2021年7月23日発売となる新エキスパンション「D&D:フォートン・レルム探訪」について、構築フォーマットに影響を与えるカードという観点で各カードを考察します。執筆時点では全てのカードはまだ公開されていませんので、パートを分けて執筆しています。
尚、本セットからダンジョンという新しいメカニズムが登場しています。ダンジョンのメカニズムについてはこちらで紹介しています。
またダイスを振る類のカードが今回多く登場していますが、構築の視点から見るとその効果の不安定性から採用し辛いため基本的にレビューの対象外としています。
白
ガーディアン・オヴ・フェイス

瞬速で場に出たときに、自分のクリーチャーをフェイズアウトさせられる能力を持つクリーチャー。
使い方としては主に戦闘時の攻防で一方的にやられてしまうクリーチャーをフェイズアウトさせるか、相手が唱える《影の評決》といった全体除去の被害を抑えるように使うかのどちらかとなってきます。
破壊不能を付与するのではなくフェイズアウトなため、現環境に多いゲームから追放する類の除去からも守ることが出来るのは良いポイントです。
白の3マナクリーチャーは激戦区なので、サイドボードに採用するかもという程度になりそうです。
高貴なる行いの書

ライフゲインデッキのお供となるアーティファクト。
ライフゲインにより3/3天使を生み出すという能力は特筆すべき強さではないのですが、注目なのは下側の悟りカウンターを付与する側の能力です。
ゲームに敗北しなくなるという極めて強力な効果を持っており、天使限定であるため普通に使用するとクリーチャー除去であっさり対処されてしまうのですが、天使ということは多相(すべてのクリーチャータイプを持つ)でも対象に出来るということになります。


もっとも対処されにくいパーマネントと言えば土地、さらに多相といえば《不詳の安息地》でしょう。《不詳の安息地》の起動コストを含めるとマナは6マナ必要となりますが、このコンボが決まれば対処できないデッキも多く実質ゲームセットとなる強力なコンボとなります。下環境なら変わり谷を使えばもっと安いコストで同じことができます。
こういった使い方をするデッキが現れても不思議ではありませんね。
ダンシング・ソード

唱えるコスト、装備コスト共に軽コストである優秀な装備品。
装備品は装備クリーチャーが対処されても残り続けるために、他のクリーチャーに装備することで継続してプレッシャーをかけられるというのが強力であるところなのですが、この装備品の誘発能力を使用すると装備品ではなくなってしまうため装備品であることの強みが失われてしまうのが少し気になります。
勿論選択肢が増えるという点ではないよりはあったほうが良いのは間違いありませんが、そこまで強力な効果でもないため少なくてもスタンダードローテーション前はあまり構築フォーマットで使用されないと思います。
花の大導師


イラストからはバハムートという単語が連想できないプレインズウォーカー。
忠誠度が7を超えると7/7飛行破壊不能のバハムートとなるということで実質的に奥義扱いですね。
一つ目の能力がクリーチャーを無効化するような効果であるためコントロールのような守るデッキ向けのプレインズウォーカーなのかと思いきや、2つ目の効果は「素拳のモンク」を手札に加えるということでどちらかと言うとアグロ向けの能力になっています。
そのため、両能力の噛み合わせがイマイチに感じてしまうプレインズウォーカーです。
パラディン・クラス

パッと見は英雄譚に見えてしまうデザインですが、エンチャントークラスという新しいカードタイプであるカードタイプの一枚。
基本的にはレベル2の効果を中心に運用することになりますが、駐在型の効果もレベル3の能力もなかなかに強力な効果を持っています。
白単や緑白トークンのような横並べデッキで使用することが推奨されるカードです。アグロデッキで使用するには結果的に少しコストが重いのが気になりますが、それを差し引いても充分に構築フォーマットで使用できるレベルの性能を持っています。
青
デミリッチ

パッと見たときにマナコストとイラストに目が行ってしまうデザイン。ですが能力を見ると相当強力なクリーチャーであることがわかります。
まずインスタントやソーサリーを唱えることでコスト軽減効果がついています。それにより基本的には青単で使いたくはあるものの、青が濃い2色であれば採用することは可能でしょう。
また能力的には攻撃時誘発ということで出来る限り攻撃的なデッキで使いたいところです。2色ならば攻撃的な性質を持つ青赤で使うとより強力なクリーチャーとなるのではないかと思います。
この類のカードは組み合わせて使用するインスタントやソーサリーの強さにも依存するカードですから、スタンダードよりもヒストリックや下環境のほうが強いカードです。例えばイゼットフェニックスに数枚入れてみるのも面白そうです。
スタンダードでも活躍するポテンシャルは持っているカードです。
レイ・オヴ・フロスト

