2022年9月9日に発売(MTGアリーナに9月2日実装予定)となる新エキスパンション「団結のドミナリア」について、発売前レビューとしていくつかのPartに分けて各カードを考察します。本記事はPart1になります。
新メカニズム
後援

「後援」は文字通り前線に赴いたクリーチャー(=攻撃した後援持ちクリーチャー)を攻撃せず見守っているクリーチャーが後方から支援する能力になっており、攻撃していないクリーチャーをタップさせることでタップしたクリーチャーのパワーを後縁クリーチャーに足すことができる能力になっています。
注意なのは召喚酔いしているクリーチャーは後援でタップすることができないという点です。そのためクリーチャー合計の打点を引き上げる能力ではありませんが、上記の《新ベナリアの守護者》のように破壊不能をもっていたり、飛行のような回避能力により単騎で相手戦線を突破しやすいクリーチャーにとっては強力に作用するシーンが多くなるであろう能力になっています。
先読

英雄譚は1章から始まって毎ターン章が進み3章で終わるというのが常でしたが、その常識を変える効果を持つのが「先読」です。スタートする章を1だけでなく、2や3も選べるという効果になっています。
その分飛ばした章の効果は誘発しませんので、章を飛ばすほど長期的には損をすることになりますが、いまは3章を誘発させないとゲームに負けてしまうといったようなタイミングでは非常にありがたい能力になっています。つまり先読持ちの英雄譚は既存の英雄譚よりも明らかに優れていることになりますが、その分各章の効果をやや弱くすることで既存の英雄譚とのバランスを取るというデザインになると思われます。そして「団結のドミナリア」で登場する英雄譚は全て先読持っているようです。
麻痺カウンター

「麻痺カウンター」は一時的にタップ状態を継続させることでパーマネントを無効化させる能力をもっています。
麻痺カウンターをもったパーマネントがアンタップしようとするたび、アンタップさせる代わりに麻痺カウンターを1つ取り除く(つまりアンタップできない)といった効果になっています。MTGなりに麻痺を再現した効果となっていますね。
アンタップフェイズだけでなく何らかの方法でアンタップさせようとした場合にも麻痺カウンターを取り除く効果は誘発します。そのため(本セットに存在するかはまだわかりませんが)クリーチャーをアンタップさせる効果をもったパーマネントは麻痺カウンター対策になるという使い道が新たに生まれることになります。
版図、キッカー(再録メカニズム)


「版図」と「キッカー」が本セットで再登場します。どちらも直観的にわかりやすい能力ですので、はじめての方でもとっつきやすいメカニズムになっています。

特に版図は基本地形タイプを参照するので、前セットである「ニューカペナの街角」で登場した《ラフィーンの塔》のような3色ランドと相当に相性の良い能力になります。版図は当然ながらコントロールしている基本土地タイプが多い程強力になりますが《ラフィーンの塔》のような土地は1枚で3つカウントされるので版図を構築で使うならほぼ必須レベルの組み合わせになります。
白
怒りの大天使

- 構築 :★★★★
- リミテッド:★★★★★
4マナ3/4飛行に加えて絆魂まで持っているので、素のスペック自体も中々のものをもっているクリーチャー。
やはり注目なのはキッカー能力でしょう。任意の対象に2点ダメージ、しかも絆魂を持っていることで2点回復も合わさっているという点も見逃せません。まさにアグロにとっては悪夢の存在になりそうです。
恐らく新スタンダードも《鏡割りの寓話》が溢れた環境になると思われるので、先行であれば《鏡割りの寓話》のトークン攻撃で生み出した宝物から5マナでこれをキャストして相手の《鏡割りの寓話》トークンはキッカーで焼くという光景を目にすることもありそうです。
新ベナリアの守護者

- 構築 :★★★
- リミテッド:★★★★
後援は前述のように総合打点が上がるものではなく、アグロでは全員攻撃に回ることも多いのでどちらかというとリミテッドに向いた能力のように思います。
このカードは後援からの占術2も破壊不能もどちらも強力ではありますが、如何せんパワー2というところはどうしても気になります。新しい2マナ域のアグロ向けクリーチャーとしては悪くありませんが、かといって満足できるレベルかと言われると何とも言えないところです。
青
夢を穢すもの

- 構築 :★★
- リミテッド:★★★★
青のパーマネントがすべてファイレクシアマナを持つようになるという地味ながらも強力な効果を持っているクリーチャー。加えてカードを引く効果も極めて強力です。
ですが本体が5マナとやや重い上に場に出てすぐ仕事をしない、かつ今回再録された《稲妻の一撃》で焼かれるラインであるタフネス3のクリーチャーとなると流石に現在のスタンダードでは厳しいと言わざるを得ないでしょう。
ザルファーのフェイジング

