デッキの本質的にはあくまで強力なクリーチャーを場に出すことのアドバンテージにありますので《勢団の銀行破り》のようなコツコツとアドバンテージを稼ぐカードの存在は他のミッドレンジに比べると必要性は低いと言えます。

ラクドスブリーチも同様の理由で存続可能なアーキタイプでしょう。
上記のリストの場合は《絶望招来》が入っていますが、どちらかと言えばラクドスミッドレンジのようにも振舞えるというふり幅を持たせる意味合いも強く、そもそも入っていないタイプもあったりするので必須パーツということはありません。
またラクドスブリーチはリアニメイト戦略とハイブリッドで構成にしやすい相性の良さもあり、今回失ったパーツも鑑みるとブリーチはリアニメイトとのハイブリッド型が主流になるかもしれません。
黒以外のミッドレンジは?

黒以外のミッドレンジでこれまでの有力なデッキとして、まずは白単ミッドレンジが挙げられます。
白単ミッドレンジが失ったのは《勢団の銀行破り》のみですが、この損失は他のミッドレンジ以上に白単には大きな痛手でしょう。とにかく白のミッドレンジは2マナ域が非常に弱いため、他のカードでカバーすることが難しくこの穴はポッカリ空いてしまった印象を受けます。1マナの《軍備放棄》というコスパの良い除去スペルがあることで《勢団の銀行破り》の起動2マナを捻出しやすく、それが良いコンビネーションになっていた部分も大きいものがありました。
この時点で、存続不可とは言わないまでもかなり厳しいデッキになってしまったという印象は強いです。またオーソドックスなタイプのラクドスミッドレンジに強い(チャンドラ登場以降はそれも一概に言い切れませんが)というのが一つのウリだったこともあり、その強みも今後のメタゲームの変化で活かせなくなってしまう可能性もあります。
ただ、これは白単に限らずではありますが今回の禁止で《婚礼の発表》は割られ辛くなり相対的に更に強くなったようにも思いますので《婚礼の発表》を中心としたデッキはまた台頭してくる可能性は高いでしょう。
タッチ赤のボロス型も比較的見かけるデッキでしたが《鏡割りの寓話》を失ったことでタッチ赤というアプローチに関しては大きく価値を下げました。タッチするならオルゾフのほうが良いでしょう。

先日のアリーナチャンピオンシップ3で好成績を収めたジェスカイドラゴン。
《ズルゴとオジュタイ》がマナカーブのトップにおかれていることでこのようなデッキ名となっていますが、ドラゴンを多用している訳ではなく実態としてはジェスカイミッドレンジと言っても差し支えないでしょう。
このデッキも《鏡割りの寓話》《勢団の銀行破り》を使用してはいますが、他のデッキも同カードを失っていることを鑑みると充分存続できるデッキではあるように思います。
3マナ域で見ると例えばサイドに入っている《金属の徒党の種子鮫》をメインに移すのも良いでしょうし、インスタントや瞬速を多用するデッキでもあるので2マナ域を埋めるのも比較的容易です。特に打ち消しを含むデッキは5色ランプのような重めのデッキに対しても効果的ですし、メタゲーム次第では優位性を持ちやすいデッキでもあります。
《太陽降下》や《石術の連射》も使えるカラーですし後に触れるエスパーに対してそれなりに戦えそうという意味でも悪くないアーキタイプだと思います。
最近のミッドレンジの代表的なデッキはこれらかと思いますが、それぞれ触れたように変化は避けられず、このあたりの変化はそのままメタゲームの変化に直結してくるでしょう。
トップメタ候補筆頭はエスパー

まず間違いなく多くの方が予想しているとは思いますが、エスパーレジェンズはまずトップメタ候補に浮上してくることになるでしょう。
このデッキは禁止前からトップメタの一角ではありましたが、今回の禁止改定では全くのノーダメージ。当然相対的に強くなったのは間違いありません。実際、今回この3枚を禁止したにも関わらず白関連のカードに全く変化がなかったのは疑問視する声も少なくありません。
エスパーと言えば最近は上記のようなレジェンド詰め込みタイプのものばかりになっていますが《絶望招来》が禁止になったことで、旧型と言っても良さそうな《婚礼の発表》《放浪皇》が入ったミッドレンジタイプのエスパーが復権する可能性も充分あるでしょう。実際《絶望招来》環境になったことでパーマネントをクリーチャーのみの構築(=レジェンズ)にすることで対抗する形を取っていた側面もありました。そんな天敵が去ったことでクリーチャー以外の強いカードも詰め込んだミッドレンジタイプも見かけるようになりそうです。