赤なら2マナの確定除去とも言える性能を持つクリーチャー除去。赤のみとは言え青の2マナ確定除去カードはなかなか見かけることはありません。
当然ながらサイドボードではよく使用されることでしょう。《鍛冶で鍛えられしアナックス》を後腐れなく除去できるのは素晴らしいです。
ユアンティの呪われし者

単独だとブロックされない効果がついているのは評価できます。リミテッド向きなのは間違いないですが、構築でもワンチャンあるのかな・・・。ダンジョン探索が構築デッキで成立するのかは試してはみたいところですね。
モルデンカイネン

色とイラストを見た時点でテフェリーかな?と誰しもが思ってしまうであろうプレインズウォーカー。勿論テフェリーではありません。
プラス能力は引いた後に手札の中から不要カードをライブラリーの下に置くため実質2ドローと言っても良い能力です。そしてマイナス効果は手札*2倍のパワータフネスという、まさに2倍マローな能力。どちらもすごく強いとまでは言わないものの強力な効果です。
もっとも気になるのはそのコストです。6マナのプレインズウォーカーともなるとゲームを決定付けるレベルの能力は持っていてほしいのですが、このプレインズウォーカーは能力がどちらも悠長なので、6マナ支払ってまで唱える価値があるかというと少し懐疑的。
少なくてもスタンダードローテーション前ではあまり使用されないでしょう。
砂漠滅ぼし、イムリス

過去の名カードである《龍王オジュタイ》を彷彿とさせる伝説のドラゴン。
語法が4ともなると実質的にアンタップ状態では呪禁を持っていると言っても過言ではありません。加えて5/5飛行という強力なボティに加えて戦闘ダメージを与えたらカードを引けるというのは当然ながら非常に強力です。コントロールデッキでもミッドレンジデッキにでもどちらでも使用できる強さです。
このカードがあるならドラゴンを中心としたデッキを組みたくなりますね。
これは本セットの中でも目玉カードの1つと言えます。特にスタンダードローテーション以降は頻繁に見かけることになると思います。
黒
アーチリッチ、アサーラック


3マナなのに、5/5というサイズに加えて攻撃時に誘発する強烈な能力まで有しているクリーチャー。
クリーチャーそのものの性能としては申し分ありませんが、ダンジョンを踏破するという条件をいかにしてクリアするかが重要になります。さすがに3ターン目にこのカードをキャストするのは難しいでしょうが、4~5ターン目に出たとしても充分に強力なクリーチャーです。
しかもダンジョン踏破で4/4クリーチャーまで出てくるので、このカードを軸にしたダンジョンデッキが構築フォーマットで活躍する可能性も充分に考えられます。
魂を食らう墓は最短3回で踏破できるためダンジョンの中では構築で活躍するかもしれないというのはこちらでダンジョンカード登場時に述べていましたが、まさにそれを裏付けるようなクリーチャーです。
スフィアー・オヴ・アナイアレイション

マナコストは融通の利くデザインになっていますが、効果が発動するまでが冗長すぎるので構築では厳しいであろうと思います。
せめてアップキープに確定発動ではなく発動するか選択できるのであれば良かったのですが。。
偽りのパラディン

黒1マナのアグロ向けクリーチャー。性能としてはかなり平凡な感じはします。まさに可もなく不可もなく。
宝物トークンを生み出せるので2ターン目の行動もこれ1枚で賄えるのは良いですね。
レイ・オヴ・エンフィーブルメント

色関係なくタフネス1クリーチャーであれば1マナで処理できるのは評価できる点です。
ですが白であれば大抵は-2くらいで除去できるので、このカードをあえて使う必要性は低いかもしれません。
赤
オーブ・オヴ・ドラゴンカインド

ドラゴン限定のマナ加速兼、サーチ能力を持つアーティファクト。ドラゴンというコストが重いカードの良きサポートとなるカードであるのは間違いありませんが、ドラゴンを中心としたデッキが構築レベルで成立するのかは未知数なところがあります。
トーナメントレベルのデッキが出来るかどうかは懐疑的ではありますが、ドラゴンデッキを組んでみたくなるカードですね。
アヴェルナスの大公、ザリエル

