本記事ではアルケミーのメタゲームについて解説していきます。
今月(2023年1月)のウィークエンド予選はアルケミーで行われることもありいつもより注目が集まりやすい時期になっていますが、予選前の時期においてどのようなメタゲームであるのか解説していきます。
なお、アルケミーは大会も少なく情報がかなり少ないフォーマットということもありますので筆者の私見も多分に含んでいます。その点はご了承ください。
Tier1
ジャンドミッドレンジ

ウィークエンド予選直前のタイミングで激増しているのがこのジャンドミッドレンジです。上記リストはやや最新の流行りから見ると細部は変わってきていますが、ベースは上記のような構成を取っているデッキです。
アルケミー:兄弟戦争で登場した2種の3マナ伝説クリーチャーである《波の巨人、クルシアス》《暗黒時代の後継、シャーシル》がデッキのメインエンジンとなっており、ここから導き出されるアドバンテージを主軸に戦っていきます。《波の巨人、クルシアス》で捨てること自体が《暗黒時代の後継、シャーシル》の能力と噛み合っておりこの2枚が好相性なのが素晴らしいところです。
デッキのアクセントとなっているのが1マナの《部品の組み立て》で、これで《産業のタイタン》のようなクリーチャーをリアニメイトする動きが非常に強力。《暗黒時代の後継、シャーシル》は1マナカードが墓地にないと意味をなさないですが、この1マナを埋めるカードとしても《部品の組み立て》は相性抜群です。
《産業のタイタン》以外として上記のリストでは採用されていないですが、こちらもアルケミー産の6マナクリーチャーである《砂時計の魔女団》といったクリーチャーもよく採用されています。これらは複数体出てくる関係上《絶望招来》にも強く、総じて長期戦やミッドレンジ相手に滅法強いデッキとなっています。
メタゲームが後述するラクドスのようなミッドレンジが多いため、このデッキの立ち位置が良いことから予選直前のタイミングで一気に増えてきています。執筆時点では一躍トップメタに躍り出たと言っても良いくらいの印象です。
ラクドスミッドレンジ(ラクドスサクリファイス)
トップメタはラクドスミッドレンジで間違いない・・・と思っていましたが、前述の通りここ最近登場したジャンドにやや押されている感は出てきました。それでも強力なアーキタイプであることには変わり有りません。
ただし、一口にラクドスと言っても構成に様々な形があるので、中々一括りにするのが難しいデッキでもあります。アルケミーのラクドスは《命取りの論争》や《血塗られた刷毛》が使えることもあって《鬼流の金床》でお馴染みのサクリファイス型が主流です。
更に最近のトレンドとしてアルケミー:兄弟戦争で登場した《波の巨人、クルシアス》の採用が目立ってきているということも一つの特徴と言えるでしょう。

上記はラクドスサクリファイスがベースにはなっていますが《波の巨人、クルシアス》を採用することで《絶望招来》を連打することも狙って行ける構成となっているリストです。
このリストは4マナがない上に5マナが《絶望招来》のみとなっているため《波の巨人、クルシアス》で「野望」選択から3マナのカードを捨てることで確実に《絶望招来》を手札に加えることができます。宝物トークンも生成しますので、これにより4ターン目から《絶望招来》を早々にキャストしていくという動きが容易になっておりシンプルに強力です。
《絶望招来》の4ターン目キャストに限らず、3マナカードを《絶望招来》に交換できるため《絶望招来》を連打するという凶悪な動きも可能。《波の巨人、クルシアス》はターン終了時誘発なためインスタントで即除去しない限りは能力誘発を止められないというのも一つ強みになっています。
ラクドスサクリファイスは兄弟戦争で登場した《兄弟仲の終焉》がかなり刺さってしまうので、兄弟戦争以降は私的にはサクリファイスでないミッドレンジ型の方が優位性を感じていました。ただ《波の巨人、クルシアス》を得たことでそれも一概に言い切れなくなったかもしれません。
《絶望招来》は特にミッドレンジ相手に強いカードで《絶望招来》の連打はミッドレンジからすると悪夢そのものです。一方でラクドスサクリファイスはデッキの構造的に《絶望招来》に強く、《絶望招来》を打ち合うなら被害が少な目なサクリファイスのほうが利があるとも言えます。
そのため上記のようにサクリファイスデッキとハイブリッドした形は現環境においてラクドス同型を中心としたミッドレンジ相手に強く出られるという強みを持っています。
とにかく現環境では(スタンダードでも似たようなことは言えますが)《絶望招来》に弱すぎるデッキはそれだけで厳しいと言わざるを得ないというのは一つ意識しておくほうが良いかもしれません。