- 構築 :★★
- リミテッド:★★★★
2/2クリーチャーが残るとは言え青であるにも関わらずクリーチャー全体除去効果を有している点でも珍しい英雄譚。先読のおかげでグッと使いやすくなったデザインになっています。
1章や2章から使うことで3章の効果から自分のクリーチャーを守るようにも使えますし、1章2章で相手のパーマネントを取り除いて得た時間の間に自分のクリーチャーの攻撃を通して相手を倒してしまうといった使い方なども考えられるので、使用するにあたって腕が問われるデザインになっているのが面白いところです。
構築では中々に使いどころが難しそうですが、新機軸のカードすぎて正直なところ現時点では判断が難しいカードです。
晴天のスフィンクス

- 構築 :★★★★
- リミテッド:★★★★★
攻撃が通ると版図になった《嘘か真か》を誘発させる巨大フライヤー。攻撃が通ったときに誘発する能力としては版図3くらいでも充分すぎるほど強力です。
何より5マナ5/5飛行護法②というスペック自体が相当に強力で、総合的に見ても今回スタン落ちする《砂漠滅ぼし、イムリス》を彷彿とさせるクルーチャーです。少なくてもスタンダードでは《砂漠滅ぼし、イムリス》と同程度は使われるでしょうし、伝説ではないところも鑑みるとそれ以上の可能性すら秘めています。
赤
焦熱の交渉人、ヤヤ

- 構築 :★★★
- リミテッド:★★★★
忠誠度能力を4つ有している時点で強く見えてしまうのは私だけでしょうか?(多分神ジェイスの影響)
それはさておき、肝心の-2でクリーチャーを対処する能力がクリーチャー一定数必要という盤面を選ぶ効果になっているのが減点要素です。+1も果敢は強い能力とはいえ1/1クリーチャー1体ではこのプレインズウォーカー単騎では劣勢の盤面で出しても大した活躍は期待できないと言えます。
決して使えないプレインズウォーカーではないものの、強いプレインズウォーカーなのかと問われると疑問符が付くカードです。
ラーダの扇動者

- 構築 :★★★★
- リミテッド:★★★★
2マナでパワー3な上に相手のパワー3以下のクリーチャーを1体ブロックさせない能力まで持っているという、赤いアグロの新しい2マナ域のエースとして活躍のすらも予感させる強力なクリーチャー。
版図はおまけと考えて良さそうですが、おまけにしては強力な効果ですしパワー5以下までブロック不可にさせられるのが決定打となるケースもありそうです。
怪しげな統治者、スクイー

- 構築 :★★★
- リミテッド:★★★★
スクイーと言えばゴブリンらしからぬトリッキーな能力を持ったカードが多い印象ですが、今回は非常に攻撃的なクリーチャーとしてデザインされています。
赤い3マナ2/2クリーチャーが1/1のお供を引き連れてくるタイプのカードはこれまでもいくつかありましたが、構築戦で活躍してきたカードも数多くあるくらい強力な効果です。ただこのクリーチャーがスクイーであるが故に伝説クリーチャーとなっており、アグロデッキでは伝説がダブついて出せないのは負け筋になるくらい伝説ルールはきついところがあります。
まるで脱出のような効果も持ってところも息切れしやすい赤いアグロに嬉しいものになっていますが、伝説なので2枚以下の採用が無難なところになりそうです。
シヴの壊滅者

- 構築 :★★★
- リミテッド:★★★★★
殴れるX火力シリーズのクリーチャー。このクリーチャーが珍しいは飛行が付いているところで、これまでのXクリーチャーと比べると継続してダメージを与えていくことに対する期待値が高いのが優れたところです。
Xコストは柔軟性に優れる分、同コスト帯のカードと比べると性能が劣る部分があります。構築戦ではデッキに合うより尖った性能が好まれる傾向にありますので、そこまでの活躍ができるかどうかはやや不安なところです。
時の火炎嵐

- 構築 :★★
- リミテッド:★★★★★
5マナのプレインズウォーカーも含めた全体除去ソーサリー。今回はキッカーすることで自分のクリーチャーを全体除去に巻き込ませないようにプレイすることもできるようになっています。
とは言えキッカーコストが2マナなので、キッカー込みだと7マナ以上かかるのであまり現実的ではありません。《家の焼き払い》を使うほうが無難でしょう。
黒
甦りし悪夢、ブレイズ