アゾリウス兵士も間接的に強くなったアーキタイプの一つと言えるでしょう。
禁止の影響が全くないというのもそうですが、オーソドックスなラクドス/グリクシスミッドレンジが少なくなることでやや苦手としていたピン除去や全体除去満載なタイプがやや少なくなるでしょうし、それにつれて《黙示録、シェオルドレッド》も以前よりは(勿論今後も使われはするでしょうが)少し数を減らす可能性もあるので、苦手デッキが少なくなる可能性がありそうという点で強くなるのではないかと思います。
ただ今回の変化を受けて白のマークは以前より上がりそうですし《ぎらつく氾濫》のような天敵カードもあるにはあるので、トップメタを走り続けるという可能性はやや低そうですが注意すべきデッキなのは間違いないでしょう。

最近の流行りであった5色ランプも今回の禁止改定は全く影響のないアーキタイプです。
ですがこのデッキが今後トップメタに浮上してくるかと言われると、その可能性は低いであろうと思っています。
このデッキは端的に言えば序盤はマナ加速に費やし後半はパワーカードを叩きつけていくという豪快なデッキですが、その戦い方故に得手不得手がはっきりしたデッキで、デッキの強さ云々以上にメタゲームに合うかどうかに左右される部分も少なくありません。打ち消しには弱いですが、その分打ち消しのない中速デッキに強い性質があり、それが昨今のラクドスミッドレンジの隆盛というメタゲームに噛み合っていたことで存在感を発揮していたアーキタイプです。
今回の禁止改定によるメタゲームの変化により、このデッキが仮想敵としていたラクドスミッドレンジを減らすことは間違いなく、結果的にこのデッキの価値をワンランク落とすことになるというのは予想がつくところでしょう。
勿論そのまま存続可能なデッキですので、メタゲームに今後も一定割合存在する可能性はありますが、決してトップメタに居続けるようなタイプのアーキタイプではないと思います。

「機械兵団の進軍:決戦の後に」のカードが現在のところスタンダードに与えた影響は殆どないと言ってもよいくらい小さいものになっていますが、その小さな変化の中でも最たるものがこのセレズニアエンチャントデッキです。
《運命に導かれし者、ケイリクス》というカードの性能が高いこと自体は間違いなく、先日のアリーナチャンピオンシップ3で好成績を収めた上記デッキも今後要注目のデッキでしょう。このアーキタイプは《運命に導かれし者、ケイリクス》も含め、それなりに育ったクリーチャーを単体除去を連打され弾かれてしまうというのが特に厳しく、リソースを稼ぐ手段もあまり多くないためラクドス系のデッキは苦手な部類と言っても良いデッキです。
この苦手なアーキタイプが数を減らすのはこのデッキにとっては追い風ですので、今後更に活躍する可能性はありそうです。《運命に導かれし者、ケイリクス》を使わない構築もあったり上記で《神聖なる憑依》をフル投入しているのも対ラクドスを見越してという構築でしょうから、まだまだ変化の余地はありますし、エンチャントというどのセットにも存在するカードタイプを中心としていることでローテーション3年の変化による恩恵も大きく伸びしろのあるアーキタイプと言えるでしょう。
コントロールデッキが息を吹き返す可能性
これは個人的な予想ではありますが、今回のメタゲームでかなり恩恵を受けることになるであろうアーキタイプはコントロールデッキだと思います。
特に強力な全体除去を有する白を含んだエスパーやジェスカイといったデッキは今後のメタゲームにおいて、コントロールとしては久しぶりにメタゲームで有力なデッキになっても全く不思議ではないと思っています。

上記は私が禁止改定前に組んでいたエスパーコントロールで、あくまでこんな感じというイメージで受け取ってもらえたらと思いますが先に述べたように今後有力になりそうなデッキは軒並み全体除去が有効なデッキが多く、エンチャントデッキも《告別》は天敵と言えるカードです。
そしてこれまでコントロールの存在が難しかった理由は《鏡割りの寓話》だけでなく、特に環境に溢れまくっている2ターン目の《勢団の銀行破り》に対して手が出し辛いというところでした。特に後手だと概ね打ち消しもできない上に、クリーチャー除去は《勢団の銀行破り》に対して裏目になってしまったりと厄介極まりないカードでしたが、これが環境から消えたのはコントロールデッキにとって大きな前進です。
当然打ち消しを多めに積むことで5色ランプにも有利に戦うことができます。勿論弱点がない訳ではないですが、これまでのように以前と違って環境的に容認できないレベル(銀行)の弱点はないように思いますので、今後は充分戦えるアーキタイプであろうと思います。
ちなみに上記のリストは相手の除去を腐らせるためにメインはノンクリーチャー構成にしており、メインの勝ち筋は《完成化した精神、ジェイス》によるライブラリーアウト。《多元宇宙の突破》と《完成化した精神、ジェイス》が組み合わさった場合はその1ターンだけで25枚のカードを切削できるので、割と現実的にライブラリーアウトが狙えたりします。興味のある方は試してみても良いかもしれません。
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