厳密にはラクドスではないですがスタンダードでも猛威を振るっているラクドスべースのグリクシスミッドレンジはやはりアルケミーでも健在です。
アルケミーではクリーチャー除去に《溶鉄の衝撃》が存在しており、特に軽量級のクリーチャーにとっては非常に強力なクリーチャー除去。また《地底街の略奪》は黒という色であるにも関わらずいとも簡単に1:2交換が取れる強力な手札破壊。この2マナ2種の存在はスタンダードと大きく違った部分の一つと言えます。
《溶鉄の衝撃》があるので軽コストアグロのようなデッキは存在が咎められているとも言えますし《地底街の略奪》はリソース勝負となりがちな中速デッキとの対決で非常に強力。
アルケミーを代表するカードの一つと言える《運命の占者》登場以降はしばらく《地底街の略奪》は鳴りを潜めていた感がありますが、ラクドス一強とまで言えるメタゲームの変化や《運命の占者》ナーフという変化もあり《地底街の略奪》はまた活躍できるフィールドになってきたように感じます。
青のタッチはスタンダードでお馴染みの打ち消しや《死体の鑑定人》が主ですが、このリストでは《時計技師、ルスコ》が一枚入っています。もちろん共に戦場に出てくる《真夜中の時計》を使いための採用で、時計が回り切れば圧倒的なアドバンテージ差をつけることもできるので中長期戦を睨んだ一枚となっています。あまりクリーチャー除去を使ってまで対処したくはない《時計技師、ルスコ》が時計の針をかなり進めてくれるので見た目よりは強いと思います。
サイドに入っている《邪なる大魔導士、ターシャ》はアルケミーのプレンズウォーカーの中でも最強クラスと言っても良いほどの強さを持ったプレインズウォーカーですが、如何せん現在は《絶望招来》の的になってしまう可能性が高くそういった面で採用をやや戸惑ってしまうカードということもありサイドに置かれています。

上記は筆者が使っているラクドスミッドレンジ。ミシック250位以内へのランク上げをしたい時によく使っているデッキで執筆時点でのラダー勝率は87%(77勝12敗)です。
《波の巨人、クルシアス》は使わず《街追いの鑑定人》を採用した比較的旧来型とも言える構成で、ハンデス+クリーチャー除去というラクドスのカードの強さでジワジワと優位を築いていく動きになっています。
このリストはラクドス2色で組んだリストで、スタンダードではグリクシスが圧倒的主流であるものの、アルケミーでは前述のように《地底街の略奪》等があることで2色にまとめても充分強い上に安定性も担保できるのでラクドス2色のミッドレンジも充分に通用します。アルケミーでこのようなラクドス2色のミッドレンジを練り上げるのも悪いことではないでしょう。
なお、除去を《ヴェールのリリアナ》《食肉鉤虐殺事件》のように散らしているのは横並べや《ギスランキの戦士、ラエザル》のような触り辛いクリーチャーも考慮していることが理由で全体的に幅広く対応できるようにした構成となっています。ラクドスが多いとは言え、ランク戦は幅広く当たるのも理由の一つです。
サイドの《痛ましい苦境》はかなり珍しいと思いますが、ラクドスサクリファイスや青いデッキ等の細かいスペルを連打するデッキに強いのではないかと思い取り入れたカードです。実際試してみてそれらのデッキに非常に強かったので2枚取っています。なお《強迫》は無難なスロットとして入れていますが、このカードを使うようなデッキにあまり当たらないので他のカードに変えても良いと思います。
Tier2
Tier2としてはいますが、正直なところラクドスミッドレンジ以外は団子という印象はあります。その中でも以下のアーキタイプは注意しておく必要はあるでしょう。
エスパーミッドレンジ