カードの効果はさておき、美麗なイラストに注目してしまうプレインズウォーカー。
能力的にはプラス能力も、真ん中のゼロ能力もどちらもイマイチ感が拭えません。プラス効果からしてアグロデッキに入るタイプのカードになりますが、真ん中の能力で出てくるクリーチャーの基本サイズが1/1なので、打点としてはやや頼りないといった印象です。
構築フォーマットで使用するのであればもう一声ほしいところです。
バーニング・ハンズ

現在のスタンダードで赤が欲しくてやまなかったであろうカードの登場です。
現在のスタンダードでは赤にとって悪夢である《恋煩いの野獣》《長老ガーガロス》に散々泣かされてきましたが、どちらも2マナで除去できるという赤いカードでは例をみないような能力を持っています。
緑対策のために《パーフォロスの介入》や《魂焦がし》といったコストが重いカードを使ってきたのですが、これによりサイド後は簡単に対処できるようになりますね。
ホブゴブリンの山賊の頭

新しいゴブリンのロード能力持ちクリーチャー。
スタンダードではあまり強力なゴブリンがいないので使用することは当面なさそうですが、ゴブリンといえばヒストリックです。
ただヒストリックのゴブリンデッキに4積みするようなカードではなく、同じく3マナの《ゴブリンの酋長》や《ゴブリンの戦長》といったカードに変わるとまでは言えないでしょう。《上流階級のゴブリン、マクサス》の必殺ムーブに速攻は欠かすことができないからです。
数枚なら採用することになる可能性はあるかもしれません。
星山脈の業火

往年の名カード《シヴ山のドラゴン》が裸足で逃げ出す性能を持つドラゴン。伝説という点を除くと完全上位互換です。
普通に使用しても強力ですが、火吹き能力に付随するパワー20になったときに20点ダメージを飛ばすというところで何かコンボ的な使い方が出来るかもしれません。攻撃しなくても誘発するというのはコンボにはうってつけですね。
今のところパッと簡単な方法は思いつかないですが、もしかするとコンボパーツになりえるドラゴンです。パワーがちょうど20になったとき以外では誘発しない点には注意が必要です。
ゾーン

こういった単体では仕事をしないカードは余程その効果が強くないと使用し辛いのですが、このカードは能力がそれほどでもないことに加えてただの3マナ3/2なので構築フォーマットで使用されることはないであろうと思います。
緑
フロギーモス

緑単色としては珍しく速攻を持っているクリーチャー。
この速攻を持っていることがこのカードの評価を一段階上げる要因となっています。このカードは一度でも相手にダメージを与えることでサイズが大きくなる可能性がありますので、本体にダメージを与えやすい速攻を持っているというのは誘発能力と非常に良く噛み合っています。
一度でも誘発すれば相手のデッキ次第ではあるものの+1~2くらいは期待できるでしょうから、次ターン以降のアタックも通りやすくなるのも良いです。特にサイクリング相手にはべらぼうに強いクリーチャーです。
近年の緑5マナのレアクリーチャーは《長老ガーガロス》のように目を見張る性能を持つクリーチャーが登場していますが、このフロギーモスもなかなかの性能を持っています。構築フォーマットでも使用されることでしょう。
インストゥルメント・オヴ・ザ・バーズ

1ターン目におけたならまだ良いのですが、そうでないときには効果を発揮するまでに時間がかかり過ぎかと思います。
また起動コストも宝物トークンを生む可能性があるとは言え4マナと決して軽くありませんので、構築フォーマットでは厳しいように思います。
それにしてもこのカードに限らずですが、このセットのカード名は英語をそのままカタカナ読みに直したようなカードが多いですね。もう少し何とかならなかったのでしょうか。。これも世界観の演出のためなのかな。
銀月街のレンジャー、ヴェイリス

ダンジョンデッキの中核になりえるレジェンドクリーチャー。
セット全体を通して強力なダンジョンデッキが作れそうであれば出番がありそうです。語法はせめて②くらいでも良さそうな感じもしますね。
大休憩

X3以上くらいで唱えることが出来れば、概ね強力なアドバンテージを得られるであろうカード。
ただ墓地にカードを自分から落とすデッキでなければ手札で腐ってしまう可能性も高く、そもそもコストが重いため構築フォーマットで使用するには悠長すぎるように思います。
年老いた骨齧り

これくらいコストの重いカードであればある程度の除去耐性だったり場に出た時点で何らかのメリットを生む効果がほしいところなのですが、このカードはそのどちらも持ち合わせていません。
他の色の神話レアドラゴンは強力なものが多いのに、緑に関しては抜けて弱いですね。。
レンジャー・クラス