- 構築 :★★★★
- リミテッド:★★★
終了ステップ誘発と場に出してすぐに誘発させられる上、生け贄に捧げないことも選べるのでこの手のカードには珍しく非常に使いやすいカードになっています。
相手の生け贄も強制ではないので相手をロックするような使い方はできませんが、その分2点ライフルーズ+1ドローと充分強力な効果にはなっておりジワジワと相手を追い込んでいくのに適した能力になっています。血トークンのようなカードが2点ライフルーズ+1ドローに変わる可能性が高いことを考えてもラクドスサクリファイスに突っ込んでおくと良い仕事をしてくれそうです。
進化した潜伏工作員

- 構築 :★★★
- リミテッド:★★★★
3つ目の能力が何回も使えるようになっており、むしろ3つ目の効果を何回も繰り返し使うことがもっともこのカードの強さを発揮できるポイントになっています。そういった意味で1マナクリーチャーでありながら後半に引いてもそれなりの活躍が期待できます。
ただし3マナ起動なので、実際のところこの起動にマナを使っている余裕があることのほうが稀でしょう。黒1マナ域は手薄なところですので、そこを補完してくれるという意味ではありがたい存在です。
ヴェールのリリアナ

- 構築 :★★★★★
- リミテッド:★★★★
ついに再録となった3マナプレインズウォーカーの代表格とも言える《ヴェールのリリアナ》。強さはお墨付きですが、問題は環境に合うのかどうかといったところでしょう。それに再録したということはこのカードがあっても環境的に問題は起こらないと判断したということでもあります。
現在の環境は《鏡割りの寓話》《婚礼の発表》といったとにかく3マナ域が強いというのが一つの特徴となっており、そこに割って入るカードなのは間違いないですが現環境でどこまで活躍を見せるのか楽しみです。
鴉の男

- 構築 :★★★
- リミテッド:★★★★
自分のターンだけでなく各終了ステップに誘発するので相手が謀議したときにもしっかり誘発するのは素晴らしいです。せっかくの2マナ域なのに伝説なのでデッキに多く入れずらいのはひっかかりますが《策謀の予見者、ラフィーン》を使ったエスパーミッドレンジのようなデッキに入れてみるのも面白そうです。
下の手札を捨てさせる能力は4マナと重い上、ソーサリータイミングで相手のドローステップ後に起動することもできないのでおまけと考えたほうが良さそうです。
黙示録、シェオルドレッド

- 構築 :★★★★★
- リミテッド:★★★★★
素のスペックは4マナ4/5接死と普通に強いといったレベルですが、やはり注目なのはその能力です。カードを引くたびに誘発するという点が素晴らしく、環境に溢れる《鏡割りの寓話》の2章の牽制にもなります。流石に2枚引くと4ライフルーズというのは馬鹿になりません。
そして《策謀の予見者、ラフィーン》を使った攻防においてはこの能力は決定打になりえます。相手の謀議が誘発すると誘発した分だけ2点ルーズですし、自分が謀議を誘発させたら逆に誘発させた分だけ2点回復です。この差は洒落にならないレベルでしょう。
このようにエスパーミッドレンジに入れても強そうですし、他のデッキでも充分活躍する強さはもっているであろうクリーチャーです。
切り崩し

- 構築 :★★★★★
- リミテッド:★★★★
黒の1マナインスタント除去としては歴代で見てもかなり高水準の強さを持ったスペルの登場です。緑のクリーチャー相手にはやや分が悪いですが、概ね3マナ以下のクリーチャーをほとんど除去できることは期待できます。例として《策謀の予見者、ラフィーン》もこのカードなら倒すことができます。
流石に《致命的な一押し》よりは劣りますが、それでも匹敵する強さは持ってる相当優秀なカードであるのは間違いないでしょう。
緑
群れの渡り

- 構築 :★★★
- リミテッド:★★★
緑の版図を使ったランプデッキで使ってくださいと言わんばかりのデザインになっているカード。
7マナと重いソーサリーだけなら使い物にならないレベルですが、2マナで基本土地をサーチできる能力がついていることでギリギリ使えるかなという感じになっています。強さは未知数ですが、新しいアーキタイプの登場を予感させるカードです。
ラノワールの壌土語り

- 構築 :★★★
- リミテッド:★★★★
2マナのマナクリーチャーとなると除去耐性が欲しいところですが、このクリーチャーはタフネス3となっているため《火遊び》のような2点火力に対して耐性を持っているという点は評価ポイントです。それでも同じ赤1マナの《絞殺》には耐えられません。
下側の能力のおかげで後半でもそれなりに活躍できるのはこれまでのマナクリと比べても珍しいところですが、それよりもう少し除去耐性に回してほしかったというのは否めないところでしょう。
世界呪文

- 構築 :★★
- リミテッド:★★
ここまでコストの重い英雄譚は初めてなので、そういった意味でも強烈なインパクトを持っているカード。
コストの重さ的にさぞ強力な効果があるのかとおもいきや、3章はまさかのコスト踏み倒しのみ。元が7マナなのでコスト踏み倒してもあまり美味しいとは言えませんので、使い道には相当工夫が必要です。
この手の能力は調整に失敗すると大暴れしがちなので、かなり注意してデザインしたということでしょうね。
ニショーバの喧嘩屋