以前の環境ではエスパーミッドレンジは間違いなくトップメタのアーキタイプとして君臨していましたが《運命の占者》がナーフされたことを境に現在はラクドスにその席を譲った印象のあるアーキタイプです。
アルケミーの中でも屈指の強カードである《運命の占者》はナーフにより除去されやすくなったとは言え生き残ったときの強さは健在で、現在でも《運命の占者》はよく見るカードの一つです。
アルケミーセット産のカードが非常に多くカードパワーの高さはやはり環境屈指。《運命の占者》に加えて《ギスヤンキの戦士、ラエザル》も非常に強力な上にこの2枚の相性の良さがこのデッキの大きな武器となっており、除去されがちな《運命の占者》を《ギスヤンキの戦士、ラエザル》の専門化によってリアニメイトして復活させることで長期戦を制するという戦い方はこのデッキの勝ちパターンの1つとなっています。
このように強力なデッキであるのは間違いありませんが基本的に中速ミッドレンジなため、ミッドレンジキラーである《絶望招来》を有するラクドスミッドレンジに対して有利がつけ辛いという点でやや後塵を拝す形になっています。
その点さえ克服することができればまたTier1に返り咲いても不思議ではないパワーを秘めたアーキタイプです。
赤単ゴブリン

アルケミーはスタンダード同様にミッドレンジ環境となっていますが、少な目のアグロの中で最も人気を集めているのは赤単ゴブリンです。
ゴブリンと言えば小型で群れを成すことにより強みを発揮するクリーチャーですが、アルケミー産のエンチャントである《ゴブリンの流入結界》が登場したことにより本アーキタイプは人気を集めるようになりました。
基本的にはお世辞にも強いとは言えないジワジワと相手のライフを削っていくアグロデッキですが、いくらあまり強くないと言えど数の暴力になると話は別。《ゴブリンの流入結界》は毎ターンゴブリンを供給してくれるので、このエンチャントを重ね張り含め展開していくことで息切れせず延々と攻撃できるようになるという強みを持っています。
あまり強くないとは言え《雄叫ぶゴブリン》のパンチ力は例外的に強いのも魅力的ですし《ランドヴェルトの大群率い》で全体強化しつつ死しても後続をもたらしたりと、粘り強さが他のアグロとは一線を画している点は大きな魅力となっています。
《ゴブリンの流入結界》を《絶望招来》から守るようにエンチャントである《鏡割りの寓話》《熊野と渇苛斬の対峙》を上手く使うことでラクドスに対しても勝機が見えてきますが《ゴブリンの流入結界》を除去されたり引けなかったりすると全体的なカードパワーの低さから中々厳しいデッキとも言えます。
ナヤライフゲイン

アルケミー産の問題児とも言えるエンチャントである《舞台座のお祭り騒ぎ》はこれまで散々悪さをしてきたイメージがありますが、マナコストがナーフされて以降は多少落ち着いた印象で、最近は普通に(?)クリーチャーを並べるためのエンジンとして使う形になっています。中でも最近使われている形と言えばライフゲインは一つ外せないアーキタイプでしょう。
ライフゲインデッキでお馴染みの《祝福されし者の声》《月の踊り手、トレラッサーラ》を爆発的に成長させるためにはクリーチャーの頭数が必要で、そこを補うように《舞台座のお祭り騒ぎ》を用いています。抽出したクリーチャーが1マナ圏であっても《月皇の古参兵》はこのデッキの肝になるクリーチャーですし比較的何を抽出しても強いのでデッキによく噛み合っています。
こちらもアルケミーを代表するクリーチャーの一つである《審問官の隊長》から展開していくのも強力ですが、このデッキは一度《祝福されし者の声》《月の踊り手、トレラッサーラ》をライフゲインから育つ盤面が整うと相手が捲り返せないほど強固な盤面を形成できるというのが一番の強みで、そこまで盤面を展開できるかどうかがゲームの肝になります。
上記のリストは1枚挿しのクリーチャーが複数入っていますが、1枚挿しであっても《審問官の隊長》《舞台座のお祭り騒ぎ》によって展開できることも多いので、デッキの幅を広げるという意味でも効果的な手法です。ライフゲインをメインテーマにしてはいますが《審問官の隊長》《舞台座のお祭り騒ぎ》はデッキの強さを大きく押し上げる存在であり、アルケミーにおいては決して無視できないアーキタイプと言って良いでしょう。
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