エンチャントークラスのレアはなかなかに強力なカードが多いのですが、このカードもそんな例にもれず強力な一枚。
とりあえず2マナ2/2相当の仕事をする上、レベル2と3の効果も全てが1枚の中に備わっている能力としてはどちらも強力なものになっています。
「群れ率いの人狼」といい、緑の2マナ域が一気に強化されたように感じます。特に緑単はかなり強化されそうですね。
マルチ
不死のプリンス、オルクス

全体除去かリアニメイトかを選べるということでどんな相手でも効果が無駄になるということはほとんど存在しないというのは加点要素。
ただ元々が4マナなので、Xは1~2あたりが現実的なところ。となるとラクドスやジャンドのようなミッドレンジデッキに2枚程度指して使うかもしれないという感じでしょう。
勝利した冒険者

攻撃時のみ先制攻撃を持っているため、攻撃時には先制接死という実質ブロックされないを持っているようなものです。
そのため攻撃時誘発という点とはかなり噛み合っていますが、如何せん1/1なので構築では厳しいかなという印象です。
バード・クラス

手放しに強力とまでは言えないものの、実用的な能力を備えている一枚。
こういった他のカード(つまり伝説カード)をサポートする類のカードは、サポート対象のカードの強さにも依存してくるのですが、本セット内にはいくつかこのカードと相性の良いカードが存在します。具体的には次に紹介するカードなど・・・ですね。
敬愛されるレンジャー、ミンスク

3マナ3/3という本体に加えて1/1トランプル速攻というクリーチャーまでついてくる伝説クリーチャー。
前項で紹介している「バード・クラス」とセットで使ってくださいと言わんばかりの性能となっています。3マナクリーチャーとしては悪くない性能ですが、流石に《恋煩いの野獣》と比べると劣る印象ですので、これもローテーション以降に活躍しそうなカードです。
ファイター・クラス

装備品をサーチした上、装備品の起動コストも下げることができるエンチャントークラス。
場に出たときとレベル2までの効果であればコストが重いのでダイレクトに装備品を入れたほうが良さそうですし、レベル3の効果に関しては構築フォーマットではあまり必要となるケースが少ないので、全体を通してあまり魅力的に映りません。
装備品を1枚差ししてこれで探すといった使い方があるかもしれませんが、装備品を散らしてまで使いたいかと言われるとウーンと思ってしまいます。
モンク・クラス

モンクというだけあって、アグロ向けの能力を有しているエンチャントークラス。
全体的にこのカードの能力を生かすだめには軽めのデッキであることが条件となってきます。そのため白青ウィニーといったビートダウンデッキでの使用が主となるでしょう。
ですが、これらの能力のためにカードを1枚使ってまで欲しい効果かと言われたら微妙な感じもします。もしかすると使ってみたら思ったより使ったとなるタイプのカードかもしれません。
ローグ・クラス

まさにカード名の通り、これを使うのであればディミーアローグであろうと思わせてくれるカード。
ただし、いまのローグデッキのカード枠の中から何か抜いてまでこれを入れるかといわれたらNOですね。。
ソーサラー・クラス

何れの能力も盤面に全く干渉しない上に、あまり強くもないので構築フォーマットではお呼びではないでしょう。
エンチャントークラスの中では最弱に近い性能のように思います。
群がる骸骨

毎ターンスケルトンクリーチャーを生み出すエンチャント。
どちらかというとメインデッキに入れるよりも、除去を連打してくるコントロールデッキ等の相手に対するサイドボードカードとして使ったほうが強そうな感じはします。
まとめ
「D&D:フォーゴトン・レルム探訪」も大分リストが公開されてきて全貌が明らかになりつつあります。
やはりパート1で述べたように、前セットであるストリクスヘイヴンよりもスタンダードに影響を与えそうなエキスパンションになりそうな予感がします。
ドラゴンにフォーカスされると聞いたときには少し心配しましたが、そのドラゴンも神話レアを筆頭に実用的なドラゴンが揃っていますし、新しいカードタイプであるエンチャントークラスにもいくつか今後に期待できそうなカードがありますね。
色対策カードも「バーニング・ハンズ」をはじめとしてすぐにでも構築フォーマットで使われそうなカードを見つけることができます。
やはりエルドレインの王権が現役である限りはどうしてもそれらのカードが主役になると思いますが、ローテーション以降は本セットのカードが沢山使用されるのではないかと感じるセットです。
次のパートで残りのカードと、注目カードを合わせて紹介したいと思います。お楽しみに!
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