- 構築 :★★★★
- リミテッド:★★★
版図5となると、2マナ5/3トランプル。驚異的なスペックとなるので、このカードを軸にした版図デッキが登場してもおかしくない強さがあります。スタンダードに限らずショックランドが使えるヒストリックやエクスプローラーで使われても全くおかしくないスペックですし、むしろそっちのほうが使われるようになるかもしれません。
マルチ
潜伏工作員、アジャニ

- 構築 :★★★
- リミテッド:★★★★★
完成化により3マナでもプレイすることが可能であることが特徴的な新しいアジャニ。
-3の能力はそれなりに強いですが、+1の能力がランダム性が高く結局何もしないということが往々にして起こりそうなのがどうしても気になります。その点により今のところ構築シーンで使えるレベルかと言われるとNOと感じます。
刃を持つ者、アスター

- 構築 :★★★★
- リミテッド:★★★
装備品か機体というニッチなカードタイプではありますが、7枚捲ればスカってしまう可能性もかなり低くなっており優秀な能力なのは間違いありません。コスト軽減効果も役に立つことは多そうですし、このカードを軸にした赤白アグロも面白そうです。
神河:輝ける世界で登場した換装持ちのクリーチャーと相性が良く、そのあたりと組み合わせて使ってみたいクリーチャーです。
老いざる革新者、ジョイラ

- 構築 :★★
- リミテッド:★★
赤青のお家芸とも言えるアーティファクトコストを下げる効果ですが、今回はコストを下げるわけでなくカウンター数分という割と目新しい効果を持ったクリーチャーとしてデザインされています。
この能力だと1枚分にしか働かないこともあり、どちらかというとコストが重めなアーティファクトに向いた効果になっています。現状アーティファクトを多めにいれるなら《熱心なメカ乗り》のようにアーティファクトのコストを一律1下げるようなカードのほうが助かるイメージですし、あまりこのカードを使う理由が思い浮かびません。
太古の番人、ネマタ

- 構築 :★★★★
- リミテッド:★★★★
《ゲトの裏切り者、カリタス》とよく似た能力を持つクリーチャー。クリーチャーの睨み合いに強いですし到達を持っているのも嬉しいところです。
《ヴェールのリリアナ》とあわせてゴルガリやジャンドミッドレンジのようなデッキで採用すると強そうです。
穢れたもの、ソルカナー

- 構築 :★★★★
- リミテッド:★★★★
5マナのクリーチャーとしてはかなり破格の能力を持っており、青黒赤というクリーチャーの層が薄めな色の中ではこのパワフル振りは余計と目立つものがあります。
デメリットとして4回目誘発時に一番下の能力から相手にこの5/5クリーチャーが奪われてしまうという点はありますが、都合3回は攻撃した後になると考えるとそれまでには概ねゲームを終わらせられている可能性も高いですし、このデメリットが致命傷になることは意外と少ないかもしれません。そのため見た目より強いカードという可能性もありそうです。
ウィンドグレイスの魂

- 構築 :★★★★★
- リミテッド:★★★★
戦場に出てすぐに土地を拾ってくる効果を誘発させるのはやや難しいかもしれませんが《鏡割りの寓話》がいればそれも概ね解決できそうですし、何れの起動型能力も強い上に特に破壊不能はパワー5のクリーチャーにつく能力としては厄介なことこの上ありません。
《エシカの戦車》亡き後の緑の4マナ域を埋めるカードとして期待できるカードですし、ジャンドミッドレンジに採用されることはほぼ間違いないでしょう。
永遠の策謀家、ズアー

- 構築 :★★★
- リミテッド:★★★★
クリーチャー・エンチャントという狭い範囲ではあるものの、呪禁まで付与するというのは相当に強力な能力です。
元々がクリーチャー・エンチャントとなるとエスパーカラーでは少ないので、基本的には下の能力から英雄譚のようなカードをクリーチャーして使っていくことになりそうです。そう考えるとスタンダードでは結構マナコストが重いように感じますし、スタンダードにおいてはそこまで活躍できないのではないかと思います。
土地
3色ランド





- 構築 :★★★★★
- リミテッド:★★★★
久々に見たというくらいしばらく登場していなかったダメージランドが再録されます。現時点では全て発表されていませんが、恐らく10種類全て再録されるように思われます。
最近の土地の性能が高すぎたのでそれと比べるとやや弱く見えてしまうことは否めませんが、新スタンダード環境では間違いなく使用されるランドとなります。
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